44 / 89
【1部】第三章.自分のスキルを確認するまでが長い
閑話3:逃亡者(後)
しおりを挟む
ピーターさんが考えた脱出計画はこうだ。
元々バートさんに渡すはずだったポーションが入った木箱を一つ増やして、そこに私が入る。
そして、そのまま冒険者ギルドまで運んでもらう。というシンプルもシンプルな方法だった。
この城は入ってくる物品には厳しいチェックが入るが、出ていくものに関してはザルだそうで、私が居なくなった事もまだ発覚いないだろうから簡単に行けるだろうとの事だ。
「なるほど、この嬢ちゃんを荷物に紛れさせて外まで運ぶってわけか」
「はい、ヤエザキ様には窮屈な思いをさせてしまいますが、これなら確実に城の外へでられますから…」
冒険者ギルドに着いたら、ピーターさんが迎えに来るらしい。
元々ピーターさんは今日この城を辞して、そのまま自分の家の領地へ帰る予定らしく、箱から出たらそちらの馬車に乗り換えるんだってさ。
領地へ着いたら、適当な戸籍を作り別人として好きに生きればいいと言ってくれた。
その為の知識やお金なども援助すると。
「ピーターさんは何でそんなに親切にしてくれるんですか?」
「…私は昔、貴方と同じように異世界から召喚され、無理やり魔道具を着けさせられた人を知っているんです。でもその時の私は子供で何もできなかった。でも今なら全員は無理でも数人なら助けられると思ったんです、訳も分からず召喚されて、道具みたいに使われるなんて間違ってますから」
そう言うピーターさんの顔は、とても真摯だった。
今までの感じから、ピーターさんが本気で私を逃がしてくれるのだという事は分かった。
私も、ここで良いように使われたくはないから、うなずいた。
「わかりました、私その中に入ります」
こうして、私は木箱に丸まって入ると蓋をされた。
自分が閉所と暗所の恐怖症じゃなくて良かった。
そのまま荷台に載せられて、さらに上からポーションが入った木箱が置かれる音がした。
私が怪我をしないように、木箱の底には折りたたんだ絨毯が敷かれ、周りにもクッションが詰められている。
「ヤエザキ様、なるべく揺れないようにしますが、頑張ってください」
「はーい」
ガラガラと荷台が動き出した。
暫くすると、ぴたりと動きが止まった。
どうやら、誰かに呼び止められたらしく話し声が聞こえてきた。
「おやおやおや、誰かと思えばガイドーン家のピーター殿ではありませんか」
「ボルシェイク家のジェファーソン様、このようなところで奇遇ですね」
「はっ!奇遇か!!貴様が惨めたらしく城から出ていく様を見に来てやったのさ!!」
「調合士の私にはとても快適な場所でございました。今日でこの場所を離れなければならないのが残念です」
「子爵の分際で我が侯爵家に逆らうから、父親もろとも城から追い出されるのだ。せいぜい田舎でポーションづくりに励むがいい。我が家の認可が得られる物が作れればの話だがな!!」
「ええ、領地にいる調合士と共に尽力いたします」
なんだか、物凄く陰険な相手に捕まっているようだ…
ピーターさんはお父さんも一緒に、話しかけてきた相手のせいでお城から追い出されちゃったみたい…。
でも、しれーっとした口調で対応してる。大人だね。
「生意気だぞ!!こんなもの、我がボルシェイク家でもっと上質な物をつくれるんだぞ!!」
ガンッ!と物凄い音がした。
どうやら私が入っている箱の側面を蹴られたようだ。
「おいボンボン!この荷物は冒険者ギルドが買い上げたもんだ。中身が割れたらどう責任を取るつもりだ?」
「何だ貴様は!?」
バートさんの低音ボイスに、箱を蹴った相手はひるんだようで声が震えている。
「鬼のバートって言えば分かるか?」
「あの宝石級冒険者!?」
「俺とこいつは急いでんだ、邪魔するんじゃねぇ。さっさと失せな!」
「ひぃぃ!お父様に言いつけてやる!!ガイドーンも覚えてろよ!!」
ジェファーソンはそんな捨て台詞を吐いて逃げて行ったようだ。
その後は、特に怪しまれることも無く馬車に積まれ、私は無事に城を脱出できたのだった。
*---*
次から新しい章になりますが、数日間投稿をお休みさせていただきます。m(_ _)m
元々バートさんに渡すはずだったポーションが入った木箱を一つ増やして、そこに私が入る。
そして、そのまま冒険者ギルドまで運んでもらう。というシンプルもシンプルな方法だった。
この城は入ってくる物品には厳しいチェックが入るが、出ていくものに関してはザルだそうで、私が居なくなった事もまだ発覚いないだろうから簡単に行けるだろうとの事だ。
「なるほど、この嬢ちゃんを荷物に紛れさせて外まで運ぶってわけか」
「はい、ヤエザキ様には窮屈な思いをさせてしまいますが、これなら確実に城の外へでられますから…」
冒険者ギルドに着いたら、ピーターさんが迎えに来るらしい。
元々ピーターさんは今日この城を辞して、そのまま自分の家の領地へ帰る予定らしく、箱から出たらそちらの馬車に乗り換えるんだってさ。
領地へ着いたら、適当な戸籍を作り別人として好きに生きればいいと言ってくれた。
その為の知識やお金なども援助すると。
「ピーターさんは何でそんなに親切にしてくれるんですか?」
「…私は昔、貴方と同じように異世界から召喚され、無理やり魔道具を着けさせられた人を知っているんです。でもその時の私は子供で何もできなかった。でも今なら全員は無理でも数人なら助けられると思ったんです、訳も分からず召喚されて、道具みたいに使われるなんて間違ってますから」
そう言うピーターさんの顔は、とても真摯だった。
今までの感じから、ピーターさんが本気で私を逃がしてくれるのだという事は分かった。
私も、ここで良いように使われたくはないから、うなずいた。
「わかりました、私その中に入ります」
こうして、私は木箱に丸まって入ると蓋をされた。
自分が閉所と暗所の恐怖症じゃなくて良かった。
そのまま荷台に載せられて、さらに上からポーションが入った木箱が置かれる音がした。
私が怪我をしないように、木箱の底には折りたたんだ絨毯が敷かれ、周りにもクッションが詰められている。
「ヤエザキ様、なるべく揺れないようにしますが、頑張ってください」
「はーい」
ガラガラと荷台が動き出した。
暫くすると、ぴたりと動きが止まった。
どうやら、誰かに呼び止められたらしく話し声が聞こえてきた。
「おやおやおや、誰かと思えばガイドーン家のピーター殿ではありませんか」
「ボルシェイク家のジェファーソン様、このようなところで奇遇ですね」
「はっ!奇遇か!!貴様が惨めたらしく城から出ていく様を見に来てやったのさ!!」
「調合士の私にはとても快適な場所でございました。今日でこの場所を離れなければならないのが残念です」
「子爵の分際で我が侯爵家に逆らうから、父親もろとも城から追い出されるのだ。せいぜい田舎でポーションづくりに励むがいい。我が家の認可が得られる物が作れればの話だがな!!」
「ええ、領地にいる調合士と共に尽力いたします」
なんだか、物凄く陰険な相手に捕まっているようだ…
ピーターさんはお父さんも一緒に、話しかけてきた相手のせいでお城から追い出されちゃったみたい…。
でも、しれーっとした口調で対応してる。大人だね。
「生意気だぞ!!こんなもの、我がボルシェイク家でもっと上質な物をつくれるんだぞ!!」
ガンッ!と物凄い音がした。
どうやら私が入っている箱の側面を蹴られたようだ。
「おいボンボン!この荷物は冒険者ギルドが買い上げたもんだ。中身が割れたらどう責任を取るつもりだ?」
「何だ貴様は!?」
バートさんの低音ボイスに、箱を蹴った相手はひるんだようで声が震えている。
「鬼のバートって言えば分かるか?」
「あの宝石級冒険者!?」
「俺とこいつは急いでんだ、邪魔するんじゃねぇ。さっさと失せな!」
「ひぃぃ!お父様に言いつけてやる!!ガイドーンも覚えてろよ!!」
ジェファーソンはそんな捨て台詞を吐いて逃げて行ったようだ。
その後は、特に怪しまれることも無く馬車に積まれ、私は無事に城を脱出できたのだった。
*---*
次から新しい章になりますが、数日間投稿をお休みさせていただきます。m(_ _)m
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。


強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる