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【1部】第二章.やっと召喚されました
017
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私の名はサボック。このグラム王国の宰相である。
今代の国王は暗愚である。それを長年支えてきたのが私だ。
私の最大の功績は、城の奥深くに隠されていた、異世界人召喚の方法が記された書を見つけた事だろう。
最初に召喚した奴らは2人だけだったが、知識量はかなりの物だった。
私が少しおだててやれば、ベラベラと異世界の知識を披露してくれた。おかげで傾きかけていたこの国の財政や文化は著しく向上した。
その後も、色々な知識を披露してくれたが、しばらくすると地位や金、自由を要求してくるようになり、私の言うことを聞かなくなった。
飼い主に歯向かう犬には躾が必要だ。隷属の魔道具をつけさせ服従させた。
その後も定期的に、異世界からの召喚を行った。
最初の2人とは違った知識を持つ人間がやって来た。やはりそいつらも鑑定とアイテムボックスを所持していた。
従順な奴は騙して隷属の魔道具をつけさせ、反抗的な奴は強制的に隷属の魔道具を着けさせた。
吐き出せる知識の無くなった者は、そのまま自我を潰してアイテム運搬をさせている。
さて、今回の奴らはどんなスキルを持っているのか。
***
近衛騎士たちが持ってきた今回の召喚者たちのスキルを見て、私は大当たりだと思った。
一人、鑑定とアイテムボックスを持たない者が居るが、そいつは大魔法などが使えるから良いだろう。
それよりも何よりも、勇者や聖女の称号を持つ人間が4人も居たのだ。
聖女に至っては、使える者が滅多に居ない治癒魔法を持っている。
スキルを育てていけば、伝説の魔法と言われている蘇生魔法まで習得できるかもしれない。
「なんと、今回は豊作ではないか!」
自然と笑みがこぼれてしまう。
今回の召喚者たちは、国内で飼殺さねばなるまい。
特に聖女達に関しては、絶対に他国に奪われるわけにはいかない。
勇者たちには、王女と私の娘を娶せればいいだろう。
聖女達には、第一王子と第二王子を宛がおう。王族になれるのだ喜ばないわけが無い。
だが…第二王子の方には婚約者がいたか…。
確か侯爵家の次女だったな…あの侯爵家はそろそろ目障りだ。適当な醜聞をでっちあげて家ごと引きずりおろせば問題ないだろう。
そんな事を考えていると、近衛騎士から声を掛けられた。
「宰相様!サボック様!少々ご相談した事があります…」
「ん?なんだ貴様は」
声の方を見やると、卑しさのにじみ出た顔をした騎士が立っていた。
「私、近衛騎士のエドガー・ベルンと申します、召喚者の一人のステータスを確認しておりました」
「ふむ、して騎士ベルンよ何があったのだ?」
芝居がかった挨拶に、少々イラつきながら言葉を促す。
「はい、私がステータスを確認した者ですが、あの…何の手違いかスキルを一つしか持っていませんでした。スキルの内容もスライムテイムなどという聞いた事の無いスキルでして…宰相様のご判断を仰ぎたく…」
騎士が言った言葉が一瞬理解できなかった。
スキルが一つしかない人間が混ざっていただと…?過去数度の召喚でも、そんな人間はいなかった。
何故今回だけそんな外れが混ざった??
「何だと?スキルを一つしか持たない者が召喚されただと…?聖女や勇者の称号を持つものも複数人いた。スキルも今まで通り、鑑定とアイテムボックスを所持していたのに…なぜその者だけ碌なスキルを持っておらんのじゃ…」
「それは、わたくしにも分かりかねますが…こちらがその人間のステータスがこちらになります」
確かに、こいつの責任ではないな。
咳ばらいを一つして、差し出された紙を読む。
「ああ、すまん。お前を責めたわけでは無い。ふむ…イツキヤマノ、19歳、女か…。ベルンと言ったか、報告ご苦労だった。この者の処遇はこちらで対処する。お前は他の召喚者たちの所へ戻れ」
「はっ!了解しました」
近衛騎士が立ち去った後、私は一度部屋から出て部屋の外に立っていた文官に声をかけた。
「これから召喚者たちをいったん応接間に案内する。その時、あそこの女だけこの金を握らせて裏口からたたき出せ」
「は、はい!」
「それと、下手に貴族街をうろつかれても困る。兵を一人つけて貴族街の外まで案内させろ」
「かしこまりました!!」
文官は礼をして下がっていった。
この国の事を知らない人間だ、放り出せば勝手に野垂れ死にするだろう。
もしも、あれが自分は召喚者だと喚いたところで、あんなスキルしか持たない小娘のいう事など誰も信じない。
五月蠅く喚くようならその時は消せばいい。
影の一人にイツキヤマノの監視を命じ、私は部屋へ戻った。
今代の国王は暗愚である。それを長年支えてきたのが私だ。
私の最大の功績は、城の奥深くに隠されていた、異世界人召喚の方法が記された書を見つけた事だろう。
最初に召喚した奴らは2人だけだったが、知識量はかなりの物だった。
私が少しおだててやれば、ベラベラと異世界の知識を披露してくれた。おかげで傾きかけていたこの国の財政や文化は著しく向上した。
その後も、色々な知識を披露してくれたが、しばらくすると地位や金、自由を要求してくるようになり、私の言うことを聞かなくなった。
飼い主に歯向かう犬には躾が必要だ。隷属の魔道具をつけさせ服従させた。
その後も定期的に、異世界からの召喚を行った。
最初の2人とは違った知識を持つ人間がやって来た。やはりそいつらも鑑定とアイテムボックスを所持していた。
従順な奴は騙して隷属の魔道具をつけさせ、反抗的な奴は強制的に隷属の魔道具を着けさせた。
吐き出せる知識の無くなった者は、そのまま自我を潰してアイテム運搬をさせている。
さて、今回の奴らはどんなスキルを持っているのか。
***
近衛騎士たちが持ってきた今回の召喚者たちのスキルを見て、私は大当たりだと思った。
一人、鑑定とアイテムボックスを持たない者が居るが、そいつは大魔法などが使えるから良いだろう。
それよりも何よりも、勇者や聖女の称号を持つ人間が4人も居たのだ。
聖女に至っては、使える者が滅多に居ない治癒魔法を持っている。
スキルを育てていけば、伝説の魔法と言われている蘇生魔法まで習得できるかもしれない。
「なんと、今回は豊作ではないか!」
自然と笑みがこぼれてしまう。
今回の召喚者たちは、国内で飼殺さねばなるまい。
特に聖女達に関しては、絶対に他国に奪われるわけにはいかない。
勇者たちには、王女と私の娘を娶せればいいだろう。
聖女達には、第一王子と第二王子を宛がおう。王族になれるのだ喜ばないわけが無い。
だが…第二王子の方には婚約者がいたか…。
確か侯爵家の次女だったな…あの侯爵家はそろそろ目障りだ。適当な醜聞をでっちあげて家ごと引きずりおろせば問題ないだろう。
そんな事を考えていると、近衛騎士から声を掛けられた。
「宰相様!サボック様!少々ご相談した事があります…」
「ん?なんだ貴様は」
声の方を見やると、卑しさのにじみ出た顔をした騎士が立っていた。
「私、近衛騎士のエドガー・ベルンと申します、召喚者の一人のステータスを確認しておりました」
「ふむ、して騎士ベルンよ何があったのだ?」
芝居がかった挨拶に、少々イラつきながら言葉を促す。
「はい、私がステータスを確認した者ですが、あの…何の手違いかスキルを一つしか持っていませんでした。スキルの内容もスライムテイムなどという聞いた事の無いスキルでして…宰相様のご判断を仰ぎたく…」
騎士が言った言葉が一瞬理解できなかった。
スキルが一つしかない人間が混ざっていただと…?過去数度の召喚でも、そんな人間はいなかった。
何故今回だけそんな外れが混ざった??
「何だと?スキルを一つしか持たない者が召喚されただと…?聖女や勇者の称号を持つものも複数人いた。スキルも今まで通り、鑑定とアイテムボックスを所持していたのに…なぜその者だけ碌なスキルを持っておらんのじゃ…」
「それは、わたくしにも分かりかねますが…こちらがその人間のステータスがこちらになります」
確かに、こいつの責任ではないな。
咳ばらいを一つして、差し出された紙を読む。
「ああ、すまん。お前を責めたわけでは無い。ふむ…イツキヤマノ、19歳、女か…。ベルンと言ったか、報告ご苦労だった。この者の処遇はこちらで対処する。お前は他の召喚者たちの所へ戻れ」
「はっ!了解しました」
近衛騎士が立ち去った後、私は一度部屋から出て部屋の外に立っていた文官に声をかけた。
「これから召喚者たちをいったん応接間に案内する。その時、あそこの女だけこの金を握らせて裏口からたたき出せ」
「は、はい!」
「それと、下手に貴族街をうろつかれても困る。兵を一人つけて貴族街の外まで案内させろ」
「かしこまりました!!」
文官は礼をして下がっていった。
この国の事を知らない人間だ、放り出せば勝手に野垂れ死にするだろう。
もしも、あれが自分は召喚者だと喚いたところで、あんなスキルしか持たない小娘のいう事など誰も信じない。
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影の一人にイツキヤマノの監視を命じ、私は部屋へ戻った。
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