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35. その減らず口、黙らせてやるわ!
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「もうそろそろ終わりにしようか? あ、終わりって言っても『バイバイ、またね!』って別れることじゃないよ? 文字通り終わりだ。50年来の友人だけど……と言っても実質付き合っていたのは10年か? まあ、それでも当時はアンドリューを尊敬していたからね。いやいや本当だよ。心底惚れ抜いていたから皇帝にしたいと思って頑張っていたんじゃないか。全てアンドリューのためだよ。え? そうだね。うん。それは嘘だ。アンドリューのためにしたことは一つもない。僕は自分のやりたいことしかしない主義だからね。それは仕方ない。まあ、あの当時はアンドリューを引き立てて、それを利用するつもりだったんだが、影の騎士ごときにやられる最強の魔法使いなんて必要がないと気がついたんだ。魔法の存在が人々の記憶から消えたことは関係ない。そこじゃないんだ。ただアンドリューに失望して、それなら僕が最強になればいいと考えついただけなんだ。いやあ、アンドリューをこの手で殺せる日がくるとは思わなかったなあ。さすがに無理だと思ったけど、やはりあの技が完成したことが……」
まだシュヴァリエたちが戦っている間に、少しでも魔力の回復をしようとして黙って聞いていたけど、いい加減耐えられなくなってきたわ。
よくもまあペラペラと、あんなに喋ることがあるわね!
「ミスター・カーライルとシュヴァリエはどこかに隠れて休んでいてください!」
あの二人もそろそろ限界だわ。
私はシュヴァリエの足場をゆっくりと下げて、地面に降ろした。
「エマ様!」
あんたボロボロよ。それ以上戦ったら死んでしまう。
「ミス・ヴァロワ、あなた一人にさせられない……と言いたいところだが、私はここまでかもしれない。正直これ以上力は残っていない」
ミスター・カーライルも地面に降りてきた。
「はい。シュヴァリエと一緒にいてください。あと、ベルタン侯爵とも」
私が視線でベルタン侯爵の居場所を示すと、ミスター・カーライルは驚いた表情を浮かべて駆け寄った。
「あーあー、隙だらけだよ?」
チェンバレンが特大の攻撃魔法を繰り出したので、私も防御ではなく攻撃魔法を放出してそれを打ち消した。
チェンバレンは攻撃の手を止めて、煽るように口笛を吹いた。
「やはりこの令嬢は見過ごせないなあ。ここで死んでもらわないと後々厄介な目に遭いかねない」
「うるさいわね。それはこっちの台詞よ。あんたを野放しにしていたら、世界中の人間の魔力が吸い取られてしまうわ」
「あー、よくわかったね。いずれはそうするつもりだ。時間はかかるけどね。僕だけが魔法使いで、あとはその栄養源ってわけだ」
なんてことを言うの? 本物の悪党ね!
「他人の魔力がないとミスター・カーライルに敵わない小物のくせに!」
チェンバレンは上げっぱなしだった口角をわずかに下げた。
「あー、僕を挑発しようとしているのかな?」笑い声をあげる。「僕に利くわけないだろう? そんな負け犬の遠吠えが」
「自力で相手をしてみなさいよ!」
「自力? この魔法を生み出したのは僕だ。自力で相手をしていると言えるだろう?」
「そんなわけないじゃない! 他人の力を使って粋がってんじゃないわよ! そんな小物じゃ右腕にすらなれないわ」
「粋がってはいない」心外だというように大袈裟に首を振る。
「それに小物は君だろう? 多少魔力は持っているがまだひよっこだ。技も全部アンドリューの真似だし、力も敵わないくせに口だけは達者だなんて滑稽だね。粋がっているのは僕じゃなくて君だよ」
この減らず口の悪党め!
私は会話をしながらも技を繰り出すために魔力を溜めていたが、もう十分だろう。
早いところあの口を黙らせてやりたいわ。
手を両脇に下ろし、ボールを掴むみたいにして指を軽く曲げる。意識を集中して、魔力を一斉に立ち上らせるイメージを浮かべ、口の中で呪文を唱える──と同時に両手を勢いよく上げると──
上手くいったわ!
両手を上げた瞬間に、地面から直径10メートルほどの赤い光の柱が立ち上った。
奇襲は成功し、避ける間もなかったようで、その瞬間にど真ん中にいたチェンバレンに直撃した。
これでダメなら他に策はない。どうにか効いて!
チェンバレンを中央に据えて立ち上った光の柱は、数秒感迸ったあと霧散して消えた。
しかし光が消えたあと、そこには余裕の笑みを浮かべているチェンバレンが浮かんでいた。
「この技までできるとはな」
チェンバレンは両手をだらりと下げ、何かを握っているように指を軽く曲げた。
まさか……
「僕にもできるに決まっているだろう?」そして両手を一気に振り上げる。
まずいわ……
「しかも悪いが、君の比じゃない」
その言葉が耳に届くが早いか、私は全身をオレンジ色の光に包まれた。
「エマ様!」シュヴァリエの声が聞こえた。
私はすぐさま防御魔法を張ったが、出遅れたため全身に鋭い痛みが走った。火に炙られたように熱く、全身を殴打されたかのようにじんじんと痛む。皮膚がこすれたようになり血が滲んだ。遅れたとは言え1秒にも満たずに発動できたはずなのにこれほどの威力だとは、防御できていなかったら死んでいただろう。
オレンジ色の光が消滅したあと、私は痛みと恐怖で膝をついた。シュヴァリエが駆け寄ってきて、私の傷の程度を確認している。
ダメだ……私の攻撃は効いていないのに、チェンバレンの攻撃は確かに私の比ではない。
「エマ様のお身体に傷をつけるとは……」
シュヴァリエが私の横でかすかに震えながら立ち上がった。
「チェンバレン……」
疲労と怪我でボロボロのシュヴァリエが、剣を手にしてチェンバレンを睨みつける。
「絶対に許さない!」
そう言ってチェンバレンに斬り掛かった。
チェンバレンは意表を突かれたのか、防御魔法を貫くほどの威力だったのか、剣撃はもろにチェンバレンの肩に入った。
チェンバレンは反撃を仕掛けるが、シュヴァリエは既に二の太刀を浴びせていた。シュヴァリエは剣を振り下ろしたあとすぐに攻撃を避け、左腕をかすめただけで済んだようだが、チェンバレンは今度は反対側の肩に斬撃を受けた。
「こいつ……」
チェンバレンの表情から余裕の笑みが消えた。
私も呆然としていないで攻撃を仕掛けなければ!
シュヴァリエが三の太刀を振りかざす瞬間に、応戦するべく攻撃魔法を放った。
しかし、チェンバレンではなくシュヴァリエの耳元をかすってしまった。だめだ。動きが早すぎて狙いを定められない。
さっきの技も、シュヴァリエを巻き込んでしまうから使えない。どうすればいいかしら?
私が迷っている間も、二人は攻撃の手を止めずに戦闘を続けている。
次第にチェンバレンが優勢になってきた。シュヴァリエは疲れが見えて攻撃の威力が落ちているにも関わらず、チェンバレンは疲れるどころがみるみる元気になり、それまで受け止めきれていたシュヴァリエに攻撃がかすめるようになってきた。
そうだわ!
他人の魔力を吸い取るあの魔法があるから無敵なのよ! あの魔法を封じ込めてしまえば倒せるかもしれない。十分の強さを持っているのなら、30年もかけてあんな魔法を開発したりはしないはずよ。
えーっと、つまり、あいつが魔力を吸い取れないようにすればいいわけだから、あいつの周りに防御魔法を張るというのはどうかしら? 必要以上に密度をあげて、一切のものを遮断するような……
私は思いついたその防御魔法を、チェンバレン目掛けて繰り出した。
しかしシュヴァリエが斬り掛かった拍子に穴が空いて、すぐに魔法が解けてしまった。
そんなに脆弱だったかしら?
「ミス・ヴァロワ、今のは名案だ!」ミスター・カーライルが声をあげた。
「でもシュヴァリエが簡単に……」
「ああ、だから次はレオごと囲うんだ」
えっ?
まだシュヴァリエたちが戦っている間に、少しでも魔力の回復をしようとして黙って聞いていたけど、いい加減耐えられなくなってきたわ。
よくもまあペラペラと、あんなに喋ることがあるわね!
「ミスター・カーライルとシュヴァリエはどこかに隠れて休んでいてください!」
あの二人もそろそろ限界だわ。
私はシュヴァリエの足場をゆっくりと下げて、地面に降ろした。
「エマ様!」
あんたボロボロよ。それ以上戦ったら死んでしまう。
「ミス・ヴァロワ、あなた一人にさせられない……と言いたいところだが、私はここまでかもしれない。正直これ以上力は残っていない」
ミスター・カーライルも地面に降りてきた。
「はい。シュヴァリエと一緒にいてください。あと、ベルタン侯爵とも」
私が視線でベルタン侯爵の居場所を示すと、ミスター・カーライルは驚いた表情を浮かべて駆け寄った。
「あーあー、隙だらけだよ?」
チェンバレンが特大の攻撃魔法を繰り出したので、私も防御ではなく攻撃魔法を放出してそれを打ち消した。
チェンバレンは攻撃の手を止めて、煽るように口笛を吹いた。
「やはりこの令嬢は見過ごせないなあ。ここで死んでもらわないと後々厄介な目に遭いかねない」
「うるさいわね。それはこっちの台詞よ。あんたを野放しにしていたら、世界中の人間の魔力が吸い取られてしまうわ」
「あー、よくわかったね。いずれはそうするつもりだ。時間はかかるけどね。僕だけが魔法使いで、あとはその栄養源ってわけだ」
なんてことを言うの? 本物の悪党ね!
「他人の魔力がないとミスター・カーライルに敵わない小物のくせに!」
チェンバレンは上げっぱなしだった口角をわずかに下げた。
「あー、僕を挑発しようとしているのかな?」笑い声をあげる。「僕に利くわけないだろう? そんな負け犬の遠吠えが」
「自力で相手をしてみなさいよ!」
「自力? この魔法を生み出したのは僕だ。自力で相手をしていると言えるだろう?」
「そんなわけないじゃない! 他人の力を使って粋がってんじゃないわよ! そんな小物じゃ右腕にすらなれないわ」
「粋がってはいない」心外だというように大袈裟に首を振る。
「それに小物は君だろう? 多少魔力は持っているがまだひよっこだ。技も全部アンドリューの真似だし、力も敵わないくせに口だけは達者だなんて滑稽だね。粋がっているのは僕じゃなくて君だよ」
この減らず口の悪党め!
私は会話をしながらも技を繰り出すために魔力を溜めていたが、もう十分だろう。
早いところあの口を黙らせてやりたいわ。
手を両脇に下ろし、ボールを掴むみたいにして指を軽く曲げる。意識を集中して、魔力を一斉に立ち上らせるイメージを浮かべ、口の中で呪文を唱える──と同時に両手を勢いよく上げると──
上手くいったわ!
両手を上げた瞬間に、地面から直径10メートルほどの赤い光の柱が立ち上った。
奇襲は成功し、避ける間もなかったようで、その瞬間にど真ん中にいたチェンバレンに直撃した。
これでダメなら他に策はない。どうにか効いて!
チェンバレンを中央に据えて立ち上った光の柱は、数秒感迸ったあと霧散して消えた。
しかし光が消えたあと、そこには余裕の笑みを浮かべているチェンバレンが浮かんでいた。
「この技までできるとはな」
チェンバレンは両手をだらりと下げ、何かを握っているように指を軽く曲げた。
まさか……
「僕にもできるに決まっているだろう?」そして両手を一気に振り上げる。
まずいわ……
「しかも悪いが、君の比じゃない」
その言葉が耳に届くが早いか、私は全身をオレンジ色の光に包まれた。
「エマ様!」シュヴァリエの声が聞こえた。
私はすぐさま防御魔法を張ったが、出遅れたため全身に鋭い痛みが走った。火に炙られたように熱く、全身を殴打されたかのようにじんじんと痛む。皮膚がこすれたようになり血が滲んだ。遅れたとは言え1秒にも満たずに発動できたはずなのにこれほどの威力だとは、防御できていなかったら死んでいただろう。
オレンジ色の光が消滅したあと、私は痛みと恐怖で膝をついた。シュヴァリエが駆け寄ってきて、私の傷の程度を確認している。
ダメだ……私の攻撃は効いていないのに、チェンバレンの攻撃は確かに私の比ではない。
「エマ様のお身体に傷をつけるとは……」
シュヴァリエが私の横でかすかに震えながら立ち上がった。
「チェンバレン……」
疲労と怪我でボロボロのシュヴァリエが、剣を手にしてチェンバレンを睨みつける。
「絶対に許さない!」
そう言ってチェンバレンに斬り掛かった。
チェンバレンは意表を突かれたのか、防御魔法を貫くほどの威力だったのか、剣撃はもろにチェンバレンの肩に入った。
チェンバレンは反撃を仕掛けるが、シュヴァリエは既に二の太刀を浴びせていた。シュヴァリエは剣を振り下ろしたあとすぐに攻撃を避け、左腕をかすめただけで済んだようだが、チェンバレンは今度は反対側の肩に斬撃を受けた。
「こいつ……」
チェンバレンの表情から余裕の笑みが消えた。
私も呆然としていないで攻撃を仕掛けなければ!
シュヴァリエが三の太刀を振りかざす瞬間に、応戦するべく攻撃魔法を放った。
しかし、チェンバレンではなくシュヴァリエの耳元をかすってしまった。だめだ。動きが早すぎて狙いを定められない。
さっきの技も、シュヴァリエを巻き込んでしまうから使えない。どうすればいいかしら?
私が迷っている間も、二人は攻撃の手を止めずに戦闘を続けている。
次第にチェンバレンが優勢になってきた。シュヴァリエは疲れが見えて攻撃の威力が落ちているにも関わらず、チェンバレンは疲れるどころがみるみる元気になり、それまで受け止めきれていたシュヴァリエに攻撃がかすめるようになってきた。
そうだわ!
他人の魔力を吸い取るあの魔法があるから無敵なのよ! あの魔法を封じ込めてしまえば倒せるかもしれない。十分の強さを持っているのなら、30年もかけてあんな魔法を開発したりはしないはずよ。
えーっと、つまり、あいつが魔力を吸い取れないようにすればいいわけだから、あいつの周りに防御魔法を張るというのはどうかしら? 必要以上に密度をあげて、一切のものを遮断するような……
私は思いついたその防御魔法を、チェンバレン目掛けて繰り出した。
しかしシュヴァリエが斬り掛かった拍子に穴が空いて、すぐに魔法が解けてしまった。
そんなに脆弱だったかしら?
「ミス・ヴァロワ、今のは名案だ!」ミスター・カーライルが声をあげた。
「でもシュヴァリエが簡単に……」
「ああ、だから次はレオごと囲うんだ」
えっ?
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