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番外編1 リヴァイ先生
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アヴィリアス帝国の皇太子、ルドルフ殿下とヴィルター公爵家のエリーナ公爵令嬢……いえ、今は皇太子妃となられたエリーナ妃殿下が卒業し、新年度を迎えた帝国貴族学園。今年も新たな貴族の令息令嬢達が、この学園に入学してきた――
「あの先生、すっごく派手じゃない?」
「あれで淑女クラスの先生なの?」
淑女クラスの新入生達は教壇に立つ教師にざわついていた。
大胆なスリットが入ったロングのスカート、ボディラインが強調されたピタリとしたシャツ、濃い化粧にギラつく視線……、リヴァイ・サンラス男爵夫人は、今日も帝国貴族学園の教壇に立っていた――
「皆さん、貴族帝国学園にご入学おめでとうございます。淑女クラスの教師リヴァイと申します。早速ですが、皆さんは真実の愛が何かわかりますか?私は知っています。私の真実の愛は前世からの恋人と現世で、再び巡り会えた事なのよ!!彼とは街で偶然出会って……」
リヴァイは、その後も彼との愛がどんなに素晴らしいものなのかを熱弁していた。だが、生徒達の反応は以前よりも芳しいものではなくなっていた。
それは、転生者だと判明したルドルフとエリーナが、実は前世では恋人同士は愚か、敵同士だったにも関わらず、現世での想いを貫き結婚した事で、最近の令嬢達は前世からの恋よりも、現世で育まれた気持ちを大事にする方に憧れが強くなっていたからであった。
「確か、リヴァイ先生ってサンラス男爵夫人よね?離縁したんだっけ?」
「いいえ、まだしてないはずよ。今は別居してるって話よ」
「まあ……。それじゃあ、離縁もしていないのに、外の恋人の事を堂々と語るなんて、淑女クラスの先生としてどうなのかしら?」
白ける生徒達を前にリヴァイの熱弁は続くのだった――
◇
学園にチャイムが鳴り響き授業の終わりを告げる。
「それでは、皆さん。良い3年間にしましょうね。御機嫌よう」
リヴァイ先生は、満足そうに教室から出ると、職員室に寄ったあと、帰宅の途につく。
彼女の向かう先は、サンラス男爵の屋敷ではなく、帝都の郊外にある小さな一軒家であった。
「ただいま」
「おかえり、リヴァイ!」
彼女を出迎えたのは、金髪に目尻の下がった色男のトニーであった。
「リヴァイ、俺お腹空いたよ」
「はい、はい。今、作るから待ってて」
帰宅途中で買い物をしてきたリヴァイは、小さなキッチンで夕飯の支度を始める。
その間、トニーはリビングのソファに寝転んで寛いでいた。
「トニー、仕事はどう?」
キッチンからリヴァイが話しかける。
「あー、合わなくて辞めちゃった。せっかく紹介してくれたのに、ごめんね?」
トニーは、ソファから少し顔を出すと、眉を下げて申し訳なさそうにした。
「あら、そうなの?いいのよ。トニーはまだ若いんだから、合う仕事をじっくり探せばいいの。お金なら、私が稼いでいるから心配ないし」
リヴァイが微笑むと、トニーにも笑顔が戻り、またソファに寝転んだ。
リヴァイとトニーは前世でも5歳差の年の差カップルであったが、現世では、10歳差の年の差カップルとなっていた――
「あの先生、すっごく派手じゃない?」
「あれで淑女クラスの先生なの?」
淑女クラスの新入生達は教壇に立つ教師にざわついていた。
大胆なスリットが入ったロングのスカート、ボディラインが強調されたピタリとしたシャツ、濃い化粧にギラつく視線……、リヴァイ・サンラス男爵夫人は、今日も帝国貴族学園の教壇に立っていた――
「皆さん、貴族帝国学園にご入学おめでとうございます。淑女クラスの教師リヴァイと申します。早速ですが、皆さんは真実の愛が何かわかりますか?私は知っています。私の真実の愛は前世からの恋人と現世で、再び巡り会えた事なのよ!!彼とは街で偶然出会って……」
リヴァイは、その後も彼との愛がどんなに素晴らしいものなのかを熱弁していた。だが、生徒達の反応は以前よりも芳しいものではなくなっていた。
それは、転生者だと判明したルドルフとエリーナが、実は前世では恋人同士は愚か、敵同士だったにも関わらず、現世での想いを貫き結婚した事で、最近の令嬢達は前世からの恋よりも、現世で育まれた気持ちを大事にする方に憧れが強くなっていたからであった。
「確か、リヴァイ先生ってサンラス男爵夫人よね?離縁したんだっけ?」
「いいえ、まだしてないはずよ。今は別居してるって話よ」
「まあ……。それじゃあ、離縁もしていないのに、外の恋人の事を堂々と語るなんて、淑女クラスの先生としてどうなのかしら?」
白ける生徒達を前にリヴァイの熱弁は続くのだった――
◇
学園にチャイムが鳴り響き授業の終わりを告げる。
「それでは、皆さん。良い3年間にしましょうね。御機嫌よう」
リヴァイ先生は、満足そうに教室から出ると、職員室に寄ったあと、帰宅の途につく。
彼女の向かう先は、サンラス男爵の屋敷ではなく、帝都の郊外にある小さな一軒家であった。
「ただいま」
「おかえり、リヴァイ!」
彼女を出迎えたのは、金髪に目尻の下がった色男のトニーであった。
「リヴァイ、俺お腹空いたよ」
「はい、はい。今、作るから待ってて」
帰宅途中で買い物をしてきたリヴァイは、小さなキッチンで夕飯の支度を始める。
その間、トニーはリビングのソファに寝転んで寛いでいた。
「トニー、仕事はどう?」
キッチンからリヴァイが話しかける。
「あー、合わなくて辞めちゃった。せっかく紹介してくれたのに、ごめんね?」
トニーは、ソファから少し顔を出すと、眉を下げて申し訳なさそうにした。
「あら、そうなの?いいのよ。トニーはまだ若いんだから、合う仕事をじっくり探せばいいの。お金なら、私が稼いでいるから心配ないし」
リヴァイが微笑むと、トニーにも笑顔が戻り、またソファに寝転んだ。
リヴァイとトニーは前世でも5歳差の年の差カップルであったが、現世では、10歳差の年の差カップルとなっていた――
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