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番外編
校庭でマシュマロ焼いた
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清香たちがまだ大学生3年の時の冬。
和人が集まりたいとメッセージアプリで騒ぎ始め、琢磨の家で鍋をすることになった。
この時は優花以外が一人暮らしをしており、誰の家にて鍋をするかメッセージアプリでの激しい攻防を行い、琢磨が折れたのである。
琢磨の家は清香たちの他大学のキャンパスの近くであることから、少し離れたところにあったが、各自駅にて集合とのことで待ち合わせる。
駅の改札を抜けると琢磨と和人が既に立っていた。
「お待たせー!」
「おー!あとは東城さんだけだね。」
「冷蔵庫にあった鍋に使えそうなもの持ってきた。はい、大根とダシのパック、未開封の日本酒。」
エコバッグに入れて持ってきたので、それを見せる。
「なんで大根……」
琢磨が首をかしげて聞いてきた。
「この間、煮物作ろうとしたけど、今日使うならと思って待ってきた。」
「あー。桐川さん、自炊する人だったね。近所に住む僕には恵んでくれないけど。」
和人がふざけて言ってくる。
「気が向いたらするけど、自分の分だけよ。」
「貸して、持つから。」
「頼んだ。」
琢磨に食材とお酒を渡していると、改札から優花が出てきた。
「お待たせしました!お菓子は持ってきたよ。」
「さすが!じゃあ、食材買いにいこ!」
近所のスーパーで鍋の食材を買い、琢磨の家に向かう。
琢磨の部屋には炬燵があった。
「わー!炬燵やん。」
「あー、実家から送られてきてさ。」
「わーい!」
優花と私は炬燵にすぐさま入る。早い者勝ちである。
「ぬくぬくだぁ。」
「あったか……」
炬燵の力はすごい。あっという間に出れなくなっていると、琢磨がそれに気づいた。和人は爆笑している。
「あ、こら!食材の準備こっちに投げるつもりだろ!」
「男飯って気になるよね、優花ちゃん。」
「うん、料理男子って素敵だよね、清香ちゃん。」
2人で笑いながら言うと琢磨と和人は仕方がないとキッチンへと向かった。
「料理男子の写真とっとこ。」
「そうしよ。」
私と優花は料理している光景を写真に撮っていったが、どうやら手つきが危なげな男性陣である。
「清香ちゃん、ヤバそうなときよろしく。」
「えっ?私?優花ちゃんだって料理できるじゃん!」
「自炊している人としてない人では大きな差があるよ。」
そんなことを言っていると、キノコ類は処理し終わったようだが、野菜を切る手つきが本当に危ない。
思わず立ち上がってキッチンへと向かう。
「だ、大丈夫?」
「白菜って……どこまで葉は取ればいいんだろ……あと、芯。」
「マジか……包丁貸して。」
「ごめん……」
琢磨から包丁を受けとると、白菜や大根、ネギなど切っていく。
私の手元を見ながら切り終わった食材を皿に盛っていく琢磨。
「さては自炊してないな?」
「簡単なのしかしてないんだよ。」
「ふーん?」
私もそんなに自炊はしてないが、これは本当に簡単な男飯で生活してるんだろうなと思った。
コンビニ飯とかしてるんじゃないだろうか。
「お酒開けまーす!」
「俺も飲むー!」
和人と優花が炬燵で先に缶チューハイを開け始める。
「あ!お酒!」
「はい、どっち?」
こっちはまだ鍋の食材の下準備だというのに先越された。
そのとき、琢磨が桃とミカンの缶チューハイを差し出してきた。
どっちも好みだったが、桃の缶チューハイを指差すとそのまま片手で開けて渡された。
片手で缶のプルタブ引っ掛けて開けるとかさぁ……性癖に刺さる。
