転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有

文字の大きさ
上 下
7 / 11

第7話

しおりを挟む
「ステフィ、私の人生終わったわ……」

 カーラは悲愴感漂う顔でステフィにそう訴えた。

 どうしてあの時、「はい」と返事をしてしまったのか……。

 あの後、アーロン王子はこう説明した。

「それではカーラにも他の妃候補の令嬢達と同じように、宮廷で暮らして貰う事になる。先程の妃教育も他の候補者達と共に受けてもらうから、心配しなくていいい」

 ああ!本当に私の馬鹿!
 私はまたも自分で自分の人生を台無しにしようとしているわ!!地味な人生を過ごすはずか、どうしてまた王子の婚約者になろうとしているのよー!!
 しかも、今度は下級貴族の令嬢として行くわけだから、他の妃候補の令嬢からどんな目に合わされるか……。

 頭を抱えて苦悩するカーラにステフィは言った。

「カーラ!そんなに悩む事ないじゃない!宮廷に行けばヴェルナー様を見放題なのよ!!」

「ええ?だって私はヴェルナー様に興味ないもの」

 するとステフィはフフッと得意そうに笑った。

「だから!私、あなたの世話係に立候補するわ!」

「え!?ステフィも一緒に来てくれるの!?」

「ええ!」

 カーラはステフィの手を握ると嬉しそうに言った。

「ステフィ!ありがとう!!あなたが一緒なら憂鬱な宮廷暮らしも少しは何とかなりそうよ!」


 ◇◆◇


 そして、カーラはステフィと侍女のイルダを連れて宮廷へとやって来た――

 アーロン王子は他の妃候補を集め、新しく加わったカーラを皆に紹介した。

「彼女がこれから、この宮廷でに暮らす事になったカーラ・ミッシェルだ」

 カーラの他に妃候補としているのは宮廷舞踏会でも一際目立っていた公爵令嬢ジャクリーナ・ケメット。
 それから候爵令嬢のジェナ・ルビネックとライバス家に並ぶ名門伯爵家の令嬢ケイシー・ハロリ。

 こんな高貴な令嬢に並ぶと私の格下感が際立つわ。

 それに、ほら。視線が痛い。どうしてこんな女がアーロン王子の妃候補なんだって視線が……

「皆、カーラは宮廷に来たばかりで分からない事もあるだろうから、助けてやってくれ」

 アーロン王子の言葉に公爵令嬢のジャクリーナが答える。

「ええ。もちろん。私がたっぷりとここでのマナーを教えて差し上げますわ」

 ジャクリーナはこれでもかというほど悪役令嬢らしい笑みを浮かべた。

 ああ……。前世の自分を思い出す……。

 カーラはそんなジャクリーナに前世の自分を見ているようで、複雑な気分になったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍

バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。 全11話

モブなので思いっきり場外で暴れてみました

雪那 由多
恋愛
やっと卒業だと言うのに婚約破棄だとかそう言うのはもっと人の目のないところでお三方だけでやってくださいませ。 そしてよろしければ私を巻き来ないようにご注意くださいませ。 一応自衛はさせていただきますが悪しからず? そんなささやかな防衛をして何か問題ありましょうか? ※衝動的に書いたのであげてみました四話完結です。

【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ
恋愛
幼馴染のロード。 学校を卒業してロードは村から街へ。 街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。 ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。 なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。 ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。 それも女避けのための(仮)の恋人に。 そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。 ダリアは、静かに身を引く決意をして……… ★ 短編から長編に変更させていただきます。 すみません。いつものように話が長くなってしまいました。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

貴方でなくても良いのです。

豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。

処理中です...