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本編
理性の蓋がとんでいった(※念のためR15)
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記憶を取り戻しつつ新幹線の中で頭を抱えた。
一人、座席で小さくなる。
酔った私、何してくれてるの?
他人に迷惑かけて言わないでおこうとした想いも暴露して?
そして、記憶はまだ完全じゃない。
思い出さなければならないことはまだある。
いや、同時にメッセージアプリの確認もしよう。
メッセージアプリを開いても通知はない。
ほっとしたものの油断は出来ない。
先手を打たないと友人関係が壊れてしまう。
それだけは避けなければ……貴重な友人関係なのだから。
私は優花に昨日の夜は酔っぱらったみたいだけど、記憶飛ばしてるみたいでねーと個人宛のメッセージを飛ばし、和人にも同様のメッセージを送る。
そう、お酒のせいなのだ。
ワンナイトってのはお酒から始まってあっさり無かったことになる一夜の夢なのだ。
ましてや、知り合いとなればうやむやにするに限る。
帰って寝るまでに手を回さないと後がこわいのが人間関係なのである。
とりあえず、この後の記憶は―。
琢磨の腕に抱きついて、ふわふわと笑う。
「き、桐川さん?何してくれてるの?」
「ん?ぎゅーってしてる……相本くんの腕って筋肉あるねぇ……」
「はい!?」
ああ、申し訳ない……酔った私は暴走している。
でも、大学生のときから身長が高くて筋肉があるんだなぁとは思っていたのだ。
さすがは元運動部である。
元から文化部で、オタクを高校生のときから拗らせてた私とは違う。
大学生の時など、就職活動でたまたま説明会にて鉢合わせて、そのままお昼を一緒に食べたことがある。
その際に、ジャケットを脱いで腕捲りをしたときなんてドキッとしたものだ。
スーツに腕捲りは危険なのである。特に腕の筋肉がついていると眼福。
ネクタイを緩める仕草もいいけど、腕の筋肉っていい。
「桐川さん?あのさ、腕にその…」
琢磨が気まずそうに確認する。
はい、確認したくなりますよね。わかる。
「胸はあててますーちょっとはあるつもりなんだけどな…やっぱり無いか…所詮は私のお胸さまも身長に取られたんだ…」
痴女だ!酔ったら痴女になってしまってたのか!
胸なんて押し当てて痴女のすることである。
「いや、あるよ?ふわふわだよ?いや、そうじゃなくて!」
すまない。変なフォローをさせてしまった。
友人の女性の胸のことなんて知りたくなかったよな。
それなのに私は……。
「そりゃあ、私じゃ役不足なのはよく知ってるともー優花みたいにかわいくないし、ふわふわしてないし…世間一般の同年代女性みたいにキラキラもしてない…我がお胸さま…君が頼りだったが、これ以上は大きくなってくれないもんな…元カレだって脱いだら残念がってたもんな…所詮、横になれば平たい…」
こ、こらー!酒の勢いで自分の残念な胸の詳細な事情を昔の片思いの相手に話すとかしてはいけません!
確かに胸のサイズは大学生のときより大きくなったものの、横になれば流れていく。それが重力。
そして私の残念な胸の状況。
「…は?」
琢磨の声のトーンが下がる。
同時に周りの空気も下がった気がした。
それが少し怖くて頭もグリグリと肩に擦り寄せる。
「おーい、何やってんの?桐川さん、酔ったの?」
和人が彼女との電話を終えて席に戻ってきた。
琢磨の冷気には気づいていない。
「桐川さん、酔ったみたいだからホテルまで送ってくる。あと、金はこれな。」
琢磨が財布からお札を数枚出し、テーブルに置くと私のハンドバッグを寄越せと和人に指示した。
「おー…あ、ちょっと待って!桐川さんが酔ってるなんて面白いの久しぶりに見たから、こっちが多めに出すわ。ほい!」
和人がお札を琢磨へ戻すと面白そうに笑った。
「見せ物じゃない。」
琢磨は私のハンドバックを受け取りながら渋い顔をした。
そのまま私を立ち上がらせようとするもイヤだと頭をふる私。
しかも琢磨の腕を掴んだままである。
いや、離れて?本当に何してるの?
「桐川さん、ほら。」
「まだ、飲むの。」
「本当に珍しいね。桐川さんって酔うとずっと笑ってるってのは本人から聞いたことあったけど、何かあったかな?」
和人が残りの酒を飲みながら言った。
琢磨は不機嫌そうに和人を見る。
「元カレがどうこうってのはさっき聞いた。」
「マジで?隠してたの?俺たちに?桐川さんも隅におけないなぁ。……で、琢磨は?」
「仕事のツケがこれかと思っている。」
琢磨が私の腕を掴んで何とか立たせる。
「あー……分かった。じゃあ、うまくやれよ?あー、明日は彼女に会える!」
和人は相変わらずの彼女最優先だが、琢磨の出ていった方向を見てもう一度笑った。
「だから、いつも聞いてたのに。」
「ほら、歩ける?」
「歩けるよーほら!」
琢磨の腕につかまりながらも歩く私だったが、酔っているため、足元はかなり危ない。
それなのに少しだけ悪あがきをしたくなって、立ち止まる。
琢磨の優しさに甘えてしまって、苦しかった。
でも、日頃抑えている思いを少しだけこの勢いでさらけ出してみようか。
「どうした?」
琢磨が私の方を向いたときに少しだけ背伸びをしてキスをする。
キスはアルコールの味なのに少し甘かった。
軽いキスなのに味がするなんて酒の力はスゴいのだろう。
「今日だけだから……ね?思い出ちょーだい?」
唇を離して琢磨に微笑みかける。
「本当に……本当に煽るの上手くなりすぎでしょ!こっちの気持ちも知らないで!」
琢磨が私の息を全てさらうようなキスをした。
それからは琢磨の宿泊しているホテルの部屋に連れ込まれ、ベッドへと押し倒された。
「夢なの……琢磨の腕の中にいるなんて…都合のいい夢……」
琢磨に抱きつきながら、言い聞かせる様に呟くと琢磨が口を塞ぐようにキスをする。
唇を離されると、そのまま琢磨に頬を撫でられた。
「夢じゃない!どれだけ我慢して、友だちだからって優しくしようとしてたか……」
「今日だけ許してね?そりゃ、私たち友だちだけどさ…あ、でも、体は残念らしいからあんまり見ないでね?」
「また元カレ?」
声のトーンが、低くなる。
琢磨の視線から顔をそむけて話す。
「だって、そう言われた。前の職場だって、結局は大したことないんだなって…だから、琢磨が気持ちよくなればいい。私は今日の思い出だけもらえればいい。お互いにメリットがあるでしょ?」
「メリット……」
ポンと1つ手を叩いて、暗くなってしまった空気を晴らすように明るく琢磨に話しかける。
「それに話してた職場にかわいい女の子だっているだろうし、優花だってかわいいよ?優花と付き合わないのかな?後押しだってするのにって思ってる。」
「分かった……桐川さんの言いたいことは分かった……でも!ああもう!好きにする!」
「うん、それでいいよ。そうして。」
笑った私に琢磨は噛みつくようなキスをして、そして2人でシーツに溺れた。
もう一度確認する。
お酒ってこわい
一人、座席で小さくなる。
酔った私、何してくれてるの?
他人に迷惑かけて言わないでおこうとした想いも暴露して?
そして、記憶はまだ完全じゃない。
思い出さなければならないことはまだある。
いや、同時にメッセージアプリの確認もしよう。
メッセージアプリを開いても通知はない。
ほっとしたものの油断は出来ない。
先手を打たないと友人関係が壊れてしまう。
それだけは避けなければ……貴重な友人関係なのだから。
私は優花に昨日の夜は酔っぱらったみたいだけど、記憶飛ばしてるみたいでねーと個人宛のメッセージを飛ばし、和人にも同様のメッセージを送る。
そう、お酒のせいなのだ。
ワンナイトってのはお酒から始まってあっさり無かったことになる一夜の夢なのだ。
ましてや、知り合いとなればうやむやにするに限る。
帰って寝るまでに手を回さないと後がこわいのが人間関係なのである。
とりあえず、この後の記憶は―。
琢磨の腕に抱きついて、ふわふわと笑う。
「き、桐川さん?何してくれてるの?」
「ん?ぎゅーってしてる……相本くんの腕って筋肉あるねぇ……」
「はい!?」
ああ、申し訳ない……酔った私は暴走している。
でも、大学生のときから身長が高くて筋肉があるんだなぁとは思っていたのだ。
さすがは元運動部である。
元から文化部で、オタクを高校生のときから拗らせてた私とは違う。
大学生の時など、就職活動でたまたま説明会にて鉢合わせて、そのままお昼を一緒に食べたことがある。
その際に、ジャケットを脱いで腕捲りをしたときなんてドキッとしたものだ。
スーツに腕捲りは危険なのである。特に腕の筋肉がついていると眼福。
ネクタイを緩める仕草もいいけど、腕の筋肉っていい。
「桐川さん?あのさ、腕にその…」
琢磨が気まずそうに確認する。
はい、確認したくなりますよね。わかる。
「胸はあててますーちょっとはあるつもりなんだけどな…やっぱり無いか…所詮は私のお胸さまも身長に取られたんだ…」
痴女だ!酔ったら痴女になってしまってたのか!
胸なんて押し当てて痴女のすることである。
「いや、あるよ?ふわふわだよ?いや、そうじゃなくて!」
すまない。変なフォローをさせてしまった。
友人の女性の胸のことなんて知りたくなかったよな。
それなのに私は……。
「そりゃあ、私じゃ役不足なのはよく知ってるともー優花みたいにかわいくないし、ふわふわしてないし…世間一般の同年代女性みたいにキラキラもしてない…我がお胸さま…君が頼りだったが、これ以上は大きくなってくれないもんな…元カレだって脱いだら残念がってたもんな…所詮、横になれば平たい…」
こ、こらー!酒の勢いで自分の残念な胸の詳細な事情を昔の片思いの相手に話すとかしてはいけません!
確かに胸のサイズは大学生のときより大きくなったものの、横になれば流れていく。それが重力。
そして私の残念な胸の状況。
「…は?」
琢磨の声のトーンが下がる。
同時に周りの空気も下がった気がした。
それが少し怖くて頭もグリグリと肩に擦り寄せる。
「おーい、何やってんの?桐川さん、酔ったの?」
和人が彼女との電話を終えて席に戻ってきた。
琢磨の冷気には気づいていない。
「桐川さん、酔ったみたいだからホテルまで送ってくる。あと、金はこれな。」
琢磨が財布からお札を数枚出し、テーブルに置くと私のハンドバッグを寄越せと和人に指示した。
「おー…あ、ちょっと待って!桐川さんが酔ってるなんて面白いの久しぶりに見たから、こっちが多めに出すわ。ほい!」
和人がお札を琢磨へ戻すと面白そうに笑った。
「見せ物じゃない。」
琢磨は私のハンドバックを受け取りながら渋い顔をした。
そのまま私を立ち上がらせようとするもイヤだと頭をふる私。
しかも琢磨の腕を掴んだままである。
いや、離れて?本当に何してるの?
「桐川さん、ほら。」
「まだ、飲むの。」
「本当に珍しいね。桐川さんって酔うとずっと笑ってるってのは本人から聞いたことあったけど、何かあったかな?」
和人が残りの酒を飲みながら言った。
琢磨は不機嫌そうに和人を見る。
「元カレがどうこうってのはさっき聞いた。」
「マジで?隠してたの?俺たちに?桐川さんも隅におけないなぁ。……で、琢磨は?」
「仕事のツケがこれかと思っている。」
琢磨が私の腕を掴んで何とか立たせる。
「あー……分かった。じゃあ、うまくやれよ?あー、明日は彼女に会える!」
和人は相変わらずの彼女最優先だが、琢磨の出ていった方向を見てもう一度笑った。
「だから、いつも聞いてたのに。」
「ほら、歩ける?」
「歩けるよーほら!」
琢磨の腕につかまりながらも歩く私だったが、酔っているため、足元はかなり危ない。
それなのに少しだけ悪あがきをしたくなって、立ち止まる。
琢磨の優しさに甘えてしまって、苦しかった。
でも、日頃抑えている思いを少しだけこの勢いでさらけ出してみようか。
「どうした?」
琢磨が私の方を向いたときに少しだけ背伸びをしてキスをする。
キスはアルコールの味なのに少し甘かった。
軽いキスなのに味がするなんて酒の力はスゴいのだろう。
「今日だけだから……ね?思い出ちょーだい?」
唇を離して琢磨に微笑みかける。
「本当に……本当に煽るの上手くなりすぎでしょ!こっちの気持ちも知らないで!」
琢磨が私の息を全てさらうようなキスをした。
それからは琢磨の宿泊しているホテルの部屋に連れ込まれ、ベッドへと押し倒された。
「夢なの……琢磨の腕の中にいるなんて…都合のいい夢……」
琢磨に抱きつきながら、言い聞かせる様に呟くと琢磨が口を塞ぐようにキスをする。
唇を離されると、そのまま琢磨に頬を撫でられた。
「夢じゃない!どれだけ我慢して、友だちだからって優しくしようとしてたか……」
「今日だけ許してね?そりゃ、私たち友だちだけどさ…あ、でも、体は残念らしいからあんまり見ないでね?」
「また元カレ?」
声のトーンが、低くなる。
琢磨の視線から顔をそむけて話す。
「だって、そう言われた。前の職場だって、結局は大したことないんだなって…だから、琢磨が気持ちよくなればいい。私は今日の思い出だけもらえればいい。お互いにメリットがあるでしょ?」
「メリット……」
ポンと1つ手を叩いて、暗くなってしまった空気を晴らすように明るく琢磨に話しかける。
「それに話してた職場にかわいい女の子だっているだろうし、優花だってかわいいよ?優花と付き合わないのかな?後押しだってするのにって思ってる。」
「分かった……桐川さんの言いたいことは分かった……でも!ああもう!好きにする!」
「うん、それでいいよ。そうして。」
笑った私に琢磨は噛みつくようなキスをして、そして2人でシーツに溺れた。
もう一度確認する。
お酒ってこわい
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