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1章「はじめまして、相棒」
ー閑話ー ちっぽけな人間(しろがね視点)
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「ふんっ・・・・忌々しい奴らだったことよ・・・」
憎々しげに呟く。
殺気のこもった気配が伝わったのか、周囲には生き物の存在がない。
「許さない!許さないぞ、『混沌』よ!!!!!」
灼熱の溶岩が巨大な身にふりかかる。
真紅の竜が白銀の獣に立ち向かう。
後方から黄金の竜が獣を追い詰める。
「・・・・消飛べっっっ!」
身を捩り、複数の尾を操って牽制するも、死角から全てを滅する眩い光が右半身を襲った。
悲鳴を押し殺しながらあくまで尊大に見下す。
「虫けらども・・・・。数が揃えばどうにかなるとでも思うたか・・・!」
風を巻き起こし地面を吹き飛ばす。
自分よりも矮小な存在、この世界では神と呼ばれている5柱の竜達に刃向われていることが我慢ならない。
カッと目を見開き竜達へかかる重力を増大させる。
自身に余裕がないことがより一層苛立たせる。
「ぐぉ・・・。この、化け物が・・・・。」
最後の一手と言わんばかりに、漆黒の竜は猛毒を獣に吹きかけ、大地に墜落してゆく。
目を見合わせた純白の竜と紺碧の竜は、双方向から獣に噛みつき、押さえつける。
「っ!離さんか、蜥蜴如きが!」
獣は身を震わせ、口から白いブレスを吐き続ける。
まるで死の吐息。ブレスの延長にいたであろう生き物は例外なく消滅した。
獣に接している2柱は息も絶え絶えであった。
仲間を信じて必死で獣を抑え込む。
「この世界を、甘く見るなあああああああ」
全身全霊を篭めて真紅の竜が獣の心臓を狙う。
仲間をも自身をも巻き込む覚悟で、黄金の竜が威力を集中させた光玉を至近距離で爆発させる。
「ぐぉおおおおおおお」
白銀の獣から暗黒のもやが吹き出し周囲の4柱を包み込む。
竜達は次々と墜落していくも命はあるようであった。
獣はそのまま暗黒に包まれ次元を、世界を渡る。
「蜥蜴ども・・・」
逃げるように世界を渡ったことが自尊心を傷つける。
確かに、複数の種族を滅ぼしたり、人間に紛れ込んで国を大混乱に陥れたり、多少むちゃくちゃはやった。
強ければ何でも良いだろうと思っている自身。
だからこそ、あの5柱に追い詰められたことが許せなかった。
ただ、強者である自分が思いっきり暴れることが出来たのも久しぶりである。
その点ではあの蜥蜴達を評価しても良いか、と心を鎮める。
「(適当に飛んだが、つまらなそうな世界だ)」
多少力がありそうな者の気配はあるが、自分とは比較にならない。
平和ボケしたような空気は身に合わない。
悲鳴や怒号が響き、血の臭いや腐臭が広がる世界。
誰もかれもが疑心暗鬼に陥り、裏切りが蔓延する世界。
そんな世界がお似合いなのだ。
化け物である自分には。
平和ボケした世界を破滅させるのもまた一興だが、如何せん疲労もある。
「人でも神でも何でも喰らうか・・・・」
のそりと身を起こし、はてどこに行こうかと考えると、こちらに近づく気配。
「まあまあ、美味そうな気配だ」
わざわざ喰われにくるとは間抜けがいたものだ。
緩んだ世界には珍しそうな強い魂の気配。
舌なめずりをしながら待ち構える。
視界に映ったのは、貧弱な人間の女であった。
息を切らせて無防備に座り込んでいる。
「・・・なんだ。人の子か?」
これ程の強い気配であるならば、土地神かと思っていたので意外であった。
「・・・・・・っっっ」
驚いたようにこちらを見上げる人間。
ぽかんとした顔は驚きに溢れていた。
悪意の視線を向けられなかったことに、獣自身も驚く。
動くタイミングを逸していた獣の耳に人間の呟きが届く。
「・・・・・綺麗・・・」
世辞でもかけられたことがない言葉。
この我に?
