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1.思い出と再会
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薄暗い部屋の中で私は抱かれていた。
「はぁはぁ…あぁん」
繋がった部分が擦れ合い、不思議な感覚にさせる。目の前には普段から鍛えているであろう、男の胸板が腰と共に動いている。
「お願い…あっ、動いちゃ、あぁ、いやっ」
彼は乱れた私に喜びを感じているのか止めようとしない。そればかりか、熱く固い己を激しく何度も出入りさせ、感じさせようと私の膨らんだ胸の先を指でなぞる。
「どうして…こんなことに」
◆◆◆
今日は高校の同窓会。地元の居酒屋で同窓会をやると幹事から連絡が来た時は心を弾ませた。ただ、一点だけ憂鬱もある。
「元彼も来るかしら…」
高校時代の私にはクラスメイトの彼氏がいた。彼はとても温厚で優しくて、さらに勉学も秀才で自慢の彼氏だった。一緒にテスト勉強をして、外へ買い物に出かけるなど健全なデートを重ねた。
彼の家での勉強でお呼ばれした時、テキストを片付けて飲み物を飲み終えると彼と目があった。それは自然な同意だったのか、ゆっくり顔が近づき唇が重なった。私にとってファーストキスだった。彼の手はゆっくり私の両肩を支え、お互い緊張しているのがすぐわかるほど距離が近くなった。とても恥ずかしかったが、同時に幸福感に満ち溢れた。
「彼と…ずっと一緒にいたい」
しかし、テスト明け直後、彼から突き付けられた言葉は、奈落の底に突き落とすかのような衝撃の一言だった。
「もう家に来ないで、俺と別れてほしい」
教室にいたはずだが、世界が真っ暗になった。テストの結果なんてどうでも良いほどだ。テスト期間前はあんなに幸せな日々を過ごしていたのに、何が起きたのかわからない。悲しさ、虚しさ、孤独が私に襲った。
「もう…恋なんてしたくない」
その失恋から8年経った私は【25歳事務員独身】として現在を過ごしている。少し前ならこの歳で結婚、出産は当たり前だったようだけど、このご時世は独身・彼氏なしでも問題ない。同僚や同期での飲み会も楽しい。だから、たまには同窓会にも顔を出したかった。
「元彼が絶対に来るとは限らないから、いいよね」
私は気軽な気持ちのまま、高校の同窓会に参加の返事をした。
居酒屋の受付で高校の名前を出すと、店員が奥の部屋まで案内してくれた。入ったらもうすでに何人か座っていたが、元彼の姿は無く安心感からか自然と笑顔になれた。
「こんばんは。ご無沙汰です、高山です」
「高山さん!?久しぶり!!同窓会初めてだよね?」
「そうなの、今までごめんなさい。大学時代も今の仕事も忙しくて…」
私は咄嗟に嘘を付いた。確かに忙しい時もあったが、同窓会に参加できないほどではない。ただ単に、元彼と再会したく無かっただけ。
「席は決まっている?」
「特には無いよ、でも出身中学で固まっているかな」
「本当?」
周りを見渡すと確かに出身中学ごとに集まっている。私もその法則通りに席へ向かうと、誰かが声をかけてきた。
「あ、高山さん?西中の」
そこには男性が座っていた。この彼のことは今も鮮明に覚えている。高校はクラスがずっと違ったけど、中学時代はクラスも活動班も一緒だった。3年生になると塾も同じになり、少し話も増えたけど、ただ、そこまでの関係でそれ以上もそれ以下もない。ただ、元彼とは高校で席が近くなったことから仲が良かったことだけは今も気がかり。
「ここ座ったら?空いているよ」
彼は自分の横の椅子を指差した。この近距離は中学時代なら絶対に恥ずかしくて無理だけど、居酒屋で節度ある社会人なら問題ないので妥協できる。
「ありがとう、失礼するね」
私は座って彼の親切心に感謝した。親切に空いていることを教えてくれたから、彼に挨拶でもしよう。
「お久しぶりね、長野君」
「ああ、久しぶりだね。元気だった?」
ありきたりな挨拶だけど、私達はこんな挨拶をしたことが今までない。長野君の学生時代は無口でやや態度が悪いタイプだった。頭は良いのに授業態度が本当に悪くて、いつも先生に叱られていた記憶がある。だから、高校は私と同じ進学校なんて無理だと思っていたけど、合格して同じ校舎にいるとは思わなかった。この同窓会も合格していなければ、参加なんて出来ない。
「長野君も社会人なの?」
「あぁ、社会人だけど特殊かな」
「特殊?」
「あぁ、俺は公務員だから」
公務員と聞いて、周りの独身女性の目が変わった。その目は獲物を狙うハンターの目のようだ。公務員は将来安定と言われているのは、今も昔も変わらない。元クラスメイトの彼女たちは接点を持ちたいのだろう。ただ彼の横には邪魔な私がいますが。
幹事が飲み物を聞いてきたので、私はいつもの癖で烏龍茶を頼むと長野君に笑われた。
「高山さんって、お酒飲めないの?」
「ううん、多少なら飲めるけど」
「折角だから最初はお酒にしなよ、アルコールで話も膨らむよ」
それもそうだと思い、私はサワーに変更をしてみんなと乾杯をした。
お酒も進み改めて周りを見渡すと元彼の姿は無かった。今回は不参加のようで安心していると、長野君の携帯の待受にメッセージが表示された。見るつもりは無かったけど、目に入ってしまった。
【同窓会は間に合わない。後で飲み直そう】
その送信者の名前を見て私は泣きそうになった。名前には【小野】の文字があった。長野君と仲の良い小野くんは彼しかいない。それは私の元彼だ。
泣きそうになる私の横で長野君がどんな様子だったかなんて、その時は気にも留めなかったけど、気付くべきだったと後悔することとなる。
「はぁはぁ…あぁん」
繋がった部分が擦れ合い、不思議な感覚にさせる。目の前には普段から鍛えているであろう、男の胸板が腰と共に動いている。
「お願い…あっ、動いちゃ、あぁ、いやっ」
彼は乱れた私に喜びを感じているのか止めようとしない。そればかりか、熱く固い己を激しく何度も出入りさせ、感じさせようと私の膨らんだ胸の先を指でなぞる。
「どうして…こんなことに」
◆◆◆
今日は高校の同窓会。地元の居酒屋で同窓会をやると幹事から連絡が来た時は心を弾ませた。ただ、一点だけ憂鬱もある。
「元彼も来るかしら…」
高校時代の私にはクラスメイトの彼氏がいた。彼はとても温厚で優しくて、さらに勉学も秀才で自慢の彼氏だった。一緒にテスト勉強をして、外へ買い物に出かけるなど健全なデートを重ねた。
彼の家での勉強でお呼ばれした時、テキストを片付けて飲み物を飲み終えると彼と目があった。それは自然な同意だったのか、ゆっくり顔が近づき唇が重なった。私にとってファーストキスだった。彼の手はゆっくり私の両肩を支え、お互い緊張しているのがすぐわかるほど距離が近くなった。とても恥ずかしかったが、同時に幸福感に満ち溢れた。
「彼と…ずっと一緒にいたい」
しかし、テスト明け直後、彼から突き付けられた言葉は、奈落の底に突き落とすかのような衝撃の一言だった。
「もう家に来ないで、俺と別れてほしい」
教室にいたはずだが、世界が真っ暗になった。テストの結果なんてどうでも良いほどだ。テスト期間前はあんなに幸せな日々を過ごしていたのに、何が起きたのかわからない。悲しさ、虚しさ、孤独が私に襲った。
「もう…恋なんてしたくない」
その失恋から8年経った私は【25歳事務員独身】として現在を過ごしている。少し前ならこの歳で結婚、出産は当たり前だったようだけど、このご時世は独身・彼氏なしでも問題ない。同僚や同期での飲み会も楽しい。だから、たまには同窓会にも顔を出したかった。
「元彼が絶対に来るとは限らないから、いいよね」
私は気軽な気持ちのまま、高校の同窓会に参加の返事をした。
居酒屋の受付で高校の名前を出すと、店員が奥の部屋まで案内してくれた。入ったらもうすでに何人か座っていたが、元彼の姿は無く安心感からか自然と笑顔になれた。
「こんばんは。ご無沙汰です、高山です」
「高山さん!?久しぶり!!同窓会初めてだよね?」
「そうなの、今までごめんなさい。大学時代も今の仕事も忙しくて…」
私は咄嗟に嘘を付いた。確かに忙しい時もあったが、同窓会に参加できないほどではない。ただ単に、元彼と再会したく無かっただけ。
「席は決まっている?」
「特には無いよ、でも出身中学で固まっているかな」
「本当?」
周りを見渡すと確かに出身中学ごとに集まっている。私もその法則通りに席へ向かうと、誰かが声をかけてきた。
「あ、高山さん?西中の」
そこには男性が座っていた。この彼のことは今も鮮明に覚えている。高校はクラスがずっと違ったけど、中学時代はクラスも活動班も一緒だった。3年生になると塾も同じになり、少し話も増えたけど、ただ、そこまでの関係でそれ以上もそれ以下もない。ただ、元彼とは高校で席が近くなったことから仲が良かったことだけは今も気がかり。
「ここ座ったら?空いているよ」
彼は自分の横の椅子を指差した。この近距離は中学時代なら絶対に恥ずかしくて無理だけど、居酒屋で節度ある社会人なら問題ないので妥協できる。
「ありがとう、失礼するね」
私は座って彼の親切心に感謝した。親切に空いていることを教えてくれたから、彼に挨拶でもしよう。
「お久しぶりね、長野君」
「ああ、久しぶりだね。元気だった?」
ありきたりな挨拶だけど、私達はこんな挨拶をしたことが今までない。長野君の学生時代は無口でやや態度が悪いタイプだった。頭は良いのに授業態度が本当に悪くて、いつも先生に叱られていた記憶がある。だから、高校は私と同じ進学校なんて無理だと思っていたけど、合格して同じ校舎にいるとは思わなかった。この同窓会も合格していなければ、参加なんて出来ない。
「長野君も社会人なの?」
「あぁ、社会人だけど特殊かな」
「特殊?」
「あぁ、俺は公務員だから」
公務員と聞いて、周りの独身女性の目が変わった。その目は獲物を狙うハンターの目のようだ。公務員は将来安定と言われているのは、今も昔も変わらない。元クラスメイトの彼女たちは接点を持ちたいのだろう。ただ彼の横には邪魔な私がいますが。
幹事が飲み物を聞いてきたので、私はいつもの癖で烏龍茶を頼むと長野君に笑われた。
「高山さんって、お酒飲めないの?」
「ううん、多少なら飲めるけど」
「折角だから最初はお酒にしなよ、アルコールで話も膨らむよ」
それもそうだと思い、私はサワーに変更をしてみんなと乾杯をした。
お酒も進み改めて周りを見渡すと元彼の姿は無かった。今回は不参加のようで安心していると、長野君の携帯の待受にメッセージが表示された。見るつもりは無かったけど、目に入ってしまった。
【同窓会は間に合わない。後で飲み直そう】
その送信者の名前を見て私は泣きそうになった。名前には【小野】の文字があった。長野君と仲の良い小野くんは彼しかいない。それは私の元彼だ。
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