12 / 111
心の雨
しおりを挟む
桂太先生と廉の仲裁に入るかの様に、晴れていた空は急に雲行きが怪しくなり、小雨が降り出した。桂太先生は、まだ廉に何かを伝えたそうであったが、廉はあたしの腕を掴み、足早に公園を後にした。
途中、何度も桂太先生の方を振り返ったが、先生は激しくなりつつある雨の中、目を閉じ、ただ空を見上げていた。
「サポートする」だなんて、偉そうに言っては見たものの掴まれた廉の手を振り解く事すら出来ない自分が、とても情けなく感じた。
桂太先生への恋が本物であったなら、今すぐにでもこの手を振り解く事だって出来るはず。
でも、微かに震えている廉の手を離すのが、どうしても出来なかった。したくなかったのだと思う。
それに。
雨に紛れ、廉が泣いている様な気がしたから・・・。放っておく事が出来なかった。
結芽「おかえ・・・り。うわぁ、派手に濡れてるじゃん!どうしたの?何かの修行!?」
柚月「結芽さん、こんにちは・・・。」
結芽「あれ?柚月ちゃん!?何か帰ってくるの早くない?ねぇ、早いよね?」
廉 「いいからタオル。」
ついさっき、あんな事があったばかりでの結芽さんのいつもと変わらぬ笑顔。
考えてみると、結芽さんの悲しい表情や、泣いている姿を今まで一度も見た事が無い事に気付いた。
結芽「はい、タオル。ねぇ柚月ちゃん、もしかしてサボり?」
廉 「何で俺に聞かないんだよっ」
結芽「あ、いたの?おかえり。」
廉 「中年反抗期かっつーの!」
いつもと変わらない会話のやり取り。
親子なのに、友達の様な関係が本当に羨ましい。
結芽「柚月ちゃん、あたしの服貸そうか?風邪ひいちゃうよ?」
廉 「加齢臭移るぞ、柚月。」
結芽「今夜がカレーなだけに?」
廉 「華麗な勢いで滑ったな、残念無念また来年。」
結芽「相変わらず口が達者で腹立つなぁ。」
廉 「柚月、行くぞ。」
結芽「あ、待って柚月ちゃん!!」
そう言った結芽さんは、自分の部屋から部屋着をあたしに手渡してくれた。
いつも明るくて優しい結芽さん。きっと、廉のお父さんもとてもいい人だったのだろう。
柚月「ありがとうございます。」
廉 「行くぞ。」
結芽「あ、待って!!」
廉 「今度は何だよ!?」
結芽「柚月ちゃんにゴム渡さないと!」
廉 「ば、ばかじゃねぇの!?俺と柚月はそんな事しねぇし!!」
結芽「何言ってんの?この変態息子。柚月ちゃん、これあげる。」
結芽さんから貰ったのは、角度によって色々な色に変わるシュシュ。
柚月「可愛い・・・。これ、結芽さんが作ったんですか?」
結芽「うん。何か趣味を見つけようと思ってたらこれにたどり着いちゃった!虹色みたいで綺麗でしょ?」
廉 「あ、そのゴム・・・。」
結芽「何想像してんだ?柚月ちゃん、この男、ムッツリだから気をつけてね!
結芽さんがいるだけで、こんなにも雰囲気が明るくなる。
廉も昔は同じ様に、沢山笑ってバカばっかり言っていたのに・・・。
最近は本当に素っ気なくなってしまった。
柚月「うわ。部屋汚い。」
廉 「男ならではの醍醐味だ。」
いつぶりだろう?最近は玄関までしか入らなかったから、何だかとても懐かしく感じる。部屋の家具や配置は昔と殆ど変わらない。
ただ一つだけ変わったと言えば、あたしの心が何故かソワソワしている事だった。
途中、何度も桂太先生の方を振り返ったが、先生は激しくなりつつある雨の中、目を閉じ、ただ空を見上げていた。
「サポートする」だなんて、偉そうに言っては見たものの掴まれた廉の手を振り解く事すら出来ない自分が、とても情けなく感じた。
桂太先生への恋が本物であったなら、今すぐにでもこの手を振り解く事だって出来るはず。
でも、微かに震えている廉の手を離すのが、どうしても出来なかった。したくなかったのだと思う。
それに。
雨に紛れ、廉が泣いている様な気がしたから・・・。放っておく事が出来なかった。
結芽「おかえ・・・り。うわぁ、派手に濡れてるじゃん!どうしたの?何かの修行!?」
柚月「結芽さん、こんにちは・・・。」
結芽「あれ?柚月ちゃん!?何か帰ってくるの早くない?ねぇ、早いよね?」
廉 「いいからタオル。」
ついさっき、あんな事があったばかりでの結芽さんのいつもと変わらぬ笑顔。
考えてみると、結芽さんの悲しい表情や、泣いている姿を今まで一度も見た事が無い事に気付いた。
結芽「はい、タオル。ねぇ柚月ちゃん、もしかしてサボり?」
廉 「何で俺に聞かないんだよっ」
結芽「あ、いたの?おかえり。」
廉 「中年反抗期かっつーの!」
いつもと変わらない会話のやり取り。
親子なのに、友達の様な関係が本当に羨ましい。
結芽「柚月ちゃん、あたしの服貸そうか?風邪ひいちゃうよ?」
廉 「加齢臭移るぞ、柚月。」
結芽「今夜がカレーなだけに?」
廉 「華麗な勢いで滑ったな、残念無念また来年。」
結芽「相変わらず口が達者で腹立つなぁ。」
廉 「柚月、行くぞ。」
結芽「あ、待って柚月ちゃん!!」
そう言った結芽さんは、自分の部屋から部屋着をあたしに手渡してくれた。
いつも明るくて優しい結芽さん。きっと、廉のお父さんもとてもいい人だったのだろう。
柚月「ありがとうございます。」
廉 「行くぞ。」
結芽「あ、待って!!」
廉 「今度は何だよ!?」
結芽「柚月ちゃんにゴム渡さないと!」
廉 「ば、ばかじゃねぇの!?俺と柚月はそんな事しねぇし!!」
結芽「何言ってんの?この変態息子。柚月ちゃん、これあげる。」
結芽さんから貰ったのは、角度によって色々な色に変わるシュシュ。
柚月「可愛い・・・。これ、結芽さんが作ったんですか?」
結芽「うん。何か趣味を見つけようと思ってたらこれにたどり着いちゃった!虹色みたいで綺麗でしょ?」
廉 「あ、そのゴム・・・。」
結芽「何想像してんだ?柚月ちゃん、この男、ムッツリだから気をつけてね!
結芽さんがいるだけで、こんなにも雰囲気が明るくなる。
廉も昔は同じ様に、沢山笑ってバカばっかり言っていたのに・・・。
最近は本当に素っ気なくなってしまった。
柚月「うわ。部屋汚い。」
廉 「男ならではの醍醐味だ。」
いつぶりだろう?最近は玄関までしか入らなかったから、何だかとても懐かしく感じる。部屋の家具や配置は昔と殆ど変わらない。
ただ一つだけ変わったと言えば、あたしの心が何故かソワソワしている事だった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている
ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。
夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。
そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。
主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる