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学園編 3.5章
第107話 罵り合い (ナーレ視点???)
しおりを挟む「で、潜り込めたんだな?」
「はい。今のところ変わった様子はありません。こちらを警戒する素振りはありません」
「まあ、まさか生徒の中にスパイがいるとは普通思わないからな」
「ええ」
ルイ様の言葉に同意する。
「もう一人の方はどんな感じだ?」
「そちらも特に変わった様子はありません。殿下目的か、あるいは単純に友情か。私には判断できません」
私は自分で分析したことを伝える。
「それにしてもよく成功したな」
「新しい魔法のおかげです」
「・・・不気味だな、その魔法。僕は使いたくないぞ」
「ルイ様が使う機会は無いですよ。下手だと思うので」
「おい、舐めてるのか!」
おっと、舌が滑ってしまった。話を戻そう。
「調べていて一つだけ気になったことがありました。些細なことですが・・・」
「何だ?教えてくれ」
私は促されて話し出す。
「あのリリスって子、たまに、独り言が多いときがあるんです」
不自然なぐらいに。まるで誰かと話しているみたいに。
でも、そこに誰もいない。
「精霊というのは、普通の人間には見えないからな。周囲の者から見れば、おそらくそう感じるのだろう」
ルイ様によれば、文献でもいくつかの証言で、誰かと話しているような独り言をしている、と裏付けが取れているそうだ。
「気になったことはそれだけか?」
「はい」
「よし、行って良いぞ」
私はそのまま部屋を退室した。
自分の部屋に帰る途中、私は色々と考えた。
あんな子が本当に危ないのかと。
ここ数日間一緒にいたが、少し変わってはいるがよくいる普通の女の子、ぐらいにしか感じなかった。
悪意もなく、真っすぐで純粋な生徒。
平民というディスアドバンテージを除けば、学園で人気者になれる子だろう。
もちろん、真っ直ぐな純粋さは、場合によってはそれと真逆の、強烈な悪意に変わることもある。
ただ、私が今日まで直に接してきた印象では、そんな気はしなかった。
「前を向いて歩いてください、レーナ」
廊下の途中、考え込んでいた私は、前から歩いてきた同僚のアルスにぶつかりそうになる。
「ああ、ごめんね」
「何か考え事でもしてたんですか、ナーレ?」
「ちょっと!その名前で呼ばないでよ!」
それは、私が監視対象のリリスに近づくためのスパイ用の名前。
「別にいいじゃないですか、ナーレさん!」
こいつ、ムカつく!
「馬鹿にしているでしょ!」
「馬鹿にというか、あの日のことを少し思い出してしまって」
あの日って、初めてリリスたちとカフェで接触したあの日のことか?
リリスとミナスがカフェに入ったのを見計らって私も入店し、一人で席に座り、アルスは万が一のために遠目に座っていた。
「何よ、何か文句あるの?」
「文句と言うか、あのような接近の仕方は少し変でしたよ」
変なの?
「もっと自然なやりようがあったと思います。まさか、突然、自分の不幸自慢を見ず知らずの人に話すだなんて!」
!!!
「自分は友達が少ないからとか、あからさますぎると言うか、露骨すぎる接触の言い訳で、見ているこちらはヒヤヒヤしましたよ」
!!!!!確かにそうだけど!!!
「無礼を承知でお聞かせ願いたいのですが、もしかしてナーレさん、もといレーナさん、お友達少ないんですかぁ!?かわいそうですねー!」
こいつ、ウザっ!ダルすぎ!!
「殺”す”ぞ、ガキ!」
「いや、ただの疑問なんですけど、ねー、”アルダリースの薔薇”さん!」
こ、こいつ、なんで知ってるん?その昔、社交界での私の通り名を!?
私は小さい頃から、あまり人との関わりが得意ではなく、異性からダンスに誘われても断っていた。
そのため、社交界でも近寄り難い存在として、”薔薇”という名前を付けられた。
にしてもこのガキ、今それを持ち出してくるとは。
「何よ、文句ある!私は友達がそこまで多くないから作り方もそこまで熟知していない!それで何か文句ある!!!」
私は息切れするぐらい大声で叫ぶ。
「そこまで怒らなくても」
「クソ生意気め!」
汚い言葉を吐いてしまう。
どうにかしてこいつを・・・・あ!いいこと思いついた。
「あ、そう言えば、ちょうど新しいスパイを探していたわ!」
「ん?どうした、急に?」
「いやね、ちょうどもう一人、女友達のスパイが必要になってたんでさ」
「・・・何でこっちを見る!自分は男だぞ!」
「大丈夫、大丈夫!私が女装手伝ってあげるから!アルスくん、心配ご無用よ!」
私の言葉に、今度はアルスが動揺する。
「嫌です!」
「ルイ様には私から伝えておきます」
「絶対やめろ!」
ふふふ。ルイ様なら絶対許可を出す。分かってる。
「分かった、さっきのことは謝る!だから、それだけは勘弁してくれ!!」
「あん?敬語!!」
「すいませんでした!勘弁してください!レーナ様!!」
そんな蹴落とし合いを二人でやっていると、セバスさんが現れて、うるさい、と一喝された。
この人には何故か誰も逆らえない。
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