私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

文字の大きさ
上 下
47 / 89
【1部】第四章.旅立ちの準備

040

しおりを挟む
はるにれ亭に戻ると、カウンターにいたリカルドさんに声をかけ部屋へ戻った。

とりあえず、購入してきた物を全て整理しなければ。
購入した物を、身に着ける物に関してはクリーンの魔法をかけてからアイテムボックスへ放り込んでいく。

「買ってきた荷物に関してはこれでオッケーだね」

『そうですね。あとは食料を買っておいた方がよいのではないでしょうか?』
「うん。王都に長居する気は無いからね…お昼食べがてら旅の道具も買いに行こう。あとさ、冒険者ギルドに行って、冒険者登録をしようと思うんだけど、どう思う?」

お金を稼ぐ手段として、やはり冒険者になるのが一番手っ取り早いと思っている。
絶対安全空間を持っているから、定住先を探す必要も無いし、色々な街を歩くなら冒険者か商人が一番違和感が無いだろう。

『そうですね…お金を稼ぐ為にも冒険者登録自体は賛成ですが、この街で登録する事はオススメしません』
「それは何故?」

『冒険者の登録証を手に入れれば国を問わず色々な街に入ることができますが、最初に登録した街が本拠地として設定されてしまいます』
「それが悪いと?」

『はい。グラム国内にある冒険者ギルドの本部はこの王都にあるんです。その為グラム国側から最近登録した冒険者の情報を見せろと言われてしまうと、この街のギルドは拒否できません』

「冒険者ギルドの方が立場は上なんじゃないの?」

『もちろん上です。が、国内に支部を置く条件の一つに、情報開示請求に対する拒否権の放棄があったりします』
「うへ…」

『ただ、この条件には抜け道がありまして、これに従わなければいけないのはその国において本部機能を有した支部だけなんです。同じ国内でもそれ以外の支部は情報開示請求を受けても拒否できちゃうんです』
「なるほど。ていうかザルじゃないかい?その条件」

『貨幣で首根っこ押さえつけられてる国が、そこまで強気な条件を冒険者ギルドに突きつけられませんよ』
「そ、そうか…やっぱり冒険者ギルド怖いな」

『ですので、この街以外の冒険者ギルドでの登録をお勧めします』
「わかった。王都での登録は諦める。お勧めの街はある?」

『ザラックという国境の街ですね。隣国も安定している良い国ですし』
「国境…隣国で登録する事はできないの?」

『国境を超えるには身分証明書が必要になります。一番手早く簡単に作れる身分証明書が、冒険者のランク徽章になります』
「それ以外の身分証明書の場合はどうやって取得するの?」

『国境の街の領主に申請します。金額は5000ミルス程度ですが、出身や、家族構成などを書かなければいけませんのでマスターは無理です。それこそ書類申請は看破のスキルでチェックされます。申請から発行まで1週間かかりますし』

「なるほど…この国を出るためには冒険者登録しか無いって事か…」

『脛に傷を持っていると大変ですね』
「悪人扱いしないで欲しいかなぁー?」

とりあえず、行先は決まった。

「ここからザラックまではどのくらいかかるの?」
『駅馬車で7日くらいですね』
「駅馬車って、いわゆる乗合馬車みたいな感じ?」

『はい。乗合馬車の長距離版みたいなものです。料金は少し高いですが、朝夕の食事付きで護衛もついています』
「ほほぅ…いいじゃんいいじゃん!!」

『ただ、休憩時間以外は夜間も走り続けるので、振動が辛くて途中で降りるお客さんも居たりします』
「え、もしかして座ったまま寝るの?」
『いえ、座席をしまって雑魚寝する感じですね』
「なるほど…」

『ちなみに徒歩ですと、マスターの体力から考えて一か月はかかります』
「それはもう、駅馬車使うしかないでしょ!!」

駅馬車の事をナビに詳しく聞くと、乗合馬車や駅馬車も前に召喚された人が考えた物らしい。
乗合馬車は街中を決められたルートで走るものと、近隣の街とを行き来するものがある、路線バスのような感じ。

駅馬車という物は長距離の街と街を結ぶ定期馬車で、所々にある【駅】で馬を替え、馬の休憩や給水時間を無くした画期的なシステムで運用されているんだって。

王都からザラックまでの道のりは、平原のど真ん中をひたすら走るだけなのでそこまで危険ではないけれど、野党や魔獣が出ないわけでは無いので護衛がつくんだって。

この護衛も、馬車の運営会社が冒険者ギルドに依頼を出して雇っているので、護衛する冒険者のランクと人数で馬車の料金が変動するそうだ。

冒険者のランクの事も気にはなったが、とりあえずは王都を出る準備が先だね。
こうして私は、やっとこさ王都から出立する準備を始めたのだった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...