30 / 33
番外編2
懐かしの制服で
しおりを挟む
大学4年の秋。
就職活動も一通り終え、残るは卒業研究との戦いである。
しかし、休息も必要だという和人の意見(ワガママ)により、琢磨と清香、優花が集められた。
『遊びにいきたい』
『研究しなよ』
『休息も必要だよ、桐川さん』
『私も研究室こもってたから、1日なら大丈夫かも!』
『東城さん、分かってるー!琢磨は日程開けてな。』
『まさかの選択権がない。』
そんなこんなでやって来ました遊園地。高校生や大学生で溢れ、アトラクションや食べ歩きなど回るところは盛りだくさんである。
ただし、清香はブルーな気持ちだった。
「いやー、桐川さんの制服ってそんな感じのだったんだ!」
「くっ……私もなんちゃって制服が良かった…20歳超えての制服…コ…スプレやん……うっ……」
「貴重な制服持ちなんだから、活用しないと!」
「清香ちゃんの制服、青春してましたって感じだね!」
「優花ちゃんはなんちゃって制服だからいいよ…知り合いに鉢合わせたら……恥ずかしくて死ぬ……後輩に見られても死ぬ……」
そう、今回は制服で遊ぼうがテーマなのである。
和人が言い出し、それから制服を着たことがなかった3人がやりたいた騒いで、なんちゃって制服ならみんなと同じでごまかせるかなと思っていた。
しかし、清香に言われたのは高校の制服があるなら着てこいとのことだった。
着てこないなら全て奢れと言われて、泣く泣く実家に連絡して送ってもらったのである。
優花は白のシャツに白のセーターを合わせ、胸元には赤いリボンを結んで、チェックのスカートを合わせており、可愛らしい。
琢磨と和人はブレザーのように組み合わせるため、Yシャツにとネクタイ、その上からグレーのセーターを着て、紺色のズボンで合わせている。
清香はまだ暑さが残るということで、中間服として使用していた学校指定の紺色のベストを出してきて、それに白シャツと紺色のプリーツスカートである。
ええ、一人だけ地味なんです……。リボンとか何もないし……サイズが入ったことは良かったけどさ……。
「とりあえず、長時間並んでるアトラクションを混ぜながら回ろうよ!」
「そうしよー!」
盛り上がる3人を見てがっくりとしながらも後ろを着いていく。
やっぱりなんちゃって制服が良かったかもしれない。高校の時は何も思わなかったが、本当に地味なのである。しかも私の顔は平凡顔。
高校生の時にはしなかった校則違反のスカートを少し曲げて短くしてみるも、やっぱり地味。
もう……こうなったらアトラクションで叫ぶしかない!
そして、アニメキャラのコラボアトラクションなどもあったため、そこにいったり、ジェットコースターに乗ったりしながら遊び回った。
途中でお手洗いに行ったときに、優花が笑いながらとある提案をしてきたために、いいねと乗ってみた。
琢磨と和人を発見すると、優花と顔を見合わせて笑う。
優花がここは本物の制服の威力見せてやれとGoサインを出してきたため、頷く。
「お待たせしました。相本先輩、佐伯先輩!」
「ゴホッ!!!」
「桐川さん?てか、おい、琢磨、むせるな!」
「イエーイ!成功!」
私と優花はハイタッチする。
本物の制服で年上ダメージ与えてやったわ。1個しか年齢違わないけど。
ま、高校の時は普通に先輩呼びしてたから違和感はない。
「先輩って……」
「だって、2人とも私と優花ちゃんより年上じゃん。」
「そうだけどさ……」
「普通に先輩呼びとかもしてたでしょ?」
「まあ……」
「どうだ、本物の制服の威力はスゴかったか!これで私は当時も先輩呼びしてたからな!」
もう、開き直った私は強いのだ。
年上二人は遠い目をしていた。そんなに年上なのが気になるのか。なんかごめん。
「なんかさ……真面目な制服で先輩呼びってスゴいんだな……威力。」
「おー、まあ、俺たちの高校は女の子派手だったり、地味でもあんな制服の感じじゃないからな。」
「制服ってヤバいな。」
「琢磨、落ち着け。お前、なんか性癖の扉が開きそうになってる。」
そんな会話を後ろでされてるとは思わず、優花と次のアトラクション選びのためにマップを開く。
「清香ちゃん!今、ハロウィン期間だって!」
「え?」
「このお化け屋敷いこ!」
「待って待って?お化け屋敷?え、これ、ゾンビとかも?」
「日本のじゃないからね!いこいこ!佐伯くん、相本くん、次これー!」
「えー!?」
嫌がる私を引きずりながら入口までドナドナ連行されました。
私はゲームでならゾンビは殺せるから大丈夫なのだが、リアルでとなるとどうしようもないから苦手なのである。
生身で逃げろとか無茶言う。
お化け屋敷の内容はサバゲーだが、主に逃げるタイプだった。
成功率低すぎませんか?
私はひたすら謝り、スタート寸前で離脱して出口辺りに待機する。
危なかったわ……ドリンクでも買いに行って待つしかないな。
近くの売店でドリンクを買い、出口付近のテーブルに一息つく。
サバゲー兼逃走ゲームのため、勝利すれば早く出れるようだ。
まあ、まだまだかかるだろうしな。
画面があるのと無いのでは大きく違うのである。
2次元だから耐えられるものって多いんですよ!
ズゾゾと音をたてながらストローでドリンクを飲んでいると、同じテーブルに男性が腰かけてきた。
何だ。こっちは人を待ってるんだ。
勝手に座るとは失礼な。
他にもテーブル空いてるようなので、休憩ならそちらにお行きください。
「ねえ、1人?」
狙いはこっちかー!我、平凡なお顔ぞ?
そこ辺りにキレイなお姉さま方おるやんけ!
「制服着てるけど、高校生?」
違うんです、これ、コスプレなんです。イタいコスプレなんです。
そんな心の声は正直に口から出ずに、とりあえず曖昧に笑う。
「あの、人を待ってて……そこのアトラクションなので、もうすぐか来るかと……」
「あー、あれこわいもんね。こわくて入れなかったんだ?」
苦手なものは仕方ないだろ!うるさい!去るのじゃ!森へお帰り!
「心配していただくのはありがたいんですけど、そろそろ……」
「えー、もっと一緒に話そうよ!何ならその連れの子も一緒にさー!」
私の連れが全て女の子だと思われている。おう……男もいるけど……あー、頼っていいのか?いや、優花ちゃんは守らねばならない。
かわいい女の子は正義なんだ。戻ってくる前になんとかお帰り願おう。
「いや、私たちよりも他の方との方が楽しいと思いますし、お構い無く…」
「えー、つれないなぁ。いいじゃん!」
バン!
テーブルを思いっきり叩かれて、私は思わず肩がビクッとなった。
手の先を見ると笑顔の琢磨がいた。
「コイツ、俺の連れなので。離れてもらえます?」
「チッ」
あ、鮮やかー!アニメの小物みたいに散っていったぞ!すご!
「さ、さすがー!ありがとう!助かったわ!」
パチパチと拍手すると、そのまま目の前に座られた。
顔が珍しく不機嫌である。どうした。
まさか、ゾンビとのサバゲー負けて追い出されちゃったのか?
でも、勝った方が早く出れるから勝ったのか?
「ああいうのよくあるの?」
「いやいや、初めてだよ。ビックリしたわ。琢磨のお陰です。この通り。」
拝んで見せるも反応がない。困ったな……。
「おーい!清香ちゃーん!」
「あっ!優花ちゃん!」
戻ってきた私の心の癒し!和人も後ろにいる。
「えへへ、負けちゃった。」
「ゾンビ強かったわ。最後捕まっちゃったからな。出口とか種明かしされてなるほどーってなった。」
「そうなんだ。本格的だったんだね。」
行かなくて良かった、本当に。たぶん大泣きしてた。
いや、あの絡んできた人は解せないが。
「琢磨なんて1位抜けしてさっさと出ていくもんだから。」
「スゴかったよね、相本くん。」
「いや、なんか出来ただけだよ。運が良かったのかも。」
あ、普通になった。良かった。
よし、こわいのはこれでおしまいだし、閉園まで遊ぶぞー!
呑気に思ってました。ハロウィンなめたらあかんかった。
何で夜になったら、ストリートダンスでゾンビに扮したキャストさんたちうろうろしてるの……しかも定期的に音楽なってダンスするのはいいけど、周りをめっちゃ脅かしていくのじゃないか。何それこわい。
「ゾンビダンス、結構本格的らしくてさ、ここのとこ気になるんだよね!」
「えっ?」
「俺もそこ気になってた!」
「いいんじゃない?」
え?行くんです?途中にもゾンビたくさんじゃないか?本当?手元に銃とかないよ?
