ようこそふしぎの悪役さん!

さんりっとる吐血

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第2話 ショッピングモールは氷のお城

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 ショッピングモール。

それは1つの建物に様々なお店が入った商業施設。レストラン、アパレルショップ、ゲームセンターにスーパーマーケットなどなど多種多様なお店があり1人で来ても、家族で来ても、友達と来たって楽しい最高な場所だ。

場所によって大きな駐車場があったり、とても広かったり違いはあるけど絶対に断言出来ることが1つある。
“普通は建物ごと氷漬けになったりはしない”

「氷……だよねコレ。すごい、本物だよひめちゃん……」

アタシ達は一旦氷漬けになった建物に近づいて様子を確認してみる。確かにいとちゃんの言う通り氷は正真正銘本物だ、冷たいしアタシ達の力で砕くなんて絶対できない。

「どうしよコレ……夏だし放ったらかしにしたら溶けたりしてないかな」

「溶けたとしてもこの厚さだと3日はかかるんじゃないかな……1日も経たずに夏にこんな厚い氷を作るなんて魔法とかじゃないと説明つかないよ……」

「オオカミ!何か……いや知らないか、他と関わってないって言ってたもんね」

「力になれなくて悪いな、オレもこんなのは初めて見た」

 まいったなぁ、八方塞がりだ……このまま帰ってそのままにしておくわけにもいかないし……警察を呼ぶ?でも警察に対処できる問題だろうか。うーんどうしたものか。

「おーい!おーい!ひめちゃん、オオカミさんこっち来て!」
 
そんな時いとちゃんが私たちを呼んだ。

「何ー!何かあった?もしかしてもう溶けてきてたり!?」

「いや溶けてはいないんだけどね、ここの自動ドアだけ開いてるんだよ!他のドアは凍りついて動かなかったんだけど正面のここだけ開くの!」

「ほんとだ!ここの自動ドアだけ開く!ひめちゃんありがとう!」

「なんだぁこりゃ!近づくだけで開くぞ!?入っていいのか?」

「あ~そりゃ森に自動ドアなんて無いもんね、このドアは近づくと勝手に開くようになってるんだよ。だからこのまま入っちゃって大丈夫!みんな行こう!」

「うん!」「おう!」

 ドアを通るとまたもや信じられない光景が広がっていた。建物の中も凍りついていて、天井からはシャンデリアみたいな氷が明るく光っていた。まるでお城の中みたいな光景にアタシ達は思わず息を呑んだ。

「すごい……氷のお城だ……夢みたい……」
 
「すげぇなこれ……幻覚じゃないんだよな……」

「ていうか寒い!このままじゃ凍え死ぬって!」
 
壁にかかっていた温度計に目を向けるとそこにあった表記はなんと15℃!さっきまで炎天下の下だった上にアタシ達は半袖、余計に寒さを感じてしまっている。

「入ったけどここからどうする?このままここでじっとしてたらみんな凍死しちゃうけど」

「こんなお城みたいな装飾が施されてるってことは誰かが意図的に作ったはず。お城に見立ててるなら多分上の階に犯人がいると思うからとりあえず上の階に向かおう」

「このままじっとしてても埒が明かねぇ!行くぞ!」

「わかった!上だね!いこうぉぉぉぉぉっ!この床滑るっ!」

忘れてた、床まで氷漬けなら当然床はスケートリンクみたいにツルツルになってるって事を。

「ひめちゃん!ゆっくり踏みしめるように歩いて!オオカミさんは爪を立てて歩けばある程度は滑らずに進めるはず!」

「よしわかった!ヒメカ!そっちはどうだ!」

「うん!これなら進めると思う!」

ひめちゃんのアドバイスを受けて前に進めるようになったアタシ達は近くにあるエスカレーターを目指した。正面以外の自動ドアが開かなかったなら多分エレベーターも使える状態じゃない可能性が高い、エスカレーターなら例え氷漬けになっていても階段として使えるはず!

「あった!エスカレーター!やっぱここも氷漬けかぁ……転んだら大ケガじゃ済まないから2人とも気をつけてね!じゃあアタシが先頭になるから」

「じゃあ私が前でオオカミさんが後ろでお願いします」

「おうよ、受け止め切れるかどうかはちょっとわからねぇけど怪我はさせねぇよ」
 
こういう時のオオカミはすごい頼もしい、悪役だってことを忘れるくらいには。

 アタシ、いとちゃん、オオカミの順で何とかエスカレーターを登りきった。しかし2階についた途端、アタシ達の体を異様な寒さが襲った。1階よりも明らかに寒い!真冬の夜に並ぶくらいの寒さはさっきまで夏の太陽を浴びていたアタシ達にはあまりにも酷な温度だった。袖から出る肌に冷気が刺さり、痛みを感じ始めた。このままだとマズイ、アタシの感覚はそう言っている。
 
「うっ……ひめちゃん……」
 
「いとちゃん!大丈夫!」
 
いとちゃんの足取りが段々とおぼつかなくなってきている、氷漬けの犯人はムカつくけれどこのままじゃいとちゃんの体がもたない。アタシだっていつ倒れるかわからない。

悔しい。この先に犯人がいるはずなのに!ここまで来たってのに!まっすぐ!ただまっすぐ進めば、この足が動けば顔も知らないそいつに一言言ってやれるのに!
アタシ達はついにその場に立ち尽くしてしまった。

「大丈夫かオマエら!冷てえ……マズイな……」

「オオカミさん……いとちゃん……ごめんなさい……私の判断のせいで……」

「謝らないでいとちゃん!うっ……嫌だよ……ここまで来たのに!諦めて帰るなんて……」

そんな時、オオカミがアタシといとちゃんをそっと抱き寄せた。

「帰るなんて誰が言ったよ、まだツラも拝めてないんだぞ。オレは昔っから体温の高さは取り柄だったんだ、これで少しは凌げるだろ、行くぞ」

オオカミはアタシ達の肌を包み隠すように寄ってくれている、オオカミの皮膚が、毛皮が、アタシ達の体を守ってくれている。

「オレは諦めが悪いんだ、悪人だからな」

「ぷっ、何それ?おもしろ!アハハ!……ありがとねオオカミ」

「オオカミさん暖かいです……落ち着く……」

「動けるか?動けるならせーので行くぞ」

「よーし!ここまで来たんだし犯人にはガツンと説教してやる!せーの!」

「オマエが言うのかよ!」

アタシ達はさっきよりも駆け足で3階へ向かうエスカレーターへ進み始めた、足取りはとても軽やかだった。


 3階にたどり着くと周りの温度はさらに低くなった。けれどもう大丈夫。なんてったってオオカミが守ってくれている、これだけでアタシ達は無敵になったような気分だった。

 3階を探索していると氷でできた大きな扉を見つけた。厚い扉でいかにもボスがいるって感じの大きな扉だった。

「絶対ココだね、開けるよ……準備いい?」

「ああ、噛み付く準備も引っ掻く準備もできてるぜ」

「できれば話し合いで解決しようね……」

 2人の返事を聞いてアタシは思いっきり扉を開いた。
扉の先、目の前ではいかにも女王様な感じの人がいかにもなイスに座っていた。肌は雪のように綺麗で、青い宝石のようなドレスを着たキレイな人だった。

「おや?あなた達は……?ワタクシ、人も壁も全部凍らせたはずでしたが?それに後ろのオオカミは……」

「アンタに説教しに来たのよ!最高の夏休みの1日をめちゃくちゃにした責任、取ってもらうから!」

ここまで来たんだ、氷漬けになろうが雪だるまにされようが関係ない。アタシは絶対に引きはしない。
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