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しおりを挟む気付けば私は暗闇に1人佇んでいた。
何だかこの感じ身に覚えが……
するとコツコツという足音がしてマデリーナは振り返る。
そこには見覚えのある子供の姿――
「神様!!」
「いかにも。それで、お主は何をそんなに悩んでいる?」
「何をって私が聖女ではないって事ですよ!!」
「何を言っている。お前は聖女にはなりたくないと言って断ったじゃないか」
「じゃ、じゃあどうして証がそのままなんですか!?それに魔力だって高いし。本当は聖女として転生したってことは……?」
「いいや。お前は聖女ではない。あの時、まさかお前が聖女を断るとは思わなくて。でも、もう産まれる直前だったからな。何とか聖女にすることは取り止める事が出来たが、その五芒星の紋様と高い魔力値までは消すことが出来なくてな」
「そんな……。あ!じゃあ、聖女は!?聖女は今、この世界にいないの?私が聖女がじゃないんだから存在することは出来るのよね!?」
「確かにその通りだが、今、この世界に聖女は存在しておらん」
「じゃあ、すぐに聖女を誕生させてよ!神様ならできるでしょ!?」
「いや、それが……この世界の聖女は膨大な力を扱うだろう?だからそう簡単に聖女になれる魂はいないんじゃよ。今、お主に断られて新しい聖女候補の魂をふるいにかけてる所さ」
「じゃ、じゃあ、あとどれくらいで聖女は誕生するの!?」
「そうだなぁ。この世界の時間であと30年って所か。すぐだろ?」
「さ、30年……そんな……。じゃ、じゃあ例えば私を今から聖女にする事は?」
「残念ながらそれは出来ない」
「そ、そんな……」
じゃあ、この国はこのままじゃあ魔界の封印が解けて魔物達に乗っ取られてしまう。
自分が聖女ではないってハッキリ分かったのなら、やはりこのまま皆を騙して聖女としているわけにはいかない――
だったら――
「神様、1つだけお願いしたい事があるの」
マデリーナは何かを決意したように強い瞳で神を見据えた。
「なんだ?」
「この紋様を消してほしい」
マデリーナは両手首の五芒星を見せながら神様に言った。
「これがあったらどんなに聖女じゃないと否定しても信じてもらえないかもしれない。だから、この聖女の証の紋様を消してほしいの」
「うーん。完全に消すことは不可能だ。ただ、皆が納得すればいいのなら……これでどうだろう?」
神様が言ったと同時にマデリーナの両手首が光に包まれ、それが消えると手首には丸の中に大きな星がある五芒星の紋様から丸の中の星が小さく散りばめられた紋様へと変わっていた。
「これで、聖女の証の紋様はなくなった。まあ、元々紋様はただの飾りだからな。今ある魔力に変わりはないぞ」
「ありがとう」
「だが、これでお前の今までの生活は全て失うだろう」
「これで良いんです。皆を騙し続けるよりよっぽどいい」
マデリーナがまじまじと変わった紋様を見ながら、安堵したようにそう答えると、辺りは一瞬にして暗闇となりマデリーナはテントの中で目を覚ましたのだった――
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