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第17話
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そして、ついに舞踏会当日――
アンドレス王子の部屋では、ドレス姿で不服そうな顔をしたマリベルの姿があった。
「どうして、私が舞踏会に参加しなければいけないんですか!?」
「お前も分かっていると思うが、この舞踏会は俺の結婚相手を決める為に行われるんだ。そんな舞踏会にもし王族を狙う者がいたら、奴らはどんな動きをすると思う?」
「え?それは、娘を王子に近付けて油断した所を狙うとか?」
「その通りだ。そんな中で俺がお前を特別扱いしたらどうなると思う?」
「それは……私は邪魔でしょうね」
「そうだろう。お前が俺の隣にいる事で、俺の安全が守られるというわけだ。それにあわよくば犯人が焦って尻尾を出すかもしれない」
「なるほど」
もしかして……、それで私を舞踏会に出席させる事に拘ってたの!?
するとアンドレス王子は少し不服そうな顔になって言った。
「お前、勘違いするなよ。お前と結婚したいというのは本当だからな」
「――!!」
マリベルは、ホボッと顔が赤くなり、目を見開いてアンドレス王子を見た。
「それにしても、ドレス姿のお前は良いな。綺麗だ」
「な!?そ、そんな事……」
今まで、じゃじゃ馬だって馬鹿にしてたのに。急に綺麗だなんて褒めないで!
「ほんと、こんなに綺麗になったのに久々の再会が男装して俺の護衛騎士になってるなんて、どんだけじゃじゃ馬なんだよ」
「な!?しょ、しょうがないじゃないですか!こっちだって必死だったんですよ!」
「分かってる。あの時点で双子の弟が逃げた事がわかれば、俺の婚約者にウリオス家の娘を迎える事は難しくなっただろうからな。お前がいま隣にいるのは、お前が無謀にも弟のフリをして護衛騎士になったおかげだ」
アンドレス王子に褒められて、見つめられて頬が熱くなる。すると、アンドレス王子は満足そうに笑みを浮かべた。
「いいな。ちゃんとドレス姿でその顔を見られるのは……」
アンドレスの手がマリベルの顎に触れる。親指が唇をそっとなぞり、頭の先まで熱が回ってマリベルは何も考えられなくなっていた。そのままアンドレスの顔が近付いてくる事に、マリベルは反射的に瞳を閉じかけた――
――とそこで扉がノックされた。
「アンドレス王子、そろそろ会場へ参りましょう」
扉の外でジェルが声を掛けてきたのだ。
「良いところだったのに残念だな」
赤い顔の私に甘い笑みを浮かべて、アンドレス王子は私の手をとって部屋を出たのだった――
◇
会場には、この日を待ちわびていた多くの令嬢達が集まっていた。
皆、アンドレス王子が登場すると黄色い歓声が上がる。しかし、その横に私がいるのを見て、その歓声はみるみる萎んでいった。
「え?あれ誰?」
「見かけない方よね」
「あ、私、前に何処かで見たことがあるわ……。えーっと、あ!ウリオス家のマリベル様よ!」
「ええ!?ウリオス家の!?じゃ、じゃあ、アンドレス王子がエスコートしてるって事は……アンドレス王子はマリベル様に決められたって事!?じゃあ、今日はお披露目の舞踏会だったの!?」
多くの令嬢は、アンドレス王子の相手がマリベルである事に納得していたが、システィナ公爵家の娘、メリスとリアスは唇を震わせていた――
「お姉様、どういう事ですの!?どうしてアンドレス王子の隣にウリオス家の令嬢がいるの!?」
リアスは隣の姉メリスに不満げに言った。
「ふん!ただエスコートして出てきただけでしょ!?ゴルド叔父様が、アンドレス王子の婚約者は私か貴方だって言ってたわ。あんな、社交界にも殆ど顔を出さないような令嬢じゃ、アンドレス王子だって困るわよ。きっとウリオス侯爵に無理矢理エスコートをお願いしたのよ。ウリオス侯爵は、自分の子供に甘いって評判だから。ほら、前にウリオス家の兵士だっていう男達も言ってたでしょ?ウリオス侯爵が甘やかして、大した力もない息子がアンドレス王子の護衛騎士になるなんて王子の身が心配だって」
「ああ、そうでしたわね」
「ほら、リアス。アンドレス王子にご挨拶に行くわよ。そして、厚かましいウリオス家の娘と引き剥がして差し上げるのよ」
メリスとリアスは国王と王妃と一緒にいるアンドレス王子の元へ行くと
「国王様、王妃様、アンドレス王子、お久しぶりでございます」
と2人揃って挨拶をした。
「ああ、メリス嬢とリアス嬢。よく来てくれた」
国王様がにこやかに言うと側で待機するヴァロワ侯爵は、ニッコリと微笑んだ。
「もちろんですわ。この舞踏会は、アンドレス王子が婚約者をお決めになると聞いておりますもの。あの、アンドレス王子?もちろん、私と踊って頂けますでしょう?」
メリスはアンドレスの隣にいるマリベルは目に入って居ないかのように、アンドレスに言った。
「悪いな。メリス嬢。今日、俺は彼女としか踊らないと決めているんだ」
アンドレスは隣のマリベルを愛しそうに見つめて言った。
そのアンドレスの行動にメリスは目を見開いてワナワナと震え出す。
「そ、それは、婚約者はマリベル様でお決まりになったと言う事ですの?」
震える声でメリスが聞くとアンドレスは、極上の笑みで答えた。
「ああ。俺の妃は彼女以外考えられない」
そう言うと、アンドレスは、マリベルの手の甲を持ち上げ、唇を押し当てた。
一斉に会場中が割れんばかりの歓声と悲鳴に包まれる。
お、王子やり過ぎでは?
マリベルは、会場の加熱ぶりに辺りをキョロキョロと見回す。
微笑ましそうにする国王様と王妃様。その後ろで少々驚いた顔のお父様と……冷徹な視線を向けているヴァロワ侯爵?
マリベルが不振に思った時だった。突然、舞踏会場の明かりが消えた――
アンドレス王子の部屋では、ドレス姿で不服そうな顔をしたマリベルの姿があった。
「どうして、私が舞踏会に参加しなければいけないんですか!?」
「お前も分かっていると思うが、この舞踏会は俺の結婚相手を決める為に行われるんだ。そんな舞踏会にもし王族を狙う者がいたら、奴らはどんな動きをすると思う?」
「え?それは、娘を王子に近付けて油断した所を狙うとか?」
「その通りだ。そんな中で俺がお前を特別扱いしたらどうなると思う?」
「それは……私は邪魔でしょうね」
「そうだろう。お前が俺の隣にいる事で、俺の安全が守られるというわけだ。それにあわよくば犯人が焦って尻尾を出すかもしれない」
「なるほど」
もしかして……、それで私を舞踏会に出席させる事に拘ってたの!?
するとアンドレス王子は少し不服そうな顔になって言った。
「お前、勘違いするなよ。お前と結婚したいというのは本当だからな」
「――!!」
マリベルは、ホボッと顔が赤くなり、目を見開いてアンドレス王子を見た。
「それにしても、ドレス姿のお前は良いな。綺麗だ」
「な!?そ、そんな事……」
今まで、じゃじゃ馬だって馬鹿にしてたのに。急に綺麗だなんて褒めないで!
「ほんと、こんなに綺麗になったのに久々の再会が男装して俺の護衛騎士になってるなんて、どんだけじゃじゃ馬なんだよ」
「な!?しょ、しょうがないじゃないですか!こっちだって必死だったんですよ!」
「分かってる。あの時点で双子の弟が逃げた事がわかれば、俺の婚約者にウリオス家の娘を迎える事は難しくなっただろうからな。お前がいま隣にいるのは、お前が無謀にも弟のフリをして護衛騎士になったおかげだ」
アンドレス王子に褒められて、見つめられて頬が熱くなる。すると、アンドレス王子は満足そうに笑みを浮かべた。
「いいな。ちゃんとドレス姿でその顔を見られるのは……」
アンドレスの手がマリベルの顎に触れる。親指が唇をそっとなぞり、頭の先まで熱が回ってマリベルは何も考えられなくなっていた。そのままアンドレスの顔が近付いてくる事に、マリベルは反射的に瞳を閉じかけた――
――とそこで扉がノックされた。
「アンドレス王子、そろそろ会場へ参りましょう」
扉の外でジェルが声を掛けてきたのだ。
「良いところだったのに残念だな」
赤い顔の私に甘い笑みを浮かべて、アンドレス王子は私の手をとって部屋を出たのだった――
◇
会場には、この日を待ちわびていた多くの令嬢達が集まっていた。
皆、アンドレス王子が登場すると黄色い歓声が上がる。しかし、その横に私がいるのを見て、その歓声はみるみる萎んでいった。
「え?あれ誰?」
「見かけない方よね」
「あ、私、前に何処かで見たことがあるわ……。えーっと、あ!ウリオス家のマリベル様よ!」
「ええ!?ウリオス家の!?じゃ、じゃあ、アンドレス王子がエスコートしてるって事は……アンドレス王子はマリベル様に決められたって事!?じゃあ、今日はお披露目の舞踏会だったの!?」
多くの令嬢は、アンドレス王子の相手がマリベルである事に納得していたが、システィナ公爵家の娘、メリスとリアスは唇を震わせていた――
「お姉様、どういう事ですの!?どうしてアンドレス王子の隣にウリオス家の令嬢がいるの!?」
リアスは隣の姉メリスに不満げに言った。
「ふん!ただエスコートして出てきただけでしょ!?ゴルド叔父様が、アンドレス王子の婚約者は私か貴方だって言ってたわ。あんな、社交界にも殆ど顔を出さないような令嬢じゃ、アンドレス王子だって困るわよ。きっとウリオス侯爵に無理矢理エスコートをお願いしたのよ。ウリオス侯爵は、自分の子供に甘いって評判だから。ほら、前にウリオス家の兵士だっていう男達も言ってたでしょ?ウリオス侯爵が甘やかして、大した力もない息子がアンドレス王子の護衛騎士になるなんて王子の身が心配だって」
「ああ、そうでしたわね」
「ほら、リアス。アンドレス王子にご挨拶に行くわよ。そして、厚かましいウリオス家の娘と引き剥がして差し上げるのよ」
メリスとリアスは国王と王妃と一緒にいるアンドレス王子の元へ行くと
「国王様、王妃様、アンドレス王子、お久しぶりでございます」
と2人揃って挨拶をした。
「ああ、メリス嬢とリアス嬢。よく来てくれた」
国王様がにこやかに言うと側で待機するヴァロワ侯爵は、ニッコリと微笑んだ。
「もちろんですわ。この舞踏会は、アンドレス王子が婚約者をお決めになると聞いておりますもの。あの、アンドレス王子?もちろん、私と踊って頂けますでしょう?」
メリスはアンドレスの隣にいるマリベルは目に入って居ないかのように、アンドレスに言った。
「悪いな。メリス嬢。今日、俺は彼女としか踊らないと決めているんだ」
アンドレスは隣のマリベルを愛しそうに見つめて言った。
そのアンドレスの行動にメリスは目を見開いてワナワナと震え出す。
「そ、それは、婚約者はマリベル様でお決まりになったと言う事ですの?」
震える声でメリスが聞くとアンドレスは、極上の笑みで答えた。
「ああ。俺の妃は彼女以外考えられない」
そう言うと、アンドレスは、マリベルの手の甲を持ち上げ、唇を押し当てた。
一斉に会場中が割れんばかりの歓声と悲鳴に包まれる。
お、王子やり過ぎでは?
マリベルは、会場の加熱ぶりに辺りをキョロキョロと見回す。
微笑ましそうにする国王様と王妃様。その後ろで少々驚いた顔のお父様と……冷徹な視線を向けているヴァロワ侯爵?
マリベルが不振に思った時だった。突然、舞踏会場の明かりが消えた――
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