私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

文字の大きさ
上 下
70 / 89
【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅

061

しおりを挟む
「さて、ナビさんや。さっそくこのスライムさんをテイムしたいんだけど、どうすればいいの?」
『えっとですね、テイムの条件はお互い契約に同意している事だけなので、従魔になって欲しいと言いながら相手に触れて、相手が同意すればそれで契約完了です』

「簡単だね?」
『このスモールスライムは大丈夫だと思いますが、スライムでも上位種は相手を騙す狡猾な者もいますので気を付けてくださいね』

「そうなんだ?」
とはいえ、そんなに沢山スライムを従える気は無いから大丈夫でしょう。

「さて、じゃあスモールスライムさん、私の従魔になってください」

私はそう言って、スモールスライムにそっと右手を置いた。

ピロリン!

<<スモールスライム(名前なし)が従魔になりました>>

お約束の声が頭の中に響いた。

『おめでとうございます、これでこのスモールスライムは従魔になりました』
「おお、あんまり実感ないけどこれで良いんだ?」

たった今従魔になったスライムは、ぽよんぽよんとジャンプをしている。かわいい。

『マスター、名前をつけてあげてください。名付けが終わればスライムとも念話できるようになります』
「名前か…うーん…どうしようかな…」

元々、名前を考えたりするのは得意では無いから、もう思いついた名前を付ける事にした。

「スライムだし、色も綺麗なライムグリーンだからライム!!」
『安直ですね』

「うるせぇわ!」

ピロリン!

<<スモールスライムの名がライムになりました>>
<<従魔の名付けにより、スライムテイムがLv2になりました>>


「あ、スライムテイムのレベルが上がった…」
『おめでとうございます』
(あるじ、よろこぶ、めでたい)

少ししゃがれた高い声が頭の中に聞こえてきた。

「今のライムが喋ったの!?」
『ライムの念話です。流石はスモールスライム、希少種なので知能も高いですね。ライムの声は、マスターと私にだけ届きます』
(なまえ、かんしゃ、きゅうじょ、かんしゃ)

「気にしなくていいよ。これからよろしくねライム」
(らいむ、よろしく、ねがう)

やべぇ、たどたどしい言葉が可愛い。

『それにしてもライム、あなたは何故馬車の下なんかに居たんですか?』
(らいむ、うまれた、すぐ、つち、なか、みず、いっぱい、にげる)

どうやらライムは、誕生してすぐに雨に降られて隠れていた場所が水没しここに逃げてきたようだ。

(ここ、にげる、すぐ、みえないかべ、でれない。まりょく、すくない、こまる)

そして、慌てて逃げ込んだ先で、魔物除けの結界に掴まった。と…
結界の効果で、魔力を遮断されてしまい、生まれてすぐでただでさえ少ない魔力がゴリゴリ削られてしまったという事らしい。

スライムは水中にいても溺れない。しかし、生まれたてのライムは雨と雷に驚いて、屋根のあるこの建物に隠れたのだ。

ナビさん曰く、普通のスライムであればそういった事に驚いたりしないらしいが、ライムは知能が高いという事で、安全な場所へ逃げるという選択肢を取ったのだろう。という事だった。
普通のスライムは、テイムしてもこちらが指示をだすだけで、こうやって念話で意思の疎通は出来ないらしい。

「生まれてすぐに、こんな大雨にあったらビックリするよね…」
『そうですね。マスターに会えたのは幸運でしたね』
(らいむ、こううん)

ライムはぷるんと体を震わせた。

『マスター、そろそろ戻りましょう』
「そうだね、一旦談話室にもどろうか。ライムは…とりあえずカバンの中に入ってくれる?」
(しょうち)

私が、鞄を開けるとシュシュっと入ってくれた。
「窮屈でゴメンね。他にも人が居るから、申し訳ないけどしばらくはカバンの中に居てね」
(らいむ、がまん、だいじょぶ)

「ライムちゃん、良い子だ…」
誰かさんと違って。

『マスター何か言いましたか?』
「なにも言ってないですよ?」

私はカバンにライムを隠したまま、一度談話室へ戻り、先ほど座っていた席にもう一度座った。
談話室では、相変わらず暖炉の前を陣取っている少女と、イライラした様子で父親が歩き回っていた。

『マスター、先ほど御者さんとお話されていた時に、地図作成のスキルで何かなってませんでしたっけ?』
(あ、そういえばそうだったね。ちょっと確認してみようか)

私は地図スキルを開いた。
するとそこには、綺麗な地図が表示されていた。

(自分が通って来た所以外も綺麗に表示されてるね)
『先ほど地図を見たからでしょうかね?』

(かも知れないね)

一度見た地図がこのスキルの地図に反映されるなら、色んな土地をしらみつぶしに歩く必要もなくなるなーとか考えて居たら、いつの間にか4人家族の娘さんが目の前に座って、物凄く値踏みするような視線でこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...