27 / 89
【1部】第三章.自分のスキルを確認するまでが長い
024
しおりを挟む
服を着替え終わり物置部屋から出ると、エリザさんが待ち構えていた。
「あらあらあら…」
私の姿を見たエリザさんは、ちょっと困った顔をしている。
「あの…この格好変ですか…?」
どうしよう、目の前にいるエリザさんと同じような服装だと思うんだけど…
「いいえ、まったく変では無いわ。とても可愛らしいわ…だけど、その恰好でこの店から出すわけにはいかないわね…」
「え、この格好だと何かまずいですかね…?」
何だろう、何がいけないんだろう??
「もう一度部屋に入って待っていてちょうだい」
「え?わ、分かりました」
何が何やら分からず、私はもう一度物置部屋へ戻った。
暫く待っていると、エリザさんがいくつか服を抱えて部屋に入って来た。
エリザさんは、おもむろに部屋の鍵をガチャリとかけた。
なんだか様子が変だ。
「あの…どうかしましたか?」
「店に入ってきた時から思っていたけど、あなたちょっと警戒心無さ過ぎよ?」
「え、どういうことですか…」
こちらを向いて、冷たく笑うエリザさん。
「簡単に人を信じすぎってことよ。夫と私があなたを捕まえて娼館に売り飛ばすとか考えなかったの?」
「!?」
何という事だ!?
良い人だと思っていたのに騙された??でも、私には逃げるすべがない…!どうしよう!!
じりじりと後ろに下がりながら逃げられそうな場所を探すが窓さえない。
後ろはもう壁だ。絶体絶命だ!!
「そ、それは犯罪では…?」
「ええそうね。でもバレなければ犯罪じゃないのよ?あなたみたいな若い女の子が、体の線がまるわかりな服着てるんだもの、いい商品になると思うのは当然でしょう?」
「っ!!」
これはマジでやべー!
マジで終わったー!!
「なーんてね!冗談よ!!冗談!!」
「へっ!?」
突然、アッハッハッハと豪快に笑いながらエリザさんが背中をバシバシ叩いた。いてぇ…
「ま、警戒心が無さ過ぎっていうのは本当よ。あなたの後をつけてこの店の前をうろついてる連中が居るわ」
「ゲッホ……ま…マジですか…?」
そんなの気が付かなかったよ…いや、城から付いてきてる人はいたけどさ。
「あんな連中の居るところに、まさに女の子です。なんていう服装で出せないわ」
「は、はい…」
「とりあえず、全部脱ぎなさい!!」
「わかりました!」
その後、エリザさん指示の元、私は男の物のシャツにベストとズボンを身に着け、その上から柔らかい生地のジャケットを羽織り、編み上げブーツを履いた。
「これで少しは体系をごまかせるかしらね。あとはその長い髪だけど…」
「バッサリ切っちゃいましょうか?」
「駄目よ!!そんな綺麗な黒髪、滅多にお目に掛かれないわ!!」
「え、そうですか」
「いざという時に売るために伸ばしておきなさい!」
「あ、はい」
メッチャ生活感のあるお言葉いただきました!
「とりあえず縛って、帽子を被ればいいわね」
エリザさんが革紐で手早く髪を縛ってキャスケット帽をかぶせてくれた。
「ま、これで多少は男っぽくなったかしらね」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、カバンをかけて、最後にこの外套を付ければ…完成!」
じゃじゃーん。旅人風コスチューム完成だ!
「おお…とっても動きやすいです…」
「うんうん、これなら大丈夫ね。さっきのワンピースとかはカバンに入れてあるから、もっと治安の良い場所に着くまで取っておきなさい」
「ありがとうございます」
「じゃあこれ。あなたが着ていた服と靴、カバンの買い取り料ね。あんまり高く買い取ってあげられないけど金貨5枚。今あなたが着ている服の代金は要らないわ。おまけしてあげる」
「え、でも…!」
「良いのよ!今度来るときに、沢山買い物してちょうだいな」
そう言ってエルザさんが部屋の一角に積んであった荷物をごそごそと横にずらした。
するとその奥から扉がでてきた。
「じゃあ、取引も無事に済んだし、ここから逃げてもらいましょうか」
「え!」
「夫がここを紹介したって事は、宿も紹介してもらってるんでしょう?あそこの店主は顔も怖いし口も悪いけど、悪人じゃないから安心してちょうだい」
「何から何までありがとうございます…」
「うちの夫って時々こうやって、危なっかしくて見て居られない人間をこの店に呼ぶのよ。きっと趣味なんでしょうね」
「危なっかしい…確かに、私危機感薄かったかもしれません。これからは気を付けます…」
「うんうん、そうして頂戴。じゃないと私達も手助けした意味が無くなっちゃうから」
エルザさんはカラカラと笑った。
本当に良い人達だ…オジサンにも感謝だ。
会ってすぐの人間を信じるなんて、それこそ危機感が無いかもしれない。
だけど、あの案内眼鏡も兵士のオジサンも、このエルザさんも信じたい。
「扉を出たら右側に走りなさい。突き当りを曲がって道なりに行けば宿のすぐ近くに出るから。気を付けていくのよ?」
「ありがとうございました。私の名前はブロッサムっていいます。落ち着いたら絶対に買い物に来ます」
「ブロッサムね、また来てくれるの楽しみにしているわ」
私は扉を開けるのと同時に、自分の名前を「山野 樹」から「ブロッサム」へ戻した。
ここから先、私はフォンティーで暮らすブロッサムになるのだ。
「それじゃ、ありがとうございました!!」
私は一気に外に駆け出した。
「あらあらあら…」
私の姿を見たエリザさんは、ちょっと困った顔をしている。
「あの…この格好変ですか…?」
どうしよう、目の前にいるエリザさんと同じような服装だと思うんだけど…
「いいえ、まったく変では無いわ。とても可愛らしいわ…だけど、その恰好でこの店から出すわけにはいかないわね…」
「え、この格好だと何かまずいですかね…?」
何だろう、何がいけないんだろう??
「もう一度部屋に入って待っていてちょうだい」
「え?わ、分かりました」
何が何やら分からず、私はもう一度物置部屋へ戻った。
暫く待っていると、エリザさんがいくつか服を抱えて部屋に入って来た。
エリザさんは、おもむろに部屋の鍵をガチャリとかけた。
なんだか様子が変だ。
「あの…どうかしましたか?」
「店に入ってきた時から思っていたけど、あなたちょっと警戒心無さ過ぎよ?」
「え、どういうことですか…」
こちらを向いて、冷たく笑うエリザさん。
「簡単に人を信じすぎってことよ。夫と私があなたを捕まえて娼館に売り飛ばすとか考えなかったの?」
「!?」
何という事だ!?
良い人だと思っていたのに騙された??でも、私には逃げるすべがない…!どうしよう!!
じりじりと後ろに下がりながら逃げられそうな場所を探すが窓さえない。
後ろはもう壁だ。絶体絶命だ!!
「そ、それは犯罪では…?」
「ええそうね。でもバレなければ犯罪じゃないのよ?あなたみたいな若い女の子が、体の線がまるわかりな服着てるんだもの、いい商品になると思うのは当然でしょう?」
「っ!!」
これはマジでやべー!
マジで終わったー!!
「なーんてね!冗談よ!!冗談!!」
「へっ!?」
突然、アッハッハッハと豪快に笑いながらエリザさんが背中をバシバシ叩いた。いてぇ…
「ま、警戒心が無さ過ぎっていうのは本当よ。あなたの後をつけてこの店の前をうろついてる連中が居るわ」
「ゲッホ……ま…マジですか…?」
そんなの気が付かなかったよ…いや、城から付いてきてる人はいたけどさ。
「あんな連中の居るところに、まさに女の子です。なんていう服装で出せないわ」
「は、はい…」
「とりあえず、全部脱ぎなさい!!」
「わかりました!」
その後、エリザさん指示の元、私は男の物のシャツにベストとズボンを身に着け、その上から柔らかい生地のジャケットを羽織り、編み上げブーツを履いた。
「これで少しは体系をごまかせるかしらね。あとはその長い髪だけど…」
「バッサリ切っちゃいましょうか?」
「駄目よ!!そんな綺麗な黒髪、滅多にお目に掛かれないわ!!」
「え、そうですか」
「いざという時に売るために伸ばしておきなさい!」
「あ、はい」
メッチャ生活感のあるお言葉いただきました!
「とりあえず縛って、帽子を被ればいいわね」
エリザさんが革紐で手早く髪を縛ってキャスケット帽をかぶせてくれた。
「ま、これで多少は男っぽくなったかしらね」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、カバンをかけて、最後にこの外套を付ければ…完成!」
じゃじゃーん。旅人風コスチューム完成だ!
「おお…とっても動きやすいです…」
「うんうん、これなら大丈夫ね。さっきのワンピースとかはカバンに入れてあるから、もっと治安の良い場所に着くまで取っておきなさい」
「ありがとうございます」
「じゃあこれ。あなたが着ていた服と靴、カバンの買い取り料ね。あんまり高く買い取ってあげられないけど金貨5枚。今あなたが着ている服の代金は要らないわ。おまけしてあげる」
「え、でも…!」
「良いのよ!今度来るときに、沢山買い物してちょうだいな」
そう言ってエルザさんが部屋の一角に積んであった荷物をごそごそと横にずらした。
するとその奥から扉がでてきた。
「じゃあ、取引も無事に済んだし、ここから逃げてもらいましょうか」
「え!」
「夫がここを紹介したって事は、宿も紹介してもらってるんでしょう?あそこの店主は顔も怖いし口も悪いけど、悪人じゃないから安心してちょうだい」
「何から何までありがとうございます…」
「うちの夫って時々こうやって、危なっかしくて見て居られない人間をこの店に呼ぶのよ。きっと趣味なんでしょうね」
「危なっかしい…確かに、私危機感薄かったかもしれません。これからは気を付けます…」
「うんうん、そうして頂戴。じゃないと私達も手助けした意味が無くなっちゃうから」
エルザさんはカラカラと笑った。
本当に良い人達だ…オジサンにも感謝だ。
会ってすぐの人間を信じるなんて、それこそ危機感が無いかもしれない。
だけど、あの案内眼鏡も兵士のオジサンも、このエルザさんも信じたい。
「扉を出たら右側に走りなさい。突き当りを曲がって道なりに行けば宿のすぐ近くに出るから。気を付けていくのよ?」
「ありがとうございました。私の名前はブロッサムっていいます。落ち着いたら絶対に買い物に来ます」
「ブロッサムね、また来てくれるの楽しみにしているわ」
私は扉を開けるのと同時に、自分の名前を「山野 樹」から「ブロッサム」へ戻した。
ここから先、私はフォンティーで暮らすブロッサムになるのだ。
「それじゃ、ありがとうございました!!」
私は一気に外に駆け出した。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。


強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる