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第1話
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鏡に映る茶色の髪に茶色の瞳の自身の顔を見つめる。
特別に美人なわけでもないごく普通の……いや、少々地味な自身の顔にカーラはニコリと微笑みを浮かべた。
うん。やっぱりこのちょっと地味なくらいが丁度いい。普通の家柄、普通の顔……。間違っても貴族の中で目立つ事のない今の自分に、私はとっても満足している。
「カーラお嬢様、ステフィお嬢様がお迎えにいらっしゃいましたよ」
侍女のイルダに呼ばれると
「ええ。今行くわ!」
とカーラは元気に返事をして帽子を被り、軽い足取りで親友の伯爵令嬢ステフィ・ローゼムの元へ向かった。
馬車に乗り込むと、ステフィが早速カーラに語り始める。
「今日の舞台はマインセン様がついに主役の座をゲットしたのよ!絶対最前列で見るって決めてたの!!」
ステフィは、力の籠もった拳を握りしめて言った。
今日は、ステフィのお気に入りの役者が出演する舞台を見に行く。彼女は舞台役者のマインセンに夢中で、私も彼女に連れられて彼が出演する舞台を何度も見に行っている。
「フフッ。分かってるわよ。マインセン様が主役だものね?」
「ええ。そうよ!マインセン様を近くで見られるなんて、私今から緊張して震えが止まりませんわ!!」
こうやって自由に好きな事に熱中出来るのも中流貴族の令嬢だからなのよね。公爵令嬢なんて自由な外出もままならなかったもの……。
カーラは窓の外を懐かしむように眺めた。
カーラには前世の記憶があった。カーラの前世はある国の公爵令嬢であった。その時の彼女は婚約者の王子が下級貴族の令嬢に心変わりした事で、プライドと面子はズタズタになり、嫉妬や憎しみからその令嬢を卑劣な手段で王子から引き離そうと画策し、その事がバレて王子から処刑を命じられたのだった。
あの時の自分の事を思い返すと自分でも恐ろしいわ。
とにかく、相手の令嬢が許せなくって完全に悪役令嬢だったものね。
ああ、恐ろしい。
とカーラは身震いした。
「カーラどうしたの?寒い?」
カーラの様子を心配そうに見るステフィにカーラは優しく微笑んで首を振った。
「大丈夫よ。昔読んだ怖ーい悪役令嬢が出てくるお話を思い出したの」
と肩をすくめた。
「ああ、今日の舞台にも出てくるわよね!マインセン様をヒロインと取り合う悪役令嬢!」
それからステフィは、今日の舞台のあらすじを熱を込めて話し始めた。
カーラはそんなステフィの話しを聞きながら、再び前世の悪役令嬢となってしまった自分に思いを馳せた。
王子が心変わりした令嬢への嫌がらせはもちろん、最後には暗殺まで画策したあの時の自分……。そうなるくらい追い込まれた前世の境遇を今は不憫に思っている。今の私だったら、婚約者が心変わりしたからってあそこまでの事をしようとは思わないもの。
前世の私は、公爵令嬢としてのプレッシャーも責任も相当に重かった。あの時の私の人生は全て、王子と結婚する為にあったから……。
でも、転生した今の私は気ままな中流貴族令嬢。前世のような美貌も地位も財力もないけれど、地味でも気ままな今の生活に私は満足している。後は生活に困らない程度の財力がある殿方と結婚して、地味でいいから気ままな生活を送る事を望んでいる。
幸い、今の私は高貴な殿方に見初められる程の美貌も持ち合わせていないし、その内、身分に見合った殿方と結婚する事になるでしょう。
再び窓の外を眺めて、カーラは満ち足りた笑みを浮かべた。
特別に美人なわけでもないごく普通の……いや、少々地味な自身の顔にカーラはニコリと微笑みを浮かべた。
うん。やっぱりこのちょっと地味なくらいが丁度いい。普通の家柄、普通の顔……。間違っても貴族の中で目立つ事のない今の自分に、私はとっても満足している。
「カーラお嬢様、ステフィお嬢様がお迎えにいらっしゃいましたよ」
侍女のイルダに呼ばれると
「ええ。今行くわ!」
とカーラは元気に返事をして帽子を被り、軽い足取りで親友の伯爵令嬢ステフィ・ローゼムの元へ向かった。
馬車に乗り込むと、ステフィが早速カーラに語り始める。
「今日の舞台はマインセン様がついに主役の座をゲットしたのよ!絶対最前列で見るって決めてたの!!」
ステフィは、力の籠もった拳を握りしめて言った。
今日は、ステフィのお気に入りの役者が出演する舞台を見に行く。彼女は舞台役者のマインセンに夢中で、私も彼女に連れられて彼が出演する舞台を何度も見に行っている。
「フフッ。分かってるわよ。マインセン様が主役だものね?」
「ええ。そうよ!マインセン様を近くで見られるなんて、私今から緊張して震えが止まりませんわ!!」
こうやって自由に好きな事に熱中出来るのも中流貴族の令嬢だからなのよね。公爵令嬢なんて自由な外出もままならなかったもの……。
カーラは窓の外を懐かしむように眺めた。
カーラには前世の記憶があった。カーラの前世はある国の公爵令嬢であった。その時の彼女は婚約者の王子が下級貴族の令嬢に心変わりした事で、プライドと面子はズタズタになり、嫉妬や憎しみからその令嬢を卑劣な手段で王子から引き離そうと画策し、その事がバレて王子から処刑を命じられたのだった。
あの時の自分の事を思い返すと自分でも恐ろしいわ。
とにかく、相手の令嬢が許せなくって完全に悪役令嬢だったものね。
ああ、恐ろしい。
とカーラは身震いした。
「カーラどうしたの?寒い?」
カーラの様子を心配そうに見るステフィにカーラは優しく微笑んで首を振った。
「大丈夫よ。昔読んだ怖ーい悪役令嬢が出てくるお話を思い出したの」
と肩をすくめた。
「ああ、今日の舞台にも出てくるわよね!マインセン様をヒロインと取り合う悪役令嬢!」
それからステフィは、今日の舞台のあらすじを熱を込めて話し始めた。
カーラはそんなステフィの話しを聞きながら、再び前世の悪役令嬢となってしまった自分に思いを馳せた。
王子が心変わりした令嬢への嫌がらせはもちろん、最後には暗殺まで画策したあの時の自分……。そうなるくらい追い込まれた前世の境遇を今は不憫に思っている。今の私だったら、婚約者が心変わりしたからってあそこまでの事をしようとは思わないもの。
前世の私は、公爵令嬢としてのプレッシャーも責任も相当に重かった。あの時の私の人生は全て、王子と結婚する為にあったから……。
でも、転生した今の私は気ままな中流貴族令嬢。前世のような美貌も地位も財力もないけれど、地味でも気ままな今の生活に私は満足している。後は生活に困らない程度の財力がある殿方と結婚して、地味でいいから気ままな生活を送る事を望んでいる。
幸い、今の私は高貴な殿方に見初められる程の美貌も持ち合わせていないし、その内、身分に見合った殿方と結婚する事になるでしょう。
再び窓の外を眺めて、カーラは満ち足りた笑みを浮かべた。
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