8 / 9
第8話 酒場で噂の聖女様
しおりを挟む「オルランド!今日も愛しの聖女様の所に行ってたのか?」
騎士の訓練所でオルランドは同僚の騎士フランクにからかわれていた。
「面白がるな!俺は本気なんだ!彼女が聖女様かどうかなんて関係ない!」
「ハハッ悪い悪い。そう怒るなよ。それより、ちょっと面白い話を聞いたんだ。最近、聖女神殿近くの酒場で酒を奢ってくれる女がいるらしいんだが……、なんとその女、自分の事を聖女様だと言っているらしいぞ。もしかしてお前の愛しの聖女様だったりしてな?ちょっと見に行ってみないか?」
その話を聞いてオルランドはギロリとフランクを睨んだ。
「アメリア様がそんな事しているわけないだろう!しかし、自分を聖女だなどとは、なんという無礼な嘘を。一度、様子を見に行こうじゃないか!」
「そうこなくっちゃ!」
◇◆◇
そして、オルランドとフランクは聖女神殿の近くにある酒場にやってきた。
「最近、ここに聖女と名乗る女性がいると聞いたんだが」
オルランドは店のマスターにそう聞くと、マスターは慣れた様子で
「ああ、それならあそこにいるご令嬢だよ」
と指差した。
そこには男達を侍らせて酒を飲む女がいた。
「やはりアメリア様とは別人じゃないか」
オルランドはそう呟くとその女と目が合ってしまった。
「あら、良い男」
女は口角を上げて微笑むと
「ねえ、そこのあなた達。こっちへ来て一緒に飲まない?聖女様が奢ってあげるわよ?」
とオルランドとフランクを手招きした。
「あなたが聖女様だって?」
オルランドは女に冷たい視線を向ける。
「ええ、そうよ。私は聖女なの。フフッあなた、特に私の好みだし、聖女の男にしてあげてもいいわよ」
自信満々に微笑んだ女にオルランドは嘲笑した。
「フフッ。結構です。私には心に決めた女性がおりますから。それにあなたのような女性とお付き合いしたいとも思いませんし」
オルランドの態度に女は怒りを顕にする。
「まあ!私を馬鹿にして!私は聖女なのよ!そんな態度許されると思っているの!?」
「あー、出たよ出たよ。あの女気に入らない事があるとすぐ自分は聖女だっていって、怒るんだよ。本物の聖女様は今日も神殿で祈ってるって事ぐらいみんな分かってんのになぁ」
と店の客の一人が言った。それに同意するように他の者達も頷く。
「な、何ですって!?」
すると女はたちまち顔色が悪くなり、何故か苦しそうに胸を押さえ始めた。
「ちょっと……あなた達、信じてない、わね!今、本物の聖女の祈り……を……」
バタンッ!!
女はその場に突然倒れてしまった。
「おいおいどうした!?」
「酒の飲みすぎじゃねえのか!?」
「医者を呼ぶか!?」
すると女が息も絶え絶え言った。
「し、神殿に……。聖女神殿に連れていって……」
店の客達がオロオロしている中、オルランドとフランクは女を担ぐと聖女神殿へと急いだ。
1
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。


“ざまぁ” をします……。だけど、思っていたのと何だか違う
棚から現ナマ
恋愛
いままで虐げられてきたから “ざまぁ” をします……。だけど、思っていたのと何だか違う? 侯爵令嬢のアイリス=ハーナンは、成人を祝うパーティー会場の中央で、私から全てを奪ってきた両親と妹を相手に “ざまぁ” を行っていた。私の幼馴染である王子様に協力してもらってね! アーネスト王子、私の恋人のフリをよろしくね! 恋人のフリよ、フリ。フリって言っているでしょう! ちょっと近すぎるわよ。肩を抱かないでいいし、腰を抱き寄せないでいいから。抱きしめないでいいってば。だからフリって言っているじゃない。何で皆の前でプロポーズなんかするのよっ!! 頑張って “ざまぁ” しようとしているのに、何故か違う方向に話が行ってしまう、ハッピーエンドなお話。
他サイトにも投稿しています。


就活婚活に大敗した私が溺愛される話
Ruhuna
恋愛
学生時代の就活、婚活に大敗してしまったメリッサ・ウィーラン
そんな彼女を待っていたのは年上夫からの超溺愛だった
*ゆるふわ設定です
*誤字脱字あるかと思います。ご了承ください。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる