虹色の約束。時を越えて~

yume

文字の大きさ
上 下
18 / 111

捜索

しおりを挟む
柚月(廉、まだ来ない。何処に・・・、あ。)

「桂太先生の授業の時は姿を消す」
あの時、廉が桂太先生に向けて放った言葉・・・。

柚月(もしかしてっ・・・。)
柚月「あ、あれ。い、痛い痛い。」
まこ「柚月、どうしたの?」
柚月「あー痛い。うん、間違いない。痛いものは痛い。」
桂太「古川さん、どうしたの?」

大根役者もいいとこ。
バレバレの演技なのにも関わらず、まこも桂太先生も・・・、そしてクラスの全員がド下手な演技に注目してくれていた。
いや、ド下手過ぎて注目していたのかもしれない。

柚月「ちょっとお腹が・・・。」
桂太「大丈夫?」
柚月「いえ、全然大丈夫とは思えません。漏れそうです。」
桂太「そ、そうなの?」
柚月「はい。原因はきっと朝にフルーツグラノーラに牛乳をかけて食べたのですが、それがあまりにも美味しくておかわりを・・・」
桂太「分かったから漏れる前にトイレに行っておいで(笑)」
柚月「はい。是非そうさせて頂きます。行って参ります。」
まこ「演技下手過ぎる・・・。」

桂太先生の苦笑い。まこの呆れ顔。そしてクラス全員からの
「こいつ頭大丈夫か?」という熱い眼差し・・・。
でも、今は恥ずかしがってなんかいられない。

柚月「そうだ。廉に電話してみよう。」

あたしはブレザーの中から携帯電話を取り出し、廉に電話を掛けた。

柚月「廉、出ないな・・・。LINE送ってみよう。」

「今何処にいるの?」
送信すると、すぐに既読マークが付いた。なのに、いくら待てども返信が返って来ない。

柚月「廉が行きそうな場所・・・、あ。分かった!!」

鈍臭いなりの全力疾走。昨日とは違い、今日は雲一つ無い快晴。
あたしは、足を止める事なく、ひたすらあの場所へと走り続けた。

柚月「つ、疲れた・・・。」

昨日も来た公園に到着。
今日は天気が良いからか、ブランコやシーソーで遊ぶ小さな子供達と、それを微笑ましく見守る母親の姿があった。
あたしはというと、辺りを見渡すが何処にも廉の姿が見当たらない。

柚月「ここじゃないのかな。鞄はあったから帰る事はなさそうだし・・・。うわっ!」

まさに運動不足という名の呪い。
走り続けたあたしの足は、何もないアスファルトの上で崩れ落ちてしまった。

柚月「痛い・・・、今度は本気で痛い。」

仮病まで使って授業をサボったのに、全然廉を行き場所が分からない。見つけられない。

柚月「もう、情けなさ過ぎて泣けてくる・・・。」

その時、あたしのブレザーから着信音が鳴り響いた。
「松澤廉」
そう、画面に表示された名前。あたしは慌てて電話に出た。

柚月「廉!?い、今何処にいるの?」
廉 「お前の後ろ。」
柚月「え?」

ゆっくり顔を後ろに向け、視線を上に辿って行くとそこには苦笑いをしている廉の姿があった。
良く晴れた空に似合う、穏やかな廉の顔。
廉はあたしの腕を優しく支えながら、ゆっくりと立ち上がらせてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている

ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。 夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。 そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。 主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...