私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第一章.異世界生活を始める前の長い長い準備

012

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グラームス様に改名をお願いしたのだが、目を閉じた途端に心地よい布で包まれたような感覚になった。

(なんだ、魂がどうのって言うからもっと大変だと思ったけど…)

大した事無かった。なんて続けようと思った瞬間、身体が引き裂かれるような痛みに襲われ思わず蹲った。

「うがっ!?」

「もう少しで終わるから、新たな名を思い浮かべ続けるんじゃぞ!!」

グラームス様の声が遠い。

(ブロッサム、私の名前はブロッサム!!)

これなら名前変える必要無かったかな…とも思ったけど、多分もう止まれない。
だから、私は今日からブロッサムになるのだ!!


それからどれくらい経ったのかわからないが、ふっと体の痛みが無くなった。

「よし、ブロッサムよ、お主の名はしっかりとその魂に刻まれたぞ」

「あ…ありがとうございます…」

よろよろと起き上がるが、、なんだか身体が自分の物では無いような感覚がする。

「お主の魂に刻まれていた名を消し、新たな名を刻みなおしたのだ。名前が魂に馴染むまでは違和感があるじゃろうが耐えるのじゃ、少しずつ慣れていく」

「はい、ありがとうございます…」

ふわふわと地に足がつかない感じがする。

「フォンティーに降りたら、その違和感や不安感は更に強くなる。どうしても辛くなった時は、このクリスタルを両手で握り込むようにするといいじゃろう。これには儂とミルスの力が籠められておるから、フォンティーでの拠り所になる」

そういってグラームス様は、一円玉くらいの薄紫色のクリスタルをくれた。つるりとした涙滴型のクリスタルには、金属の鎖が付いているのでそのままペンダントになるようだ。

「ありがとうございます。アメジストみたいで綺麗ですね」
「うむ、まさに紫水晶じゃよ。あまり高価な宝石にしてしまうと盗まれてしまうからの。その水晶が透明になったら、名前が魂に馴染んだという合図じゃ」

そうなれば、いくらでもニホンの事を思い出しても大丈夫だって。

さっそくペンダントを首にかけると、水晶をそっと手で握り込んだ。すると、何とも言えない違和感がすっと楽になった。

「わぁ…すごく楽になりました!」
「そうじゃろう、他の者たちには籠められた力が分からんようにしてはあるが、無くさんようにな」
「はい、気をつけます」

体が楽になったので、さっそく確認しよう。

「ステータスオープン!」

私は改めてステータスを開いた。

【名前】 ブロッサム
【種族】 人間
【年齢】 19
【職業】 なし

【レベル】1
【称 号】召喚された只人

【体 力】 80/80
【魔 力】 100/100

【攻撃力】 35
【防御力】 10
【魔 力】 50
【素早さ】 15
【知 力】 45

【スキル】
 スライムテイム   Lv1

「ちゃんと名前が変わってますね!」
「当たり前じゃ、儂がやったんじゃ失敗など無いわい!」
「……」

グラームス様はエッヘンと胸を張る。
その横で、私のステータスを覗き込んでいたミルス様は何か考え込んでいる。

「ミルス様、何かありましたか?」

私が聞くと、ミルス様はにっこりと微笑みかけてきた。

「いいえ、何でも無いわよブロッサムちゃん、ちょっと名前が呼びにくくなっちゃったわーって思っただけよ」

「あー…まぁ、今まで通り呼んでいただいても大丈夫ですよ?」
「そうねぇ、新しい名前が魂に馴染んだら、また呼ばせてもらうわねブロッサムちゃん」

しかし私はこの時まったく気が付いていなかった、名前以外にも変わった部分があった事に…

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