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4章:仕置
第31話 下村文人(7)
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何かほざきながら、マトが蠅を僕たちの周りに配置した。
やれやれ。
この程度で勝ったと思うなんて、おめでたいな。
僕はポケットの中の砂を一握り掴み出し。
それを空中に撒きつつ高速錬成。
全て十字手裏剣に変え、蠅たちの特攻に対し、カウンターでそれら全てを投擲する。
蠅全てを撃墜するのに、2秒要らなかった。
マトは信じられないものを見る顔でこっちを見ている。
よほど井の中の蛙だったらしいな。
高校生のガキ二人に、圧倒されるなんて考えてなかったか?
この世界、自分が敵なしだなんて思えば遠からず終わるというのに。
あの様子だと、おそらく2の矢、3の矢は無いだろう。
あったらあんな隙だらけの顔で驚く暇なんて無いはずだ。
舐めてかかると、そのうち終わるんだよ。当たり前だよな?
だから僕はこうして相棒に付いてきた。
万一に備えてだ。
舐めてかかってこの最高の相棒を亡くすなんて、冗談じゃ無いしな。
……まぁ、おそらくは相棒ひとりで事足りる結果になるとは思ってはいたけれど。
「……徹子。こいつはお前の希望通りで問題なさそうだ。好きにしろ」
「OK! あやと、アンタ最高」
相棒に全部任せて問題ないと判断したので、僕は一歩下がった。
徹子は嬉しそうに、マトへ向かって歩き出す。
「……! く、来るな!!」
呆れるほどの定型文的なことを言いつつ、栄田……ベルゼブブが手から電撃を発した。徹子に向けて。
だが。
「……え? それで狙ってるつもり?」
微笑みながら挑発する。
徹子の位置が、ズレていた。一瞬前に居た場所より、数メートル横に居たのだ。
相棒は「神速」の異能を持つ。
本気になったときの徹子は、きっと光でも追いつけない。
また、姿が消えて。
徹子の居る場所が変わっていた。
「あぎいいいいい!!」
ベルゼブブの背後に。
ベルゼブブの左腕は、二の腕の中間あたりで切断されていた。
吹き出す血液。左腕を押さえて悲鳴をあげるベルゼブブ。
背後に居る徹子の右手は輝いている。
光を操り、レーザー手刀を発動させたのだ。
「おてて、片方なくなっちゃったわね~。よく狙わないからだよ?」
徹子は、微笑んでいた。
「悪魔の王なんでしょ? もうちょっとさ、頑張ってよ。小さいオジサン」
のたうち回って苦しむベルゼブブを見下ろしながら、変わらずに微笑んで。
苦しみながら、ベルゼブブは残った右手で徹子にまた電撃を放ったが……
また徹子の位置が変わっていた。
ベルゼブブのすぐそばにしゃがみ込んで。
手刀一閃。
「あぎゃあああああああ!!」
残った右手が肘で切断され、無くなる。
「はい。右手もゲット。どうしよう? 両手無くなっちゃったね~。ワンパターンだからだよ?」
切断した右手を拾い上げ、悲鳴をあげるベルゼブブを楽しそうに見つめる。
「……た……助けて……!」
命乞いをはじめるベルゼブブに、徹子は
「ん~、それは無理かな~。アタシらも、小さいオジサンの同業者だし~」
拾った右手を放り捨て立ち上がって、わかるでしょ? と続ける。
もう、こいつの心は折れている。
殺し屋としての、殺戮者としての格の違いを見せつけられ、自分は絶対に徹子に勝てないことを理解させられたのだろう。
「お願いだ……お願いだよぉ……こんなところで死にたくないんだぁ……」
泣きながら命乞い。
いい大人が、女子高生の徹子に対して。
足でも舐めそうな勢いだ。
「あらあら」
こっちからは徹子の顔が見えなかった。
「アンタ、殺し屋のくせに、野垂れ死ぬ覚悟も決めてないの?」
徹子の声は心底愉しそうで
「アタシら、ろくな死に方できないのよ?」
泣き喚き、命乞いするベルゼブブに語り掛ける。
「だって、他人の命をお金で絶ってるクズなんだから」
……お前に命乞いをする資格は無いんだってことを。
「アンタ、殺し屋としては話にならないわ」
徹子の両手が輝く。
レーザー手刀の二刀流か。
二度、閃いた。
「うぎゃああああああ!!」
絶叫。
「はい。これであんよもなくなった。だるまさんね?」
両足を太腿の半ばで切断する。
激しく噴き出す血液。
いくらなんでも、そろそろやばいだろう。
仮にこいつが生命力強化の異能を持っていたとしても。
徹子は、左手のレーザーを切り、手足を無くしたベルゼブブを蹴りつけて裏返す。
「何がベルゼブブよ。悪魔の王よ。三流以下の犯罪者が」
徹子の声に含まれていたのは、侮蔑と嘲笑。
覚悟無き人殺しに掛ける情けなんざ、無いもんな。
「アンタの通り名なんて、『ハエ』で十分」
そこまでの扱いを受けても、ベルゼブブは命を諦めていないようで。
ベルゼブブは、必死で慈悲を乞うためか、首を捩じって徹子を見上げて……
そこで。
顔面を蒼白にして、ガタガタ震えだした。
決して、出血だけのせいじゃない。
おそらく、徹子は笑っていたのだ。
口は普通に口角を上げていて。目が、殺人の愉悦に歪んだ、化け物の目で。
最高に殺人欲求が満たされるとき、徹子はそういう目をする。
さっきの教室でのホームルームでも、そうだった。
徹子は。
うつ伏せ状態のベルゼブブを跨いだ。
そして、レーザーを発動させていない左手で、ベルゼブブの首を押さえた。
「それじゃ、そろそろ送ってあげる」
最後通告。
「やめてくれぇ……お願いだぁ……」
泣きじゃくるベルゼブブ。
「無理って言ったよ?」
そして。
徹子は右手のレーザー手刀をベルゼブブの背中に突き刺す。
無造作に。
ベルゼブブが痙攣する。
「安心してよ……」
そして
「アンタの友達も後を追うからさぁ!!」
力が籠められ引き抜かれる。
ゴキッという音と共に。
その引き抜かれた徹子の右手には。
ベルゼブブの白い背骨が握られていた。
やれやれ。
この程度で勝ったと思うなんて、おめでたいな。
僕はポケットの中の砂を一握り掴み出し。
それを空中に撒きつつ高速錬成。
全て十字手裏剣に変え、蠅たちの特攻に対し、カウンターでそれら全てを投擲する。
蠅全てを撃墜するのに、2秒要らなかった。
マトは信じられないものを見る顔でこっちを見ている。
よほど井の中の蛙だったらしいな。
高校生のガキ二人に、圧倒されるなんて考えてなかったか?
この世界、自分が敵なしだなんて思えば遠からず終わるというのに。
あの様子だと、おそらく2の矢、3の矢は無いだろう。
あったらあんな隙だらけの顔で驚く暇なんて無いはずだ。
舐めてかかると、そのうち終わるんだよ。当たり前だよな?
だから僕はこうして相棒に付いてきた。
万一に備えてだ。
舐めてかかってこの最高の相棒を亡くすなんて、冗談じゃ無いしな。
……まぁ、おそらくは相棒ひとりで事足りる結果になるとは思ってはいたけれど。
「……徹子。こいつはお前の希望通りで問題なさそうだ。好きにしろ」
「OK! あやと、アンタ最高」
相棒に全部任せて問題ないと判断したので、僕は一歩下がった。
徹子は嬉しそうに、マトへ向かって歩き出す。
「……! く、来るな!!」
呆れるほどの定型文的なことを言いつつ、栄田……ベルゼブブが手から電撃を発した。徹子に向けて。
だが。
「……え? それで狙ってるつもり?」
微笑みながら挑発する。
徹子の位置が、ズレていた。一瞬前に居た場所より、数メートル横に居たのだ。
相棒は「神速」の異能を持つ。
本気になったときの徹子は、きっと光でも追いつけない。
また、姿が消えて。
徹子の居る場所が変わっていた。
「あぎいいいいい!!」
ベルゼブブの背後に。
ベルゼブブの左腕は、二の腕の中間あたりで切断されていた。
吹き出す血液。左腕を押さえて悲鳴をあげるベルゼブブ。
背後に居る徹子の右手は輝いている。
光を操り、レーザー手刀を発動させたのだ。
「おてて、片方なくなっちゃったわね~。よく狙わないからだよ?」
徹子は、微笑んでいた。
「悪魔の王なんでしょ? もうちょっとさ、頑張ってよ。小さいオジサン」
のたうち回って苦しむベルゼブブを見下ろしながら、変わらずに微笑んで。
苦しみながら、ベルゼブブは残った右手で徹子にまた電撃を放ったが……
また徹子の位置が変わっていた。
ベルゼブブのすぐそばにしゃがみ込んで。
手刀一閃。
「あぎゃあああああああ!!」
残った右手が肘で切断され、無くなる。
「はい。右手もゲット。どうしよう? 両手無くなっちゃったね~。ワンパターンだからだよ?」
切断した右手を拾い上げ、悲鳴をあげるベルゼブブを楽しそうに見つめる。
「……た……助けて……!」
命乞いをはじめるベルゼブブに、徹子は
「ん~、それは無理かな~。アタシらも、小さいオジサンの同業者だし~」
拾った右手を放り捨て立ち上がって、わかるでしょ? と続ける。
もう、こいつの心は折れている。
殺し屋としての、殺戮者としての格の違いを見せつけられ、自分は絶対に徹子に勝てないことを理解させられたのだろう。
「お願いだ……お願いだよぉ……こんなところで死にたくないんだぁ……」
泣きながら命乞い。
いい大人が、女子高生の徹子に対して。
足でも舐めそうな勢いだ。
「あらあら」
こっちからは徹子の顔が見えなかった。
「アンタ、殺し屋のくせに、野垂れ死ぬ覚悟も決めてないの?」
徹子の声は心底愉しそうで
「アタシら、ろくな死に方できないのよ?」
泣き喚き、命乞いするベルゼブブに語り掛ける。
「だって、他人の命をお金で絶ってるクズなんだから」
……お前に命乞いをする資格は無いんだってことを。
「アンタ、殺し屋としては話にならないわ」
徹子の両手が輝く。
レーザー手刀の二刀流か。
二度、閃いた。
「うぎゃああああああ!!」
絶叫。
「はい。これであんよもなくなった。だるまさんね?」
両足を太腿の半ばで切断する。
激しく噴き出す血液。
いくらなんでも、そろそろやばいだろう。
仮にこいつが生命力強化の異能を持っていたとしても。
徹子は、左手のレーザーを切り、手足を無くしたベルゼブブを蹴りつけて裏返す。
「何がベルゼブブよ。悪魔の王よ。三流以下の犯罪者が」
徹子の声に含まれていたのは、侮蔑と嘲笑。
覚悟無き人殺しに掛ける情けなんざ、無いもんな。
「アンタの通り名なんて、『ハエ』で十分」
そこまでの扱いを受けても、ベルゼブブは命を諦めていないようで。
ベルゼブブは、必死で慈悲を乞うためか、首を捩じって徹子を見上げて……
そこで。
顔面を蒼白にして、ガタガタ震えだした。
決して、出血だけのせいじゃない。
おそらく、徹子は笑っていたのだ。
口は普通に口角を上げていて。目が、殺人の愉悦に歪んだ、化け物の目で。
最高に殺人欲求が満たされるとき、徹子はそういう目をする。
さっきの教室でのホームルームでも、そうだった。
徹子は。
うつ伏せ状態のベルゼブブを跨いだ。
そして、レーザーを発動させていない左手で、ベルゼブブの首を押さえた。
「それじゃ、そろそろ送ってあげる」
最後通告。
「やめてくれぇ……お願いだぁ……」
泣きじゃくるベルゼブブ。
「無理って言ったよ?」
そして。
徹子は右手のレーザー手刀をベルゼブブの背中に突き刺す。
無造作に。
ベルゼブブが痙攣する。
「安心してよ……」
そして
「アンタの友達も後を追うからさぁ!!」
力が籠められ引き抜かれる。
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その引き抜かれた徹子の右手には。
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