「はい。」
「本当にそういうとこさー……」
「なに?」
「なんでもない。」
琢磨はミカンの缶チューハイを飲みながら、作業を続ける。
そういえば、琢磨も甘党だったな……ミカン選んでなかったら、桃飲んでたのか。それはそれで……。
私も缶チューハイ飲みながら調理を進めていった。
さて、準備も終わり、鍋タイムである。
お酒を飲みながら、鍋をつつくとか楽しい時間でしかない。
具材の争奪戦をしながら、話が弾む。
お酒も適度に回ってくると、和人が楽しそうに持ってきた荷物を漁っていた。
「そういえばさ、こんなところにこんなものが!」
和人がおもむろに出してきたのは高校の卒業アルバムのようだった。
「和人、お前!それ!」
「実家に帰ったときにたまたまあって、そのまま持ってきた。」
「え、見せて見せて!」
「ほい。」
琢磨が取り上げようとするのを避けつつ、和人から私と優花にアルバムを渡される。
私と優花の2人でそれを覗きこみながら見る。
「え、高校、私服だったの?」
「あれ?清香ちゃん私服じゃなかったの?」
「もしかして私だけ制服なのか…」
私以外高校は私服とか楽そうで羨ましい限りである。
女子高でも私服とかいいな。
「セーラー服?ブレザー?」
「ブレザーだよ。地味な感じだけど……校則も厳しくて髪結んだりとかしてた。男子は学ランでさ。」
田舎とは常に時代遅れなのである。
近くの高校ですらほとんど男子は学ランだったために、校章で見極めるしかなかった。
首元の校章で確認するためには視力が鍛えられたな。
「制服が服選ぶ手間なくて良さそう。しかも青春!って感じがする。」
「青春ねえ……体育祭や文化祭は青春!って感じだったけど、それ以外は勉強に追い込まれてたし…」
優花と一緒にアルバムをめくると、琢磨と和人の写真があった。
クラスページにある各個人の写真である。
「やだ!2人とも幼い!」
「かわいいねー!この中に彼女とかいたんじゃないの?」
「琢磨くん、君、この女の子と噂になってたよね?」
和人がアルバムの女の子を指差してにやける。
琢磨はアルバムを一瞥すると、チューハイを飲みながら淡々と答えた。
「その子は幼なじみで家が近所なだけ。別のクラスに彼氏が途中からいたよ。」
「えー!つまんないの!なんか青春の話はないの?」
思わず突っ込んでしまった。高校生は部活とか委員会とかでキラキラしてる人もいるものだったから、そういう思い出があれば聞いてみたくなるのが人の性。
「いや、別に…」
「琢磨はね、運動部で活動しながら生徒会長してたから。」
「えっ!生徒会長!スゴいやん!しかも掛け持ち!女の子からキャーキャー言われてそう。」
運動部で活躍しながら生徒会長でとか漫画かよ。こわ。
これがリア充との差なのか。とんでもない差だわ。
こちとら文化部で、アニメや漫画の妄想をみんなで垂れ流しては奇行めいたことして、騒ぎまくってたわ。
「確かに女の子に騒がれてたよな?」
おお、それは青春!
女の子に素敵です!先輩!とかされてたのか?
どこの少女漫画かな?
「部活は俺ではなくて、他のチームメイトが騒がれてた。生徒会はいい雑用代わりだったことは和人と手伝わせたから知ってるだろうに。」
呆れた顔をして琢磨は和人を見るが、和人はニヤリと笑った。
これは何か悪いことを企んだ顔だ。
「そう。だから、周りの俺たちも手伝う代わりにちょっと色々と見逃してもらったりしたよな。」
ほう、これが悪友の始まりか。
悪友たちの所業は何なんだろう。
「例えば?」
試しに和人と琢磨に聞いてみる。
「先生巻き込んで校庭でマシュマロ焼いた。」
和人が笑いながら言った。
マシュマロ…あー、バーベキューで焼いたりすると美味しい…ってちがーう!
「は?いやいやいや!なぜ?」
「こっちはあれから後処理大変だったんだけど…まあ、マシュマロ焼いたな。」
酒を飲みながら平然と答える琢磨。
校内で問題沙汰にしなかったとか何をしたんだよ。
「そんなこと出来たんだー!」
優花ちゃん、そこ感心するとこじゃない。普通しないから。
「桐川さんの青春は?」
「私は生徒会は所属してなかったけど、委員会とかで駆り出されたからなぁ。体育祭と文化祭はバタバタして準備してたら、委員会の中でカップル出来まくってて、私は残された仕事してたから、何もなくて泣いた。」
「伝説の体育祭マジックとか言うやつだ。」
優花が目をキラキラさせながら食いついてきた。
「それ!見回りしてた男女二人が後に付き合ったりしててさ…うっ、ツラい。後は体育祭の後の後夜祭とかもカップル量産されてたわ。」
「後夜祭?」
「そう。校庭の真ん中にいくつかキャンプファイアーみたいなのを作って、その周りで輪になって男女でフォークダンス。しかも、みんな制服に着替えてるから青春効果マシマシである。」
「きゃー!そういうの本当にあるんだ!手を握ったりとかしちゃうんだよね!」
私も高校に入学するまでは夢物語かと思ってたけど、あったんだよね、フォークダンス。
私の高校出身者みんなの甘酸っぱい思い出。
夕方に男女のペアで踊ってた。
「まあ、そうしないと踊れないからね。でも、手を軽くのせてくる人とちゃんと握ってくる人の2パターンいたね。」
「うわああああ!青春だああああ!私は女子高だからそんなイベントとはほど遠かったよ。」
優花が悔しそうに酒をあおる。
まあ、女子高は男子いないから無理でしょうよ。
琢磨の手からパキッと音がして、缶チューハイがへこんでいるのが見えた。
そろそろ捨てるのだろうか。
手元を思わず見ていると琢磨が笑顔で応える。
「こっちもさすがにフォークダンスは無かったよ。」
「まあ、私の出身は田舎ですから。でも、委員会してるとそれの司会とか準備や片付けで走り回ってるからフォークダンスはあんまり参加できなかったな。先生とみんな、若いですねぇとか言いながら眺めてたし。」
お陰でマジックなんて起こらずに、むしろ内申点あげる方向で努力したわ。
悲しい。アオハルって何。
もはや、体育祭効果でいつもよりイケメンに見えてしまっている応援団長に群がる女の子の交通整備とかしてたからな。
「あー、それは分かる。生徒会もそんな感じだったし。みんなが楽しんでるときに仕事してたわ。」
「だよねぇ。」
しみじみと元雑用係は遠い目をした。
カップル量産期にはどこかで仕事がたまってるものなのであった。
「東城さん、東城さん。」
「佐伯くん、どうしたの?」
「ああやって料理してる琢磨と桐川さん、いい感じだよね?」
「あ、私も思ってた!付き合わないのかなぁ。」
「うーん、もし付き合うとなると……琢磨相手だから……桐川さん、大変かも……」
和人が集まりたいとメッセージアプリで騒ぎ始め、琢磨の家で鍋をすることになった。
この時は優花以外が一人暮らしをしており、誰の家にて鍋をするかメッセージアプリでの激しい攻防を行い、琢磨が折れたのである。
琢磨の家は清香たちの他大学のキャンパスの近くであることから、少し離れたところにあったが、各自駅にて集合とのことで待ち合わせる。
駅の改札を抜けると琢磨と和人が既に立っていた。
「お待たせー!」
「おー!あとは東城さんだけだね。」
「冷蔵庫にあった鍋に使えそうなもの持ってきた。はい、大根とダシのパック、未開封の日本酒。」
エコバッグに入れて持ってきたので、それを見せる。
「なんで大根……」
琢磨が首をかしげて聞いてきた。
「この間、煮物作ろうとしたけど、今日使うならと思って待ってきた。」
「あー。桐川さん、自炊する人だったね。近所に住む僕には恵んでくれないけど。」
和人がふざけて言ってくる。
「気が向いたらするけど、自分の分だけよ。」
「貸して、持つから。」
「頼んだ。」
琢磨に食材とお酒を渡していると、改札から優花が出てきた。
「お待たせしました!お菓子は持ってきたよ。」
「さすが!じゃあ、食材買いにいこ!」
近所のスーパーで鍋の食材を買い、琢磨の家に向かう。
琢磨の部屋には炬燵があった。
「わー!炬燵やん。」
「あー、実家から送られてきてさ。」
「わーい!」
優花と私は炬燵にすぐさま入る。早い者勝ちである。
「ぬくぬくだぁ。」
「あったか……」
炬燵の力はすごい。あっという間に出れなくなっていると、琢磨がそれに気づいた。和人は爆笑している。
「あ、こら!食材の準備こっちに投げるつもりだろ!」
「男飯って気になるよね、優花ちゃん。」
「うん、料理男子って素敵だよね、清香ちゃん。」
2人で笑いながら言うと琢磨と和人は仕方がないとキッチンへと向かった。
「料理男子の写真とっとこ。」
「そうしよ。」
私と優花は料理している光景を写真に撮っていったが、どうやら手つきが危なげな男性陣である。
「清香ちゃん、ヤバそうなときよろしく。」
「えっ?私?優花ちゃんだって料理できるじゃん!」
「自炊している人としてない人では大きな差があるよ。」
そんなことを言っていると、キノコ類は処理し終わったようだが、野菜を切る手つきが本当に危ない。
思わず立ち上がってキッチンへと向かう。
「だ、大丈夫?」
「白菜って……どこまで葉は取ればいいんだろ……あと、芯。」
「マジか……包丁貸して。」
「ごめん……」
琢磨から包丁を受けとると、白菜や大根、ネギなど切っていく。
私の手元を見ながら切り終わった食材を皿に盛っていく琢磨。
「さては自炊してないな?」
「簡単なのしかしてないんだよ。」
「ふーん?」
私もそんなに自炊はしてないが、これは本当に簡単な男飯で生活してるんだろうなと思った。
コンビニ飯とかしてるんじゃないだろうか。
「お酒開けまーす!」
「俺も飲むー!」
和人と優花が炬燵で先に缶チューハイを開け始める。
「あ!お酒!」
「はい、どっち?」
こっちはまだ鍋の食材の下準備だというのに先越された。
そのとき、琢磨が桃とミカンの缶チューハイを差し出してきた。
どっちも好みだったが、桃の缶チューハイを指差すとそのまま片手で開けて渡された。
片手で缶のプルタブ引っ掛けて開けるとかさぁ……性癖に刺さる。
「はい。」
「本当にそういうとこさー……」
「なに?」
「なんでもない。」
琢磨はミカンの缶チューハイを飲みながら、作業を続ける。
そういえば、琢磨も甘党だったな……ミカン選んでなかったら、桃飲んでたのか。それはそれで……。
私も缶チューハイ飲みながら調理を進めていった。
さて、準備も終わり、鍋タイムである。
お酒を飲みながら、鍋をつつくとか楽しい時間でしかない。
具材の争奪戦をしながら、話が弾む。
お酒も適度に回ってくると、和人が楽しそうに持ってきた荷物を漁っていた。
「そういえばさ、こんなところにこんなものが!」
和人がおもむろに出してきたのは高校の卒業アルバムのようだった。
「和人、お前!それ!」
「実家に帰ったときにたまたまあって、そのまま持ってきた。」
「え、見せて見せて!」
「ほい。」
琢磨が取り上げようとするのを避けつつ、和人から私と優花にアルバムを渡される。
私と優花の2人でそれを覗きこみながら見る。
「え、高校、私服だったの?」
「あれ?清香ちゃん私服じゃなかったの?」
「もしかして私だけ制服なのか…」
私以外高校は私服とか楽そうで羨ましい限りである。
女子高でも私服とかいいな。
「セーラー服?ブレザー?」
「ブレザーだよ。地味な感じだけど……校則も厳しくて髪結んだりとかしてた。男子は学ランでさ。」
田舎とは常に時代遅れなのである。
近くの高校ですらほとんど男子は学ランだったために、校章で見極めるしかなかった。
首元の校章で確認するためには視力が鍛えられたな。
「制服が服選ぶ手間なくて良さそう。しかも青春!って感じがする。」
「青春ねえ……体育祭や文化祭は青春!って感じだったけど、それ以外は勉強に追い込まれてたし…」
優花と一緒にアルバムをめくると、琢磨と和人の写真があった。
クラスページにある各個人の写真である。
「やだ!2人とも幼い!」
「かわいいねー!この中に彼女とかいたんじゃないの?」
「琢磨くん、君、この女の子と噂になってたよね?」
和人がアルバムの女の子を指差してにやける。
琢磨はアルバムを一瞥すると、チューハイを飲みながら淡々と答えた。
「その子は幼なじみで家が近所なだけ。別のクラスに彼氏が途中からいたよ。」
「えー!つまんないの!なんか青春の話はないの?」
思わず突っ込んでしまった。高校生は部活とか委員会とかでキラキラしてる人もいるものだったから、そういう思い出があれば聞いてみたくなるのが人の性。
「いや、別に…」
「琢磨はね、運動部で活動しながら生徒会長してたから。」
「えっ!生徒会長!スゴいやん!しかも掛け持ち!女の子からキャーキャー言われてそう。」
運動部で活躍しながら生徒会長でとか漫画かよ。こわ。
これがリア充との差なのか。とんでもない差だわ。
こちとら文化部で、アニメや漫画の妄想をみんなで垂れ流しては奇行めいたことして、騒ぎまくってたわ。
「確かに女の子に騒がれてたよな?」
おお、それは青春!
