お願いです!ワンナイトのつもりでした!

郁律華

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本編のおまけ編(エピローグ直後)

【おまけ~夜の話2~】寝顔と香水

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世の一般女性の方々にお聞きしたい。
ホテルでの入浴は相手と自分、どちらが先ですか?


私は元カレとはほとんどそのようなところに行かなかったために、こういう場合での経験は皆無である。
それ故に、どっちが先かなんて一般常識がよく分からないのである。
参考文献にしている雑誌にもなかった。
これが二次創作なら一緒にお風呂でイチャコラだあ!とかなりますが、違うんです。
そこまでイチャコラ出来るほどの頭のアホさが今の私にはない。むしろ、アルコールほしい。

「風呂入ってくれば?」
琢磨が先手を打ってきた。
「私が先?」
「だって、風呂上がりに肌の手入れとかあるでしょ?それに一番風呂だから気持ちいいって。」
「いや、それなら今日も社畜をしてきた相本くんが入った方がいいんじゃない?」
「んー、ゆっくり入ってきてくれたら、その間に仮眠とる。」
「仮眠…わかった、じゃあ先に入ってくるわ。」
譲ってくれた理由がまさかの仮眠とは思わなかったが、ありがたい言い訳である。
手に着替えなどを一式もって風呂へと向かおうとしたときに、琢磨から呼び止められた。
何かと振り向けば、いい笑顔ですね。

「桐川さん、次は一緒に入ろうね?」
「仮眠とってまともな思考回路を取り戻してください。すぐに!」
やはりお風呂でのイチャコラは願望としてあるらしい。

風呂から上がり、肌のケアを行い、すっぴんでは申し訳ないため、そのまま寝ても大丈夫な化粧品を使ってナチュラルメイクをする。
最近のコスメは、化粧下地にも保湿クリームにもなって、落とさなくても肌にいいものがあるので、大人しく人類の進歩に頼ります。
顔がさらに平凡顔になったが、すっぴんよりはマシだと自分に言い聞かせた。
目元は化粧で戦闘力高めにしてたのでね……。
化粧出来ないと平凡顔になってしまう。

「お風呂いいよーって……ありゃ……」
部屋へ戻ると広いキングサイズのベッドにワイシャツとスラックスのまま、寝落ちてる琢磨の姿があった。
「本当に仮眠してた。起こすべきか寝かしておくべきか……」
琢磨の寝顔は実年齢よりも、更に幼く見えて大学生でもいけそうだ。
横を向いて寝ているため、普段はワックスでセットしている髪の毛がさらさらと落ちている。

横向き……ということは!
顔とは逆側の背中に回り込み、物音を立てないようにベッドの上にそろりと上がる。
よし、まだ起きない!
私の目の前には琢磨の背中がある。
ワイシャツ姿の背中だ。
気づかれないように背中に手のひらを当ててそっと寄り添う。
「へへ~!」
背後から近付いて触るなんてことをしたことがなかったから、少しばかりの挑戦である。
ふむ、やっぱりいい筋肉している。
ずっと文化部で運動部とは縁遠い私とは違う。
私の背中なんて筋肉は人並みですよ。
筋トレとかもしているのかもしれない。
握力も強いし、運動ができて頭もよくて長身イケメンとは……。
え?本当に私と付き合ってていいのか?
イケメンは観賞用に限るというか、私は推しのATMになりたいだけなんだよ。
人と向き合うってしんどい。

それにしても香水でもつけてるのか?
ちょっと爽やかな香りが残ってるな…ほうほう、これはどこのブランドだろう。
いや、私が匂いフェチとかいう訳ではないではないけれど、なんか気になる。
この香りは……この間の外国系の化粧品店の店頭にあった男性ものの香水と一致するか?
系統が似ている気がするけれど、男性ものの香水なんて選んだことないしな。
でも、女性ものなら他にお相手いる可能性もあるから、本当に私の逃亡一択だな。

「何かわいいことしてるの?」
琢磨が振りかえって、私の頭を撫でる。
「あ、起きた。お風呂どうぞ。」
チッ!起きたから確認作業は中断である。
「で、何してたの?」
「答えない自由を行使します!」
今の私の沼の一言である。
この言葉と早くに出会いたかったわ!
言ってみたかったこの言葉が言えて少し楽しい。
「で?」
「……香水つけてたみたいだから、どこのかなって?」
提督!
私はあなたのようには貫けませんでした。悲しい。
でも、笑顔の圧力には逆らえないんです。
「あー、背中というより首筋だな。マトマイザー使って着けてるけど、昔、桐川さんがくれたやつだよ。忘れた?」
昔、渡した香水?
まず、私が男性ものの香水なんて買うはずは無いんだが。
あ、推しの香水は別物である。
それはそれは、かなりの額を落とした。
でも、私用の香水…私には要らない香水……ああ!外国系の化粧品の会員で誕生日になると贈られてくるギフトセットの中に、いつかの年に贈られてきたのがいくつかの香水セットだ。
その中には男性ものの香水があり、要らないからってあげたものか!
香りはいいけど、私が使うのには無理があるものだったから、貰い手を探して琢磨にあげたんだった。
「あー、昔使わないからってあげたものね!思い出したわ。」
「それそれ。大人の男性って香りだけどキツくてたまらないって桐川さんが言ってたものだよ。マトマイザーでほんの少しつけたら意外と使い心地が良かった。」
「でも、あの香水少しだけだったし、そんな長くは持てないでしょ?」
そう、ギフトセットの香水はあくまでテスター代わり。
気に入るものがあれば、店頭へ!という商魂たくましい精神のもと贈られてきたものである。
「……使い終わったら、ちゃんと同じのを買いに行ってた。」
「えっ?あの化粧品の店頭に?あのブランドって女性ばっかりの店頭でしょ?キラキラ女性と美容部員さんに囲まれる若い男性……ヤバい、笑う。」
私の爆笑が止まらなくなる。
確かに、男性用の香水も売っているお店だが、基本的に日本では女性がターゲットなのだ。
最近はネットでも買えそうなのに、買いに行っていたのか。
ヒーヒー言いながらお腹を抱えていると、頭を撫でていた手が私の耳に触れる。
するりと艶めいた手つきに私の笑いが止まる。

「ちゃんと香水の意味を考えなさいね?」
そう言うと琢磨は立ち上がり、風呂へと向かっていった。


意味とは?
香水の意味?んん?
そういえば、推し会のときに沼のキャラ香水を持ち寄ったの楽しかったなー。
また、同士たちとの推し会では香水を楽しんで沼へのご招待するしかないか。









※諸説ありますが、香水を贈る意味としては独占欲、親密になりたいなどの表れということがあります。
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