私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

文字の大きさ
上 下
19 / 89
【1部】第二章.やっと召喚されました

018

しおりを挟む
騎士が慌てて何処かに行ったあと、私はひたすら色んなものを鑑定していた。勿論、一緒に召喚されてきた9人も鑑定してみた。

みんな勇者とか聖女とかすごい称号持ってるねー。スキルもしっかり3つ持ってるし、そりゃあ、あの騎士も私のステータス見て焦るよね…

そんな事を思いながら部屋を見回していると、騎士にしては荒々しい雰囲気の人が居たので、とりあえす鑑定してみた。

すると突然<<鑑定に失敗しました>>と頭の中に声が響いた。

ほえ??

頭の中に声が響いた瞬間、その荒々しい人がこちらをギッと睨みつけて、ずんずんと歩いてきた!!
えっ?やばい!!鑑定したのバレた??怒られる??スキル隠してたのにどうしよう…!?

荒々しい人は目を逸らさずに真っすぐこちらに歩いてきて、挙動不審になる私の横をすり抜けて行った。
良かった、バレて……

「相手の強さも分からずに鑑定なんぞ使うと身を滅ぼすぞ…次からは気を着けろ」

…なくなかった……

「ふぁい…!」

そう言い残して、その荒々しい人は部屋から出て行った。
変な返事しちゃったよ…でもこれは見逃してくれたの…かな…?

名前さえ分からなかった。もしかしたらレベル差がありすぎて見えないのかもしれない。
でもって、鑑定に失敗すると相手に気が付かれるのかも知れない。ていうか見ただけで相手の強さなんてわかりません。

これは使い方を考えないとだなぁ…
はあぁ…とため息をついていると、近くに居たスーツが声をかけてきた。

「えーと、山野樹さん…でいいんですかね?」
「はぁ…そうです山野です」

「ああ、良かった。さっきは突然知らない人のステータスが出てきてたのでびっくりしましたが、やはり近くにいたあなたのステータスだったんですね。私は前島秀臣といいます向こうではサラリーマンしてました」

「ああ、そうですか…私は無職です」
「ああー…では就職活動をされていたんですね。スーツ着ていらっしゃいますし。パンツスーツ似合ってますね」
「えぇ、まぁ、そんなところです…」

本当は29歳の会社員ですよ。ブラック企業で使い倒されてました。とは言わない。
ていうか何だろうこの距離無し感。

「しかし山野さんは何でスキル一つしか貰わなかったんですか?神様はくれる個数指定してなかったのに、勿体ない事しましたねー、あんなの利用しない手は無いのに」
「欲しいなって思うスキルがあれだけだったので…」

この人かぁ、ミルス様が言ってた貰えるスキルの数に気が付いたもう一人って。ポージングしてた青年じゃなかった。でもこの人ちょっと失礼な感じね。隠してたスキルもやばいし…関わらんどこ。

そう思って距離を取ろうとするが、スーツは更に話しかけてきた。

「そういえば、スライムがお好きなんですか?」
「へっ?」
「いえ、スライムテイムなんていうスキルを貰ってたみたいなので」

「ああ、こっちの世界のスライムがどんな見た目なのか知らないですけど、某RPGの有名な青いスライムみたいな感じだったら沢山集めたいなーって思いまして。キングになったら更に可愛いじゃないですか」

とりあえず適当な理由を喋っておく。
うん、あのゲームのスライムも好きだから嘘は言ってない。

「なるほど…そういう事ですか、俺はてっきりそういうプレイがお好きなのかと…」
「やだー!!何ですかそれー!!そんなわけないじゃないですかー」

何言ってんだこいつ…女性に対してそんな事言えるとかちょっとアレな人だわ。
ムリムリムリー!!

じわりじわりとスーツから距離を取っていると、王様に会う前に別の部屋に移動する事になった。
召喚された部屋から廊下にでたところで眼鏡の優男に声を掛けられた。

「すみませんヤマノ様。宰相様があなたと直にお話がしたいとの事で…皆様とは別のお部屋へ案内させていただきます…」

お、遂に追い出しかなー!

「あ、はい分かりましたー」
私はウキウキで、眼鏡の後ろをついて行った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...