私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第四章.旅立ちの準備

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夕食の時間まで、ひたすらポーションを収納しまくったおかげか、収納のレベルが上がった。

「収納のLv2になると…5メートル四方の物を収納できるのか…いきなり広くなったな」
『その広さなら、戦えるんじゃないですか?動くものを収納できるのかわかりませんけど』
「うっ…それは物を放ってみたり、落ち葉とかでやってみるよ…」

ちょいちょい練習してみよう…
いきなりぶっつけ本番で魔物と対峙したくないし。


一旦、安全空間から出て食堂へ降りた。

「あ、ブロッサムさんいらっしゃい、もう用意できてます!!」
食堂に居たのは宿の娘さんのアコットちゃん。

私は昨日と同じ席に座った。

「ブロッサムさん、明日この街から出ていくってお父さんが言ってたんですけど…」
「うん、別の街で仕事探すよ」

「そうだったんですね、いいお仕事が見つかると良いですね」
「うん、ありがとう。頑張るよ。またこっちに来ることがあったら、ここに泊まらせてもらうよ」
「はい、その時は色々お話聞かせてくださいね」

そこに、アイシャさんが今晩の料理を運んできてくれた。

「今夜はコカトリスの香草焼きよ!」

私の目の前に置かれたのは、香草のいい香りのする鳥のもも肉だった。

「おぉー、良い香り!!さっそくいただきますー!!」

手をクリーンで綺麗にしてから、食べ始める。
うん。今日の料理も何故か苦い。

<<毒耐性スキル(Lv1)及び麻痺耐性(Lv1)がレベルアップし、Lv2になりました>>

はい、お約束なのかは分からないけど、スキルもレベルアップしました。
おかげ様で、口の中の苦みと痺れが無くなった。

「ブロッサムさん、解毒ポーションいりますか…?」
アコットちゃんが、心配そうに声をかけてくれる。

「大丈夫、今日はこのまま全部食べられそうだから」
「そうですか。良かったです…」

アコットちゃんはホッとした様子で、自分の部屋へ戻っていった。
どうやら、教会がおこなっている学校のようなところで出た宿題がまだ終わっていないらしい。

料理に鑑定をかけると、やっぱりニガナが入っているみたい。
何でこんなにニガナを料理に入れてるんだろう…

そんな事を考えながら食べていると、宿の玄関の方が騒がしくなった。

「おや警備隊の兵士さん達、こんなさびれた宿に何の用だい?」

リカルドさんが対応している声が聞こえる。

「我らは第五警備隊である!!この宿で許可なくポーションを作成販売しているとの通報があった。確かめさせてもらうぞ!!」
「ちょっと兵士さん!お客も居るんです、いきなりそんな事言われても困りますって!!」

ドガドカと人が入ってくる音がする。
ぱっとキッチンの方を振り向くと、渋い顔をしたアイシャさんが立っていた。

「アイシャさん、あれは本当の事ですか?」
「ええ…。ごめんなさいね変な事に巻き込んでしまって…用心してたんだけど…」

この反応は、アイシャさんがポーションを作っていたっぽいね。
私はすぐに行動を開始した。

「私は大丈夫です。あの、ポーションを作る道具とか作ったポーションはどこですか?」
「何言を言ってるの?」

アイシャさんは訝し気な顔をした。
いきなりこんな事言って怪しまれるのは当たり前だよね。
でも、時間がないからちょっと強引に話を進める。

「多分、私ならどうにか隠せると思うんです、案内してください。急いで!」

アイシャさんは渋い顔をしながら、食材保管庫へ案内してくれた。
「ここよ」

そこには、食材の山に隠れて、大きな釜やガラスでできた変な形の機材が並んでいた。
「ポーションはどこにありますか?」
「こっちの木箱が全部ポーション」

1メートル四方の木箱が5箱。
部屋は大体5メートル四方。

「よし、これならいけるかな?」

「いったい何をしようとしてるの?」
「まぁ、見ててください。念のために私より後ろに居てくださいね」

アイシャさんが後ろに下がったのを確認して、私は収納魔法を使った。
すると、食材を残しポーションの入っていた箱や、釜などの道具が綺麗さっぱり消えてしまった。

「!?」
「これでよし。変に隙間が開いちゃったな…朝買った野菜でも出しておこうかな」

私は、不自然に空いた場所に、ぽんぽんと野菜を置いて行った。
「さて、私は夕食に戻ります」

ポカンとしているアイシャさんに声をかけ、私は自分の席に戻った。


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