ようこそふしぎの悪役さん!

さんりっとる吐血

文字の大きさ
上 下
2 / 4

第1話 迷子の2人と1匹

しおりを挟む
 目覚まし時計とセミのセッションを聞き目を覚ます。

時間は朝の9時半、普段なら大慌てになる時間だけど今日はなんの問題も無い。なぜなら今日は夏休みだから!どんな時間に起きたって、どんなことをしたって絶対に先生にとやかく言われない!

お母さんには言われるかもしれないけど……
それでもいつもより何倍も自由だ!

 そんな自由な時にあえてこの時間に起きたのにもちゃんと理由がある。
それはお隣さんで大親友のいとちゃんと今日は一日中、この美蘭市一大きいショッピングモールで遊んで、買い物して楽しみまくるから!
だからこそ今日は早起きしたのだ。

アタシ、超偉い。

「ヒメカ~!起きたの~?小糸ちゃんと遊ぶんでしょ?朝ごはんできてるから早く準備しちゃいなさい」

下の階からお母さんの声が聞こえてきた。

「わかってる今行くー!」

アタシは階段を駆け下りてリビングのドアを開けた!

「おう、おはよう。今日は出かけるんだろ?早く食っちまえよ朝ごはん」

オオカミが新聞を読んでた、この間、変な鏡にいとちゃんと一緒に面倒を見るように頼まれたオオカミだ。

「ちょっと!新聞あとでお父さんも読むんだから爪で穴だらけにしないでよ!」

「大丈夫だ、テープでくっつければ読めるだろ」

「そういう問題じゃないの!いい子になる気あるの!?」

アタシは言い争いながら食卓について朝ごはんのパンを食べ始めた、いとちゃん家で作ってるパンだ。
最高に美味しい、怒りもどこかに吹っ飛んでしまった。

 そうこうしているとリビングにチャイムの音が鳴り響いた。いとちゃんが来た!アタシは急いで食器を片付けて玄関まで向かった。

「ヒメちゃんおはよう!準備できた?」

「もちろん!早速行こう!いってきま~」

「待って!オオカミさんは?」

へ?なんでオオカミが?アタシ達だけのショッピングじゃないの?

「確か常に気を配って採点して欲しいって鏡さんが、なら家にオオカミさんを置いておくわけにもいかないよね?」

「ぐぬぬ」

 がーんだ……2人きりの楽しいショッピングを想像してたのに出鼻をくじかれてしまった。

「わかった……オオカミ~!ちょっと来て~!一緒に買い物行くわよ~!」

「マジで!?行く行く!」

「よし、じゃあ行こうか!お母さんいってきま~す!」

「いってらっしゃい!」

 雑談をしながら歩き、家から出て5分くらいの辺りでいとちゃんがある事を言い出した。

「ねぇオオカミさん、おとぎ世界ってどんな所なの?私すごく気になるの」

「ん?あぁあそこか、あそこはなぁなんも無いぞ。」

「えっ何も無いの?アタシそこら中の家がお菓子の家とかそういうのを想像してたんだけど……」

「オレの住んでたとこが田舎の森ん中のってのもあるがオレの見た事のある建物なんか赤ずきんの婆さんの家しか無いな」

「そんなぁ……」

「そもそもオレたちは基本他の物語と関わるのは良くないって教えられて育ってきたんだ。小さい頃から深く関わりすぎると災いが起きるって聞かされたもんだ」

「じゃあオオカミさんが会ってないだけで同じ世界に白雪姫とおやゆび姫とシンデレラがいる可能性もあるって事?」

「かもなぁ、オレにはよくわかんねぇし実感もわかねぇけどな」

なんか夢の無い話、おとぎ世界なんて言うからみんなもっとキラキラしてて夢とか希望とかに溢れてるような世界を想像してたのになんかガッカリ。どこも甘くは無いんだね……

「ねぇヒメちゃん……話の途中だけど1つ聞いていい?」

「どうしたのいとちゃん?」

いとちゃんが俯きながら足を止めた。

「私達が出発したのって何時だっけ……」

「10時5分だったかな」

「ショッピングモールまで歩いて何分くらいだっけ……」

「歩いて?う~ん15分くらい?」

「もう1つ質問いいかな……今、何時何分?」

「10時23分……あっ……」

「ショッピングモール……どこ?」

 迷った。完全に迷った。どうしよう……困った……スマホも買ってもらってないから地図もない。

「いとちゃん……スマホ持ってたっけ……?」

「私も買ってもらってないよ……どうしよう……」

終わりかもしれない……アタシ達このままこの見知らぬ道を死ぬまでさまようんだ……

「なんだどうした?急に暗い顔して、そんなにオレの住んでた場所の話がつまらなかったか?」

「違ーう!迷ったの!迷子!遭難!」

「迷っただぁ?なんだそんな事かよ……驚かしやがって……」

そんな事ってなんなのさ!こっちは大慌てだってのに!悪役ってこんなに冷たいの!?

「オレだって小さい頃は森でよく迷子になったもんさ、でもすぐに帰れた。どうしてだと思う」

「へ?いやわかんないけど」

「鼻だよ鼻!オレはオオカミだぜ?生まれつき人間よりも鼻が利くんだよ」

「オオカミさんほんとですか!?」

「あぁ、オレはイヌ科なんだからだいたい想像つくだろ」

神様仏様オオカミ様!なんて助かる!悪役ってホントはいい人なんじゃない?

「あっでもそのショッピングモール?ってとこの匂いを嗅いだことないからわからねぇや。すまん!」

「もう終わりだぁ!みんなここで死んじゃうんだ!」

「待て待て待て!話はまだ終わってない!オマエらショッピングモールってのは買い物するところなんだろ?なんかそこで買った物とか今持ってないか?」

買った物……買った物……そうだ!アタシが今つけてるシュシュはショッピングモールで買ったやつだ!

「このシュシュ!ショッピングモールで買ったやつ!使って!」

「おっどれどれ……あ~ダメだ!オマエん家の匂いしかわからねぇ!もっと新しい物はねぇのか?」

「そんな!これより新しいのとかアタシ持ってない!」

「待ってヒメちゃん!これを使って!」

いとちゃんが渡してきたのは1枚の紙、よく見るとそれは探しているショッピングモールのフロアマップだった。

「ちょっと古いやつだけどカバンに入れっぱなしで外に出してないからもしかしたらまだ匂いが残ってるかも!」

「でかした!どれどれ……よし!これなら行けるぞ!」

「ホント!?やったー!オオカミありがとう!初めてのいい子ポイントあげちゃう!」

「こんなんでいいのか?いい事って簡単じゃねぇか。まあとにかく善は急げ、時間は有限!早く行くぞ!オマエらついてこい!」

 アタシ達は4本足で駆けるオオカミに必死でついて行った。

「ついたぞ!ココだ!オマエら大丈夫か?」

「大丈夫じゃ……ない……早すぎ……」

アタシ達はオオカミに必死になってついてきたからもうクタクタ、炎天下を走ったんだし少し休ませて欲しい……

「なぁホントにここで買い物する気かオマエら?」

「どういうこと?する気も何もショッピングモールは買い物する為に存在するんだけど……」

「見てみろよ、オレだったらこんなとこで絶対買い物なんかしないぞ?」

アタシ達は重たい首を上げてショッピングモールを見た、オオカミの言ってる事がすぐに理解できた。ショッピングモールがカチンコチンの氷漬けになってるのだ。

「なっなっ……なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁ!」

 アタシ達の買い物は一筋縄ではいかなそうです……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

ご当地アイドルなんか、余裕だし!

りりぃこ
児童書・童話
有名プロデューサーによるアイドルオーディションを楽しみにしていた小学六年生の牧村コノハ。しかし田舎への引っ越しにより、そのオーディションは断念するしか無かった。 しかし、引っ越し先で、ボーイッシュな同級生の爽香から、ご当地アイドルのオーディションに誘われる。 爽香と、上がり症の中学生・小波と共にオーディションに合格したコノハは、ご当地アイドルとして、当初の予定とは少し違う、地元密着型のご当地アイドルとしての道を進んでいくことになる。 表紙 イラストACより

処理中です...