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【1部】第三章.自分のスキルを確認するまでが長い
閑話3:逃亡者(前)
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私の名前は八重咲さくら。この春に大学2年になった。
授業で同じグループになったメンバーたちと、課題の完成を祝ってカラオケに行った帰りに突然異世界に召喚された。
突然の事で驚いたけど、いわゆる異世界転移物の小説が現実に起きたのだろう。
これはチャンスかもしれない。私はそう思った。
「ねえ、ヤエ!!あんたどんなスキル持ってるの?」
そう聞いてきたのは、同じグループのメンバーでもあり、小学生の頃からの幼馴染でもある桜庭優香だった。
明るくて面倒見のいい優香と、人見知りで内向的な私。端から見たらそんな関係らしい。
私は彼女が嫌いだ。特に彼女が私を「ヤエ」と呼ぶのが大嫌いだ。
私の「さくら」という名前と、自分の「桜庭」という苗字が似ているから自分を呼んでいる気がして嫌なのだ。と言って、私の事を「ヤエ」と呼び他人にもこれを広めた。
それだけじゃない。
私が好きになった人や、彼氏を横取りするのが大好きなのだ。
宿題や課題も、だまってノートを持って行ったりする。
だけど、取り繕うのがうまくて、いつも私が悪者になるのだ。
ずっと距離を置きたかったのに、母親同士が仲がいいせいで私から拒絶する事は出来なかった。
高校だって一生懸命勉強してあの子と一緒にならないようにしたのに、知らない内にあの子は推薦で入って来た。
私の母親から聞き出したのだとか…。
だから、大学受験の時は推薦の締め切りが過ぎるまで、どこを受けるのか教えなかったのに!
大学の入学式であの子の姿を見た時は絶望した。やっと離れられると思っていたのに!!
だから、この異世界召喚はチャンスだと思った。
私は自分のスキルを見てみた。
===
【名前】八重咲 さくら
【性別】女
【年齢】19
【職業】大学生
【称号】召喚者されし者、5柱神の寵愛者
【スキル】
薬調合(Lv1)
・治癒ポーション (低品質)
・解毒ポーション (低品質)
鑑定
アイテムボックス
===
どうやら私のスキルはポーション作成のようだ。
「優香ちゃん、私のスキルは…薬調合だって」
「なにそのスキルうけるんだけどー!私は何と聖女だって!!凄くない!?」
「…へぇ、それは凄いね」
人の物を取ったりする人間が聖女か。笑えてくる。
他にも高校生や、サラリーマンの人も居たし、私と同い年なのにスーツを着ている女性もいた。
その女性は、突然の事態なのになんだか余裕そうな雰囲気で印象に残った。
その後、私達は別の部屋へ案内されて、お茶を飲んだりして王様に謁見するまで待機していた。
「何で彼女だけ居ないんだ!」
突然、サラリーマンの男性が大声を上げ、役人の人たちを押しのけて部屋から出て行った。
ぐるりと部屋を見渡せば、先ほどまで一緒にいたスーツの女性だけ居ない。
そして私はこの国に居たらヤバいんじゃないかと思い始めていた。
さっき、魔王討伐をしてほしいと言っていた宰相さん。あの人の服装がやけに豪華だったのだ。
国が疲弊していると聞いていたのに、お城の中も豪華絢爛だしテーブルに出ているお菓子も豪華。
言ってる事と合っていない。
皆は、自分たちは選ばれたものだとか舞い上がってるけど…絶対に悪い事に利用されると思う。
どうしよう…今ならこっそり出て行けるかな…
でも、ここに居たら絶対にヤバい。
私一人で逃げる。
他の人たちなんて知らない。
グループメンバーだってそう。資料から現地の下調べ、課題の作成まで全部私がやったの。
他のメンバーは皆、優香の言いなりでただ遊ぶか、私を馬鹿にするだけだった。
ゴメンね。とか言うだけ言って、何も手伝ってくれなかった人もいた。
そんな人達の事なんて知らない。
私のスキルだったら、街に降りても食べて行けると思う。
ポーションって、こういう世界では結構重要だと思うんだ。
でも、部屋にいる騎士の人たちが目を光らせていて、ヘタに動けない。
じっと機会をうかがっていると、壁の一部が少しだけ動いて、そこから眼鏡をかけた男性が出てきた。
あそこ、隠し扉になってるのか…
私は意を決してそのから出てきた男性に声をかけた。
「あの…もう一人女性がいたと思うんですが、彼女はどうしたんでしょうか…?」
私が声をかけると、男性はびっくりした顔をしたかと思うと、なぜかわからないけど顔を赤くした。
何だろう?
「あなたは…薬調合をお持ちのヤエザキ様でしたか?」
「は、はい!」
この人、私の名前知ってるんだ。ちょっとびっくりした。
男性は、そっと辺りを伺うと壁の隠し扉を少しだけ開いてこういった。
「ここでは詳しくは話せませんので、こちらに来てください…」
えっと、人気のない所に誘導されてる?
大丈夫かなこの人…この人に付いて行って大丈夫かな…ちょっと不安になって来た。
「えっっと…」
「他の方々にはあまり聞かれたくありませんので…」
私が迷っていると、男性は真剣な顔でそう言ったので、私はとりあえず話を聞くことにした。
いざとなったら大声を出せばきっと大丈夫…
こうして、私は眼鏡の男性と隠し扉の奥にある部屋へ入った。
授業で同じグループになったメンバーたちと、課題の完成を祝ってカラオケに行った帰りに突然異世界に召喚された。
突然の事で驚いたけど、いわゆる異世界転移物の小説が現実に起きたのだろう。
これはチャンスかもしれない。私はそう思った。
「ねえ、ヤエ!!あんたどんなスキル持ってるの?」
そう聞いてきたのは、同じグループのメンバーでもあり、小学生の頃からの幼馴染でもある桜庭優香だった。
明るくて面倒見のいい優香と、人見知りで内向的な私。端から見たらそんな関係らしい。
私は彼女が嫌いだ。特に彼女が私を「ヤエ」と呼ぶのが大嫌いだ。
私の「さくら」という名前と、自分の「桜庭」という苗字が似ているから自分を呼んでいる気がして嫌なのだ。と言って、私の事を「ヤエ」と呼び他人にもこれを広めた。
それだけじゃない。
私が好きになった人や、彼氏を横取りするのが大好きなのだ。
宿題や課題も、だまってノートを持って行ったりする。
だけど、取り繕うのがうまくて、いつも私が悪者になるのだ。
ずっと距離を置きたかったのに、母親同士が仲がいいせいで私から拒絶する事は出来なかった。
高校だって一生懸命勉強してあの子と一緒にならないようにしたのに、知らない内にあの子は推薦で入って来た。
私の母親から聞き出したのだとか…。
だから、大学受験の時は推薦の締め切りが過ぎるまで、どこを受けるのか教えなかったのに!
大学の入学式であの子の姿を見た時は絶望した。やっと離れられると思っていたのに!!
だから、この異世界召喚はチャンスだと思った。
私は自分のスキルを見てみた。
===
【名前】八重咲 さくら
【性別】女
【年齢】19
【職業】大学生
【称号】召喚者されし者、5柱神の寵愛者
【スキル】
薬調合(Lv1)
・治癒ポーション (低品質)
・解毒ポーション (低品質)
鑑定
アイテムボックス
===
どうやら私のスキルはポーション作成のようだ。
「優香ちゃん、私のスキルは…薬調合だって」
「なにそのスキルうけるんだけどー!私は何と聖女だって!!凄くない!?」
「…へぇ、それは凄いね」
人の物を取ったりする人間が聖女か。笑えてくる。
他にも高校生や、サラリーマンの人も居たし、私と同い年なのにスーツを着ている女性もいた。
その女性は、突然の事態なのになんだか余裕そうな雰囲気で印象に残った。
その後、私達は別の部屋へ案内されて、お茶を飲んだりして王様に謁見するまで待機していた。
「何で彼女だけ居ないんだ!」
突然、サラリーマンの男性が大声を上げ、役人の人たちを押しのけて部屋から出て行った。
ぐるりと部屋を見渡せば、先ほどまで一緒にいたスーツの女性だけ居ない。
そして私はこの国に居たらヤバいんじゃないかと思い始めていた。
さっき、魔王討伐をしてほしいと言っていた宰相さん。あの人の服装がやけに豪華だったのだ。
国が疲弊していると聞いていたのに、お城の中も豪華絢爛だしテーブルに出ているお菓子も豪華。
言ってる事と合っていない。
皆は、自分たちは選ばれたものだとか舞い上がってるけど…絶対に悪い事に利用されると思う。
どうしよう…今ならこっそり出て行けるかな…
でも、ここに居たら絶対にヤバい。
私一人で逃げる。
他の人たちなんて知らない。
グループメンバーだってそう。資料から現地の下調べ、課題の作成まで全部私がやったの。
他のメンバーは皆、優香の言いなりでただ遊ぶか、私を馬鹿にするだけだった。
ゴメンね。とか言うだけ言って、何も手伝ってくれなかった人もいた。
そんな人達の事なんて知らない。
私のスキルだったら、街に降りても食べて行けると思う。
ポーションって、こういう世界では結構重要だと思うんだ。
でも、部屋にいる騎士の人たちが目を光らせていて、ヘタに動けない。
じっと機会をうかがっていると、壁の一部が少しだけ動いて、そこから眼鏡をかけた男性が出てきた。
あそこ、隠し扉になってるのか…
私は意を決してそのから出てきた男性に声をかけた。
「あの…もう一人女性がいたと思うんですが、彼女はどうしたんでしょうか…?」
私が声をかけると、男性はびっくりした顔をしたかと思うと、なぜかわからないけど顔を赤くした。
何だろう?
「あなたは…薬調合をお持ちのヤエザキ様でしたか?」
「は、はい!」
この人、私の名前知ってるんだ。ちょっとびっくりした。
男性は、そっと辺りを伺うと壁の隠し扉を少しだけ開いてこういった。
「ここでは詳しくは話せませんので、こちらに来てください…」
えっと、人気のない所に誘導されてる?
大丈夫かなこの人…この人に付いて行って大丈夫かな…ちょっと不安になって来た。
「えっっと…」
「他の方々にはあまり聞かれたくありませんので…」
私が迷っていると、男性は真剣な顔でそう言ったので、私はとりあえず話を聞くことにした。
いざとなったら大声を出せばきっと大丈夫…
こうして、私は眼鏡の男性と隠し扉の奥にある部屋へ入った。
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