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マーデン王妃の登場に、その場にいた皆が礼をする。
フェデリカも慌ててカーテシーをした。
「入口で一体何を騒いでいたの?」
「王妃様。クレリッチ公爵令嬢が王妃様の誕生日パーティーのパートナーに、あろう事か平民の男をパートナーとして連れてきたんです」
レディナがマーデン王妃様にそう言うと、王妃は私とルカを見て驚いたように「まあ」と声を上げた。そして、王妃様は眉間のシワを深くして言った。
「レディナ嬢、それは王太子と王太子妃を侮辱しているのかしら?」
マーデン王妃の後ろには王太子と王太子妃も騒ぎの様子を見に来ていた。
それを見たレディナは一瞬で顔を青くする。
「い、いいえ。滅相もございません」
そう、この国が1年前に身分に関係なく自由に結婚が出来ると法令を出したのは、王太子が平民であった王太子妃と恋に落ちて結婚したからだったのだ。
そして、マーデン王妃は改めてルカを見ると深々とカーテシーをした。
「ルカニス第二皇太子殿下。本日はお目にかかれて光栄でございます。そして、我が国の者の無礼をお許し下さい」
へ?皇太子殿、下?
皇太子殿下といえば、この辺りの国を統括しているシーヤ帝国の皇太子殿下?でも、シーヤ帝国の皇太子殿下ってイニアス殿下じゃなかったかしら?
「マーデン王妃、お辞めください。私は皇太子争いを降り、この国に亡命した身。今は平民として暮らしていますから」
え?え?どういう事!?
フェデリカが王妃とルカを交互に見合って混乱していると
「あらあら。どうやら、フェデリカ嬢はご存知ではなかったようですね。余計な事を言ってしまいましたか?」
とマーデン王妃はフフッと笑った。
「いいえ、先程覚悟を決めた所でしたから、彼女に全てを話そうと思っていた所なので、説明が省けました」
そう言うと、ルカは私を前にして片膝を着くと右手を差し出して言った。
「フェデリカお嬢様、今はなんの地位もない私ですが、貴方を守りたいと心から思いました。私と結婚をして頂けませんか?」
う、うそ……。本当に!?
フェデリカは目の前で起こっている事に混乱しつつも、ルカの手を緊張した面持ちで取った。
「は、はははい!よろしくお願いしまふ」
ああ!また噛んだー!
その手を掴んで、私を抱込むようにするとルカは「可愛い」と言って頭に口付けたものだから、フェデリカは目が回り始めた。
突然の事だったが、会場は大盛り上がりで、フェデリカは会場中の視線を集めた事で
「も、もう目がクルクルします……」
と言ってそのまま意識を手放してしまった。
◇
ガタガタと揺られているわ。きっと馬車で屋敷に帰る途中ね。それにしても座席ってこんなにフカフカだったかしら……
フェデリカが手で座席をバンバンと叩くと、その手を温かい手が包んだ。
「目が覚めましたか?」
聞こえたルカ様の声にハッと目覚めた。すると私を見下ろすルカ様の顔が近くて赤くなってしまう。
「あれ?顔が赤いですね。やはり熱でもあるのでしょうか?」
とルカ様が私のおでこに手を当てる。
よく見れば、顔だけでなく身体も目の前だ。
ル、ルカ様ちょっと近すぎやしませんか?
そう思った時、フェデリカはルカに膝枕してもらっている事にやっと気がついた。
「ひゃあ!?」
飛び上がって起きたフェデリカの頭と当たらないよう、ルカがそれを瞬時に避ける。
「それだけ動けるのなら、心配いらなそうですね」
ルカが笑うから、フェデリカは顔を赤くした。
「ご、ごめんなさい。膝枕なんてさせてしまって」
「そんな事、気にしないで。だって結婚してくれるんでしょ?」
その言葉にフェデリカは、倒れる前の事を思い出し、顔を覆って照れた。
「は、はい……」
「あ、ちゃんと覚えててくれてよかった」
「あの、本当に私と結婚して下さるんですか?」
フェデリカは赤い顔を少し上げてルカを見つめた。
「もちろん。先ずは君の両親のお見舞いに伺おうかな」
そう言って微笑むルカに、フェデリカは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。両親も喜びます」
二人を乗せた馬車は、もうすぐクレリッチ公爵の屋敷に到着する。
フェデリカは、両親が喜ぶ顔を思い浮かべ、顔を綻ばせた。
フェデリカにルカを紹介された両親は、あのフェデリカが自分で相手を見つけてきた事に大いに喜び、祝福した。
そして、フェデリカとルカ結婚したルカは、後にクレリッチ公爵の爵位を継いだのだった――
フェデリカも慌ててカーテシーをした。
「入口で一体何を騒いでいたの?」
「王妃様。クレリッチ公爵令嬢が王妃様の誕生日パーティーのパートナーに、あろう事か平民の男をパートナーとして連れてきたんです」
レディナがマーデン王妃様にそう言うと、王妃は私とルカを見て驚いたように「まあ」と声を上げた。そして、王妃様は眉間のシワを深くして言った。
「レディナ嬢、それは王太子と王太子妃を侮辱しているのかしら?」
マーデン王妃の後ろには王太子と王太子妃も騒ぎの様子を見に来ていた。
それを見たレディナは一瞬で顔を青くする。
「い、いいえ。滅相もございません」
そう、この国が1年前に身分に関係なく自由に結婚が出来ると法令を出したのは、王太子が平民であった王太子妃と恋に落ちて結婚したからだったのだ。
そして、マーデン王妃は改めてルカを見ると深々とカーテシーをした。
「ルカニス第二皇太子殿下。本日はお目にかかれて光栄でございます。そして、我が国の者の無礼をお許し下さい」
へ?皇太子殿、下?
皇太子殿下といえば、この辺りの国を統括しているシーヤ帝国の皇太子殿下?でも、シーヤ帝国の皇太子殿下ってイニアス殿下じゃなかったかしら?
「マーデン王妃、お辞めください。私は皇太子争いを降り、この国に亡命した身。今は平民として暮らしていますから」
え?え?どういう事!?
フェデリカが王妃とルカを交互に見合って混乱していると
「あらあら。どうやら、フェデリカ嬢はご存知ではなかったようですね。余計な事を言ってしまいましたか?」
とマーデン王妃はフフッと笑った。
「いいえ、先程覚悟を決めた所でしたから、彼女に全てを話そうと思っていた所なので、説明が省けました」
そう言うと、ルカは私を前にして片膝を着くと右手を差し出して言った。
「フェデリカお嬢様、今はなんの地位もない私ですが、貴方を守りたいと心から思いました。私と結婚をして頂けませんか?」
う、うそ……。本当に!?
フェデリカは目の前で起こっている事に混乱しつつも、ルカの手を緊張した面持ちで取った。
「は、はははい!よろしくお願いしまふ」
ああ!また噛んだー!
その手を掴んで、私を抱込むようにするとルカは「可愛い」と言って頭に口付けたものだから、フェデリカは目が回り始めた。
突然の事だったが、会場は大盛り上がりで、フェデリカは会場中の視線を集めた事で
「も、もう目がクルクルします……」
と言ってそのまま意識を手放してしまった。
◇
ガタガタと揺られているわ。きっと馬車で屋敷に帰る途中ね。それにしても座席ってこんなにフカフカだったかしら……
フェデリカが手で座席をバンバンと叩くと、その手を温かい手が包んだ。
「目が覚めましたか?」
聞こえたルカ様の声にハッと目覚めた。すると私を見下ろすルカ様の顔が近くて赤くなってしまう。
「あれ?顔が赤いですね。やはり熱でもあるのでしょうか?」
とルカ様が私のおでこに手を当てる。
よく見れば、顔だけでなく身体も目の前だ。
ル、ルカ様ちょっと近すぎやしませんか?
そう思った時、フェデリカはルカに膝枕してもらっている事にやっと気がついた。
「ひゃあ!?」
飛び上がって起きたフェデリカの頭と当たらないよう、ルカがそれを瞬時に避ける。
「それだけ動けるのなら、心配いらなそうですね」
ルカが笑うから、フェデリカは顔を赤くした。
「ご、ごめんなさい。膝枕なんてさせてしまって」
「そんな事、気にしないで。だって結婚してくれるんでしょ?」
その言葉にフェデリカは、倒れる前の事を思い出し、顔を覆って照れた。
「は、はい……」
「あ、ちゃんと覚えててくれてよかった」
「あの、本当に私と結婚して下さるんですか?」
フェデリカは赤い顔を少し上げてルカを見つめた。
「もちろん。先ずは君の両親のお見舞いに伺おうかな」
そう言って微笑むルカに、フェデリカは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。両親も喜びます」
二人を乗せた馬車は、もうすぐクレリッチ公爵の屋敷に到着する。
フェデリカは、両親が喜ぶ顔を思い浮かべ、顔を綻ばせた。
フェデリカにルカを紹介された両親は、あのフェデリカが自分で相手を見つけてきた事に大いに喜び、祝福した。
そして、フェデリカとルカ結婚したルカは、後にクレリッチ公爵の爵位を継いだのだった――
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