聖女の呪い

もりのたぬき

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双子は香ばしい美味しそうな匂いで目が覚めた。二匹は鼻をヒクヒクと動かす。匂いのする方へ目をやると、一人の老婆が竈にかかる鍋をゆっくりとかき混ぜていた。

「おや、お前たち目が覚めたね」
「オババ、おはよう」

先に起き上がったカントが、前足で器用に目をこすりながら、寝ぼけ眼で挨拶をした。この老婆は今朝がた、双子をこの切り株小屋へ招き入れたアナグマだ。しかし、カントとアトゥイは狐の姿のままである。

「お前たちの薬が出来たよ」
「本当!?」

双子はガバッと起き上がる。

そんな二人を見て、トゥレプはくしゃりと笑う。

「ああ、だが薬を渡す前に昼食を食べてしまおう。どっちにしろ、お天道様はもう真上に来ちまってるから薬は使えない」

トゥレプの言葉を聞いた途端、双子のお腹が仲良く鳴る。恥ずかしそうな顔を浮かべる双子をみやって、トゥレプはくしゃりと笑う。

「さ、テーブルへおいで」

双子はおとなしく席へ着く。老婆と子ぎつね2匹が食卓を囲むという、不思議な光景の出来上がりである。テーブルには焼き立てのパンに野菜たっぷりのスープ、スクランブルエッグにソーセージ、キイチゴのジュースが置かれていた。

豪華な朝食に双子は目を輝かせる。

「我らが森と二面の姿、日々の糧を与えたもうた魔神様に感謝いたします」

3人はそう祈りをささげると、食事を始めた。

「それにしても、あの聖女って人間は迷惑だよ」

カントがパンにかじりつきながら言う。

「本当、人間が自分の都合で森に結界魔法なんて物をかけたせいで、僕たち獣が生きていけなくなって、見かねた魔神様が結界魔法が強まる昼の間だけ、影響が少ない人間の形になれるようにしてくれたってのに…」

アトゥイも顔をしかめながら答える。

「お前たちは去年産まれたばかりで知らなかったんだろうがね、毎年夏になるとこの森には、魔神様のくれた恩恵を呪いだと言って恩着せがましく解いていく聖女馬鹿者が来るんだよ」

双子たちの会話を聞いていたトゥレプは、顔をしかめながらそう言った。
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