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遭遇者
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「透さん、待って!」
マンションを出て、行く先も考えずに歩いていく久世を、瑞稀が追いかけた。
「ねえ、透さん!」
瑞稀は追いついたが、久世は歩みを止めないため、横に並んで声を掛ける。
「タクシーに乗りましょう」
久世は答えない。
「じゃあ、どこかお店に入りましょうよ」
久世は瑞稀を無視して歩き続けている。
瑞稀は何度も声をかけたが、全く反応がないので、久世の前に立ちふさがった。
「とりあえず止まって!」
両手で通せんぼをしてそう叫んだ瑞稀の行動で、久世はようやく歩みを止めた。
「一人にしてください」
久世は抑揚のない冷静な声でそう言ったが、瑞稀と目は合わせない。
「一緒に帰りましょう」
「一人で帰ってください」
「嫌」
「なぜ私に構うんですか」
「婚約者だから」
「私にその意識はありません。結婚はしません」
「そんなことできないわ。久世として生きていくなら私と結婚する以外の道はないのよ」
「それなら名も家も捨てます。一人にしてください」
「は? そんなに嫌なの?」
瑞稀は思わず声を上げた。
「……はい」
久世は視線を合わせないまま、ポツリと言う。
「この私のことが?」
瑞稀は一歩久世に近寄って、顔を覗き込む。
瑞稀に気圧された久世は、ようやく瑞稀と目を合わせた。
「……櫻田さんに思うところはありません。ただ結婚はしない、それだけです」
瑞稀はそれを聞いてニヤリと大きく口の両端を上げた。
「わかった。好きになってもらえばいいわけね」
久世は大きなため息をつくと、瑞稀の横をすり抜けるようにして再び歩き始めた。
「どこに行くのよ!」
「……どこでもいい」
「帰りましょうよ」
再び同じような問答を続けながら幹線道路沿いの歩道を歩いていくと、久世はビルから出てきた人物に目を留めた。
見覚えのあるその人物との遭遇に驚いて久世は立ち止まると、瑞稀も、そしてその人物も久世の動きに気がついて同じく足を止めた。
「……みーちゃん」
須藤が見開いた目を瑞稀に向けてそう言った。
瑞稀は顔色を変えて、隠れるようにして後退りをする。
久世は須藤の反応を見てさらに驚き、須藤と瑞稀の表情を交互に伺った。
瑞希は久世の腕に手を巻き付けて、背後に回って身を隠そうとする。
「みーちゃん!」
須藤は久世の存在には目もくれず、瑞稀だけを見つめたまま、近づいてくる。
久世は咳払いをして、須藤の注意を引く。
「須藤さん、お仕事中ですか?」
「はっ? あ! あれ? えーっと、……川瀬さん?」
「……久世です」
「あー、久世さん! これは失礼」
そこで須藤は瑞稀が久世の腕に手を巻き付けていることに気づいた。
「えっ? みーちゃん……久世さんとどういう関係?」
みーちゃんはそれには答えず、久世に耳打ちする。
「透さん、タクシーに乗ろうよ」
「みーちゃん、どこにいたの? なんで連絡取れなかったの? 心配してたよ」
「透さんっ」
瑞稀は小声で呼びかけて、久世の袖口を引っ張った。
「みーちゃん、僕はみーちゃんに何かを求めているわけじゃないんだ。ただ、彼女に何か言ったんじゃないかって、それを聞きたかっただけなんだ。何か、誤解を与えるようなことを。僕たち、ただの相互だろ? オフで顔を合わせただけじゃないか。しかもたったの数時間。それなのに、みーちゃんと会った次の日に浮気したって詰め寄られて結局振られたんだ。あの日のメンバーで僕の連絡先を知っていたのはみーちゃんだけだから、何か知らないかと思って探してたんだよ」
久世は事情を察して、第一印象の悪かった須藤に対する意識を変えた。
「……須藤さん、お仕事中ですか? お時間があれば、どこかお話のできるところへでも……」
須藤はハッとして久世を見た。
「久世さん、ありがとうございます。こんなところでいきなり失礼致しました。お気遣い痛み入ります。お言葉に甘えたいところなのですが、午前に職場を抜け出したのと夕方の約束のために、急いで仕事を片付けなければなりません。ですから今はちょっと……」
「承知しました。私が櫻田さんに話を伺ってみますので、お時間ができましたら、こちらにご連絡をいただけますか?」
そう言って名刺を手渡した。
「はい。はっ! えっ? 秘書官? 久世……首相?」
須藤は驚きの声を上げながら、名刺と久世を交互に見た。
「それでは、お忙しいところを失礼いたしました」
そう言って、久世は自分の腕に絡みついたままの瑞稀を連れて、その場を去った。
久世はタクシーを捕まえて瑞稀を押し込むと、自分もそれに乗り込んだ。
「えーっと……青森空港へ」
久世が言うと、瑞稀がパッと顔を輝かせた。
「帰るの?」
「……須藤さんとはお知り合いなんですか?」
瑞稀は笑顔を曇らせて、久世に向けていた期待の目を窓の外へ逸らせた。
「知り合いじゃないわ」
「そうは見えませんでしたが」
「人違いよ」
「……話してください」
「話すことなんてないわ」
しばらくそうやって問答を続けて瑞希は誤魔化し続けていたが、久世は冷静で粘り強かった。
タクシーが空港へ着き、降車してもまだ久世は諦めず、同じ質問を繰り返した。
辟易した瑞稀は、とうとうこう言った。
「本当に帰る?」
「櫻田さんは帰ります」
「……透さんが一緒に帰るなら、話す」
久世は少し躊躇したが、それは2秒にも満たなかった。
「……わかりました」
「じゃあチケットを買って」
久世は二人分のチケットを買った。離陸時間は30分後だったので、二人はコンコースへと向かった。
座席に収まったあとも瑞稀は話を逸らして誤魔化し続けていたが、離陸をすると、約束を守って一緒に飛行機に乗ってくれた久世に配慮をしたのか、普段は見せないようなおずおずといった調子で説明を始めた。
瑞稀の話は簡潔だった。
あるオンラインゲームで親しくなったユーザー達がオフで会おうと盛り上がったことがあり、その時に集まったメンバーの中に須藤がいたのだと言う。瑞希自体、そのオフには面白半分で参加しただけで、30分もしないうちに退席をしたし、須藤とは席が離れていてほとんど話していないから、親しいわけではなく、ただの顔見知り程度だと言った。
久世は、その説明ではあの須藤の言葉とは繋がらないと思った。
それを指摘すると、瑞希は一目惚れされ慣れているからと、それ以上は取り合わない。
久世が何度蒸し返しても、瑞希は強引に話題を変えてしまう。そしていつものように自分のことや無関係の話をのべつ幕なしに喋り続けて、久世に口を挟む隙を与えなかった。
羽田空港に着陸してコンコースを出るまで、瑞希は喋り続けていた。
久世は諦めた。粘り強い方ではあったが、話すこと自体が苦手なので、あらゆる話題を途切れることなく喋り続ける瑞希を誘導することなど、久世には到底無理なことだった。
ターミナルからタクシーに乗ろうとしたとき、久世は聞き覚えのある声に呼び止められた。
「透! 待ってたよ」
マモルだった。タクシー乗り場の方から駆け寄ってきて、いきなり久世の腕に手を回した。
久世が反応に困っていると、マモルは目の前に停車しているタクシーに久世を押し込んだ。
マモルも乗り込んで行き先を告げる。久世は抵抗する間もない出来事に唖然とした。
「あれ? そう言えば婚約者と一緒だったんじゃないの?」
そう言われて瑞希の存在を思い出した久世は、既に発車して遠ざかり始めているタクシー乗り場を振り返ったが、その姿は見えなかった。マモルは気が付かなかったのだろうか。久世の側にぴったりとくっついていたし、かなりの美人だから目立っていたはずだが。
「なぜわかったんですか?」
「それ聞く? また悠輔に『お前は何も知らなすぎる』とか言われるよ」
マモルは西園寺のモノマネをして見せたあとに豪快に笑った。
「……どこへ行くんですか?」
マモルは久世に向かって片手を開いて『待て』のようなポーズをすると、スマホを操作して耳にあてた。
「あ、悠輔?……うん。今捕まえて向かってる。え? ……二時間くらいじゃないかな? ……嘘嘘! ごめんごめん! わかってるって。……はいはい。じゃあ」
マモルは通話を切った。久世が自分を見ていることに気づいたマモルは、ニヤッと笑顔を向けて言った。
「ホテルに寄って行こうと思ったけど、ダメだって」
笑顔が瞬時に残念そうな表情になる。マモルはコロコロと表情も動きも変わる男だ。
「悠輔が何の用なんですか」
「何の用って」マモルは吹き出した。
「悠輔パパに言われてるでしょ? ダメだよ浮気しちゃ。透の相手は晶でしょ? ……それにしても、元彼に会いに行くのに婚約者と同伴だなんて、透は変なことをする人なんだね」
「……勝手に来たんです」
「どっちでもいいけど、事実じゃん。てか何で敬語なの? あんなこともそんなこともしたのに」
久世はそれを聞いて、顔をしかめて視線を逸らした。
「ああっ、酷い! あんなに情熱的だったのに。あ、思い出すためにやっぱり寄っていく?」
「……覚えていないので」
マモルは驚いた顔をした。そして得心がいったという表情を浮かべて言った。
「そうか、透は初めてだったんだね」
「何のことですか?」
「あーー、えーっと、……悠輔に聞いて」
マモルは目を泳がせながら誤魔化すような笑みでそう言うと、会話は終わりといった様子でスマホを操作し始めた。
久世は朝から色々なことがありすぎて疲れていたので、それ以上の追求はせずに、座席のシートに身体を預けた。サイドウィンドウを眺めながらウトウトとする。
そしてそのまま目的地に到着するまで眠ってしまった。
マンションを出て、行く先も考えずに歩いていく久世を、瑞稀が追いかけた。
「ねえ、透さん!」
瑞稀は追いついたが、久世は歩みを止めないため、横に並んで声を掛ける。
「タクシーに乗りましょう」
久世は答えない。
「じゃあ、どこかお店に入りましょうよ」
久世は瑞稀を無視して歩き続けている。
瑞稀は何度も声をかけたが、全く反応がないので、久世の前に立ちふさがった。
「とりあえず止まって!」
両手で通せんぼをしてそう叫んだ瑞稀の行動で、久世はようやく歩みを止めた。
「一人にしてください」
久世は抑揚のない冷静な声でそう言ったが、瑞稀と目は合わせない。
「一緒に帰りましょう」
「一人で帰ってください」
「嫌」
「なぜ私に構うんですか」
「婚約者だから」
「私にその意識はありません。結婚はしません」
「そんなことできないわ。久世として生きていくなら私と結婚する以外の道はないのよ」
「それなら名も家も捨てます。一人にしてください」
「は? そんなに嫌なの?」
瑞稀は思わず声を上げた。
「……はい」
久世は視線を合わせないまま、ポツリと言う。
「この私のことが?」
瑞稀は一歩久世に近寄って、顔を覗き込む。
瑞稀に気圧された久世は、ようやく瑞稀と目を合わせた。
「……櫻田さんに思うところはありません。ただ結婚はしない、それだけです」
瑞稀はそれを聞いてニヤリと大きく口の両端を上げた。
「わかった。好きになってもらえばいいわけね」
久世は大きなため息をつくと、瑞稀の横をすり抜けるようにして再び歩き始めた。
「どこに行くのよ!」
「……どこでもいい」
「帰りましょうよ」
再び同じような問答を続けながら幹線道路沿いの歩道を歩いていくと、久世はビルから出てきた人物に目を留めた。
見覚えのあるその人物との遭遇に驚いて久世は立ち止まると、瑞稀も、そしてその人物も久世の動きに気がついて同じく足を止めた。
「……みーちゃん」
須藤が見開いた目を瑞稀に向けてそう言った。
瑞稀は顔色を変えて、隠れるようにして後退りをする。
久世は須藤の反応を見てさらに驚き、須藤と瑞稀の表情を交互に伺った。
瑞希は久世の腕に手を巻き付けて、背後に回って身を隠そうとする。
「みーちゃん!」
須藤は久世の存在には目もくれず、瑞稀だけを見つめたまま、近づいてくる。
久世は咳払いをして、須藤の注意を引く。
「須藤さん、お仕事中ですか?」
「はっ? あ! あれ? えーっと、……川瀬さん?」
「……久世です」
「あー、久世さん! これは失礼」
そこで須藤は瑞稀が久世の腕に手を巻き付けていることに気づいた。
「えっ? みーちゃん……久世さんとどういう関係?」
みーちゃんはそれには答えず、久世に耳打ちする。
「透さん、タクシーに乗ろうよ」
「みーちゃん、どこにいたの? なんで連絡取れなかったの? 心配してたよ」
「透さんっ」
瑞稀は小声で呼びかけて、久世の袖口を引っ張った。
「みーちゃん、僕はみーちゃんに何かを求めているわけじゃないんだ。ただ、彼女に何か言ったんじゃないかって、それを聞きたかっただけなんだ。何か、誤解を与えるようなことを。僕たち、ただの相互だろ? オフで顔を合わせただけじゃないか。しかもたったの数時間。それなのに、みーちゃんと会った次の日に浮気したって詰め寄られて結局振られたんだ。あの日のメンバーで僕の連絡先を知っていたのはみーちゃんだけだから、何か知らないかと思って探してたんだよ」
久世は事情を察して、第一印象の悪かった須藤に対する意識を変えた。
「……須藤さん、お仕事中ですか? お時間があれば、どこかお話のできるところへでも……」
須藤はハッとして久世を見た。
「久世さん、ありがとうございます。こんなところでいきなり失礼致しました。お気遣い痛み入ります。お言葉に甘えたいところなのですが、午前に職場を抜け出したのと夕方の約束のために、急いで仕事を片付けなければなりません。ですから今はちょっと……」
「承知しました。私が櫻田さんに話を伺ってみますので、お時間ができましたら、こちらにご連絡をいただけますか?」
そう言って名刺を手渡した。
「はい。はっ! えっ? 秘書官? 久世……首相?」
須藤は驚きの声を上げながら、名刺と久世を交互に見た。
「それでは、お忙しいところを失礼いたしました」
そう言って、久世は自分の腕に絡みついたままの瑞稀を連れて、その場を去った。
久世はタクシーを捕まえて瑞稀を押し込むと、自分もそれに乗り込んだ。
「えーっと……青森空港へ」
久世が言うと、瑞稀がパッと顔を輝かせた。
「帰るの?」
「……須藤さんとはお知り合いなんですか?」
瑞稀は笑顔を曇らせて、久世に向けていた期待の目を窓の外へ逸らせた。
「知り合いじゃないわ」
「そうは見えませんでしたが」
「人違いよ」
「……話してください」
「話すことなんてないわ」
しばらくそうやって問答を続けて瑞希は誤魔化し続けていたが、久世は冷静で粘り強かった。
タクシーが空港へ着き、降車してもまだ久世は諦めず、同じ質問を繰り返した。
辟易した瑞稀は、とうとうこう言った。
「本当に帰る?」
「櫻田さんは帰ります」
「……透さんが一緒に帰るなら、話す」
久世は少し躊躇したが、それは2秒にも満たなかった。
「……わかりました」
「じゃあチケットを買って」
久世は二人分のチケットを買った。離陸時間は30分後だったので、二人はコンコースへと向かった。
座席に収まったあとも瑞稀は話を逸らして誤魔化し続けていたが、離陸をすると、約束を守って一緒に飛行機に乗ってくれた久世に配慮をしたのか、普段は見せないようなおずおずといった調子で説明を始めた。
瑞稀の話は簡潔だった。
あるオンラインゲームで親しくなったユーザー達がオフで会おうと盛り上がったことがあり、その時に集まったメンバーの中に須藤がいたのだと言う。瑞希自体、そのオフには面白半分で参加しただけで、30分もしないうちに退席をしたし、須藤とは席が離れていてほとんど話していないから、親しいわけではなく、ただの顔見知り程度だと言った。
久世は、その説明ではあの須藤の言葉とは繋がらないと思った。
それを指摘すると、瑞希は一目惚れされ慣れているからと、それ以上は取り合わない。
久世が何度蒸し返しても、瑞希は強引に話題を変えてしまう。そしていつものように自分のことや無関係の話をのべつ幕なしに喋り続けて、久世に口を挟む隙を与えなかった。
羽田空港に着陸してコンコースを出るまで、瑞希は喋り続けていた。
久世は諦めた。粘り強い方ではあったが、話すこと自体が苦手なので、あらゆる話題を途切れることなく喋り続ける瑞希を誘導することなど、久世には到底無理なことだった。
ターミナルからタクシーに乗ろうとしたとき、久世は聞き覚えのある声に呼び止められた。
「透! 待ってたよ」
マモルだった。タクシー乗り場の方から駆け寄ってきて、いきなり久世の腕に手を回した。
久世が反応に困っていると、マモルは目の前に停車しているタクシーに久世を押し込んだ。
マモルも乗り込んで行き先を告げる。久世は抵抗する間もない出来事に唖然とした。
「あれ? そう言えば婚約者と一緒だったんじゃないの?」
そう言われて瑞希の存在を思い出した久世は、既に発車して遠ざかり始めているタクシー乗り場を振り返ったが、その姿は見えなかった。マモルは気が付かなかったのだろうか。久世の側にぴったりとくっついていたし、かなりの美人だから目立っていたはずだが。
「なぜわかったんですか?」
「それ聞く? また悠輔に『お前は何も知らなすぎる』とか言われるよ」
マモルは西園寺のモノマネをして見せたあとに豪快に笑った。
「……どこへ行くんですか?」
マモルは久世に向かって片手を開いて『待て』のようなポーズをすると、スマホを操作して耳にあてた。
「あ、悠輔?……うん。今捕まえて向かってる。え? ……二時間くらいじゃないかな? ……嘘嘘! ごめんごめん! わかってるって。……はいはい。じゃあ」
マモルは通話を切った。久世が自分を見ていることに気づいたマモルは、ニヤッと笑顔を向けて言った。
「ホテルに寄って行こうと思ったけど、ダメだって」
笑顔が瞬時に残念そうな表情になる。マモルはコロコロと表情も動きも変わる男だ。
「悠輔が何の用なんですか」
「何の用って」マモルは吹き出した。
「悠輔パパに言われてるでしょ? ダメだよ浮気しちゃ。透の相手は晶でしょ? ……それにしても、元彼に会いに行くのに婚約者と同伴だなんて、透は変なことをする人なんだね」
「……勝手に来たんです」
「どっちでもいいけど、事実じゃん。てか何で敬語なの? あんなこともそんなこともしたのに」
久世はそれを聞いて、顔をしかめて視線を逸らした。
「ああっ、酷い! あんなに情熱的だったのに。あ、思い出すためにやっぱり寄っていく?」
「……覚えていないので」
マモルは驚いた顔をした。そして得心がいったという表情を浮かべて言った。
「そうか、透は初めてだったんだね」
「何のことですか?」
「あーー、えーっと、……悠輔に聞いて」
マモルは目を泳がせながら誤魔化すような笑みでそう言うと、会話は終わりといった様子でスマホを操作し始めた。
久世は朝から色々なことがありすぎて疲れていたので、それ以上の追求はせずに、座席のシートに身体を預けた。サイドウィンドウを眺めながらウトウトとする。
そしてそのまま目的地に到着するまで眠ってしまった。
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