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少年編 1章
第12話 覚悟(アルス視点)
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ルイ兄様はお強い!
自分がブルボン家に来て早一年。それを常日頃から感じている。
魔法もすでに上級まで使えて、家柄も凄く頭もいい。
自分の兄、そして主君として誇りに思っている。
今回のダンジョンでも助けられてばかりだった。
「おい、おい!」
「あ、はい!」
「ぼーっとするな」
「す、すいません」
吹っ飛ばされたせいで未だ頭が痛い。
ぼーっとしていて怒られた。
「もう一度話すぞ」
何のこと?と思ったが、すぐにお宝のことだと思い出した。
「この二つが僕が求めていたものだ」
オーガが最初に立っていた場所の後方。そこに一本の剣とペンダントがあった。
「これがルイ兄様が求めていたものですか」
「そうだ。剣の方はスピフレイバーと呼ばれている。魔力が宿っていて、使い手に身体強化を付与するんだ」
「へぇ~」
「ペンダントの方も似たような効果だ」
そう言いながらペンダントを手に取り、ポケットへとしまわれる。
「さて、剣だがお前にあげよう」
「・・・え!」
唐突に兄様が言う。
「こ、こんな高価な物は頂けないです」
自分はすぐに断った。が、兄様は剣を触りながらさらに勧めてくる。
「僕は魔法の才能はあるが、剣はあまり得意ではない。だから、お前が使え」
「ですが―」
「お前は僕に剣を捧げた。それは一生仕えるという事だ。前に言ったよな、将来僕の家臣になる奴だと。お前を守ったのは将来の僕のためだ。これは命令だ。お前が使え」
「・・・はい!」
僕は兄様の目を真っ直ぐ見て力強く答える。
そうだ、僕は兄様に救われたんだ。だから、兄様を守る。
そのためにきっとその剣が助けてくれる。
「じゃあ、抜いてね」
「・・・え!」
指さされた剣の方をよく見ると、地面に四分の一が埋まっていた。
「ど、どうすればいいんですか?」
「だから、抜くんだよ。剣に選ばれれば抜くことが出来る」
選ばれる?よくわからないけどとりあえず剣に手を掛ける。
柄の部分をしっかりと持って、勢いよく抜こうとする・・・が、抜けない。
どうしてだ?何故?このままでは兄様に呆れられてしまう。
自分はもう一度力を入れて抜こうとする・・・が、まだ抜けない。
何が、何が、何が足りない?剣を握る手に力を・・・・・・・・・・!
『djhswrpk』
何かを感じる。剣に問いかけられている。
何を言われているかわからない。
けど、なんとなく分かる。
自分が剣を抜く理由、使う理由、目的は、
尊敬するルイ兄様を助けるため!救ってくれた、助けてくれた兄様を守るため!
あの日、自分は剣に誓った。
だから剣術を磨き、礼儀作法も魔法を学んでいる。
全ては主のために!
自分が答えると、突如剣が光を放つ。
大きな音を立てて、ゆっくりと地面から浮かび上がっていく。
そして剣の全体が露わになった瞬間、急に縮み出し、吸い込まれるように自分の腰に来る。
元々あった剣は既に折れており、新たな剣スピフレイバーが鞘へと収まる。
「認められたんだな」
兄様が満足そうに笑われる。
自分はいつか必ず兄様の役に立つ!この剣と共に!
そう、心に誓った。
「おや、まだ真っ昼間か」
眩しい光の指す地上に自分と兄様は戻ってくる。
体感的には十数時間だったが、意外に経っていなかった。
「よし、帰るぞ」
「はい!」
辛く、でも楽しかった時間を噛み締めてダンジョンを後にした。
「ん?騒がしいな」
出た時と同じ抜け道を使い、父様の書斎に戻ってくる。
読書に集中したいから誰も入るな、と兄様が屋敷の人たちに言って抜け出してきていた。
昼飯も運ばないように言ってあるため恐らく気づかれていないはずだが。
「何故屋敷は慌ただしい。何があった」
兄様は書斎を出られてすぐに近くのメイドさんに尋ねる。
「ル、ルイ坊っちゃま!」
メイドさんが大きな声を出す。
「何処に行ってらっしゃってたんですか!」
「何処?」
「ええ!丸一日屋敷から姿を消されて屋敷中が大騒ぎで。当主様は先程戻られて」
「丸、一日」
自分とルイ兄様は全てを察した。そしてこれからどれだけ怒られることも。
「なぁアルスよ」
「はい?」
「僕の為に犠牲になってくれ。これは命令だ!」
「そ、そんな!!!」
兄様はそそくさと逃げて行かれた。・・・だが、それも兄様らしい。
自分は従者としてこっぴどく叱られた。もちろん、主犯の兄様と共に。
自分がブルボン家に来て早一年。それを常日頃から感じている。
魔法もすでに上級まで使えて、家柄も凄く頭もいい。
自分の兄、そして主君として誇りに思っている。
今回のダンジョンでも助けられてばかりだった。
「おい、おい!」
「あ、はい!」
「ぼーっとするな」
「す、すいません」
吹っ飛ばされたせいで未だ頭が痛い。
ぼーっとしていて怒られた。
「もう一度話すぞ」
何のこと?と思ったが、すぐにお宝のことだと思い出した。
「この二つが僕が求めていたものだ」
オーガが最初に立っていた場所の後方。そこに一本の剣とペンダントがあった。
「これがルイ兄様が求めていたものですか」
「そうだ。剣の方はスピフレイバーと呼ばれている。魔力が宿っていて、使い手に身体強化を付与するんだ」
「へぇ~」
「ペンダントの方も似たような効果だ」
そう言いながらペンダントを手に取り、ポケットへとしまわれる。
「さて、剣だがお前にあげよう」
「・・・え!」
唐突に兄様が言う。
「こ、こんな高価な物は頂けないです」
自分はすぐに断った。が、兄様は剣を触りながらさらに勧めてくる。
「僕は魔法の才能はあるが、剣はあまり得意ではない。だから、お前が使え」
「ですが―」
「お前は僕に剣を捧げた。それは一生仕えるという事だ。前に言ったよな、将来僕の家臣になる奴だと。お前を守ったのは将来の僕のためだ。これは命令だ。お前が使え」
「・・・はい!」
僕は兄様の目を真っ直ぐ見て力強く答える。
そうだ、僕は兄様に救われたんだ。だから、兄様を守る。
そのためにきっとその剣が助けてくれる。
「じゃあ、抜いてね」
「・・・え!」
指さされた剣の方をよく見ると、地面に四分の一が埋まっていた。
「ど、どうすればいいんですか?」
「だから、抜くんだよ。剣に選ばれれば抜くことが出来る」
選ばれる?よくわからないけどとりあえず剣に手を掛ける。
柄の部分をしっかりと持って、勢いよく抜こうとする・・・が、抜けない。
どうしてだ?何故?このままでは兄様に呆れられてしまう。
自分はもう一度力を入れて抜こうとする・・・が、まだ抜けない。
何が、何が、何が足りない?剣を握る手に力を・・・・・・・・・・!
『djhswrpk』
何かを感じる。剣に問いかけられている。
何を言われているかわからない。
けど、なんとなく分かる。
自分が剣を抜く理由、使う理由、目的は、
尊敬するルイ兄様を助けるため!救ってくれた、助けてくれた兄様を守るため!
あの日、自分は剣に誓った。
だから剣術を磨き、礼儀作法も魔法を学んでいる。
全ては主のために!
自分が答えると、突如剣が光を放つ。
大きな音を立てて、ゆっくりと地面から浮かび上がっていく。
そして剣の全体が露わになった瞬間、急に縮み出し、吸い込まれるように自分の腰に来る。
元々あった剣は既に折れており、新たな剣スピフレイバーが鞘へと収まる。
「認められたんだな」
兄様が満足そうに笑われる。
自分はいつか必ず兄様の役に立つ!この剣と共に!
そう、心に誓った。
「おや、まだ真っ昼間か」
眩しい光の指す地上に自分と兄様は戻ってくる。
体感的には十数時間だったが、意外に経っていなかった。
「よし、帰るぞ」
「はい!」
辛く、でも楽しかった時間を噛み締めてダンジョンを後にした。
「ん?騒がしいな」
出た時と同じ抜け道を使い、父様の書斎に戻ってくる。
読書に集中したいから誰も入るな、と兄様が屋敷の人たちに言って抜け出してきていた。
昼飯も運ばないように言ってあるため恐らく気づかれていないはずだが。
「何故屋敷は慌ただしい。何があった」
兄様は書斎を出られてすぐに近くのメイドさんに尋ねる。
「ル、ルイ坊っちゃま!」
メイドさんが大きな声を出す。
「何処に行ってらっしゃってたんですか!」
「何処?」
「ええ!丸一日屋敷から姿を消されて屋敷中が大騒ぎで。当主様は先程戻られて」
「丸、一日」
自分とルイ兄様は全てを察した。そしてこれからどれだけ怒られることも。
「なぁアルスよ」
「はい?」
「僕の為に犠牲になってくれ。これは命令だ!」
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