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少年編 3.5章
第45話 主人公⑤ (リリス視点)
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私と師匠が暮らしている街マーセルは帝国の南に位置する温暖な場所。
南部でも比較的大きな商業都市で非常に栄えている。
この城塞都市の壁側に位置する家を私は出て、市場へと向かう。
活気あふれる市場で私は買い物を済ませる。
「キャベツとにんじんを一つずつお願いします。後、玉ねぎも」
「あいよ。採れたてのトマトオマケしておくぜ」
「ありがとうございます!」
私が注文すると、愛想よく受け答えしてサービスしてくれる店主。
貴重なお金を払い、その場を後にする。
その後も肉や魚、調理器具などを買う。
次に私が向かったのが城壁の外。広大な平野にいくつもある村の中で、一番マーセルに近いところへと向かう。
そこで新鮮な卵を買おうとする。が、
「ごめんね、ちょうどさっきのお客さんで最後でね」
「いいえ、お気になさらず」
「でも、必要なんでしょ?」
どうやら売り切れになってしまったらしい。
心配してか、顔なじみのおばさんが聞いてくる。確かに必要だったが、料理を変えればいいだけ。
「大丈夫ですから」
私は心配いらないと答えたがおばさんはある提案をしてくる。
「もし必要ならここから少し行った村外れの家が卵を売っているわよ」
「本当ですか!」
「ええ、そうよ。この道を真っすぐ行って森に入った少ししたところにあるわ」
側の道を指しながら教えてくれる。
「ありがとうございます!」
私は頭を下げ、時間を気にしながら足早に歩き出す。
日が高くなった頃。
私は教えてもらった村外れに行き、優しいおばあさんから卵を買って帰宅途中だった。
「それにしても暗いな。精霊も全然いない」
卵を買ったおばあさんの家は森の中央に位置している。最初に寄った村までは森の中の道を進む。日中にも関わらず暗い森は不気味さを感じる。
いつもはどこにでも存在する精霊が周囲にいない。というより、この森に入ってから一度も見ていない。
「何か、起こりそう・・・」
私は呟く。
違和感のような、運命のような。何かを感じる。
そもそもあの村にいつもの時間に行ったにも関わらず卵が無くなっているのもおかしいし、あそこに家があるのも初めて知った。
ブルリと悪寒が走る。
何かに操られるような―
[mmnmnn]
突然心に悲しい何かが聞こえる。
[mmnmnn]
何かを呼びかけている。ねえ、何を言っているの!
私は問いかける。
[mmnmnn!]
何かが悲鳴を上げる。
私はどうすれば良いのか分からい。でも、何故か行かなければいけない気がする。
私は声のする森の奥へと走った。
[mmnmnn!]
声が呼びかけてきていた場所は先程までおばあさんの家があった場所。森の中央にあるその開けた場所に、大きな玉が浮いていた。
七色に輝くその玉はトマトほどの大きさで、精霊のように中を漂っている。
[mmnmnn!]
その物体が叫ぶ。でも、何を行っているのかわからない。ただ、何か大変なのはわかる。
「貴方は誰?!」
私の声が届いたのか分からないが、宙を忙しなく動く。
「貴方は何が―」
ワ”ォオオオーーーーー
私の声を遮る大きな遠吠えが後方でする。
バッ シュッ バッ
何か大きな生物の足音が近づいてくる。
怖くなった私は中央の玉へと逃げる。玉は私を受け入れてくれ、足音に警戒するように私の周囲を旋回する。
足音が止まり、何かの気配が近づいてくる。
大きな筋肉質な体に灰色の毛。大きな爪をした手足に、鋭い牙の生えている狼顔の口。
「狼男!!」
その魔物の姿を見て、私は後ずさる。しかし狼男の歩みは止まらない。恐怖で私は買った卵と野菜たちを投げる。だが、気にすることなくそいつは進んでくる。
怖い。
私は死を覚悟してその場にヘナヘナと座ってしまう。
せっかく助けてもらった命なのに、また失うのか。
無力なせいで死んでしまうのか?
