悪を狩る獣たち(1次小説版)

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1章:仕置人たち

第5話 下村文人(2)

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「あやとー」

 ファミレス。
 約束通り、仕事終わりの打ち上げを二人でやっていた。

 僕の前の席で、僕と同じ高校の、緑色のブレザー姿のタメの女子高生がテーブルに突っ伏している。
 突っ伏して、僕の名前を呼ぶ。

 彼女は僕の相棒になってる火車所属の殺し屋の佛野徹子ふつのてつこ
 僕と同じ異能持ち。

 異能っていうのは、良く分かっていないチカラだ。
 かなり昔から存在するみたいだけど、何故そんなものがあるのか解明されていない。
 大昔の伝説に出てくる魔法使いや、妖術師たちは、おそらく異能持ちだったんだろうと思われている。
 異能の存在を認知している人間の間では、ね。

 簡単に言うとタダの超能力なんだけどな。
 僕は「錬成」で。
 こいつは「身体強化」「神速」「光操作」
 ……3つだ。

 異能は1人1つ、ってわけじゃないんだな。
 その辺も含めて、良く分かってない。

 こいつの見た目は、まぁ、かなり可愛いと思う。
 髪の毛は金髪に染めていて、肩のあたりで切りそろえた髪型。
 スタイルはかなりいい。
 スレンダーな感じだが、胸はかなり大きく、男のスケベ心を刺激する体型だなとは思う。
 目は大きくて、美少女と言って差し支えない。
 で、その大きな目に青いカラコンを入れていた。

 もっとも僕は、こいつとの出会いの問題で、こいつを女として見たことは無いけれど。

 まぁ、人としては人殺しであることを除けばそんなに悪い部類ではないので、嫌いではないが。
 よく勘違いされるが、こいつは彼女でも何でもない。
 よくて友人。相棒が一番しっくりくる。

 ちなみに。
 僕の今の格好も、こいつと同様にブレザー。
 実はこっちが正しい学生服。
 学ランは、仕事着だ。

 こいつも、仕事の時はセーラー服を着る。

 ウチの支部長が「学生らしさを出していこう」なんて言うから、付き合っている。

「どした?」

 僕は読んでる本から目を離さずに、何か悩んでいそうな相棒に声をかける。

 相棒は、徹子は、なんか不完全燃焼っぽい様子だった。
 いつもは仕事の後は殺人欲求が解消されて、イキイキしているんだが。

「昨日の仕事さ、ちょっと刺さっちゃってさ」

「刃物が?」

「違うよ」

 徹子はテーブルから顔を上げる。
 なんだか浮かない表情だ。

「アタシの担当がさ、動画見せたら泣いたんだよね……」

 彼女はちょっと遠い目をする。
 あぁ、トラウマが刺激されたのか。

「まぁ、殺っちゃったのは全然平気なんだけどね。仕事だし。でも、あれでもウチの牝豚よりはマシだよなぁ、って思ったらさ、ちょっと不完全燃焼」

 そこまで言って、あふー、といった感じでまたテーブルに突っ伏した。

 まぁ、こいつ生い立ち相当ややこしいからな。
 色々繊細な部分もあるんだろ。

「なんかモヤモヤするなら、パフェでも食えば?」

 読書しながら、僕。
 甘いものでも食えば気分も落ち着くだろ。

「やーだー。甘いものドカ食いしたら太っちゃうじゃんか」

 太ったらボランティアに支障が~! 
 徹子は文句ばかり言っている。
 面倒な奴だな。全く。

「じゃあ金の使い道でも考えれば?」

「どうせ貯金でしょ。あやともそうでしょ?」

「……そうだけど」

 すでに、実は上級サラリーマンの生涯収入に迫る勢いで貯まってる。
 全く、金なんて地獄に持っていけないのにな。

 住居は火車の手が回ってるから、家賃ゼロだし、電気代ガス代水道代もゼロ。
 自分で使うのは書籍代くらいだから、全然減らなくて。

 女遊びだとか、酒に嵌るとか、ギャンブルとか、する気ないので、マジで使わない。

 こいつも似たようなもんで。
 女だから、普通はスイーツ食べ歩きなんか好きそうだと思うけど、こいつはそういうことはしない。
 化粧道具なんかは買ってるみたいだが、あまり高級品は使わないらしい。金はあるのに。
 贅沢するのが嫌なんだと。

 加えて、自炊。
 しかも、相当上手い。料理人になれるレベルだと正直思う。
「自分で作った方が大概美味しいし」と、自惚れでもなんでもなく、普通に言える奴だ。
 だから外食でもあまり金を使わない。

 こんな人間にならなければ、多分しっかり者の可愛い彼女として、誰かと幸せによろしくやれてたんだろうなとは思う。
 こいつの人生の躓きがなければ、色々方々幸せだったんだろうな。

 まったく、ついてない。僕もだが
 躓いて、揃って薄汚い人殺しかよ、と。

「まぁ、そろそろ何か頼むか、ドリンクバーをお替りしてきたらどうだ? でないと、飲み食いしないで席だけ占領って、最悪だろ。客として」

 まぁ、ドリンクバーだけで数時間居座るのも大概だけどな。
 僕は席を立った。コーヒーが切れたから。
 徹子のグラスには……何も無い。

「何がいい? ついでに汲んできてやるけど?」

「お茶~」

 机にへたりながら、徹子。

「お茶? ウーロン茶? 紅茶? ジャスミン茶?」

「ウーロン茶がいい~」

 へいへい。
 僕はへたってる相棒のグラスを手に取って、ドリンクバーに向かった。
 そろそろ、なんかお菓子的なものひとつくらい注文しないと、店が苦情を言ってくるのではないか? 
 自分のコーヒーを淹れ、グラスにウーロン茶を注ぎながらそう考えた。

 ……戻ったら、相談するか。

 そう思いながら席に戻ると。

 相棒が、徹子が、他の女子と揉めていた。
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