あ、はい、また連行パターンですね。
遊園地の中も暗くなり始めたため、優花と手を繋ぎながら歩く。
ゾンビ、お前が脅かしてくるのは今、お呼びじゃないんだ。
フリじゃないからな!
「お~」
道を歩くと突然、人外の動きをしてゾンビが脅かしてくる。
「ひぇ!」
唐突に脅かしてきたゾンビに驚いて思わず優花にしがみつく。
「清香ちゃん、これは人だよー大丈夫、大丈夫。」
「おおん。」
だって、手元に武器がないからどうしようもないんだよ。
何とかゾンビのダンスステージにやってきたが、私は疲れました。こわいのを隠しても驚いてしまうのは仕方がないのである。
でも、確かにダンスキレッキレで上手だな。
写真撮っとこと優花と2人で携帯を構える。
曲のテンポが上がるとゾンビたちがステージから降りてパフォーマンスをし始めた。
あ、ちょっと、琢磨と和人とゾンビを挟んで離れちゃったんですけど!
慌てて2人のそばに行こうにもゾンビパレード真っ最中。
2人もこちらを見て待ってなさいと身ぶり手振りで伝えてきたため、大人しく終わるのを待つ。
こうなったら、優花と2人で写真撮りまくるしかないわ。
ゾンビから脅かされないように、3歩ぐらい下がったところで2人でいると肩を叩かれた。うん?知り合いか?
「さっきの子じゃん!他の女の子もいる!」
さっき、テーブルに座ってきたお前か!
お前もお呼びじゃないんだわ!チャラ男の森へお帰り!
「え、まだ遊んでるんだ!」
「いや、あっちにいて…そのダンスで離れちゃったから終わったら合流するんで…」
「えー、俺たちとも遊ぼうよ!」
「いや、連れがいるので…」
お前、本当にしつこいな!見た目が地味だからと調子に乗ってくれて!高校の時に体育の授業で教わった大外刈すんぞ?いや、大事になるから、とりあえず脛蹴って逃げるか?でも、近くに優花もいるから連れて逃げるには素早くが命だわ。
「こっち行こうよー!」
ちょっと、私の腕を掴むんじゃありません!あなたと私は初対面!優花の腕をつかんでたらお前の命は私がどうにかするけど!
「ちょっと離してください。」
「清香ちゃんの腕、離してください!投げ飛ばしますよ!」
優花も反撃する。え?投げ飛ばす?
「しつこいですよ?」
私の腕をつかんでいた男の手を握り、止めに入ってきたのは琢磨だった。
「またお前かよ!」
「ええ。彼女の腕離してもらえます?」
琢磨が真顔でさらに力を強めて男の腕を握っているようだ。
「痛え!分かったよ!」
勢いをつけて捕まれていた腕が離された。
おー、おかえり、私の腕。ちょっと私の腕も痛いわ。
ちっくしょう。
優花が私のつかまれた腕を気遣ってくれる。おお、私の癒しよ。
しかし、2回目ともなると、やはり見た目が地味な制服だから、なめられているということだろうか。
田舎の高校出身で悪かったな!
私が腕をさすっていると、琢磨が私の前に立ち、絡んでいた男を捻り上げていた。
はい?いや、いつの間に?
「琢磨、早いぞー!あー……」
和人はあーあという顔をして、私に絡んできた男に近付いて何か耳にボソボソと呟いたようだった。
男が顔を真っ青にして逃げていった。本当に漫画に出てくる小物みたいだった。
「清香ちゃん、大丈夫?」
「うん、心配してくれてありがとう!」
優花ちゃん、癒しだわ……とても癒されるわ……。
泣きそうなお顔をしないで、かわいいお顔が台無しだわ。かわいいは正義だもの。
投げ飛ばす発言は聞かなかったことにするわ。
和人が琢磨の肩に手を置き、何かを話している。
琢磨はそれに何かを返しているようだ。
和人が琢磨の肩を叩くとこちらに振り返った。
「桐川さん、東城さん、ダメでしょ?知らない人についていったらー!」
「ふ、不可抗力だよ!でも、助かった……相本くん、佐伯くん、ありがとう。」
琢磨が振り替えって微笑む。いつもの笑顔を浮かべて……あれ?
「何ともなくて良かったよ。」
それから遊園地を出て帰ることとなり、前方に優花と和人、後方に私と琢磨が並んで歩いているが、後方が無言なんです。助けてください。
「あ、相本くん?」
「何?」
いつもの笑顔のはずなのだが、なんか堅い。うーん、どうしたものか。よし、あれだ!
「相本先輩、助けてくれてありがとうございました!とってもカッコ良くて素敵でしたよ?」
制服パワーで押しきったるわ。がんばれ、私の制服の威力。
琢磨が顔をポカンとさせた後に上を向いた。
「ここでかよ……」
「うん?どうしたの?おーい?」
「あー、何でもない。こちらこそありがとう。」
「うん?」
何か噛み合っている気がしないが、いつもの琢磨に戻ったので良しとしよう。
今度はハロウィン避けて遊園地行くのが希望です。
~おまけ~
琢磨は清香の腕をつかんでいた男をそのまま捻りあげた。
清香は後ろで心配そうな目をしながら掴まれた腕を擦っている。
かなり強く掴まれたことが分かり、琢磨は怒りを感じた。
「はい。琢磨、そこまで。お前らしくないぞ。」
「うるさい、和人。で?」
「あー、○○○大学の宇津木春斗さん?確か、経済学部3年、ダンスサークルで同じサークルに一個下の彼女がいて、実家は△△県だね?」
「なっ!」
男は自分の名前や正体を言い当てられて驚く。
いつの間にそこまで詳細な個人情報を調べられていたのか見当はつかない。
男の様子を見て和人が愉しげに笑う。
「俺は調べただけ。でも、コイツはもっと容赦ないよ?退学処分は必ずするだろうね。あと、ご家族の勤務先も心配だ?」
「そうだな。さっさと消えればまだ見逃せるかもしれないな。」
男は青い顔をして逃げていった。
「途中で頼んできたのは予感があったからか?」
「何となく、な。事を荒立てれば桐川さんが気にするだろうから少しだけにしておくよ。」
「お前の少しは少しじゃないからなー程々にしとけよ?」
肩を2回ほど軽く叩いて清香の方へと和人は振り向く。
おそらく、琢磨の気持ちが明確じゃない限り、まだ少しの程度で済むだろう。
あーあ、桐川さん、琢磨を頼むよ。
就職活動も一通り終え、残るは卒業研究との戦いである。
しかし、休息も必要だという和人の意見(ワガママ)により、琢磨と清香、優花が集められた。
『遊びにいきたい』
『研究しなよ』
『休息も必要だよ、桐川さん』
『私も研究室こもってたから、1日なら大丈夫かも!』
『東城さん、分かってるー!琢磨は日程開けてな。』
『まさかの選択権がない。』
そんなこんなでやって来ました遊園地。高校生や大学生で溢れ、アトラクションや食べ歩きなど回るところは盛りだくさんである。
ただし、清香はブルーな気持ちだった。
「いやー、桐川さんの制服ってそんな感じのだったんだ!」
「くっ……私もなんちゃって制服が良かった…20歳超えての制服…コ…スプレやん……うっ……」
「貴重な制服持ちなんだから、活用しないと!」
「清香ちゃんの制服、青春してましたって感じだね!」
「優花ちゃんはなんちゃって制服だからいいよ…知り合いに鉢合わせたら……恥ずかしくて死ぬ……後輩に見られても死ぬ……」
そう、今回は制服で遊ぼうがテーマなのである。
和人が言い出し、それから制服を着たことがなかった3人がやりたいた騒いで、なんちゃって制服ならみんなと同じでごまかせるかなと思っていた。
しかし、清香に言われたのは高校の制服があるなら着てこいとのことだった。
着てこないなら全て奢れと言われて、泣く泣く実家に連絡して送ってもらったのである。
優花は白のシャツに白のセーターを合わせ、胸元には赤いリボンを結んで、チェックのスカートを合わせており、可愛らしい。
琢磨と和人はブレザーのように組み合わせるため、Yシャツにとネクタイ、その上からグレーのセーターを着て、紺色のズボンで合わせている。
清香はまだ暑さが残るということで、中間服として使用していた学校指定の紺色のベストを出してきて、それに白シャツと紺色のプリーツスカートである。
ええ、一人だけ地味なんです……。リボンとか何もないし……サイズが入ったことは良かったけどさ……。
「とりあえず、長時間並んでるアトラクションを混ぜながら回ろうよ!」
「そうしよー!」
盛り上がる3人を見てがっくりとしながらも後ろを着いていく。
やっぱりなんちゃって制服が良かったかもしれない。高校の時は何も思わなかったが、本当に地味なのである。しかも私の顔は平凡顔。
高校生の時にはしなかった校則違反のスカートを少し曲げて短くしてみるも、やっぱり地味。
もう……こうなったらアトラクションで叫ぶしかない!
そして、アニメキャラのコラボアトラクションなどもあったため、そこにいったり、ジェットコースターに乗ったりしながら遊び回った。
途中でお手洗いに行ったときに、優花が笑いながらとある提案をしてきたために、いいねと乗ってみた。
琢磨と和人を発見すると、優花と顔を見合わせて笑う。
優花がここは本物の制服の威力見せてやれとGoサインを出してきたため、頷く。
「お待たせしました。相本先輩、佐伯先輩!」
「ゴホッ!!!」
「桐川さん?てか、おい、琢磨、むせるな!」
「イエーイ!成功!」
私と優花はハイタッチする。
本物の制服で年上ダメージ与えてやったわ。1個しか年齢違わないけど。
ま、高校の時は普通に先輩呼びしてたから違和感はない。
「先輩って……」
「だって、2人とも私と優花ちゃんより年上じゃん。」
「そうだけどさ……」
「普通に先輩呼びとかもしてたでしょ?」
「まあ……」
「どうだ、本物の制服の威力はスゴかったか!これで私は当時も先輩呼びしてたからな!」
もう、開き直った私は強いのだ。
年上二人は遠い目をしていた。そんなに年上なのが気になるのか。なんかごめん。
「なんかさ……真面目な制服で先輩呼びってスゴいんだな……威力。」
「おー、まあ、俺たちの高校は女の子派手だったり、地味でもあんな制服の感じじゃないからな。」
「制服ってヤバいな。」
「琢磨、落ち着け。お前、なんか性癖の扉が開きそうになってる。」
そんな会話を後ろでされてるとは思わず、優花と次のアトラクション選びのためにマップを開く。
「清香ちゃん!今、ハロウィン期間だって!」
「え?」
「このお化け屋敷いこ!」
「待って待って?お化け屋敷?え、これ、ゾンビとかも?」
「日本のじゃないからね!いこいこ!佐伯くん、相本くん、次これー!」
「えー!?」
嫌がる私を引きずりながら入口までドナドナ連行されました。
私はゲームでならゾンビは殺せるから大丈夫なのだが、リアルでとなるとどうしようもないから苦手なのである。
生身で逃げろとか無茶言う。
お化け屋敷の内容はサバゲーだが、主に逃げるタイプだった。
成功率低すぎませんか?
私はひたすら謝り、スタート寸前で離脱して出口辺りに待機する。
危なかったわ……ドリンクでも買いに行って待つしかないな。
近くの売店でドリンクを買い、出口付近のテーブルに一息つく。
サバゲー兼逃走ゲームのため、勝利すれば早く出れるようだ。
まあ、まだまだかかるだろうしな。
画面があるのと無いのでは大きく違うのである。
2次元だから耐えられるものって多いんですよ!
ズゾゾと音をたてながらストローでドリンクを飲んでいると、同じテーブルに男性が腰かけてきた。
何だ。こっちは人を待ってるんだ。
勝手に座るとは失礼な。
他にもテーブル空いてるようなので、休憩ならそちらにお行きください。
「ねえ、1人?」
狙いはこっちかー!我、平凡なお顔ぞ?
そこ辺りにキレイなお姉さま方おるやんけ!
「制服着てるけど、高校生?」
違うんです、これ、コスプレなんです。イタいコスプレなんです。
そんな心の声は正直に口から出ずに、とりあえず曖昧に笑う。
「あの、人を待ってて……そこのアトラクションなので、もうすぐか来るかと……」
「あー、あれこわいもんね。こわくて入れなかったんだ?」
苦手なものは仕方ないだろ!うるさい!去るのじゃ!森へお帰り!
「心配していただくのはありがたいんですけど、そろそろ……」
「えー、もっと一緒に話そうよ!何ならその連れの子も一緒にさー!」
私の連れが全て女の子だと思われている。おう……男もいるけど……あー、頼っていいのか?いや、優花ちゃんは守らねばならない。
かわいい女の子は正義なんだ。戻ってくる前になんとかお帰り願おう。
「いや、私たちよりも他の方との方が楽しいと思いますし、お構い無く…」
「えー、つれないなぁ。いいじゃん!」
バン!
