上 下
106 / 179
学園編 3.5章

第106話 主人公⑧ (リリス視点)

しおりを挟む

新しい友達が出来た私は、早速学校帰りに遊びに行くことになった。

アレックスくんの誘いを断り、近くの商店街へと行く。

「ねえ、ミナスはいつも放課後は何をしているの?」

歩きながら私が質問すると、頬を掻きながら答える。

「う~ん、速攻で家に帰るかな?友達いないし、すること無いし。リリスは?」

私に返される。

「私は一人で魔法とかの練習をしている。たまにアレックスくんと帰るけど、こうやって誰かと買い物は初めてかな」
「凄いね、向上心があって」

魔法ではなく精霊術の練習をしているということは黙っておこう。

「今度ミナスもどう?確か剣使いだっけ」
「え!あーしは、その~~」

何か言い淀む。

「あーしは、実は魔法使いなんだよ」
「え、そうなの」

でもいつも授業では剣を使っているし、結構強いイメージがある。

「使えるのが治癒魔法で―」
「治癒魔法!凄いじゃん!」

治癒魔法と言えば一万人に一人しか使えないというレアな魔法。

普通に使える回復魔法とは違い、強力な回復をすることができる。

「それで、自分を治癒させながら戦っているから疲れないの」
「だから強いんだ!」
「うん」
「でも、私と何でやりたくないの?」

私は首を傾げる。

「え!いややりたくないとかじゃなくて、邪魔したら悪いかな~って」
「どうしてよ!全然邪魔じゃないよ!」
「でもリリスって強いじゃん!ほとんど負け無しでしょ」
「そうだけど、私なんてあのルイくんに比べれば」
「・・・確かにあいつはそうだけど」

ルイ・デ・ブルボン。それは途方もない壁。でも超えなければいけない壁。

「一緒にやろうよ!きっと強くなれるよ!」

私はミナスを誘う。

ミナスはしばらく考え込んで、折れたように言う。

「分かったわ。毎日じゃないけど」
「ありがとう!」

そんな話をしていると目的の店に着く。

隣国で流行っているものを取り入れている人気の店で、お値段は少しお高め。

十分ほど並んで入店して、席についた。

他愛もない話をしながら、流行りの食べ物を味わう。


しばらく会話した頃。

一人の女子が近寄って来る。

服装から見るに、同じ学園の生徒だと分かる。

「あの~、お二人って学園の生徒ですか?」

眼鏡を掛けた、おそらく私より背の高い女子生徒。

「ええ、そうですけど」
「あ、やはりそうでしたか!私の名前はナーレと申します。E組の者です」

顔に見覚えが無いと思ったけど、E組だったら校舎が違うから納得がいく。

「あーしはS組のミナス」
「私は同じくS組のリリスです」
「え!二人ともS組ですか!凄い!」

私達がS組だと言うと驚かれる。

「S組と言ってもハブられ組だけどな」

そう自虐的に言うミナスに、私は苦笑いを浮かべて同意する。

「そんなそんな、S組っていうだけで凄いですよ。アレックス殿下だったり、学校の有名人と同じクラスじゃ無いですか」
「確かにそうだが、あーしたちは嫌われ者ですよ」
「嫌われ者?」

ナーレちゃんが首を傾げる。

「ええ、そうです。私もミナスもクラスで色々とやらかしちゃって」
「それは、大変でしたね」

その言葉に私達は肩をすくめる。

自業自得とも言えるし、自分たちの道を進んだ結果、とも言える。

「実は私も少しクラスで浮いていまして」

いつの間にか椅子を持ってきて、傍に座るナーレ。

深刻そうな顔をして、話始める。

「私は平民なのです。先程のお二人の会話を近くの席から盗み聞きしていてすみませんが、リリスさんもそうなのですか?」
「ええ。でも、ここで会えるなんて!」

私は嬉しくなる。

「E組で平民の女子って私しかいなくて。クラスでは腫れ物扱いされているんです」
「それは、」

私と似ている。

「こうしていつも一人でカフェに入ったりして、一人の時間を過ごしているんです」
「なるほど。でしたら、私達と友達になりましょうよ!」
「そうだな。リリスの意見に賛成!」

私達の言葉に驚くナーレ。

「ここで会ったのも何かの御縁ですし。お互いはぐれ者同士ということで、カンパーイ!」

私の言葉に二人が笑う。

「はぐれ三銃士的な?いいじゃん、面白いじゃん!」
「本当にいいんですか?」

私とミナスは一斉に答える。

「「もちのろん!!」」

それぞれが握手をする。

「少しクラス同士が遠いけど、校舎の間にある中庭とかで集合しない?」
「いいね!」

そのままナーレを交えて話し始める。


それにしても、どうしてナーレは私達の所に来たんだっけ?

まあ、気にすることは無いか。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在三巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

処理中です...