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少年編 2章
第25話 王手 (アルス視点)
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「ああ、もちろん。それが僕の善意だ」
物陰からその言葉をルイ兄様から聞いて驚きを隠せずにはいられなかった。
「あの兄様が奴隷に優しくするなんて」
自分の知っている兄様は奴隷になんて優しくしない。
家柄、身分を第一に考える極形的な貴族だった。
弟である自分にもあまり優しさなどは見せず、あくまで腹違いの弟、ただの配下として扱ってきた。
最初はレーナさんのことも一奴隷として扱っていたはず。
同情など見せるような兄様では無かったはず。
だけれど、優しさを見せる兄様にどこかホッとしてしまった。
兄様は人の心を持ってはいない訳じゃないんだと。
自分を助けたように、人を助ける心を持ち合わせている人なのだと。
家柄第一の姿も、一奴隷を助ける姿も、兄様なのだと。
改めて認識した。
「やっぱり自分の主君は最高だ!」
小さくアルスは呟いた。
「ルイ兄様、確認は終えました」
少しして自分は兄様たちの前に出る。
元々自分は侯爵を追い落とす重要な証拠を集めるべく、兄様たちとは別行動を取っていた。
そしてそれを報告に行こうとした時、レーナさんと兄様が広い庭の片隅で話をしているのが聞こえて近寄ったのだ。
「そうか、よくやった」
先程までの会話は何もなかったようにこちらに振り向く。
レーナさんは少し戸惑った様子。
「どういうことですか?」
「お、自主的に喋ったぞ」
レーナさんの問いにそう兄様は答える。
「それは―」
「まあ、そんなことはどうでもいい。とりあえず奴を潰す準備は出来た。行くぞ」
「はい」
言葉を遮って兄様は歩き出す。自分もそれに続く。
「ほ、本当にどういうことですか!」
後ろで訳が分からず状態の人がいたが兄様と時分は無視をして客室へと戻った。
「連れ戻してきたかね?」
気持ち悪いぐらいに甘ったるい声で出迎えたのはウッデン侯爵。
明らかに肥えた太った豚のような風貌で、脂の乗ったブクブクの腹を見て思わず笑いそうになる。
「ん?そちらの従者は誰ですか?」
ウッデン侯爵は兄様に自分のことを問いかける。
自分が来る前に何があったのか分からないが、とりあえず挨拶をした。
「わたくしはルイ様の護衛兼従者のアルスと申します」
「ほぉ~こんな子供が護衛とは・・・。公爵家も人手不足ですかな」
あえて腹違いの弟とは言わなかった。
どうせそれについてなにか言われるだろうし。
「まあ、そんなことはどうでもいいのだ。早くその娘をくれたまえ」
ウッデン侯爵は怯えるレーナさんの方を向いて不愉快な笑みを浮かべる。
どうして欲しているのか?とは聞かない。
兄様の従者である以上、言われなくてもある程度は理解しなくてはならないのだ。
自分が考えるにおそらく証拠が無いと言い張って、迷惑を掛けてきた対価にレーナさんを寄越すよう言ったのだろう。
そこで何かを言われてレーナさんは逃げてしまった。
まったく不愉快な貴族だ。
兄様を強請ろうとするなど。
「その前に、侯爵様。これを」
それでは反撃の時間だ。
まずは用意をしておいた資料を出す。
資料にはこれまでやってきた不正の証拠、奴隷商人との繋がりついてなど。
「こ、これは」
「この資料は侯爵様の不正についてはこちらで独自に調べたものです。さらに、貴方がアルダリース伯爵家の失脚に関わっていたとされている他貴族たちの証言。レーナさんを一年以上売らないようにお願いしたという奴隷商人たちの証言。他、絶縁状の偽造など」
全て公爵家の独自で調べてきたもの。
「さて、言い逃れは出来ません、ウッデン殿」
兄様は不敵な笑みを浮かべながら詰め寄る。
「ああ、そうだ。アルス、虫の証言は取れたかな?」
「はい」
「な、何の証言だと!」
驚いた表情を浮かべる侯爵。
「昨晩ルイにい・・ルイ様の部屋を襲ってきた輩の内三人ほどを捕まえましてね。先程まで自白をさせていたんですよ」
自分の言葉を聞いて、徐々に顔を白くさせていく。
「さて、侯爵様。逃げることはできませんよ」
物陰からその言葉をルイ兄様から聞いて驚きを隠せずにはいられなかった。
「あの兄様が奴隷に優しくするなんて」
自分の知っている兄様は奴隷になんて優しくしない。
家柄、身分を第一に考える極形的な貴族だった。
弟である自分にもあまり優しさなどは見せず、あくまで腹違いの弟、ただの配下として扱ってきた。
最初はレーナさんのことも一奴隷として扱っていたはず。
同情など見せるような兄様では無かったはず。
だけれど、優しさを見せる兄様にどこかホッとしてしまった。
兄様は人の心を持ってはいない訳じゃないんだと。
自分を助けたように、人を助ける心を持ち合わせている人なのだと。
家柄第一の姿も、一奴隷を助ける姿も、兄様なのだと。
改めて認識した。
「やっぱり自分の主君は最高だ!」
小さくアルスは呟いた。
「ルイ兄様、確認は終えました」
少しして自分は兄様たちの前に出る。
元々自分は侯爵を追い落とす重要な証拠を集めるべく、兄様たちとは別行動を取っていた。
そしてそれを報告に行こうとした時、レーナさんと兄様が広い庭の片隅で話をしているのが聞こえて近寄ったのだ。
「そうか、よくやった」
先程までの会話は何もなかったようにこちらに振り向く。
レーナさんは少し戸惑った様子。
「どういうことですか?」
「お、自主的に喋ったぞ」
レーナさんの問いにそう兄様は答える。
「それは―」
「まあ、そんなことはどうでもいい。とりあえず奴を潰す準備は出来た。行くぞ」
「はい」
言葉を遮って兄様は歩き出す。自分もそれに続く。
「ほ、本当にどういうことですか!」
後ろで訳が分からず状態の人がいたが兄様と時分は無視をして客室へと戻った。
「連れ戻してきたかね?」
気持ち悪いぐらいに甘ったるい声で出迎えたのはウッデン侯爵。
明らかに肥えた太った豚のような風貌で、脂の乗ったブクブクの腹を見て思わず笑いそうになる。
「ん?そちらの従者は誰ですか?」
ウッデン侯爵は兄様に自分のことを問いかける。
自分が来る前に何があったのか分からないが、とりあえず挨拶をした。
「わたくしはルイ様の護衛兼従者のアルスと申します」
「ほぉ~こんな子供が護衛とは・・・。公爵家も人手不足ですかな」
あえて腹違いの弟とは言わなかった。
どうせそれについてなにか言われるだろうし。
「まあ、そんなことはどうでもいいのだ。早くその娘をくれたまえ」
ウッデン侯爵は怯えるレーナさんの方を向いて不愉快な笑みを浮かべる。
どうして欲しているのか?とは聞かない。
兄様の従者である以上、言われなくてもある程度は理解しなくてはならないのだ。
自分が考えるにおそらく証拠が無いと言い張って、迷惑を掛けてきた対価にレーナさんを寄越すよう言ったのだろう。
そこで何かを言われてレーナさんは逃げてしまった。
まったく不愉快な貴族だ。
兄様を強請ろうとするなど。
「その前に、侯爵様。これを」
それでは反撃の時間だ。
まずは用意をしておいた資料を出す。
資料にはこれまでやってきた不正の証拠、奴隷商人との繋がりついてなど。
「こ、これは」
「この資料は侯爵様の不正についてはこちらで独自に調べたものです。さらに、貴方がアルダリース伯爵家の失脚に関わっていたとされている他貴族たちの証言。レーナさんを一年以上売らないようにお願いしたという奴隷商人たちの証言。他、絶縁状の偽造など」
全て公爵家の独自で調べてきたもの。
「さて、言い逃れは出来ません、ウッデン殿」
兄様は不敵な笑みを浮かべながら詰め寄る。
「ああ、そうだ。アルス、虫の証言は取れたかな?」
「はい」
「な、何の証言だと!」
驚いた表情を浮かべる侯爵。
「昨晩ルイにい・・ルイ様の部屋を襲ってきた輩の内三人ほどを捕まえましてね。先程まで自白をさせていたんですよ」
自分の言葉を聞いて、徐々に顔を白くさせていく。
「さて、侯爵様。逃げることはできませんよ」
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