私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅

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数人の冒険者たちが、血の跡を浄化したり色々しているのを眺めているうちに、私も少しずつ回復してきた。

とりあえず立ち上がり、カバンを肩にかけた。
地面に敷かれていた毛布と、掛けられていた毛布にクリーンを掛けると綺麗に畳んだのだが…

「あの…この毛布ありがとうございました。どうすれば良いですか?」

何処に返せばいいのかわからなかったから、近くに居た冒険者の人に聞いた。
「あ、じゃあ俺が預かります!」
「ありがとうございます」

冒険者の人は毛布を受け取ると何処かへ行ってしまった。

「…御者さん達は先に街に行っちゃったんだよね…私はどうしたら良いんだろうか…」

そう、気絶してたからって言うのもあるんだろうけど、何故私だけここに残されたんだろうか…
やっぱり、異世界から来たって知ってるから、そこらへんで聞きたいことがあるのかな…。

さっきもお金の事とか聞いてきたもんなぁ。
まあ、確実にこっちのお金持ってないはずなのに、15万もする馬車に乗ってるのは疑問に思うよね。

とりあえず、どうしたら良いのかわからないから近くの木に寄りかかる。
(さっきちらっと聞こえてたけど、黒髑髏って盗賊の名前なのかな…)
『黒髑髏は、ザラック周辺を根城にしている盗賊団の様ですね。もしかしたら、スプリット渓谷でこの馬車を襲う予定だったのではないですかね』

(あー、もしかして乗客だったフードの男が駅舎を出発する前に鳥を使って仲間に知らせたのかな?)
『可能性はありますね。でも、捕縛された盗賊の中にも、死体にもそれらしいのはいませんでしたよ?』
(えー…じゃあ普通の乗客だったの?信じられないなぁ…)

喋った事もないし、ずーっとフード被ってたから顔もわからないし、怪しさ満点なんだけどなぁ…。
まあ、ともかくとして、多分盗賊の目的は商人家族だったんだろうなと思ってる。

(盗賊たちの狙いはあの我が儘娘かな…?)
『おそろらくは。マスターに絡んできた時に金持ちだと言い放ってましたし。それに、駅馬車は料金が高額で、そこそこの金持ちしか利用しませんからね。ついでにマスターも誘拐して慰み者にするか売り払うかするつもりだったのでは?』

(うへー…嫌だなぁ…。でも、身代金目的の誘拐をするなら結構いい確率かもしれないね。しかし、マジでトラブル起こりすぎて嫌になるわ…はやく引きこもりたい…)

『頑張って安全空間をレベルアップしてください。あそうそう、オンラインショップそろそろ使っても大丈夫だと思います』
(マジで!やった!!)

ナビと話をしていると、バートが向こうから二頭の馬を連れて歩いてきた。

「おい、何一人で百面相してんだ!ラオッタに戻るぞ!!」

そんなに表情変わってた??

「あの!馬車の人達はその街に向かったんですよね?」
「ああ、結構前に出発したからもう街に到着してる頃だろう」

おや、そんなに時間経ってたの…?
やっぱり結構ショック受けてたんだなぁ…私。

「お前、馬に乗れるか?」
「生まれてこの方、馬には乗った事ありません!」

実際に馬を間近で見たのも駅馬車に乗る時が初めてで、向こうの世界に居る時は画面の中などでしか見た事が無かった。

「威張るなよ…」

バートは、仕方ねぇなぁ…とぶつぶつ言いながら、他の冒険者たちに何か指示を出し茶色い馬を連れて行かせた。
残った一頭の方も、鞍を外して連れてきた。

「悪いが俺と一緒に乗ってもらうぞ」
「え”っ」

「生憎、荷馬車には盗賊の死体が乗ってるし、他の連中にも仕事振っちまったからな」
「わかりました…」

馬に近づくと、とても大きかった。
いや、人の頭の高さ位あるのは知ってるけど、実際目の当たりにするとマジでデカい。
筋肉の塊!!

「大きいですね…」
「こいつは優秀だからな、振り落とされることはねぇから安心しろ」

「よ、よろしくお願いします」
私は馬に挨拶をした。
馬は、仕方ないなー。という感じで鼻息を吹きかけてきた。

「よし、じゃあたてがみに掴まって登れ!」
「はっはいっ!?」

いきなりそんな事を言われても出来るわけが無い。

思い切り鬣を掴んでいるにもかかわらず、馬はジッとしてくれている。
が、それでも自分の体を上に持って行く事が出来ない。

「どんくせぇなぁ…」
結局、自力では乗れずバートに押し上げてもらった。

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