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第16話

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「この度は貴国の舞踏会に招待頂き、有り難く存じます」

 ホステラーノ王国へやって来た私とレオンは、ホステラーノ王国の国王に挨拶をしていた。

 子供の頃はビクビクしていたレオンが、立派に挨拶をして、王族として凛としている姿にルイーザは安心していた――

 今のレオンは、きっと自分に自信を持てているんだわ。

「遠い所を来て頂き、有り難く思っております。特に息子のバシリオとは同じ年頃、この機会に交流を深めてくれると嬉しい」

「はい。私もそうしたいと思っておりました」

 そう言うとレオンは、バシリオ王子の方を向いて微笑むと、軽く会釈した。
 それにバシリオ王子も同様に会釈を返す。

 その姿に私は一人、気持ちが高ぶっていた。

 ああ……、ゲームの中では敵だった二人が、微笑んで会釈を交わしているわ……。なんて奇跡の瞬間なの!?

 ルイーザは、あのゲームの本当のハッピーエンドはやっぱり、レオンが悪の帝王にならないって事なんじゃないかという気さえしてきていた。



 ホステラーノ国王との挨拶を終えると、バシリオ王子にお茶に誘われ、私達はテラスへ移動した。

「レオン王子、改めてこれから仲良くして頂けると嬉しいよ」

「ええ、こちらこそ」

 と二人は軽く挨拶を交わすと、バシリオ王子の視線が私を捉えた。

「それで、先程から気になっていたのだが、こちらの美しいご令嬢は?」

「婚約者のルイーザです」

 ルイーザがバシリオ王子へカーテシーをすと、幼い頃から淑女として完璧だと讃えられていたルイーザの姿に、周りから感嘆のため息が漏れた。

「美しいご令嬢、どうかあなたの手の甲に口付けを……」

 ルイーザは、美しい微笑みを浮かべると、バシリオ王子へ右の手の甲を差し出した。

 その姿に今度は侍女達から黄色い声が上がる。

 バシリオ王子、さすが、ゲーム攻略キャラ!
 さらっと女の子をドキドキさせてくるわ!

 それは、そうとファニアちゃんは居ないのかしら?
 ゲームでは、聖女の力に目覚める前は、王宮で侍女をしていたから、どこかに居るはずよね……?

 とルイーザはキャーキャー言う侍女達を見回すが、ファニアは見当たらない。

「さあ、ルイーザ嬢、座ってお茶を頂こう」

 とバシリオがルイーザの手を取ろうとすると、ルイーザの肩を抱いてレオンが自身に引き寄せた。

「さあ、ルイーザここに座って」

 とレオンが自ら椅子を引き、ルイーザを座らせ、自分はその隣に座った。

 バシリオはルイーザの向かいに座ると、ルイーザを見つめて、微笑む。

「バシリオ王子には、仲の良い女性はおられないのですか?」

 レオンはにこやかに聞くが、ルイーザはレオンの様子がおかしい事に気が付いていた。

 レオン、何だかバシリオ王子に怒っていない?どうしたのかしら?やはり、ゲームの中で敵同士だったから、バシリオ王子と合わないのかしら?

「ええ。私にはまだそういった相手はおりませんよ」

 とバシリオ王子はにこやかに答える。

 あ、あれ?バシリオ王子、ファニアちゃんは?

「意外ですね。私と違って女性の扱いに慣れているバシリオ王子なら、仲の良いご令嬢もたくさん居られるかと思いましたよ」

 あ!そうか!ファニアちゃんとバシリオ王子の距離が縮まるのは、ファニアちゃんが聖女に目覚めてから……。あら?レオンが悪の帝王にならなかった場合、ファニアちゃんって聖女に目覚めるのかしら?

 というか、もしファニアちゃんが聖女に目覚めなかったら、バシリオ王子との恋はどうなるの!?

 え!?もしかして、私の推しカプ消滅の危機!?
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