私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

文字の大きさ
上 下
63 / 89
【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅

054

しおりを挟む
はるにれ亭で昼食をご馳走になった後、私は夕方まで王都の中をブラブラと観光していた。

魔道具店では、私が所持しているアイテムボックススキルと同じ効果を持つカバンなどが売っていたが、保管数が30個で時間停止が付いていない物でも三千万ミルスと恐ろしく高価な物だった事がわかったりした。

「いやぁ…容量無制限で時間停止が付いてる私のスキルはやべぇですね」
『何を今更言ってるんですか』

他にもいろいろなお店を見て回ていると、あっという間に時間が過ぎ駅馬車の出発時刻の30分前になった。
駅馬車の乗り場に着くと、この前来た受付の所でザラック行の馬車の受付が始まっていた。

「すみません、私もこの馬車に乗ります」
「では割符のご提示をお願いします」

「はい」

私は割符を手渡す。
受付の人が割符の片割れを合わせた。
カチリと割れ目が綺麗にくっついて一つになった。

どんな原理なんだろう?磁石みたいな感じかな?

「はい、確認いたしました。ではこの割符をあの奥の青い屋根の馬車に居る御者へ渡してください」
「わかりました」

私は符を受け取ると言われた通り青い屋根の馬車へ向かった。

そこには、御者と思われる老人と、武装した男女が4人いた。
「すみません、この馬車に乗ります」
「符を渡してくれるかい?」

私は係りの人に符を手渡した。

「確認しました。今回の乗客はお客様を含めて6人です。荷台に載せる荷物はございますか?」
「いえ、有りません」
「それでは、お好きな席に座ってください。2時間程走りましたら一度休憩になります」
「わかりました。五日間よろしくお願いします」

私はぺこりと御者さんと護衛の冒険者たちに頭を下げた。

「こちらこそご利用りがとうございます。最近は治安も良く、こちらの冒険者の方達が護衛してくれますので、安心してください」
「しっかり護衛するからまかしときな!!」

馬車は後ろ側についているオープンデッキから乗る仕組みになっているようで、梯子がかけられていた。
中に入ると馬車の両側に対面するような感じで革張りされた長椅子が設置されている。

天井からロープが垂れ下がっている。
もしかして、揺れが酷い時とかに掴まるのかな…?

あと、トイレは付いていないから、差し迫った場合は御者さんに声を掛けなければいけないようだ。

両側には大きな窓が付けられていて閉塞感は無かった。電車の椅子みたいな感じかな。
その椅子には既に5人の客が座っていた。

奥に座っている4人はどうやら家族の様で、左側にはお婆ちゃんと女の子、右側には若い夫婦が座っていて、仲良く会話をしていた。身綺麗な格好をしているから、そこそこ富裕層っぽい。

もう一人は、外套のフードを目深にかぶり右側の真ん中より後ろ辺りに座っていた。
顔は見えないが、背格好からすると男の様だ。やけにボロボロのブーツを履いている。

私は左側の一番後ろの席に座った。
ここなら、遠ざかっていく景色が良く見えそうだったから。

「出立の手続きが終わり次第出発しますので、乗客の皆様はご準備ください」
御者さんのアナウンスが聞こえてきた。

それと同時に、車内に設置されているランプに明かりが灯った。
大きい窓があるとはいえ夕暮れに近い時間帯で薄暗かった車内が明るくなった。

遠隔操作で明かりをつけられるのか、凄いな。

『マスター、酔い止めをお飲みになった方が良いのでは?』
(あ、そうだね。馬車がどれだけ揺れるかわからないしね)

私はバックから水袋と酔い止めの丸薬を取り出し一粒飲んだ。

少しすると、オープンデッキに三人の冒険者が乗り込み、梯子を外した。
そして、三人のうちの一人、女性の冒険者が馬車の中に入ってきてデッキの間にある扉を閉じてしまった。

「今日は私が車内の護衛に付きますのでよろしくお願いしますー。冒険者のリムって言います」

リムさんはそう挨拶をすると、私と対面する席に座った。
冒険者たちは、御者の横に一人、中に一人、後ろのデッキに2人の体制で護衛をするようだ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...