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【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅
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ダイニングから廊下に出ると、ナビが話しかけてきた。
『マスター、先ほどから車庫の方で魔物の気配がします』
「えっ!?」
ナビの唐突な言葉に思わず声を上げてしまった。
『魔物と言っても、小型の魔物か魔獣っぽいですね。それにしても微弱な気配なので…弱ってるのかな…?』
(…私だけで見に行って大丈夫?)
『最悪、安全空間にどっちかを連れ込みますから安心してください』
(連れ込むってアンタ…)
私はとりあえず車庫の方へ向かった。一人で大丈夫かな…。
ギィィと車庫へ続く扉を開けると、私達が乗っていた馬車がドドンと置かれている。
「ナビさん、気配はどこら辺からするの?」
『今は馬車の下からしますね』
急にとびかかってきたりしないかな…。
ちょっとドキドキしながら、馬車の下を覗き込んだ。
すると車輪の裏側辺りに、小玉スイカくらいの大きさの半透明の丸い物体が落ちていた。
『あー、マスターこの子ですね。かなり弱っていますがスモールスライムです。良かったですね念願のスライムに会えましたよ』
「へぁ?これがスライム??ていうか、この状況で喜べねぇわ」
某RPGゲームの笑顔が張り付いた感じでもないし、洋ゲーとかのおどろおどろしい感じでもない。
なんだろ、黒蜜をかけて食べる、水なんとか餅みたいな感じ?
目も無いし、微動だにしない。
生きてるの…?
「えっと、動かないけど生きてるの…?」
『生きてます。ただ、非常に衰弱しているのでほっといたら溶けて死にます。スライム自身も助けてほしいと訴えています』
「ちょっとまって、訴えている?ナビはスライムの考えてる事が分かるの?」
『思考共有という能力を持ってますので、マスターに何かを訴えかけている魔物の思考や言葉は分かります。このスライムに敵意は有りません』
いや、いきなりそんな能力言われてもびっくりだよ!!
「あー…じゃあ、このスライムさんは助けてほしいと言ってるって事でいいのね?」
『イエス。マスターのスキルについて話したところ、助けてくれるなら従魔になっても良いとも言ってます』
「なんというご都合主義!!」
『マスター、そこは天の采配と言いましょう』
「どっちも一緒じゃい!」
まあ、とりあえず助けを求めてきてる上に、私の従魔になってくれると言ってるんだから、素直に受け取るべきなんだろうね?
「はぁ…わかったよ。で、どうすれば助けてあげられるの?回復魔法とか持ってないよ?」
『魔力回復ポーションを数滴あげれば回復すると思います』
「魔力?治癒じゃなく?」
『はい。どうも魔物除けの結界のせいで魔力切れを起こしているみたいです』
「なるほど」
結界がどういう作用を起こしているのかは分からないけど、私はアイテムボックスから魔力回復ポーションを一本取りだした。
「上からかけてあげれば良いの?」
『はい。あ、スライムには触れないように気を付けてください。皮膚が溶けて火傷みたいになります』
「ひぇ!マジか!!って事はスライムって、素手で触れないの…?」
『元気な時なら自分でコントロールできるけど、今は無理。だそうです。従魔契約をしてマスターになればいつでも触れるようになると言ってます』
「なるほど…よしわかった。じゃあポーションかけるから馬車の下から出てきてくれる?」
スライムはゆっくりと馬車の下から出てきた。
弱っているというのは確かなようで、身体の後ろの辺りはデロンと溶けかかったような感じになっている。
私はポーションの蓋を開けて、ポタポタとスライムの上に数滴と垂らしてあげた。
すると、ポーションは地面に垂れずに、すっとスライムの表面に吸収された。
「おお…珪藻土マットみたい」
『何ですかそれ?』
「液体洗剤とか味噌汁とかをこぼすと掃除が大変なやつ」
『意味が分かりません』
私とナビがそんな会話をしていると、じっと動かなかったスライムが、ぷるぷると震え出した。
「え、何か凄いぷるぷるしてるけど大丈夫?」
『めっちゃ元気になりました!!ありがとうございます!!と喜んでいるようです』
「え、あ…喜びを体で表してるのね」
『という事でマスター、このスモールスライムと契約を結びましょう』
「そこの主導はナビさんなのね?」
スライムテイムというスキルを貰った以上、早いところスライムを仲間にしたかったけど、ナビさんがやけに積極的なのが気になる。
『このスモールスライム、無属性なんですよ』
「ん?それは重要な事なの?」
『スライムは暴食と呼ばれるほど何でも取り込んで食べます。動物の腐肉や排泄物なども食べるので、大体のスライムは一番最初に毒属性になるんです。特にスモールスライムは数は少ないのに、直ぐに属性が付くので他のスライムより無属性の個体を見つけるのは大変なんです』
「ふむ。スライムが毒属性を持ってると何か問題があるの?」
『毒属性は少し厄介で、一番最初に毒属性を獲得してしまうと、それ以降に獲得した属性に全て毒がプラスされてしまうんです。例えば二番目に治癒属性を獲得して治癒ポーションを作ってもらったとしても、毒+治癒という意味の分からないものが出来上がります。麻痺属性とかでも同じく、毒+麻痺みたいな攻撃になったりします』
「はぁー、なるほどね?」
毒属性って結構強いのね…という事は、無属性のスライムちゃんに会えたのはラッキーだったのかな?
『敵を倒す事に特化させたいなら毒属性のスライムを従魔にしても良いと思いますが…マスター、神様達とお話されている時に、治癒ポーションを作れるようになって欲しいとか考えてましたよね?』
「確かにそんな事も考えてたね…って、あの時からこっちを見てたの?」
『いえ、マスター契約をしたときに記憶を少しだけ見させていただきました』
「おうふ。ナチュラルにプライバシー侵害された」
『向こうの世界での記憶などは覗いてませんので安心してください』
うん…?まあ良いか。良いのか??
「とりあえず、とってもラッキーだという事ね?」
『はい。カモがネギしょってきてくれた感じですね』
「例え方…」
とりあえず、さっきからほったらかしになっていたスライムが、みょんみょんと伸びたり縮んだりしているので、テイムしましょう。
『マスター、先ほどから車庫の方で魔物の気配がします』
「えっ!?」
ナビの唐突な言葉に思わず声を上げてしまった。
『魔物と言っても、小型の魔物か魔獣っぽいですね。それにしても微弱な気配なので…弱ってるのかな…?』
(…私だけで見に行って大丈夫?)
『最悪、安全空間にどっちかを連れ込みますから安心してください』
(連れ込むってアンタ…)
私はとりあえず車庫の方へ向かった。一人で大丈夫かな…。
ギィィと車庫へ続く扉を開けると、私達が乗っていた馬車がドドンと置かれている。
「ナビさん、気配はどこら辺からするの?」
『今は馬車の下からしますね』
急にとびかかってきたりしないかな…。
ちょっとドキドキしながら、馬車の下を覗き込んだ。
すると車輪の裏側辺りに、小玉スイカくらいの大きさの半透明の丸い物体が落ちていた。
『あー、マスターこの子ですね。かなり弱っていますがスモールスライムです。良かったですね念願のスライムに会えましたよ』
「へぁ?これがスライム??ていうか、この状況で喜べねぇわ」
某RPGゲームの笑顔が張り付いた感じでもないし、洋ゲーとかのおどろおどろしい感じでもない。
なんだろ、黒蜜をかけて食べる、水なんとか餅みたいな感じ?
目も無いし、微動だにしない。
生きてるの…?
「えっと、動かないけど生きてるの…?」
『生きてます。ただ、非常に衰弱しているのでほっといたら溶けて死にます。スライム自身も助けてほしいと訴えています』
「ちょっとまって、訴えている?ナビはスライムの考えてる事が分かるの?」
『思考共有という能力を持ってますので、マスターに何かを訴えかけている魔物の思考や言葉は分かります。このスライムに敵意は有りません』
いや、いきなりそんな能力言われてもびっくりだよ!!
「あー…じゃあ、このスライムさんは助けてほしいと言ってるって事でいいのね?」
『イエス。マスターのスキルについて話したところ、助けてくれるなら従魔になっても良いとも言ってます』
「なんというご都合主義!!」
『マスター、そこは天の采配と言いましょう』
「どっちも一緒じゃい!」
まあ、とりあえず助けを求めてきてる上に、私の従魔になってくれると言ってるんだから、素直に受け取るべきなんだろうね?
「はぁ…わかったよ。で、どうすれば助けてあげられるの?回復魔法とか持ってないよ?」
『魔力回復ポーションを数滴あげれば回復すると思います』
「魔力?治癒じゃなく?」
『はい。どうも魔物除けの結界のせいで魔力切れを起こしているみたいです』
「なるほど」
結界がどういう作用を起こしているのかは分からないけど、私はアイテムボックスから魔力回復ポーションを一本取りだした。
「上からかけてあげれば良いの?」
『はい。あ、スライムには触れないように気を付けてください。皮膚が溶けて火傷みたいになります』
「ひぇ!マジか!!って事はスライムって、素手で触れないの…?」
『元気な時なら自分でコントロールできるけど、今は無理。だそうです。従魔契約をしてマスターになればいつでも触れるようになると言ってます』
「なるほど…よしわかった。じゃあポーションかけるから馬車の下から出てきてくれる?」
スライムはゆっくりと馬車の下から出てきた。
弱っているというのは確かなようで、身体の後ろの辺りはデロンと溶けかかったような感じになっている。
私はポーションの蓋を開けて、ポタポタとスライムの上に数滴と垂らしてあげた。
すると、ポーションは地面に垂れずに、すっとスライムの表面に吸収された。
「おお…珪藻土マットみたい」
『何ですかそれ?』
「液体洗剤とか味噌汁とかをこぼすと掃除が大変なやつ」
『意味が分かりません』
私とナビがそんな会話をしていると、じっと動かなかったスライムが、ぷるぷると震え出した。
「え、何か凄いぷるぷるしてるけど大丈夫?」
『めっちゃ元気になりました!!ありがとうございます!!と喜んでいるようです』
「え、あ…喜びを体で表してるのね」
『という事でマスター、このスモールスライムと契約を結びましょう』
「そこの主導はナビさんなのね?」
スライムテイムというスキルを貰った以上、早いところスライムを仲間にしたかったけど、ナビさんがやけに積極的なのが気になる。
『このスモールスライム、無属性なんですよ』
「ん?それは重要な事なの?」
『スライムは暴食と呼ばれるほど何でも取り込んで食べます。動物の腐肉や排泄物なども食べるので、大体のスライムは一番最初に毒属性になるんです。特にスモールスライムは数は少ないのに、直ぐに属性が付くので他のスライムより無属性の個体を見つけるのは大変なんです』
「ふむ。スライムが毒属性を持ってると何か問題があるの?」
『毒属性は少し厄介で、一番最初に毒属性を獲得してしまうと、それ以降に獲得した属性に全て毒がプラスされてしまうんです。例えば二番目に治癒属性を獲得して治癒ポーションを作ってもらったとしても、毒+治癒という意味の分からないものが出来上がります。麻痺属性とかでも同じく、毒+麻痺みたいな攻撃になったりします』
「はぁー、なるほどね?」
毒属性って結構強いのね…という事は、無属性のスライムちゃんに会えたのはラッキーだったのかな?
『敵を倒す事に特化させたいなら毒属性のスライムを従魔にしても良いと思いますが…マスター、神様達とお話されている時に、治癒ポーションを作れるようになって欲しいとか考えてましたよね?』
「確かにそんな事も考えてたね…って、あの時からこっちを見てたの?」
『いえ、マスター契約をしたときに記憶を少しだけ見させていただきました』
「おうふ。ナチュラルにプライバシー侵害された」
『向こうの世界での記憶などは覗いてませんので安心してください』
うん…?まあ良いか。良いのか??
「とりあえず、とってもラッキーだという事ね?」
『はい。カモがネギしょってきてくれた感じですね』
「例え方…」
とりあえず、さっきからほったらかしになっていたスライムが、みょんみょんと伸びたり縮んだりしているので、テイムしましょう。
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