人間の顔からは、媚などは見受けられない。
我の気配を感じたらどんな存在も怯えていた。敵意を向けてきた。
世界ですら我を疎んでいる。
だからこそ好き放題している。
蹂躙し踏みつぶし滅ぼす。
それだけが愉悦。それだけが悦び。
世界が我を敵視するのであるならば、我も世界を敵視するだけのこと。
意思を得た瞬間からそんな存在であったのに。
感嘆のため息とともに「綺麗」と自身に声をかけてくる莫迦がいるとは。
貧弱な人間。
これは、我の物だ。
誰にも、世界にも渡さない。
「しろがね」
笑みを浮かべながら名を呼ぶ存在。
これまでのどの世界にもいなかった存在。
無知で無防備な彼女を騙したという自覚はある。
それがなんだ。
彼女、小夜はもう我の物だ。
永遠のその果てまで、我の物だ。
憎々しげに呟く。
殺気のこもった気配が伝わったのか、周囲には生き物の存在がない。
「許さない!許さないぞ、『混沌』よ!!!!!」
灼熱の溶岩が巨大な身にふりかかる。
真紅の竜が白銀の獣に立ち向かう。
後方から黄金の竜が獣を追い詰める。
「・・・・消飛べっっっ!」
身を捩り、複数の尾を操って牽制するも、死角から全てを滅する眩い光が右半身を襲った。
悲鳴を押し殺しながらあくまで尊大に見下す。
「虫けらども・・・・。数が揃えばどうにかなるとでも思うたか・・・!」
風を巻き起こし地面を吹き飛ばす。
自分よりも矮小な存在、この世界では神と呼ばれている5柱の竜達に刃向われていることが我慢ならない。
カッと目を見開き竜達へかかる重力を増大させる。
自身に余裕がないことがより一層苛立たせる。
「ぐぉ・・・。この、化け物が・・・・。」
最後の一手と言わんばかりに、漆黒の竜は猛毒を獣に吹きかけ、大地に墜落してゆく。
目を見合わせた純白の竜と紺碧の竜は、双方向から獣に噛みつき、押さえつける。
「っ!離さんか、蜥蜴如きが!」
獣は身を震わせ、口から白いブレスを吐き続ける。
まるで死の吐息。ブレスの延長にいたであろう生き物は例外なく消滅した。
獣に接している2柱は息も絶え絶えであった。
仲間を信じて必死で獣を抑え込む。
「この世界を、甘く見るなあああああああ」
全身全霊を篭めて真紅の竜が獣の心臓を狙う。
仲間をも自身をも巻き込む覚悟で、黄金の竜が威力を集中させた光玉を至近距離で爆発させる。
「ぐぉおおおおおおお」
白銀の獣から暗黒のもやが吹き出し周囲の4柱を包み込む。
竜達は次々と墜落していくも命はあるようであった。
獣はそのまま暗黒に包まれ次元を、世界を渡る。
「蜥蜴ども・・・」
逃げるように世界を渡ったことが自尊心を傷つける。
確かに、複数の種族を滅ぼしたり、人間に紛れ込んで国を大混乱に陥れたり、多少むちゃくちゃはやった。
強ければ何でも良いだろうと思っている自身。
だからこそ、あの5柱に追い詰められたことが許せなかった。
ただ、強者である自分が思いっきり暴れることが出来たのも久しぶりである。
その点ではあの蜥蜴達を評価しても良いか、と心を鎮める。
「(適当に飛んだが、つまらなそうな世界だ)」
多少力がありそうな者の気配はあるが、自分とは比較にならない。
平和ボケしたような空気は身に合わない。
悲鳴や怒号が響き、血の臭いや腐臭が広がる世界。
誰もかれもが疑心暗鬼に陥り、裏切りが蔓延する世界。
そんな世界がお似合いなのだ。
化け物である自分には。
平和ボケした世界を破滅させるのもまた一興だが、如何せん疲労もある。
「人でも神でも何でも喰らうか・・・・」
のそりと身を起こし、はてどこに行こうかと考えると、こちらに近づく気配。
「まあまあ、美味そうな気配だ」
わざわざ喰われにくるとは間抜けがいたものだ。
緩んだ世界には珍しそうな強い魂の気配。
舌なめずりをしながら待ち構える。
視界に映ったのは、貧弱な人間の女であった。
息を切らせて無防備に座り込んでいる。
「・・・なんだ。人の子か?」
これ程の強い気配であるならば、土地神かと思っていたので意外であった。
「・・・・・・っっっ」
驚いたようにこちらを見上げる人間。
ぽかんとした顔は驚きに溢れていた。
悪意の視線を向けられなかったことに、獣自身も驚く。
動くタイミングを逸していた獣の耳に人間の呟きが届く。
「・・・・・綺麗・・・」
世辞でもかけられたことがない言葉。
この我に?
人間の顔からは、媚などは見受けられない。
我の気配を感じたらどんな存在も怯えていた。敵意を向けてきた。
世界ですら我を疎んでいる。
だからこそ好き放題している。
蹂躙し踏みつぶし滅ぼす。
それだけが愉悦。それだけが悦び。
世界が我を敵視するのであるならば、我も世界を敵視するだけのこと。
意思を得た瞬間からそんな存在であったのに。
感嘆のため息とともに「綺麗」と自身に声をかけてくる莫迦がいるとは。
貧弱な人間。
これは、我の物だ。
誰にも、世界にも渡さない。
「しろがね」
笑みを浮かべながら名を呼ぶ存在。
これまでのどの世界にもいなかった存在。
無知で無防備な彼女を騙したという自覚はある。
それがなんだ。
彼女、小夜はもう我の物だ。
永遠のその果てまで、我の物だ。
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