私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅

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「さて、ナビさんや。さっそくこのスライムさんをテイムしたいんだけど、どうすればいいの?」
『えっとですね、テイムの条件はお互い契約に同意している事だけなので、従魔になって欲しいと言いながら相手に触れて、相手が同意すればそれで契約完了です』

「簡単だね?」
『このスモールスライムは大丈夫だと思いますが、スライムでも上位種は相手を騙す狡猾な者もいますので気を付けてくださいね』

「そうなんだ?」
とはいえ、そんなに沢山スライムを従える気は無いから大丈夫でしょう。

「さて、じゃあスモールスライムさん、私の従魔になってください」

私はそう言って、スモールスライムにそっと右手を置いた。

ピロリン!

<<スモールスライム(名前なし)が従魔になりました>>

お約束の声が頭の中に響いた。

『おめでとうございます、これでこのスモールスライムは従魔になりました』
「おお、あんまり実感ないけどこれで良いんだ?」

たった今従魔になったスライムは、ぽよんぽよんとジャンプをしている。かわいい。

『マスター、名前をつけてあげてください。名付けが終わればスライムとも念話できるようになります』
「名前か…うーん…どうしようかな…」

元々、名前を考えたりするのは得意では無いから、もう思いついた名前を付ける事にした。

「スライムだし、色も綺麗なライムグリーンだからライム!!」
『安直ですね』

「うるせぇわ!」

ピロリン!

<<スモールスライムの名がライムになりました>>
<<従魔の名付けにより、スライムテイムがLv2になりました>>


「あ、スライムテイムのレベルが上がった…」
『おめでとうございます』
(あるじ、よろこぶ、めでたい)

少ししゃがれた高い声が頭の中に聞こえてきた。

「今のライムが喋ったの!?」
『ライムの念話です。流石はスモールスライム、希少種なので知能も高いですね。ライムの声は、マスターと私にだけ届きます』
(なまえ、かんしゃ、きゅうじょ、かんしゃ)

「気にしなくていいよ。これからよろしくねライム」
(らいむ、よろしく、ねがう)

やべぇ、たどたどしい言葉が可愛い。

『それにしてもライム、あなたは何故馬車の下なんかに居たんですか?』
(らいむ、うまれた、すぐ、つち、なか、みず、いっぱい、にげる)

どうやらライムは、誕生してすぐに雨に降られて隠れていた場所が水没しここに逃げてきたようだ。

(ここ、にげる、すぐ、みえないかべ、でれない。まりょく、すくない、こまる)

そして、慌てて逃げ込んだ先で、魔物除けの結界に掴まった。と…
結界の効果で、魔力を遮断されてしまい、生まれてすぐでただでさえ少ない魔力がゴリゴリ削られてしまったという事らしい。

スライムは水中にいても溺れない。しかし、生まれたてのライムは雨と雷に驚いて、屋根のあるこの建物に隠れたのだ。

ナビさん曰く、普通のスライムであればそういった事に驚いたりしないらしいが、ライムは知能が高いという事で、安全な場所へ逃げるという選択肢を取ったのだろう。という事だった。
普通のスライムは、テイムしてもこちらが指示をだすだけで、こうやって念話で意思の疎通は出来ないらしい。

「生まれてすぐに、こんな大雨にあったらビックリするよね…」
『そうですね。マスターに会えたのは幸運でしたね』
(らいむ、こううん)

ライムはぷるんと体を震わせた。

『マスター、そろそろ戻りましょう』
「そうだね、一旦談話室にもどろうか。ライムは…とりあえずカバンの中に入ってくれる?」
(しょうち)

私が、鞄を開けるとシュシュっと入ってくれた。
「窮屈でゴメンね。他にも人が居るから、申し訳ないけどしばらくはカバンの中に居てね」
(らいむ、がまん、だいじょぶ)

「ライムちゃん、良い子だ…」
誰かさんと違って。

『マスター何か言いましたか?』
「なにも言ってないですよ?」

私はカバンにライムを隠したまま、一度談話室へ戻り、先ほど座っていた席にもう一度座った。
談話室では、相変わらず暖炉の前を陣取っている少女と、イライラした様子で父親が歩き回っていた。

『マスター、先ほど御者さんとお話されていた時に、地図作成のスキルで何かなってませんでしたっけ?』
(あ、そういえばそうだったね。ちょっと確認してみようか)

私は地図スキルを開いた。
するとそこには、綺麗な地図が表示されていた。

(自分が通って来た所以外も綺麗に表示されてるね)
『先ほど地図を見たからでしょうかね?』

(かも知れないね)

一度見た地図がこのスキルの地図に反映されるなら、色んな土地をしらみつぶしに歩く必要もなくなるなーとか考えて居たら、いつの間にか4人家族の娘さんが目の前に座って、物凄く値踏みするような視線でこちらを見ていた。
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