71 / 188
学園編 1章
第71話 リーダー
しおりを挟む「それではホームルームを始めたいと思う」
ナータリを馬鹿にしたりしていたら、学校のチャイムが鳴り、全員が席につく。
好きな席でいいらしく、僕は一番後ろの真ん中、両隣にアルスとレーナが座る。
ナータリは少し離れたところ、皇子三人組は一番前。リリスは皇子の隣に座っている。
Sクラスの全員が教室の席に着いた後。
教室にメガネをかけた陰湿な顔をした一人の男性が入ってくる。
着ている服から察するにこのクラスの担任なんだろう。
「私の名前はアリオスだ。このSクラスの担任だよろしく」
教壇に立つなり、いきなり簡潔な自己紹介をする。
「ここに入学した君たちは誰よりも優秀で強くなくてはならない。明日から本格的な授業が始まる。だから今日、このクラスのリーダーを決めてもらう」
リーダー?
「一年を通してのクラスの責任者だ。先生の伝言を伝えたり、集団戦における司令塔だったり多くの事をこなす役目だ。一クラス一人。選ばれた人はサブリーダーを指名する」
なるほど、所謂前世で言うところの学級委員か。
他の委員は・・・いるわけ無いか。
掃除も行事も全て学園が請け負うから、クラス代表以外の委員はいらない。
「リーダーは基本的立候補制。誰も出なかった場合はくじ引きで適当にやる。質問はあるか?」
生徒を見回しながら先生は言う。
それにしても、入学初日でリーダーを決めなければいけないのかよ。
最近の学校ってこうなのか。
まあ、いい。
「ああ、推薦もありだぞ。ただし、もし立候補者が二人以上になった場合は演説、決闘、話し合い。好きなように決めてくれ」
ほ~流石剣と魔法の世界だ。
決闘が存在するのか。
「ねぇ~~、これってもうアレックス殿下で決まりじゃん」
先生が話し終えると、一人生徒が発言をした。
金髪に焦げたような茶色の肌。制服の着こなしはいいとは言えないスラッとした女子生徒だ。
「誰だよ!偉そうに!」
「あーしはミナス。マレック子爵家の長女よ」
誰かのやじに答えるミナスはそのまま話を続ける。
「どう考えてもこの中で偉くて強くて優秀なのは、殿下以外ありえないじゃん」
「確かに」「そうだよな、殿下以外ありえない」「何よりかっこいいわ」
「みんなもそう思うでしょ。じゃあ決まりよ。いいでしょうか、殿下」
周囲の反応を見ながらミナスはアレックスに尋ねる。
「え、まあ。皆が言うなら」
どこか自信なさげに答えるアレックス。
もう決まりそうだ。
特に何事も起こらずに。
はぁ~~見ていられない。
強くて優秀で、偉いやつはここにいるじゃないか。
「はいは~い。僕も立候補します!」
僕が手を上げると全員がこちらを向く。もちろんアルスたちも。
「だ、誰よ貴方!今、せっかく決まりそうになっていたというのに」
ミナスが目をキリッと上げてこちらを睨む。
「僕?僕はルイ。ブルボン公爵家の嫡男だが・・・文句ある?君たちより偉いよ」
家名を出した途端、なにか言いたそうだった全ての人が黙る。
これが僕の(家の)力だ。
全員逆らえない。
だが勇敢にも、いや愚かにもミナスは言葉をやめない。
「み、身分だったらアレックス殿下の方が上でしょ」
「はっ、たかだか第三皇子でしょ」
僕の発言にクラスが凍り付く。
「ル、ルイ兄様!その発言はいけませんよ」
「アルス、僕何か変なこと言ったか?」
「・・・・・・言いましたよ!」
耳元でアルスが怒鳴る。
だってそうじゃん。
皇子と言っても皇帝になるわけじゃないし、第三だから公爵家より発言力は小さい。
「ルイ、それは不敬罪になるわよ」
「公爵令息と敬称をつけろ。子爵家ごときが」
「うっ、でも、」
「はいはい、そこまでだ」
一向に食い下がらないミナスと僕の言い争いを先生が止めに入る。
「双方言い分があると思うが、あまり過激になるな。ルイ、ここはあくまで学園だ。身分の話は持ってこないように」
「チッ、は~い」
素直にここは従う。
「で、本題の方だが。アレックスはどう思っている」
・・・この人凄いな。仮にも皇子に向かって学園とはいえ敬称を付けないなんて。
まあ、僕も似たようなものだが。
「俺、ですか。ルイがやろうとしているならそれでいいと思います」
「きゃー謙虚!」「かっこいいわ」「声、かっこいい」
アレックスが発言すると女子共が騒ぎ出す。
「じゃあ、他に立候補はいないな。だったらリーダーはルイで決定だ」
かくしてぼくがリーダー(実質、王)になったのだ!!!
32
あなたにおすすめの小説
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
サナリア王国は、隣国のガルナズン帝国の使者からの通達により、国家滅亡の危機に陥る。
従属せよ。
これを拒否すれば、戦争である。
追い込まれたサナリアには、超大国との戦いには応じられない。
そこで、サナリアの王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るため。
サナリア王が下した決断は。
第一王子【フュン・メイダルフィア】を人質として送り出す事だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことなんて出来ないだろうと。
王が、帝国の人質として選んだのである。
しかし、この人質がきっかけで、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす。
伝説の英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる