聖女の呪い

もりのたぬき

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昼食を食べた双子はトゥレプの手伝いとして、乾燥させた薬草を薬研で細かくしたり、色々な薬を小瓶に詰めたりと、獣の足で器用に手伝いをしていた。

そんな風に作業をしていると、あっという間に日が落ちた。その途端、トゥレプの姿が溶けるようにアナグマへと変わっていく。着ていた服が煙のように消えてしまうのが不思議ではあるが、皆毛皮に変化しているのだろうとあまり気にしていない。

「さて、日が暮れたね。お月様が真上に来たらお前さん達の呪いを解くよ」

部屋のランプに火を灯しながらトゥレプが言った。

「「うん、ありがとうオババ!!」」

「ふふ、礼は魔法が解けてから言いな。さ、夕飯の準備を手伝っておくれ」

トゥレプと共に夕作った夕飯を、おなか一杯食べた双子は、闇の洞窟と呼ばれる地下深くまで伸びる洞窟へと足を運んだ。

洞窟の最奥には闇の魔法陣が描かれており、光の結界の中でもその力を失わず、この森で最も闇の力の強い場所である。

「さ、二人とも魔法陣の中央に立って、この薬を飲み干すんだ」

双子はトゥレプに言われた通り、陣の中央に立つとガラス瓶の栓を抜き、中身を一気に飲み干した。

「うへぇ…変な味…」

双子は薬の味に顔をしかめた。

「薬が美味かったら意味がないだろう。さ、私が呪文を唱え始めたら陣が光ってお前たち自身も光りだす。驚いて陣の外に飛び出るんじゃないよ」

「「はーい」」

陣の真ん中に立った二人を確認したトゥレプは、解呪の呪文を唱えていく。

小さく低い声でひっそりと唱えだし、徐々に大きく高くなっていく。その声に合わせるように魔法陣が輝きだし、光が強くなり双子たちは眩しく目を閉じた。

トゥレプの詠唱が最高潮になった瞬間、双子たちは体に巻き付いた鎖のようなものが、フッとほどけていくような体が軽くなったような、不思議な感覚になった。しばらくするとトゥレプの声が止み光もおさまった。

「二人とも目を開けてみなさい」

トゥレプの声に双子は恐る恐る目を開いた。

「あれ?オババ、狐のままだよ?」

二人は自分たちの姿が狐のままである事に驚いた。

「そりゃそうじゃ、今は夜じゃぞ。明日の朝になればきちんと人型になっておるよ」

トゥレプの呆れたような口調に、双子たちは苦笑した。

「そういえばそうだったね、朝が楽しみだな!」

こうして3人、いや三匹の獣たちは小屋へと戻っていった。

翌朝、人型へと変じたカントとアトゥイは大はしゃぎをしてトゥレプに怒られた。



「いっそ、魔神様がこの森の結界を解いてくれれば良いのにな!」

そう良いながら、ザクリとサラダにフォークをさすカント。

「とりあえず、もう知らない人間を見かけても安易に近づかないようにするよ…」

もう懲り懲りだと言わんばかりにお茶をすするアトゥイ。

「それは無茶な願いさね。魔神様は女神様と同様、我々地上の生き物たちの生活には干渉しないからねぇ…ま、見知らぬ人間を見かけても無闇に近づかないのが一番さね」

そんな双子を見ながらトゥレプが言った。


こうして、カントとアトゥイの聖女から受けた呪いは解かれたのだった。

この事件の数十年後、呪いを解かない役立たずと言われた聖女の手によって、森の結界が解かれるのはまた別の話である。



*おしまい*



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