【完結】前世で私を殺したのは、婚約者様ですか?

花見 有

文字の大きさ
上 下
3 / 18

3

しおりを挟む
 旧校舎の図書館――

 ここは、ほとんど生徒が来ない事から、学園内で二人がゆっくりと話す事ができる場所であった。

「また、転生者の話をしていたのか?」

 向かい合った本棚の狭い通路で、本を選ぶフリをしていたルドルフは、本を選ぶエリーナの様子を伺いながら、話しかけた。

「ええ。リヴァイ先生が転生者だったの。それで、今日の授業は、いかに転生者の恋が素晴らしいかの熱弁よ」

 エリーナは、苦笑いをすると本を選ぶ手をおろして、本棚を背にするよう振り返ると、下を向いた。

「それから……、まだ秘密みたいだけどルアナ嬢も転生者だった……」

「え!?」

 これには、ルドルフも驚きを隠せないでいた。

「嘘だろ!?じゃあ、アランは……」

「婚約破棄になるかもしれないわ……。今はルアナ嬢の要求をラミエス伯爵が止めているみたいだけれど、時間の問題よね……」

 エリーナは、会うといつも、ルアナの事を照れながら話してくれるアランの顔を思い出し、唇を噛み締めた。
 そんなエリーナを慰めるように、ルドルフはエリーナの頭に優しく手を2回置いた後、その手でエリーナを優しく抱き寄せた。

「はあ……そうか……。それにしても、最近ますます、転生者が増えてきたな……」

 そう言いながら、ルドルフはエリーナを横目で見る。
 それに気付いたエリーナは、少し意地悪な顔になり、首を傾げて、ルドルフを見上げた。

「あら、私も転生者になるんじゃないかって心配?」

「あ、いや……」

 とルドルフは、焦ったように視線を空中に彷徨わせた後、抱き締めていたエリーナを離すと、しっかりとその目を見つめて言った。

「エリーナ、俺は何があってもエリーナへの気持ちは変わらないし、エリーナにもそう思ってもらえたらって思ってる」

 こうやってちゃんと思いを伝えてくれる所も彼の良い所だ。

 ルドルフの赤い瞳が揺れて、私の答えを欲しがっているのが分かる。

「ええ。ルドルフの気持ちはちゃんと分かっているわ。私も同じ気持ちよ」

 エリーナが笑みを浮かべて答えると、ルドルフの腕が再びエリーナを優しく抱きしめた。

 フワリと鼻をくすぐるルドルフの香りと、包まれた暖かさにエリーナが心地よさを感じていると

「エリーナ……」

 と囁くルドルフの声がエリーナの耳に切なく響いた。

 何を不安に思っているのかと、エリーナは小さく笑みを溢すと、ルドルフの背中に腕を回して、そっと彼の胸に頭を傾けた。

 こんなに好きなのに、たとえ前世の想い人を思い出したとしても、この気持ちがなくなるなんて、絶対にあり得ないわ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。 その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。 彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。 それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。 儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。 そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。

婚約破棄された令嬢の父親は最強?

岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。

私には弱小貴族くらいが丁度いい。

木山楽斗
恋愛
田舎の男爵令嬢であるルルーナは、特別裕福という訳でもないが平穏な生活を送っていた。 前世の記憶を持っている彼女は、二度目の人生に幸福を感じていた。妙なしがらみもない田舎の弱小貴族は、彼女の気質にあっていたのだ。 しかしそんな彼女に災難が降りかかってきた。領地に悪辣な伯爵令息ドルナスが現れたのである。 権力さえあればなんでもできるという考えを持つ彼は、ルルーナに対しても横暴に振る舞った。それによって、ルルーナは窮地に立たされる。 そんな彼女を救ったのは、偶然お忍びでやって来ていた第二王子のゼナートであった。 こうしてドルナスは、より権力を持つ者によって捻じ伏せられたのだった。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

処理中です...