狼男は歩みを止めず、私を獲物として凝視する。
ああ、死ぬ。
そう思った時、声が聞こえた。
[僕と契約して!]
南部でも比較的大きな商業都市で非常に栄えている。
この城塞都市の壁側に位置する家を私は出て、市場へと向かう。
活気あふれる市場で私は買い物を済ませる。
「キャベツとにんじんを一つずつお願いします。後、玉ねぎも」
「あいよ。採れたてのトマトオマケしておくぜ」
「ありがとうございます!」
私が注文すると、愛想よく受け答えしてサービスしてくれる店主。
貴重なお金を払い、その場を後にする。
その後も肉や魚、調理器具などを買う。
次に私が向かったのが城壁の外。広大な平野にいくつもある村の中で、一番マーセルに近いところへと向かう。
そこで新鮮な卵を買おうとする。が、
「ごめんね、ちょうどさっきのお客さんで最後でね」
「いいえ、お気になさらず」
「でも、必要なんでしょ?」
どうやら売り切れになってしまったらしい。
心配してか、顔なじみのおばさんが聞いてくる。確かに必要だったが、料理を変えればいいだけ。
「大丈夫ですから」
私は心配いらないと答えたがおばさんはある提案をしてくる。
「もし必要ならここから少し行った村外れの家が卵を売っているわよ」
「本当ですか!」
「ええ、そうよ。この道を真っすぐ行って森に入った少ししたところにあるわ」
側の道を指しながら教えてくれる。
「ありがとうございます!」
私は頭を下げ、時間を気にしながら足早に歩き出す。
日が高くなった頃。
私は教えてもらった村外れに行き、優しいおばあさんから卵を買って帰宅途中だった。
「それにしても暗いな。精霊も全然いない」
卵を買ったおばあさんの家は森の中央に位置している。最初に寄った村までは森の中の道を進む。日中にも関わらず暗い森は不気味さを感じる。
いつもはどこにでも存在する精霊が周囲にいない。というより、この森に入ってから一度も見ていない。
「何か、起こりそう・・・」
私は呟く。
違和感のような、運命のような。何かを感じる。
そもそもあの村にいつもの時間に行ったにも関わらず卵が無くなっているのもおかしいし、あそこに家があるのも初めて知った。
ブルリと悪寒が走る。
何かに操られるような―
[mmnmnn]
突然心に悲しい何かが聞こえる。
[mmnmnn]
何かを呼びかけている。ねえ、何を言っているの!
私は問いかける。
[mmnmnn!]
何かが悲鳴を上げる。
私はどうすれば良いのか分からい。でも、何故か行かなければいけない気がする。
私は声のする森の奥へと走った。
[mmnmnn!]
声が呼びかけてきていた場所は先程までおばあさんの家があった場所。森の中央にあるその開けた場所に、大きな玉が浮いていた。
七色に輝くその玉はトマトほどの大きさで、精霊のように中を漂っている。
[mmnmnn!]
その物体が叫ぶ。でも、何を行っているのかわからない。ただ、何か大変なのはわかる。
「貴方は誰?!」
私の声が届いたのか分からないが、宙を忙しなく動く。
「貴方は何が―」
ワ”ォオオオーーーーー
私の声を遮る大きな遠吠えが後方でする。
バッ シュッ バッ
何か大きな生物の足音が近づいてくる。
怖くなった私は中央の玉へと逃げる。玉は私を受け入れてくれ、足音に警戒するように私の周囲を旋回する。
足音が止まり、何かの気配が近づいてくる。
大きな筋肉質な体に灰色の毛。大きな爪をした手足に、鋭い牙の生えている狼顔の口。
「狼男!!」
その魔物の姿を見て、私は後ずさる。しかし狼男の歩みは止まらない。恐怖で私は買った卵と野菜たちを投げる。だが、気にすることなくそいつは進んでくる。
怖い。
私は死を覚悟してその場にヘナヘナと座ってしまう。
せっかく助けてもらった命なのに、また失うのか。
無力なせいで死んでしまうのか?
狼男は歩みを止めず、私を獲物として凝視する。
ああ、死ぬ。
そう思った時、声が聞こえた。
[僕と契約して!]
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