2 / 5
2
しおりを挟む
双子は香ばしい美味しそうな匂いで目が覚めた。二匹は鼻をヒクヒクと動かす。匂いのする方へ目をやると、一人の老婆が竈にかかる鍋をゆっくりとかき混ぜていた。
「おや、お前たち目が覚めたね」
「オババ、おはよう」
先に起き上がったカントが、前足で器用に目をこすりながら、寝ぼけ眼で挨拶をした。この老婆は今朝がた、双子をこの切り株小屋へ招き入れたアナグマだ。しかし、カントとアトゥイは狐の姿のままである。
「お前たちの薬が出来たよ」
「本当!?」
双子はガバッと起き上がる。
そんな二人を見て、トゥレプはくしゃりと笑う。
「ああ、だが薬を渡す前に昼食を食べてしまおう。どっちにしろ、お天道様はもう真上に来ちまってるから薬は使えない」
トゥレプの言葉を聞いた途端、双子のお腹が仲良く鳴る。恥ずかしそうな顔を浮かべる双子をみやって、トゥレプはくしゃりと笑う。
「さ、テーブルへおいで」
双子はおとなしく席へ着く。老婆と子ぎつね2匹が食卓を囲むという、不思議な光景の出来上がりである。テーブルには焼き立てのパンに野菜たっぷりのスープ、スクランブルエッグにソーセージ、キイチゴのジュースが置かれていた。
豪華な朝食に双子は目を輝かせる。
「我らが森と二面の姿、日々の糧を与えたもうた魔神様に感謝いたします」
3人はそう祈りをささげると、食事を始めた。
「それにしても、あの聖女って人間は迷惑だよ」
カントがパンにかじりつきながら言う。
「本当、人間が自分の都合で森に結界魔法なんて物をかけたせいで、僕たち獣が生きていけなくなって、見かねた魔神様が結界魔法が強まる昼の間だけ、影響が少ない人間の形になれるようにしてくれたってのに…」
アトゥイも顔をしかめながら答える。
「お前たちは去年産まれたばかりで知らなかったんだろうがね、毎年夏になるとこの森には、魔神様のくれた恩恵を呪いだと言って恩着せがましく解いていく聖女が来るんだよ」
双子たちの会話を聞いていたトゥレプは、顔をしかめながらそう言った。
「おや、お前たち目が覚めたね」
「オババ、おはよう」
先に起き上がったカントが、前足で器用に目をこすりながら、寝ぼけ眼で挨拶をした。この老婆は今朝がた、双子をこの切り株小屋へ招き入れたアナグマだ。しかし、カントとアトゥイは狐の姿のままである。
「お前たちの薬が出来たよ」
「本当!?」
双子はガバッと起き上がる。
そんな二人を見て、トゥレプはくしゃりと笑う。
「ああ、だが薬を渡す前に昼食を食べてしまおう。どっちにしろ、お天道様はもう真上に来ちまってるから薬は使えない」
トゥレプの言葉を聞いた途端、双子のお腹が仲良く鳴る。恥ずかしそうな顔を浮かべる双子をみやって、トゥレプはくしゃりと笑う。
「さ、テーブルへおいで」
双子はおとなしく席へ着く。老婆と子ぎつね2匹が食卓を囲むという、不思議な光景の出来上がりである。テーブルには焼き立てのパンに野菜たっぷりのスープ、スクランブルエッグにソーセージ、キイチゴのジュースが置かれていた。
豪華な朝食に双子は目を輝かせる。
「我らが森と二面の姿、日々の糧を与えたもうた魔神様に感謝いたします」
3人はそう祈りをささげると、食事を始めた。
「それにしても、あの聖女って人間は迷惑だよ」
カントがパンにかじりつきながら言う。
「本当、人間が自分の都合で森に結界魔法なんて物をかけたせいで、僕たち獣が生きていけなくなって、見かねた魔神様が結界魔法が強まる昼の間だけ、影響が少ない人間の形になれるようにしてくれたってのに…」
アトゥイも顔をしかめながら答える。
「お前たちは去年産まれたばかりで知らなかったんだろうがね、毎年夏になるとこの森には、魔神様のくれた恩恵を呪いだと言って恩着せがましく解いていく聖女が来るんだよ」
双子たちの会話を聞いていたトゥレプは、顔をしかめながらそう言った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
異世界に行ってた母が帰ってきた
里見知美
ファンタジー
行方不明になっていた母が十五年ぶりに帰ってきた。
異世界に行ってたとか言うんだが。
******
カテゴリ選択が悩むところなんですが、これはライト文芸なのか、ファンタジーなのか、キャラ文芸なのか。間違ってたらごめんなさい。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる