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1章「はじめまして、相棒」
5「全ては突然に」
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「(うーん、現実味がなさすぎる・・・・)」
今日の放課後から、全てが突然であった。
しろがねの話も結局10%も理解出来ていないかもしれない。
他の世界、しろがねと一心同体、転生・・・・。
実感もないため、考えようとしても結局答えもでない。
毎日が嫌で嫌でたまらなかった。
そんな自分が都合の良い夢をみているだけではないだろうか。
「(いや・・・・そんなに都合良くないわ)」
よくよく考えると、目の前で甘味に夢中になっているこの白猫。相当ヤバい存在で前の世界を追い出されたのではないだろうか。
尊大。偉そう。口も悪い。説明が下手。目つきも悪い。
しかし、この獣に魅かれている自分がいる。
「しろがね、口汚れてる」
そんなにすごい存在にも見えないなと思いながら、ウェットティッシュを出す。
「む。ご苦労・・・。」
流石にはしゃぎすぎたことに少し気まずくなったのか大人しくなる。
目だけはがっちりと生チョコを見つめながら。
「ねえ、その、次に行く世界のことはわからないの?」
準備できることがあれば可能な限りしていきたい。
心の準備も整えたい。
「わからぬ。ただ、縁がつながるだけの話。どの世界と縁があるのかは、その時にわかるのみ。」
ぐびぐびとコップに顔を突っ込むしろがね。
「生き物のいない世界かもしれぬ。戦場の絶えない世界かもしれぬ。一面水の世界かもしれぬ」
「行く先がわからぬのが良いのだ。わかっていたらつまらんだろうに」
わかっていないなとでも言いたげな視線。
「う、うん。その、次の世界がつまらなかったら、またすぐに移動するの?」
どんな世界に行こうとも自分は驚愕できる自信があるが、しろがねの「面白い」はハードルが高そうである。
「すぐに移動が出来ぬときもある。その次の世界とのめぐりあわせが悪いとな。まあ千年もあれば縁はつながるであろう」
何でもないように説明をするしろがね。
「?!せん・・・・せんねん?」
聞き違えかと思った。
一面水の世界で千年もどうしろというのだ。
とろとろにふやけきってしまう。
「ふん。つまらぬならその世界など滅ぼせば良いのだ。しからばすぐに飛ばされる」
無理矢理に飛ぶのは面白いからなと、しろがねはニヤニヤ嫌な笑顔を浮かべる。
嗜虐的で残酷な、強者の笑み。蹂躙することに慣れている、捕食者の笑み。
蟻を踏みつぶすことを楽しむような純粋な悪意。
「・・・・性格悪いって言われない?」
あ、こいつやっぱりヤバいやつか。
神様っていっても祟り神かな。
遠い目になる小夜。
「弱者の戯言だ。我に敵わぬことが奴らの罪よ」
大きく口が割けた残忍な笑み。
白猫が生チョコにかぶりついている光景を見なければ、背筋も凍るような存在なのであろう。
きっと(だいぶ)しろがねは恐ろしい存在なのだろう。
世界にとっては敵なのだろう。
そんなしろがねだったから小夜は惹かれた。
小夜自身、自分はこの世界にとっての敵なのだろうと思っていたから。
この世界は、小夜のことを嫌いなのだろうと思っていたから。
堂々と好き勝手しているしろがねは、大多数の存在にとっては恐怖の大魔王だったとしても、小夜にとっては美しい獣でしかない。
振り返ってみて、この世界がなくなってしまったとしても驚くほど未練がない。
数千年、数万年としろがねとともにいたら、この世界を懐かしむことがくるのだろうか。
今の小夜にとってはどうでも良い話だった。
世界が小夜のことを嫌いなくらい、小夜だって世界を嫌いなのだから。
「あ・・・・しろがね、お茶おかわりいる?」
次はコーヒーでもいれようかな、と小夜が立ち上がりかけた瞬間。
「っ小夜。渡るぞ!」
ぼんっと元の巨大な姿になったしろがねが小夜に覆いかぶさる。
絶対に離さないと言わんばかりに小夜を咥えるしろがね。
えっ?とも言えない内に、視界が白く染まる。ぐにゃりと歪む。
足元の感覚もなくなる。
ぐらぐらと強烈なめまいに襲われているかのよう。
自分の体を包むしろがねの感触だけがはっきりとわかる。
―――――――――そして、意識が飛んだ。
今日の放課後から、全てが突然であった。
しろがねの話も結局10%も理解出来ていないかもしれない。
他の世界、しろがねと一心同体、転生・・・・。
実感もないため、考えようとしても結局答えもでない。
毎日が嫌で嫌でたまらなかった。
そんな自分が都合の良い夢をみているだけではないだろうか。
「(いや・・・・そんなに都合良くないわ)」
よくよく考えると、目の前で甘味に夢中になっているこの白猫。相当ヤバい存在で前の世界を追い出されたのではないだろうか。
尊大。偉そう。口も悪い。説明が下手。目つきも悪い。
しかし、この獣に魅かれている自分がいる。
「しろがね、口汚れてる」
そんなにすごい存在にも見えないなと思いながら、ウェットティッシュを出す。
「む。ご苦労・・・。」
流石にはしゃぎすぎたことに少し気まずくなったのか大人しくなる。
目だけはがっちりと生チョコを見つめながら。
「ねえ、その、次に行く世界のことはわからないの?」
準備できることがあれば可能な限りしていきたい。
心の準備も整えたい。
「わからぬ。ただ、縁がつながるだけの話。どの世界と縁があるのかは、その時にわかるのみ。」
ぐびぐびとコップに顔を突っ込むしろがね。
「生き物のいない世界かもしれぬ。戦場の絶えない世界かもしれぬ。一面水の世界かもしれぬ」
「行く先がわからぬのが良いのだ。わかっていたらつまらんだろうに」
わかっていないなとでも言いたげな視線。
「う、うん。その、次の世界がつまらなかったら、またすぐに移動するの?」
どんな世界に行こうとも自分は驚愕できる自信があるが、しろがねの「面白い」はハードルが高そうである。
「すぐに移動が出来ぬときもある。その次の世界とのめぐりあわせが悪いとな。まあ千年もあれば縁はつながるであろう」
何でもないように説明をするしろがね。
「?!せん・・・・せんねん?」
聞き違えかと思った。
一面水の世界で千年もどうしろというのだ。
とろとろにふやけきってしまう。
「ふん。つまらぬならその世界など滅ぼせば良いのだ。しからばすぐに飛ばされる」
無理矢理に飛ぶのは面白いからなと、しろがねはニヤニヤ嫌な笑顔を浮かべる。
嗜虐的で残酷な、強者の笑み。蹂躙することに慣れている、捕食者の笑み。
蟻を踏みつぶすことを楽しむような純粋な悪意。
「・・・・性格悪いって言われない?」
あ、こいつやっぱりヤバいやつか。
神様っていっても祟り神かな。
遠い目になる小夜。
「弱者の戯言だ。我に敵わぬことが奴らの罪よ」
大きく口が割けた残忍な笑み。
白猫が生チョコにかぶりついている光景を見なければ、背筋も凍るような存在なのであろう。
きっと(だいぶ)しろがねは恐ろしい存在なのだろう。
世界にとっては敵なのだろう。
そんなしろがねだったから小夜は惹かれた。
小夜自身、自分はこの世界にとっての敵なのだろうと思っていたから。
この世界は、小夜のことを嫌いなのだろうと思っていたから。
堂々と好き勝手しているしろがねは、大多数の存在にとっては恐怖の大魔王だったとしても、小夜にとっては美しい獣でしかない。
振り返ってみて、この世界がなくなってしまったとしても驚くほど未練がない。
数千年、数万年としろがねとともにいたら、この世界を懐かしむことがくるのだろうか。
今の小夜にとってはどうでも良い話だった。
世界が小夜のことを嫌いなくらい、小夜だって世界を嫌いなのだから。
「あ・・・・しろがね、お茶おかわりいる?」
次はコーヒーでもいれようかな、と小夜が立ち上がりかけた瞬間。
「っ小夜。渡るぞ!」
ぼんっと元の巨大な姿になったしろがねが小夜に覆いかぶさる。
絶対に離さないと言わんばかりに小夜を咥えるしろがね。
えっ?とも言えない内に、視界が白く染まる。ぐにゃりと歪む。
足元の感覚もなくなる。
ぐらぐらと強烈なめまいに襲われているかのよう。
自分の体を包むしろがねの感触だけがはっきりとわかる。
―――――――――そして、意識が飛んだ。
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