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【1部】第三章.自分のスキルを確認するまでが長い
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服を着替え終わり物置部屋から出ると、エリザさんが待ち構えていた。
「あらあらあら…」
私の姿を見たエリザさんは、ちょっと困った顔をしている。
「あの…この格好変ですか…?」
どうしよう、目の前にいるエリザさんと同じような服装だと思うんだけど…
「いいえ、まったく変では無いわ。とても可愛らしいわ…だけど、その恰好でこの店から出すわけにはいかないわね…」
「え、この格好だと何かまずいですかね…?」
何だろう、何がいけないんだろう??
「もう一度部屋に入って待っていてちょうだい」
「え?わ、分かりました」
何が何やら分からず、私はもう一度物置部屋へ戻った。
暫く待っていると、エリザさんがいくつか服を抱えて部屋に入って来た。
エリザさんは、おもむろに部屋の鍵をガチャリとかけた。
なんだか様子が変だ。
「あの…どうかしましたか?」
「店に入ってきた時から思っていたけど、あなたちょっと警戒心無さ過ぎよ?」
「え、どういうことですか…」
こちらを向いて、冷たく笑うエリザさん。
「簡単に人を信じすぎってことよ。夫と私があなたを捕まえて娼館に売り飛ばすとか考えなかったの?」
「!?」
何という事だ!?
良い人だと思っていたのに騙された??でも、私には逃げるすべがない…!どうしよう!!
じりじりと後ろに下がりながら逃げられそうな場所を探すが窓さえない。
後ろはもう壁だ。絶体絶命だ!!
「そ、それは犯罪では…?」
「ええそうね。でもバレなければ犯罪じゃないのよ?あなたみたいな若い女の子が、体の線がまるわかりな服着てるんだもの、いい商品になると思うのは当然でしょう?」
「っ!!」
これはマジでやべー!
マジで終わったー!!
「なーんてね!冗談よ!!冗談!!」
「へっ!?」
突然、アッハッハッハと豪快に笑いながらエリザさんが背中をバシバシ叩いた。いてぇ…
「ま、警戒心が無さ過ぎっていうのは本当よ。あなたの後をつけてこの店の前をうろついてる連中が居るわ」
「ゲッホ……ま…マジですか…?」
そんなの気が付かなかったよ…いや、城から付いてきてる人はいたけどさ。
「あんな連中の居るところに、まさに女の子です。なんていう服装で出せないわ」
「は、はい…」
「とりあえず、全部脱ぎなさい!!」
「わかりました!」
その後、エリザさん指示の元、私は男の物のシャツにベストとズボンを身に着け、その上から柔らかい生地のジャケットを羽織り、編み上げブーツを履いた。
「これで少しは体系をごまかせるかしらね。あとはその長い髪だけど…」
「バッサリ切っちゃいましょうか?」
「駄目よ!!そんな綺麗な黒髪、滅多にお目に掛かれないわ!!」
「え、そうですか」
「いざという時に売るために伸ばしておきなさい!」
「あ、はい」
メッチャ生活感のあるお言葉いただきました!
「とりあえず縛って、帽子を被ればいいわね」
エリザさんが革紐で手早く髪を縛ってキャスケット帽をかぶせてくれた。
「ま、これで多少は男っぽくなったかしらね」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、カバンをかけて、最後にこの外套を付ければ…完成!」
じゃじゃーん。旅人風コスチューム完成だ!
「おお…とっても動きやすいです…」
「うんうん、これなら大丈夫ね。さっきのワンピースとかはカバンに入れてあるから、もっと治安の良い場所に着くまで取っておきなさい」
「ありがとうございます」
「じゃあこれ。あなたが着ていた服と靴、カバンの買い取り料ね。あんまり高く買い取ってあげられないけど金貨5枚。今あなたが着ている服の代金は要らないわ。おまけしてあげる」
「え、でも…!」
「良いのよ!今度来るときに、沢山買い物してちょうだいな」
そう言ってエルザさんが部屋の一角に積んであった荷物をごそごそと横にずらした。
するとその奥から扉がでてきた。
「じゃあ、取引も無事に済んだし、ここから逃げてもらいましょうか」
「え!」
「夫がここを紹介したって事は、宿も紹介してもらってるんでしょう?あそこの店主は顔も怖いし口も悪いけど、悪人じゃないから安心してちょうだい」
「何から何までありがとうございます…」
「うちの夫って時々こうやって、危なっかしくて見て居られない人間をこの店に呼ぶのよ。きっと趣味なんでしょうね」
「危なっかしい…確かに、私危機感薄かったかもしれません。これからは気を付けます…」
「うんうん、そうして頂戴。じゃないと私達も手助けした意味が無くなっちゃうから」
エルザさんはカラカラと笑った。
本当に良い人達だ…オジサンにも感謝だ。
会ってすぐの人間を信じるなんて、それこそ危機感が無いかもしれない。
だけど、あの案内眼鏡も兵士のオジサンも、このエルザさんも信じたい。
「扉を出たら右側に走りなさい。突き当りを曲がって道なりに行けば宿のすぐ近くに出るから。気を付けていくのよ?」
「ありがとうございました。私の名前はブロッサムっていいます。落ち着いたら絶対に買い物に来ます」
「ブロッサムね、また来てくれるの楽しみにしているわ」
私は扉を開けるのと同時に、自分の名前を「山野 樹」から「ブロッサム」へ戻した。
ここから先、私はフォンティーで暮らすブロッサムになるのだ。
「それじゃ、ありがとうございました!!」
私は一気に外に駆け出した。
「あらあらあら…」
私の姿を見たエリザさんは、ちょっと困った顔をしている。
「あの…この格好変ですか…?」
どうしよう、目の前にいるエリザさんと同じような服装だと思うんだけど…
「いいえ、まったく変では無いわ。とても可愛らしいわ…だけど、その恰好でこの店から出すわけにはいかないわね…」
「え、この格好だと何かまずいですかね…?」
何だろう、何がいけないんだろう??
「もう一度部屋に入って待っていてちょうだい」
「え?わ、分かりました」
何が何やら分からず、私はもう一度物置部屋へ戻った。
暫く待っていると、エリザさんがいくつか服を抱えて部屋に入って来た。
エリザさんは、おもむろに部屋の鍵をガチャリとかけた。
なんだか様子が変だ。
「あの…どうかしましたか?」
「店に入ってきた時から思っていたけど、あなたちょっと警戒心無さ過ぎよ?」
「え、どういうことですか…」
こちらを向いて、冷たく笑うエリザさん。
「簡単に人を信じすぎってことよ。夫と私があなたを捕まえて娼館に売り飛ばすとか考えなかったの?」
「!?」
何という事だ!?
良い人だと思っていたのに騙された??でも、私には逃げるすべがない…!どうしよう!!
じりじりと後ろに下がりながら逃げられそうな場所を探すが窓さえない。
後ろはもう壁だ。絶体絶命だ!!
「そ、それは犯罪では…?」
「ええそうね。でもバレなければ犯罪じゃないのよ?あなたみたいな若い女の子が、体の線がまるわかりな服着てるんだもの、いい商品になると思うのは当然でしょう?」
「っ!!」
これはマジでやべー!
マジで終わったー!!
「なーんてね!冗談よ!!冗談!!」
「へっ!?」
突然、アッハッハッハと豪快に笑いながらエリザさんが背中をバシバシ叩いた。いてぇ…
「ま、警戒心が無さ過ぎっていうのは本当よ。あなたの後をつけてこの店の前をうろついてる連中が居るわ」
「ゲッホ……ま…マジですか…?」
そんなの気が付かなかったよ…いや、城から付いてきてる人はいたけどさ。
「あんな連中の居るところに、まさに女の子です。なんていう服装で出せないわ」
「は、はい…」
「とりあえず、全部脱ぎなさい!!」
「わかりました!」
その後、エリザさん指示の元、私は男の物のシャツにベストとズボンを身に着け、その上から柔らかい生地のジャケットを羽織り、編み上げブーツを履いた。
「これで少しは体系をごまかせるかしらね。あとはその長い髪だけど…」
「バッサリ切っちゃいましょうか?」
「駄目よ!!そんな綺麗な黒髪、滅多にお目に掛かれないわ!!」
「え、そうですか」
「いざという時に売るために伸ばしておきなさい!」
「あ、はい」
メッチャ生活感のあるお言葉いただきました!
「とりあえず縛って、帽子を被ればいいわね」
エリザさんが革紐で手早く髪を縛ってキャスケット帽をかぶせてくれた。
「ま、これで多少は男っぽくなったかしらね」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、カバンをかけて、最後にこの外套を付ければ…完成!」
じゃじゃーん。旅人風コスチューム完成だ!
「おお…とっても動きやすいです…」
「うんうん、これなら大丈夫ね。さっきのワンピースとかはカバンに入れてあるから、もっと治安の良い場所に着くまで取っておきなさい」
「ありがとうございます」
「じゃあこれ。あなたが着ていた服と靴、カバンの買い取り料ね。あんまり高く買い取ってあげられないけど金貨5枚。今あなたが着ている服の代金は要らないわ。おまけしてあげる」
「え、でも…!」
「良いのよ!今度来るときに、沢山買い物してちょうだいな」
そう言ってエルザさんが部屋の一角に積んであった荷物をごそごそと横にずらした。
するとその奥から扉がでてきた。
「じゃあ、取引も無事に済んだし、ここから逃げてもらいましょうか」
「え!」
「夫がここを紹介したって事は、宿も紹介してもらってるんでしょう?あそこの店主は顔も怖いし口も悪いけど、悪人じゃないから安心してちょうだい」
「何から何までありがとうございます…」
「うちの夫って時々こうやって、危なっかしくて見て居られない人間をこの店に呼ぶのよ。きっと趣味なんでしょうね」
「危なっかしい…確かに、私危機感薄かったかもしれません。これからは気を付けます…」
「うんうん、そうして頂戴。じゃないと私達も手助けした意味が無くなっちゃうから」
エルザさんはカラカラと笑った。
本当に良い人達だ…オジサンにも感謝だ。
会ってすぐの人間を信じるなんて、それこそ危機感が無いかもしれない。
だけど、あの案内眼鏡も兵士のオジサンも、このエルザさんも信じたい。
「扉を出たら右側に走りなさい。突き当りを曲がって道なりに行けば宿のすぐ近くに出るから。気を付けていくのよ?」
「ありがとうございました。私の名前はブロッサムっていいます。落ち着いたら絶対に買い物に来ます」
「ブロッサムね、また来てくれるの楽しみにしているわ」
私は扉を開けるのと同時に、自分の名前を「山野 樹」から「ブロッサム」へ戻した。
ここから先、私はフォンティーで暮らすブロッサムになるのだ。
「それじゃ、ありがとうございました!!」
私は一気に外に駆け出した。
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