ようこそふしぎの悪役さん!

さんりっとる吐血

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プロローグ オオカミが来た夏休み

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 「鏡よ鏡、世界で一番かわいいのは誰?」
きっかけはそのアタシのその一言だった。ここは現実世界なんだから当然言葉が帰ってくるなんて思ってなかった、ただの遊びのつもりだった。鏡に問いかけた後アタシと友達、いとちゃんは笑いながら部屋を出ようとした、その時。

「なんで皆たかが鏡にそんなこと聞くんだ……」

確かに声は鏡から聴こえた、アタシの声でもいとちゃんの声でもない男の人の声だ。

「誰っ!?」

「鏡です。お二人にお願いあって伺いました」

鏡は冷静に返してきた。隣を見たらいとちゃんが目をキラキラさせている、おとぎ話好きでも限度が無い?

「へっ?何?何なの?お願いって何?お金絡みとか悪いコトとかは絶対やらないからね!」

「もしかして悪い女王をやっけるとか?」

「そんな事頼みませんよ……お願いしたいのはちょっとした採点ですよ」 

なんかすごくうさんくさい、誰をどう採点するんだろう。

「採点ってテストみたいな?アタシそんな頭良くないからそういうのムリだけど……」

「いえ、そういった形式のものではありません。採点して欲しいのは善行です」

善行?いいことを判定しろってこと?それくらいならできるけども……

「いきなり善行を採点と言われてもピンと来ませんよね、今採点して欲しい方をを連れてきますね……ほら!早く来い!あっやめろ噛むな舐めるな!」

鏡がそう言うと鏡に突然オオカミの顔が映った。目つきが鋭くていかにも悪そうな感じだ。

「彼があなた方に採点をお願いしたい人物、正確にはけものですが……赤ずきんのオオカミです。彼は我々の住む【おとぎ世界】にて悪行を働き、現実行きの刑が下された悪人です」

「……聞きたいことばっかりなんだけど、とりあえず現実行きの刑と善行がどう関係あるのさ?」

「現実行きの刑とはその名の通り我々の今いるおとぎ世界からあなた方のいる現実世界へ悪人を追放する刑罰です。しかしただ追放するだけではまた現実世界で悪さをするだけです、そこで編み出されたのが善行採点システムです。ここまでは問題無いですか?」

「まあ現実行きの刑に関してだけなら……」

「よかった、では続けますね。善行採点システムはざっくり言ってしまえばおとぎ世界に帰ってくる為の手段です。あなた方の世界で良い行いをし、それが100点分貯まれば善人になったと見なされおとぎ世界に帰る事ができるのです。あなた方には彼に採点と指導をし、彼が真人間いや真オオカミになれるよう手助けをしてあげて欲しいのです。」

気が進まない、というかヤダ!せっかくの夏休みだってのに。

「ねぇいとちゃん、勝手にこういうのOKしたら良くないと思うの、ここはしっかりNOって……」

「やります、ぜひやらせてください!むしろ大歓迎!」

「いとちゃん!?」

「ありがとうございます、既にご両親には許可を得ておりますのでご安心ください」

嘘でしょ?

「あっでもうちパン屋だからオオカミはまずいかな……ヒメちゃんお願いしていい?」

「嘘でしょ!?」

 かくして私、黒雪ヒメカと七瀬小糸のあまりにも濃い夏休みが幕を開けたのでした。
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