私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

文字の大きさ
上 下
12 / 89
【1部】第一章.異世界生活を始める前の長い長い準備

012

しおりを挟む
グラームス様に改名をお願いしたのだが、目を閉じた途端に心地よい布で包まれたような感覚になった。

(なんだ、魂がどうのって言うからもっと大変だと思ったけど…)

大した事無かった。なんて続けようと思った瞬間、身体が引き裂かれるような痛みに襲われ思わず蹲った。

「うがっ!?」

「もう少しで終わるから、新たな名を思い浮かべ続けるんじゃぞ!!」

グラームス様の声が遠い。

(ブロッサム、私の名前はブロッサム!!)

これなら名前変える必要無かったかな…とも思ったけど、多分もう止まれない。
だから、私は今日からブロッサムになるのだ!!


それからどれくらい経ったのかわからないが、ふっと体の痛みが無くなった。

「よし、ブロッサムよ、お主の名はしっかりとその魂に刻まれたぞ」

「あ…ありがとうございます…」

よろよろと起き上がるが、、なんだか身体が自分の物では無いような感覚がする。

「お主の魂に刻まれていた名を消し、新たな名を刻みなおしたのだ。名前が魂に馴染むまでは違和感があるじゃろうが耐えるのじゃ、少しずつ慣れていく」

「はい、ありがとうございます…」

ふわふわと地に足がつかない感じがする。

「フォンティーに降りたら、その違和感や不安感は更に強くなる。どうしても辛くなった時は、このクリスタルを両手で握り込むようにするといいじゃろう。これには儂とミルスの力が籠められておるから、フォンティーでの拠り所になる」

そういってグラームス様は、一円玉くらいの薄紫色のクリスタルをくれた。つるりとした涙滴型のクリスタルには、金属の鎖が付いているのでそのままペンダントになるようだ。

「ありがとうございます。アメジストみたいで綺麗ですね」
「うむ、まさに紫水晶じゃよ。あまり高価な宝石にしてしまうと盗まれてしまうからの。その水晶が透明になったら、名前が魂に馴染んだという合図じゃ」

そうなれば、いくらでもニホンの事を思い出しても大丈夫だって。

さっそくペンダントを首にかけると、水晶をそっと手で握り込んだ。すると、何とも言えない違和感がすっと楽になった。

「わぁ…すごく楽になりました!」
「そうじゃろう、他の者たちには籠められた力が分からんようにしてはあるが、無くさんようにな」
「はい、気をつけます」

体が楽になったので、さっそく確認しよう。

「ステータスオープン!」

私は改めてステータスを開いた。

【名前】 ブロッサム
【種族】 人間
【年齢】 19
【職業】 なし

【レベル】1
【称 号】召喚された只人

【体 力】 80/80
【魔 力】 100/100

【攻撃力】 35
【防御力】 10
【魔 力】 50
【素早さ】 15
【知 力】 45

【スキル】
 スライムテイム   Lv1

「ちゃんと名前が変わってますね!」
「当たり前じゃ、儂がやったんじゃ失敗など無いわい!」
「……」

グラームス様はエッヘンと胸を張る。
その横で、私のステータスを覗き込んでいたミルス様は何か考え込んでいる。

「ミルス様、何かありましたか?」

私が聞くと、ミルス様はにっこりと微笑みかけてきた。

「いいえ、何でも無いわよブロッサムちゃん、ちょっと名前が呼びにくくなっちゃったわーって思っただけよ」

「あー…まぁ、今まで通り呼んでいただいても大丈夫ですよ?」
「そうねぇ、新しい名前が魂に馴染んだら、また呼ばせてもらうわねブロッサムちゃん」

しかし私はこの時まったく気が付いていなかった、名前以外にも変わった部分があった事に…

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ・21時更新
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

処理中です...