私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅

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夕食は、夜間も馬車が走り続ける事を考慮してか、野菜と豆の入ったスープとライ麦パン、口直しにオレンジ付いた軽めの物だった。

馬車の揺れで食欲無くなるかなーと思っていたけど、リムさんとのおしゃべりと酔い止めのおかげか、気持ち悪さも一切なく出された食事は全部美味しく食べる事が出来た。

三十分ほど腹休めをしたのち出発となった。

先ほどと同じく、車内にはリムさんが護衛として乗り込んだ。
だけど、乗客とおしゃべりしすぎだとリーダーに怒られてしまったらしく、今回は楽しいおしゃべりは無しになってしまった。残念。

『まあ、あくまでも護衛ですからね…』
(お仕事だもんね、しゃあないわ…)

そんなこんなで1時間ほどの走ると、次の駅に着いた。大体夜の9時過ぎくらい。
そこが今日最後の休憩地点で、その後は朝までずっと走るのだ。

その為、車内で寝るための準備がされた。
車内の椅子は左右の壁に折り畳まれ、私達は床に直に座る形で乗り込んだ。

「出発する時にランプの灯りを落とすので、ご自分の手荷物はしっかり確認お願いしますー」

御者さんの言葉に、乗客たちは自分たちの荷物を確認した。

流石にこの少人数の中で盗みを働く人間はいないと思いたいけど、それでもちゃんと自分の荷物は持っておかないとだよね。

今更感が半端ないけど、ミルス様から貰っていたナイフを護身用にこそこそと腰に下げておく。

『自分の手とか切らないようにしてくださいね』
(気を付けるよ…出番が無いのが一番なんだけどね!)

あとはお財布は服の中にしまってあるし大丈夫かな。

4人家族の方も、いそいそと寝床の準備をしたりしていた。
フードを被った人物は寝転がるつもりは無いらしく、毛布を体に巻いて壁に寄りかかっている。

護衛のリムさんも、同じように毛布を体に巻いて寄りかかった。
夜間はオープンデッキで警戒にあたっている他の仲間と交代で寝るんだって。

「消灯しまーす」

御者さんの声と共に、馬車の中が徐々に暗くなりランプの灯りは完全に消えた。
とは言え、今日は月が出ているおかげで、車内は手元が見えるくらいには明るい。

私も自分で買った毛布を枕代わりにして横になった。
カバンは肩にかけたまま抱き枕の要領で抱っこする。

馬車はゆっくりと走り出した。

先ほどより速度を落として走ってはいるのだけども…

床にはフカフカの毛皮が敷かれているので冷たくは無いのだけど、椅子に座っているときよりも更にダイレクトに振動が来るので結構キツイ。

(ナビさん…この旅、結構過酷です…)
『この世界では、かなり快適で高級な移動手段ですよ』
(うん、それは分かってるけど、5日間はもたないかもです…)
『途中で降りるお客もいますから、無理はしなくてもいいと思いますよ』
(…お金勿体無いけど、マジで無理だと思ったら降りますね…)
『そこはマスターの判断に任せます』

(とりあえず、おやすみなさい…)

車輪の音と振動を感じながら目を閉じた。
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