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少年編 3章
第34話 子供
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孤児院へ来た僕はある程度の話を聞いて、院内に行くことになった。
楽しそうに遊んでいた子供たちは、動きを止めて興味津々に見てくる。
「申し訳ありません。子供ですので、礼儀が分からず」
「気にするな。急に押しかけたのだ、文句は言わない」
もちろん、少しむず痒い気持ちではある。
身分も全く違う奴にジロジロと見られるのだ。
気持ちのいい物ではない。
子供たちが遊んでいる広場を歩いている途中、一人の子供が寄って来る。
同年代ぐらいの男子で、興味津々に見つめてくる。
「こら、大事なお客様だよ!近づかない!」
「え~シスター、いいじゃん」
そう言って僕の肩に泥だらけの手を置く。
「お前、弱そうだな!今日から俺の子分だ。守ってやるよ!」
周囲の大人たち、僕を知る二人、孤児院の青年たちの顔が真っ青になる。
僕のこめかみも青筋を立てる。
「僕は一応公爵令息なのだが」
「こうしゃく?おいしいのか?」
本気で分からないような表情をして首を傾げる。
「ルイ様、も、申し訳ありません。私達の教育不足です。ですが、どうかこの子を許してもらえないでしょうか」
「お、俺からも!」
「わ、私からもお願いします」
周りの大人たちが一斉に土下座してくる。
「シスターたちは何で謝っているの」
「い、今は黙っていなさい!」
状況が分からない小さな子供たちは、真似をしだしたり興味を失ったように遊び始める。
無知というのは素晴らしいな。
「頭を上げろ。僕もそこまで心は狭くはない。今回のことは不問とする」
「「「あ、ありがとうございます!」」」
土下座した全員が涙を流し合う。
後ろの二人が「シュルーすぎる光景ですね」と言っているが気にしない。
そう、僕にとったら当たり前の光景なのだ。
汚れた服は気にせず、院内を見て回った。
どの施設もボロボロで、床が抜けるため通れない場所もあった。
食事を見るとものすごく貧相。
パンは一人半分、野菜なんかは雑草などが混じっている。
「こんなお見苦しいところを見せて申し訳ありません。ただ、やはり自給自足では足りず、町の支援も多いとはいえません」
食事は前世の学校で出される給食の半分ほどの量。
「大丈夫だ。ここは僕が買った所有物。面倒はしっかり見る。建物は改修させご飯の量も倍にする」
「ありがとうございます!」
「ここから僕の家臣として働いてくれる奴を排出してくれればいい。そのためにも必要な教科書やらは取り寄せる」
何度も感謝され、僕は良い思いになる。
ふと外を見ると、子供たちが楽しそうに遊んでいる。
ただ、決して健康な体とは言えず、みんなやせ細っている。
目の前のモンナや他の大人たちも目には隈があり、痛そうに頭を抱える人もいる。
僕はそれを見て、可哀想だなとしか思わない。
生まれた場所が違う。
選ばれたかそうでないか。
彼らと僕との差はそれだ。
ただ子供たちを見て一つだけ気になる。
前世の僕の子はどうなったのかと・・・・・・
夕暮れ。
見学も終わり僕らは馬車に戻る。
戻るように馬車に揺られていると、アルスから質問される。
「それにしても、ルイ兄様はどうしてお隠しなられるのですか?」
「何のことだ?」
「ですから、どうして孤児院を買われたことを父上にも他の貴族にも隠すのですか?」
そう、孤児院を買って家臣を育てるという計画を知っているのは、アルスとレーナ、セバス、そしてオールドだけ。
「簡単なことだ。公爵家を敵視している他の貴族にあの孤児院を攻撃されないためだ。貴族というのはとにかくしつこい奴らだ。嫌なことを絶対やってくる。だから、将来僕に仕えて活躍をしそう危険分子を排除しようとする可能性がある」
「何故、父上にお隠しに?」
「父上は内政においては恐いくらい有能だからな。将来役に立つかも知れない奴を自ら引き抜く可能性がある。大丈夫だ、セバスも黙っていてくれる」
引き換えに僕の休み時間が削らえたが・・・
「とりあえず、油断はするな。あの孤児院は将来の切り札になる」
「はい」
楽しそうに遊んでいた子供たちは、動きを止めて興味津々に見てくる。
「申し訳ありません。子供ですので、礼儀が分からず」
「気にするな。急に押しかけたのだ、文句は言わない」
もちろん、少しむず痒い気持ちではある。
身分も全く違う奴にジロジロと見られるのだ。
気持ちのいい物ではない。
子供たちが遊んでいる広場を歩いている途中、一人の子供が寄って来る。
同年代ぐらいの男子で、興味津々に見つめてくる。
「こら、大事なお客様だよ!近づかない!」
「え~シスター、いいじゃん」
そう言って僕の肩に泥だらけの手を置く。
「お前、弱そうだな!今日から俺の子分だ。守ってやるよ!」
周囲の大人たち、僕を知る二人、孤児院の青年たちの顔が真っ青になる。
僕のこめかみも青筋を立てる。
「僕は一応公爵令息なのだが」
「こうしゃく?おいしいのか?」
本気で分からないような表情をして首を傾げる。
「ルイ様、も、申し訳ありません。私達の教育不足です。ですが、どうかこの子を許してもらえないでしょうか」
「お、俺からも!」
「わ、私からもお願いします」
周りの大人たちが一斉に土下座してくる。
「シスターたちは何で謝っているの」
「い、今は黙っていなさい!」
状況が分からない小さな子供たちは、真似をしだしたり興味を失ったように遊び始める。
無知というのは素晴らしいな。
「頭を上げろ。僕もそこまで心は狭くはない。今回のことは不問とする」
「「「あ、ありがとうございます!」」」
土下座した全員が涙を流し合う。
後ろの二人が「シュルーすぎる光景ですね」と言っているが気にしない。
そう、僕にとったら当たり前の光景なのだ。
汚れた服は気にせず、院内を見て回った。
どの施設もボロボロで、床が抜けるため通れない場所もあった。
食事を見るとものすごく貧相。
パンは一人半分、野菜なんかは雑草などが混じっている。
「こんなお見苦しいところを見せて申し訳ありません。ただ、やはり自給自足では足りず、町の支援も多いとはいえません」
食事は前世の学校で出される給食の半分ほどの量。
「大丈夫だ。ここは僕が買った所有物。面倒はしっかり見る。建物は改修させご飯の量も倍にする」
「ありがとうございます!」
「ここから僕の家臣として働いてくれる奴を排出してくれればいい。そのためにも必要な教科書やらは取り寄せる」
何度も感謝され、僕は良い思いになる。
ふと外を見ると、子供たちが楽しそうに遊んでいる。
ただ、決して健康な体とは言えず、みんなやせ細っている。
目の前のモンナや他の大人たちも目には隈があり、痛そうに頭を抱える人もいる。
僕はそれを見て、可哀想だなとしか思わない。
生まれた場所が違う。
選ばれたかそうでないか。
彼らと僕との差はそれだ。
ただ子供たちを見て一つだけ気になる。
前世の僕の子はどうなったのかと・・・・・・
夕暮れ。
見学も終わり僕らは馬車に戻る。
戻るように馬車に揺られていると、アルスから質問される。
「それにしても、ルイ兄様はどうしてお隠しなられるのですか?」
「何のことだ?」
「ですから、どうして孤児院を買われたことを父上にも他の貴族にも隠すのですか?」
そう、孤児院を買って家臣を育てるという計画を知っているのは、アルスとレーナ、セバス、そしてオールドだけ。
「簡単なことだ。公爵家を敵視している他の貴族にあの孤児院を攻撃されないためだ。貴族というのはとにかくしつこい奴らだ。嫌なことを絶対やってくる。だから、将来僕に仕えて活躍をしそう危険分子を排除しようとする可能性がある」
「何故、父上にお隠しに?」
「父上は内政においては恐いくらい有能だからな。将来役に立つかも知れない奴を自ら引き抜く可能性がある。大丈夫だ、セバスも黙っていてくれる」
引き換えに僕の休み時間が削らえたが・・・
「とりあえず、油断はするな。あの孤児院は将来の切り札になる」
「はい」
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