テーブルを思いっきり叩かれて、私は思わず肩がビクッとなった。
手の先を見ると笑顔の琢磨がいた。
「コイツ、俺の連れなので。離れてもらえます?」
「チッ」
あ、鮮やかー!アニメの小物みたいに散っていったぞ!すご!
「さ、さすがー!ありがとう!助かったわ!」
パチパチと拍手すると、そのまま目の前に座られた。
顔が珍しく不機嫌である。どうした。
まさか、ゾンビとのサバゲー負けて追い出されちゃったのか?
でも、勝った方が早く出れるから勝ったのか?
「ああいうのよくあるの?」
「いやいや、初めてだよ。ビックリしたわ。琢磨のお陰です。この通り。」
拝んで見せるも反応がない。困ったな……。
「おーい!清香ちゃーん!」
「あっ!優花ちゃん!」
戻ってきた私の心の癒し!和人も後ろにいる。
「えへへ、負けちゃった。」
「ゾンビ強かったわ。最後捕まっちゃったからな。出口とか種明かしされてなるほどーってなった。」
「そうなんだ。本格的だったんだね。」
行かなくて良かった、本当に。たぶん大泣きしてた。
いや、あの絡んできた人は解せないが。
「琢磨なんて1位抜けしてさっさと出ていくもんだから。」
「スゴかったよね、相本くん。」
「いや、なんか出来ただけだよ。運が良かったのかも。」
あ、普通になった。良かった。
よし、こわいのはこれでおしまいだし、閉園まで遊ぶぞー!
呑気に思ってました。ハロウィンなめたらあかんかった。
何で夜になったら、ストリートダンスでゾンビに扮したキャストさんたちうろうろしてるの……しかも定期的に音楽なってダンスするのはいいけど、周りをめっちゃ脅かしていくのじゃないか。何それこわい。
「ゾンビダンス、結構本格的らしくてさ、ここのとこ気になるんだよね!」
「えっ?」
「俺もそこ気になってた!」
「いいんじゃない?」
え?行くんです?途中にもゾンビたくさんじゃないか?本当?手元に銃とかないよ?
あ、はい、また連行パターンですね。
遊園地の中も暗くなり始めたため、優花と手を繋ぎながら歩く。
ゾンビ、お前が脅かしてくるのは今、お呼びじゃないんだ。
フリじゃないからな!
「お~」
道を歩くと突然、人外の動きをしてゾンビが脅かしてくる。
「ひぇ!」
唐突に脅かしてきたゾンビに驚いて思わず優花にしがみつく。
「清香ちゃん、これは人だよー大丈夫、大丈夫。」
「おおん。」
だって、手元に武器がないからどうしようもないんだよ。
何とかゾンビのダンスステージにやってきたが、私は疲れました。こわいのを隠しても驚いてしまうのは仕方がないのである。
でも、確かにダンスキレッキレで上手だな。
写真撮っとこと優花と2人で携帯を構える。
曲のテンポが上がるとゾンビたちがステージから降りてパフォーマンスをし始めた。
あ、ちょっと、琢磨と和人とゾンビを挟んで離れちゃったんですけど!
慌てて2人のそばに行こうにもゾンビパレード真っ最中。
2人もこちらを見て待ってなさいと身ぶり手振りで伝えてきたため、大人しく終わるのを待つ。
こうなったら、優花と2人で写真撮りまくるしかないわ。
ゾンビから脅かされないように、3歩ぐらい下がったところで2人でいると肩を叩かれた。うん?知り合いか?
「さっきの子じゃん!他の女の子もいる!」
さっき、テーブルに座ってきたお前か!
お前もお呼びじゃないんだわ!チャラ男の森へお帰り!
「え、まだ遊んでるんだ!」
「いや、あっちにいて…そのダンスで離れちゃったから終わったら合流するんで…」
「えー、俺たちとも遊ぼうよ!」
「いや、連れがいるので…」
お前、本当にしつこいな!見た目が地味だからと調子に乗ってくれて!高校の時に体育の授業で教わった大外刈すんぞ?いや、大事になるから、とりあえず脛蹴って逃げるか?でも、近くに優花もいるから連れて逃げるには素早くが命だわ。
「こっち行こうよー!」
ちょっと、私の腕を掴むんじゃありません!あなたと私は初対面!優花の腕をつかんでたらお前の命は私がどうにかするけど!
「ちょっと離してください。」
「清香ちゃんの腕、離してください!投げ飛ばしますよ!」
優花も反撃する。え?投げ飛ばす?
「しつこいですよ?」
私の腕をつかんでいた男の手を握り、止めに入ってきたのは琢磨だった。
「またお前かよ!」
「ええ。彼女の腕離してもらえます?」
琢磨が真顔でさらに力を強めて男の腕を握っているようだ。
「痛え!分かったよ!」
勢いをつけて捕まれていた腕が離された。
おー、おかえり、私の腕。ちょっと私の腕も痛いわ。
ちっくしょう。
優花が私のつかまれた腕を気遣ってくれる。おお、私の癒しよ。
しかし、2回目ともなると、やはり見た目が地味な制服だから、なめられているということだろうか。
田舎の高校出身で悪かったな!
私が腕をさすっていると、琢磨が私の前に立ち、絡んでいた男を捻り上げていた。
はい?いや、いつの間に?
「琢磨、早いぞー!あー……」
和人はあーあという顔をして、私に絡んできた男に近付いて何か耳にボソボソと呟いたようだった。
男が顔を真っ青にして逃げていった。本当に漫画に出てくる小物みたいだった。
「清香ちゃん、大丈夫?」
「うん、心配してくれてありがとう!」
優花ちゃん、癒しだわ……とても癒されるわ……。
泣きそうなお顔をしないで、かわいいお顔が台無しだわ。かわいいは正義だもの。
投げ飛ばす発言は聞かなかったことにするわ。
和人が琢磨の肩に手を置き、何かを話している。
琢磨はそれに何かを返しているようだ。
和人が琢磨の肩を叩くとこちらに振り返った。
「桐川さん、東城さん、ダメでしょ?知らない人についていったらー!」
「ふ、不可抗力だよ!でも、助かった……相本くん、佐伯くん、ありがとう。」
琢磨が振り替えって微笑む。いつもの笑顔を浮かべて……あれ?
「何ともなくて良かったよ。」
それから遊園地を出て帰ることとなり、前方に優花と和人、後方に私と琢磨が並んで歩いているが、後方が無言なんです。助けてください。
「あ、相本くん?」
「何?」
いつもの笑顔のはずなのだが、なんか堅い。うーん、どうしたものか。よし、あれだ!
「相本先輩、助けてくれてありがとうございました!とってもカッコ良くて素敵でしたよ?」
制服パワーで押しきったるわ。がんばれ、私の制服の威力。
琢磨が顔をポカンとさせた後に上を向いた。
「ここでかよ……」
「うん?どうしたの?おーい?」
「あー、何でもない。こちらこそありがとう。」
「うん?」
何か噛み合っている気がしないが、いつもの琢磨に戻ったので良しとしよう。
今度はハロウィン避けて遊園地行くのが希望です。
~おまけ~
琢磨は清香の腕をつかんでいた男をそのまま捻りあげた。
清香は後ろで心配そうな目をしながら掴まれた腕を擦っている。
かなり強く掴まれたことが分かり、琢磨は怒りを感じた。
「はい。琢磨、そこまで。お前らしくないぞ。」
「うるさい、和人。で?」
「あー、○○○大学の宇津木春斗さん?確か、経済学部3年、ダンスサークルで同じサークルに一個下の彼女がいて、実家は△△県だね?」
「なっ!」
男は自分の名前や正体を言い当てられて驚く。
いつの間にそこまで詳細な個人情報を調べられていたのか見当はつかない。
男の様子を見て和人が愉しげに笑う。
「俺は調べただけ。でも、コイツはもっと容赦ないよ?退学処分は必ずするだろうね。あと、ご家族の勤務先も心配だ?」
「そうだな。さっさと消えればまだ見逃せるかもしれないな。」
男は青い顔をして逃げていった。
「途中で頼んできたのは予感があったからか?」
「何となく、な。事を荒立てれば桐川さんが気にするだろうから少しだけにしておくよ。」
「お前の少しは少しじゃないからなー程々にしとけよ?」
肩を2回ほど軽く叩いて清香の方へと和人は振り向く。
おそらく、琢磨の気持ちが明確じゃない限り、まだ少しの程度で済むだろう。
あーあ、桐川さん、琢磨を頼むよ。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる