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元々、内乱が起こっていたスマラ王国は、簡単に国王まで捕らえることに成功した。
リザハ王国の方が多少苦戦を強いられたが、帝国の武力の方が遥かに高い為、王城まで追い詰めるのにそれほど時間は掛からなかった。
ただ、追い詰められたリザハ国王は、王城に火を放った。
燃え盛るリザハ城から次々と人々が出てくる。結局、リザハ国王も逃げる所を捕まえる事が出来た。
ただ、一向にエヴェリーナ姫が出てこない。
まさか、彼女はこの城と運命を共にする気では……!?
そう思ったら、自然と身体が動いていた。
俺は燃え盛る城の中で、必死でエヴェリーナ姫を探した。
「エヴェリーナ姫!」「エヴェリーナ姫!どこですか!?」
どうして、死のうとするんだ!?俺が上手くやるから、身分を隠して静かに暮らすくらい出来るのに!
「エヴェリーナ姫!ゴホゴホッ」
不味い。このままじゃ俺も焼け死ぬ。でも、彼女を見つけないと……
炎に包まれる城で必死になる自分が、自分でもよく分からなくなっていた。ただ、彼女を助けたい。もう一度会いたい。言葉を交わしてみたい。願わくば……その瞳に俺を映して微笑んで欲しい――
炎に包まれる中で、その部屋だけが、青く光っているように見えた。
予感がした。この部屋にいると――
「エヴェリーナ姫!!」
部屋の中には、窓の外を見つめるエヴェリーナ姫がいた
――
「エヴェリーナ姫!」
彼女はゆっくりとこちらを振り返ると、驚いた表情をした後、顔を歪めた。
「アヴィリアス帝国のルヴェルフ皇子……ですね」
「ええ、そうです。早く逃げましょう」
そう言って、手を差し出した。すると一瞬、間を置いて、彼女は咳き込み、その場に座り込んだ。
「大丈夫か!?」
駆け寄った俺にエヴェリーナ姫は、チラリと俺を睨むように見た。
当たり前だ。自分の国に進軍してきた相手国の皇子だ。恨まれて当然だ。しかし、今は逃げる事が優先だ。それから、しっかりと事の経緯を話せば、彼女なら分かってくれる。
俺が「立てるか?」と言って、彼女の肩に腕を回すと、出口を確認しよと前を見た時だった――
――一瞬だった。腰に挿していた短剣を引き抜かれ、不味い!と思って距離を取ったら、彼女は自らの胸を突き刺した。
「……ど、うして……。どうしてだ!?エヴェリーナ姫!!」
彼女の胸からジワジワとドレスに血が滲んでいく。
俺は何をやってるんだ!!いきなり来た敵国の皇子に付いてくるなんて、どうして思ったんだ!いや、それよりも、進軍の仕方に問題があった。もっと話し合いを持てば、リザハ国王だって、城に火など付けなかったかもしれないのに……
俺が彼女を抱き上げると、エヴェリーナ姫は虚ろな瞳で抱き止める俺を見つめていた。
その彼女の瞳に、自分の中で抑えていた気持ちが溢れ出した――
「エヴェリーナ姫……。俺は……俺は、あなたともっと話してみたかった。国や政治など関係なく、ただ他愛のない話をしてみたかった。その瞳に、俺を映して欲しかった。そして、微笑んで欲しかった。もし……もし、あなたと再び同じ時代を再び生きる事が出来るのなら、あなたと笑い合える関係になりたい。あなたの身近であなたの助けになりたい。だからどうか……その時は、どうか俺が敵国の皇子だった事など知らぬままでいてくれよ……」
ルヴェルフの瞳から落ちた涙が、エヴェリーナの頬に落ちた時、エヴェリーナの瞳は静かに閉じた――
リザハ王国の方が多少苦戦を強いられたが、帝国の武力の方が遥かに高い為、王城まで追い詰めるのにそれほど時間は掛からなかった。
ただ、追い詰められたリザハ国王は、王城に火を放った。
燃え盛るリザハ城から次々と人々が出てくる。結局、リザハ国王も逃げる所を捕まえる事が出来た。
ただ、一向にエヴェリーナ姫が出てこない。
まさか、彼女はこの城と運命を共にする気では……!?
そう思ったら、自然と身体が動いていた。
俺は燃え盛る城の中で、必死でエヴェリーナ姫を探した。
「エヴェリーナ姫!」「エヴェリーナ姫!どこですか!?」
どうして、死のうとするんだ!?俺が上手くやるから、身分を隠して静かに暮らすくらい出来るのに!
「エヴェリーナ姫!ゴホゴホッ」
不味い。このままじゃ俺も焼け死ぬ。でも、彼女を見つけないと……
炎に包まれる城で必死になる自分が、自分でもよく分からなくなっていた。ただ、彼女を助けたい。もう一度会いたい。言葉を交わしてみたい。願わくば……その瞳に俺を映して微笑んで欲しい――
炎に包まれる中で、その部屋だけが、青く光っているように見えた。
予感がした。この部屋にいると――
「エヴェリーナ姫!!」
部屋の中には、窓の外を見つめるエヴェリーナ姫がいた
――
「エヴェリーナ姫!」
彼女はゆっくりとこちらを振り返ると、驚いた表情をした後、顔を歪めた。
「アヴィリアス帝国のルヴェルフ皇子……ですね」
「ええ、そうです。早く逃げましょう」
そう言って、手を差し出した。すると一瞬、間を置いて、彼女は咳き込み、その場に座り込んだ。
「大丈夫か!?」
駆け寄った俺にエヴェリーナ姫は、チラリと俺を睨むように見た。
当たり前だ。自分の国に進軍してきた相手国の皇子だ。恨まれて当然だ。しかし、今は逃げる事が優先だ。それから、しっかりと事の経緯を話せば、彼女なら分かってくれる。
俺が「立てるか?」と言って、彼女の肩に腕を回すと、出口を確認しよと前を見た時だった――
――一瞬だった。腰に挿していた短剣を引き抜かれ、不味い!と思って距離を取ったら、彼女は自らの胸を突き刺した。
「……ど、うして……。どうしてだ!?エヴェリーナ姫!!」
彼女の胸からジワジワとドレスに血が滲んでいく。
俺は何をやってるんだ!!いきなり来た敵国の皇子に付いてくるなんて、どうして思ったんだ!いや、それよりも、進軍の仕方に問題があった。もっと話し合いを持てば、リザハ国王だって、城に火など付けなかったかもしれないのに……
俺が彼女を抱き上げると、エヴェリーナ姫は虚ろな瞳で抱き止める俺を見つめていた。
その彼女の瞳に、自分の中で抑えていた気持ちが溢れ出した――
「エヴェリーナ姫……。俺は……俺は、あなたともっと話してみたかった。国や政治など関係なく、ただ他愛のない話をしてみたかった。その瞳に、俺を映して欲しかった。そして、微笑んで欲しかった。もし……もし、あなたと再び同じ時代を再び生きる事が出来るのなら、あなたと笑い合える関係になりたい。あなたの身近であなたの助けになりたい。だからどうか……その時は、どうか俺が敵国の皇子だった事など知らぬままでいてくれよ……」
ルヴェルフの瞳から落ちた涙が、エヴェリーナの頬に落ちた時、エヴェリーナの瞳は静かに閉じた――
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