異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
96 / 188
学園編 3章

第96話 ルイ領

しおりを挟む

帰郷してから三日後。

惜しまれながらも(?)僕らは旅行という名の調査へと向かった。

本当は僕とアルス、レーナ、その他二名の護衛と行くつもりだったが急遽護衛がオールドだけとなった。

護衛兼監視役であるオールドが付いてくるのは嫌だったが、護衛として不足している!とも言えず。

僕らは馬車で南方へと向かうことになった。

と、その前に向かう所がある。

そう、僕の領地であるルイ領(元アルマー家領)へと寄ることになった。

流石に領主としてずっと留守にしているのは良くないと父に言われたから。

まあ、僕が行ったらたんまりと賄賂が送られてくるし、行く価値はある。


領内へ入ると、僕は思わず声を漏らす。

「何なんだよ、これ!」

そこに広がっているのは川と川の間に広がる麦藁色の平原。

目を凝らしてみると、全てが小麦なのだと理解できた。

「やっと終わりましたか」
「おい、アルス!何のことだ!」
「あれ、気づいておられなかったのですか?」

気づく?何に?

僕がこのルイ領に入るのは一年ぶり。

孤児院の事があってから父に呼び戻され、公都で入学までの時を過ごしていた。

その間にも僕に税収は普段通り入ってきており、逆に増えたくらいだ。

僕が増えるように仕向けたのだから当たり前だけど・・・この発展は何なんだ!!!

「ルイ兄様、いつ頃の話をしているのですか?ルイ兄様が入られた次の年から着々と小麦の栽培を増やしていったのですよ」

知らなかった。というより興味が無かった。

「確かにルイ様は自分のこと以外興味がありませんよね」

心を読むな!

「でも、どうしてあんなに小麦畑が増えた!」
「簡単です。堤防を作ったからですよ」
「堤防?」
「はい。ルイ兄様の発案もありまして、税収の一部を川の氾濫への備えとしました」
「ああ、確かそうだったな」

そのために増税した。

「最初は中々受け入れともらえませんでしたが、着々と工事が進むにつれて段々と理解してもらえました」
「何でだ?」
「堤防を作ることで、より川に近い場所でも小麦を作れるようになったからです。小麦が育つ条件の一つである水はけの良い場所。川の近くにも多かったのですが、そこで栽培するとなると、川が氾濫を起こしたとき全てが水泡と化します。そのハイリスクを避け、これまで行われてこなかったのです」
「つまり、堤防を作ることでそのリスクが軽減された。だから、作るようになった」
「ええ、そうです。更に堰を設けることで水の調整もでき、より育つようになる」

なるほど、理解はできた。

「だが、それにしては僕に入ってくるお金が少ない気がする」
「それはそうですよ。減税したのですから」
「減税だと!!!!どういう意味だ!!!!」

僕はアルスに掴みかかる。

「そのままの意味ですよ。人々が豊かになったのですから減税して、財布の紐を緩くすることで経済を回す。

辺境の村で、特徴的なものは何もない普通の田舎の村。
当然です。ただ、ちゃんとルイ兄様に入るお金が増えるようには調整しました。ですから、これまで気づかれなかったのでしょ?」

ニヤリとしてシタリ顔をするアルス。

こいつ、マジ殺す!!!!

「まあまあ、お二人とも。そろそろ着きますぞ」

僕とアルスの間にオールドが割って入る。

にしても、アルスめ。こいつが急に大きく見えてきたな。



屋敷に着くと、役人や使用人、騎士達全員が出迎えてくれる。

僕は当主としてある程度の報告を聞き、本題の賄賂へと移る。

領内が発展して関税も無くなったことで多くの商人たちが来るようになった。

領内が栄え、それを聞きつけた商人たちが来て、また栄え・・・・の繰り返し。

大商人たちも根を張るようになり、賄賂はたんまりと貰うことができた。


久しぶりの屋敷を見て回ろうと思い、ぶらついていた僕。

渡り廊下を歩いていると、ふと中庭に目線が行く。

そこでは一人の騎士と数人のヒヨッコ騎士達がいた。

その中で見覚えのある奴が一人。

「ん?あれは確かクソガキじゃないか」

僕は練習している彼らのそばに寄っていく。

「誰って、領主様!このようなむさ苦しい所に何の御用で」

剣術を教えていた教官がこちらに気づいて寄ってくる。

「いや、何か見覚えのある―」
「あ!まさか手下―イテッ!」
「こら!領主様と呼べ!!!!」

やはり変わらない生意気なクソガキ、もといマルクであった。

「ふっ、クソガキは相変わらずだな」
「なっ、偉そうに―イテッ!!!」
「偉いんだよ、この馬鹿! 申し訳ありません、領主様。この者、腕は非常に良いのですが少し乱暴でして」

まあ、いつも通り、通常運転だな。

「ちゃんと敬語を使って話せ」
「すいません・・・」

教官に怒鳴られてしゅんとなるクソガキ。

それにしても、悔しい。

目の前にいるクソガキを、僕は見上げていた。

同年代の平均よりは少し高い僕の、更に頭一個分ほど大きくなっていたのだ。

僕はそんな悔しさもあって特に何も話さず、その場を後にしようとした。

その僕の背に向かってクソガキが大声で言う。

「一言だけ!手下のお陰で夢が叶ったぁ!!!ありがとう―――イテッ!!!」
「コラァァ!!!領主様と呼びなさい!!!!」

僕はそれに答えず歩き去っていった。


最後のあの言葉に少し嬉しさを感じたのは、気のせいだろう。

一日滞在した僕らは、ルイ領を後にした。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...