女の子に素敵です!先輩!とかされてたのか?
どこの少女漫画かな?
「部活は俺ではなくて、他のチームメイトが騒がれてた。生徒会はいい雑用代わりだったことは和人と手伝わせたから知ってるだろうに。」
呆れた顔をして琢磨は和人を見るが、和人はニヤリと笑った。
これは何か悪いことを企んだ顔だ。
「そう。だから、周りの俺たちも手伝う代わりにちょっと色々と見逃してもらったりしたよな。」
ほう、これが悪友の始まりか。
悪友たちの所業は何なんだろう。
「例えば?」
試しに和人と琢磨に聞いてみる。
「先生巻き込んで校庭でマシュマロ焼いた。」
和人が笑いながら言った。
マシュマロ…あー、バーベキューで焼いたりすると美味しい…ってちがーう!
「は?いやいやいや!なぜ?」
「こっちはあれから後処理大変だったんだけど…まあ、マシュマロ焼いたな。」
酒を飲みながら平然と答える琢磨。
校内で問題沙汰にしなかったとか何をしたんだよ。
「そんなこと出来たんだー!」
優花ちゃん、そこ感心するとこじゃない。普通しないから。
「桐川さんの青春は?」
「私は生徒会は所属してなかったけど、委員会とかで駆り出されたからなぁ。体育祭と文化祭はバタバタして準備してたら、委員会の中でカップル出来まくってて、私は残された仕事してたから、何もなくて泣いた。」
「伝説の体育祭マジックとか言うやつだ。」
優花が目をキラキラさせながら食いついてきた。
「それ!見回りしてた男女二人が後に付き合ったりしててさ…うっ、ツラい。後は体育祭の後の後夜祭とかもカップル量産されてたわ。」
「後夜祭?」
「そう。校庭の真ん中にいくつかキャンプファイアーみたいなのを作って、その周りで輪になって男女でフォークダンス。しかも、みんな制服に着替えてるから青春効果マシマシである。」
「きゃー!そういうの本当にあるんだ!手を握ったりとかしちゃうんだよね!」
私も高校に入学するまでは夢物語かと思ってたけど、あったんだよね、フォークダンス。
私の高校出身者みんなの甘酸っぱい思い出。
夕方に男女のペアで踊ってた。
「まあ、そうしないと踊れないからね。でも、手を軽くのせてくる人とちゃんと握ってくる人の2パターンいたね。」
「うわああああ!青春だああああ!私は女子高だからそんなイベントとはほど遠かったよ。」
優花が悔しそうに酒をあおる。
まあ、女子高は男子いないから無理でしょうよ。
琢磨の手からパキッと音がして、缶チューハイがへこんでいるのが見えた。
そろそろ捨てるのだろうか。
手元を思わず見ていると琢磨が笑顔で応える。
「こっちもさすがにフォークダンスは無かったよ。」
「まあ、私の出身は田舎ですから。でも、委員会してるとそれの司会とか準備や片付けで走り回ってるからフォークダンスはあんまり参加できなかったな。先生とみんな、若いですねぇとか言いながら眺めてたし。」
お陰でマジックなんて起こらずに、むしろ内申点あげる方向で努力したわ。
悲しい。アオハルって何。
もはや、体育祭効果でいつもよりイケメンに見えてしまっている応援団長に群がる女の子の交通整備とかしてたからな。
「あー、それは分かる。生徒会もそんな感じだったし。みんなが楽しんでるときに仕事してたわ。」
「だよねぇ。」
しみじみと元雑用係は遠い目をした。
カップル量産期にはどこかで仕事がたまってるものなのであった。
「東城さん、東城さん。」
「佐伯くん、どうしたの?」
「ああやって料理してる琢磨と桐川さん、いい感じだよね?」
「あ、私も思ってた!付き合わないのかなぁ。」
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