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本編後のおまけです。ほのぼの旅行記。

沖縄へ来た生田くんの独り言

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 透が年末年始に沖縄へ行こうと言い出した。自宅にいると挨拶回りをさせられるため、逃げ出したいという理由が密かにあるみたいだが、僕の母が退院したそのお祝いを兼ねて、同居している兄夫婦の家へ訪問したいという話だった。
 僕は気恥ずかしかったが、透を紹介するつもりだったこともあり、二つ返事で賛成した。

 機内でうとうとしていた僕は、隣にいる透が映画を観ていることに気がついた。何を見ているのかと覗き込むと、アメリカ映画のようだ。

「『ブロークバック・マウンテン』だ」
「知らないな、それ」
「まだ見せていない。これは結構くるから……」
「え? どういう意味?」
「……泣ける」
「へえ! この間見た『君の名前で僕を呼んで』も泣ける映画だったじゃん」
「悪くはないが、泣きはしない」
「僕、ちょっとうるっときた」
「だから見せられないんだ」
「えー、今度見たいな」

 透は映画が好きなようで、よく僕に一緒に観ようと言って誘ってくる。僕はアウトドア派というか、外で遊ぶことの方が多かったから、たまに読書をする程度であまり映画を観る習慣はなかった。
 しかも透の選ぶ作品はかなり偏っている。ハリウッド映画ならまだしも、ヨーロッパ映画は初めてだった。ルキノ・ヴィスコンティやペドロ・アルモドバルなんて透といなければ知ることもなかっただろう。同性愛をテーマにした映画ばかり見せてくるのは、暗に何かを伝えようとしているのかと勘ぐってしまう。ただ好みなだけかもしれないけど。


 飛行機は無事に着陸して、那覇空港のロータリーで義姉の迎えを待つ。
 時間ぴったりに到着したのはグレーのステップワゴンだった。
 最初は兄の車だとは思わなかった。僕たちの目の前に停車したのに顔を出さず、こちらからも太陽の光の反射で車内は見えないし、他人の車だと思っていたくらいだ。
 ようやく助手席のウインドウが下がったと思うと、母と義姉の女性二人は、透を見て顔を赤らめてもじもじと言葉少なく挨拶しただけだった。無愛想にもほどがある。
 とは言え、透の魅力に怖じける女性を見るのは楽しい。透が女性になびくことはないから安心感はあるし、その魅力に誇らしさを感じるからだ。

 自宅は空港から40分ほどの場所にあった。実家ほど田舎ではないが、沖縄だけあってのどかな場所だ。
 新築の一軒家で、建売なのか周りには同じような外観の家が数軒建ち並んでいる。

 自宅へ招かれると、あてがわれた二階の部屋に荷物を置いて、リビングでお茶をいただいた。
 話を聞くと兄は夕方には帰宅するらしい。義姉さんは来客中だと言うのに家事があるからと言って忙しなくしていて落ち着かないし、母さんはそんな義姉さんを睨みつつ僕にだけ話しかけて、透には全く話を振らない。二人とも照れているのはわかるけど、もう少し大人な対応を見せてもらいたい。
 堪らず僕が透に話を振っても、透も緊張しているのか『ああ』とか『そうですね』とか短い返事をするだけでほとんど口を開かない。
 話好きの兄が帰ってこないことには始まらないと思った僕は、透と散歩をすることにした。

「お母さんは思ったよりも元気そうだな。雅紀も安心しただろう」
 透は二人きりになって、ようやくまともな会話ができるようになったようだ。
「うん。電話では話していたけど、顔を見たらやっと安心できた」
「来てよかっただろ」
「でも冬に来ることはないだろ! 海に入れる季節がいい」
「では夏にも来よう」
「マジ?」
「雅紀が喜ぶことは何でもしたい」
 ボソッとそういうことを言う! なんて愛らしいんだ。でもこんな往来でそんなことを言っちゃだめだよ透。抱き締めたくなるじゃないか。

 しばらく歩いていると、大型スーパーや商業施設の立ち並ぶ区画に入った。
 店舗のショーウインドウに貼ってあるポスターが目に留まる。

「透、イルミネーションだって」
「ああ」
「行こう」
「しかし、夜はお兄さんたちと外食をするはずでは?」
「その後に行けばいい。こういうデートっぽいのしてみたい」
「……わかった」
 透の表情を伺うと、案の定顔を赤らめて俯いている。恋人になって何ヶ月も経つというのに『デート』という単語一つで顔を赤らめるなんて中学生みたいだ。
 そんな透を見ていたら散歩も沖縄もどうでもよくなった。
「透、どこかに入ろう」
「どこへ行く?」
「……ホテル」
 僕が耳元でそう囁くと、治まりかけていた透の顔色がまた赤くなった。
 かわいいな。ここで押し倒したいくらいだ。人目もはばからずキスでもしてやろうか。

 その時声をかけられた。
「すみません、もし空いてたらどこか行きませんか?」
 20代前半の女性が二人、以前の僕なら喜んで夜まで連れ回したであろうキュートな子たちだ。
 透の顔を横目で伺うと、不安げな表情でそっぽ向いている。あれは僕が誘いに乗るのではないかと不安になっているな。馬鹿だな。
「悪いな。僕たちデート中なんだ。だから空いてない」
 そう言って二人の横を通り過ぎると、その女の子たちは相手がまだ近くにいるにも関わらず、予想できうる限りの不満と暴言を口々に吐いていた。
 透の表情を再び覗き見ると、口角を下げようとしても下げられないといった様子でニヤニヤしていた。
 うーん、我慢ができないな。早く連れ込もう。

 長い散歩を終えて兄の家へ戻ると、兄は既に帰宅していた。
「遅いぞ。楽しかったか?」
 兄は勘のいい男なので、散歩をしていなかったことに気がついたようだ。
「兄さん久しぶり! 楽しかったよ、散歩」
 僕が言い返すと、兄は一瞬面食らったような表情をしていたけど、すぐにニヤニヤと含みのある笑顔を見せていた。
「久世さん、お久しぶりです。わざわざこんなに遠くまでお越しいただきまして、ありがとうございます」
 ようやく透に対してまともに対応する家族が現れてホッとした。
「いえ。こちらこそありがとうございます。ご厚意には痛み入ります」
 透は兄がまるで僕の父のような緊張した様子を見せている。可笑しいけど気恥ずかしい。

 義姉の運転で、自宅から車で20分ほどの場所にある、小綺麗なレストランへ向かった。
「僕だけだったら連れて来ないような店だな。兄さんが義姉さんにプロポーズした店とか?」
 僕がそう言うと、図星だったのか、兄夫婦は目を泳がせていた。

「久世さんとまたお会いすることができて嬉しいです。雅紀のことを心配していたので、久世さんが側に居てくれているようで安心しました」
「私も雅紀くんのご家族にお会いすることができて嬉しいです。お母さんもお元気そうなご様子で、雅紀くんも喜んでおりますし、私も嬉しいです。退院おめでとうございます。その、僅かばかりですが、受け取ってください」
 透はそう言って、兄の前にのし袋を差し出した。兄が困った顔を見せると、そこで兄ではなく母へだと気がついたようで、慌てて母の前へ差し出し直した。その慌てようがまたかわいくて、僕はニヤケてしまった。
「これはご丁寧に。ありがとうございます。申し訳ありません」
 母は、まさかと言った様子でおろおろとそれを受け取った。
「現金で申し訳ありません。私が選ぶような嵩張かさばる物よりもいいと判断したものですから」
「いえいえ、そんな、その、すみません」
 おろおろとする母を案じたのか、兄が言葉を継いだ。
「久世さん、そんな気を回さなくてもいいんですよ。家族みたいなものでしょう?」
 兄のその言葉で場が凍りついた。
「え? 久世さんと……え?」
 母はこれ以上見開けないという程に目を丸くしている。
「母さん、雅紀は久世さんと……」
 兄が言いかけたけど、僕が言わなければならないことだからと割って入った。
「母さん、透は僕の大事な人なんだ。つまり、彼女を紹介して欲しいって母さんは言ってたけど、彼氏を紹介することになったってこと」
 ちょっと不安で、笑顔は引きつっていたかもしれないけど、恥ずかしいことではないんだからと精一杯笑顔を作った。
 母は僕と透の顔を交互に見ながら狼狽えている。
「母さん、僕は透と一緒にいたいんだ。透以上に好きになる人はいないだろうから、結婚はできないけど、透とはパートナーというか、一緒に生きていきたいんだ」
「雅紀……」
 母さんは泣き笑いのような顔をして頬を染めていた。
 その表情を見て、僕も、おそらくは兄も、ホッとした。
 透も顔を赤くしながら不安げな様子で、僕と母の顔を伺っていたようだが、僕の後に続いた。
「お母さん、お兄さん、私は雅紀くんを幸せにします。何を置いても一番に考えて、彼の幸せのために生涯を捧げるつもりです。ですから、受け入れてくださると嬉しいです。その、よろしくお願いします」
 透が真剣な表情で母と兄に向かってそう言うと、頭を深々と下げた。
 最初は何を真面目に、と可笑しかったが、途中から泣きそうになった。
「えっ、いえ、受け入れるとかそんな……逆ですよ逆! 雅紀が久世さんのような方の、その、お相手でいいのかと、逆に申し訳ないと言いますか……こちらこそよろしくお願いします」
 母も目に涙を浮かべながら頭を下げた。
 義姉の表情を伺い見ると、義姉も涙目で口元を押さえている。
「かっこいいでしょ? 透は頭もいいし家事も完璧で、最高の恋人なんだから」
 僕が場を和ませようと冗談めかして言う。
「あ、そう言えばあの家をきれいにしてくださったんですものね、その、今さらですがありがとうございます」
 母は再び頭を下げた。
「いえ、雅紀くんの料理の腕に比べればとても私なんか……」
「透は料理以外全部完璧じゃないか。僕なんて料理以外全部だめなんだから」
「久世さんは凄いよな」
 兄が感心した声で言う。
「洗濯も教えたらすぐに僕より上手くなったんだ。時間はかかるけど丁寧だから、あとからシワを伸ばすような無駄がない。家はチリ一つ落ちていないし、無駄な買い物はしないから部屋は常に片付いている。毎日大学院に通いながら遅くまで資格試験の勉強してるのにだよ? 透はホントに凄いよ」
「雅紀、もういいから」
 透が恥ずかしさで死んでしまいそうだという表情で割って入った。
「ありがとうございます。雅紀も頑張れよ。俺だって出来ない家事をちゃんとやってる」
「宏紀くんもまあ頑張ってるけど、お母さんと私でほとんどやってるじゃない」
 義姉が口を挟む。
「そりゃ、仕事が」
「久世さんはお忙しいのにやってなさるんでしょ?」
「久世さんは別格だよ。比べるな」
 夫婦の間に火花が散り始めたので、母が割って入る。
「久世さん、雅紀にも色々やらせてくださいね。私が教えてあげなかったせいで不出来な息子ですけど、ビシバシとなんでも」
「マジで結婚報告に来たみたいだな」
 僕は堪らず割って入った。
「同棲はしないのか?」
 兄が聞く。
「うーん、いつかはしたいけど、どうだろう。仕事があるからなあ」
「雅紀、俺はいつでもそっちへ行く。その、お前がいいのなら」
「そんなのはダメだ。お祖父さんにバレたら大変だろう?」
 透は言葉に詰まった様子で押し黙った。
 兄たちは僕と透を心配そうに見ていたが、僕が適当に誤魔化すと、話は母が退院したときの話題に切り替わった。

 食事が終わった僕たちは、帰る準備をした。母と義姉が会計している間に、店の外で僕と兄は煙草を吸うことにした。透は煙の届かない距離で大人しく佇んでいる。
「雅紀、良かったな」
「ありがとう。心配かけたね」
「お前は久世さんから離れるな。彼を大事にしろ」
「うん、もちろん」
「俺が言っただろ? うちは問題ないって。しかし久世さんのご家族はどうなんだ?」
「……わからない」

 母たちが会計を終えて店を出てきたので、僕と兄は煙草を消して、皆で帰宅した。
 兄たち三人がリビングでくつろいでいるところで、僕と透はイルミネーションを見に行くからと言って外出した。
「駐車場もわからないし、散歩がてら歩いて行こう」
「わかった」
 透はそう言うと、スマホの地図アプリを操作して、徒歩でのルートに切り替えていた。
「50分くらいかかるかもしれない」
「別にいいよ。のんびり歩こう。途中でコンビニでも見つけたらお酒でも買って飲もう」
「わかった」
「夜道ならキスもできるし」
 透が何も応えないので、透の顔を伺おうとしたけど、街頭が側になかったから暗くて見えなかった。でもおそらく赤くしていただろう。

「いい家族だな」
 透が言った。
「うん、まさかあんな反応を見せるとはね。兄なんて一目で見抜いて、背中を押すようなことを言ってくれた」
「お兄さんはしっかりしている方だ」
「そう。透、兄さんのこと父親みたいに思ってなかった?」
「……そうかもしれん」
 僕は笑った。

 のんびり歩いたので1時間ほどかかった。
 何のことはないイルミネーションだが、これまで見たどのイルミネーションとも違って見えた。
 隣にいるのがその場限りの女の子ではなく、一生を共に過ごしたいと思うほど愛する透だからだろう。
「きれいだなあ」
「ああ」
「……透ってこういうの見たことある?」
「……ある」
「誰と?」
「……西園寺とは見ていない」
「あーーー! むしろ西園寺さんであってくれた方がよかったかも! 他にも気にしなきゃいけない男がいるなんて知りたくなかった」
「いや、もう全員連絡先も知らないから」
「あーーーー!」
 僕は嫉妬した。僕だって何人もの女の子とこういうシチュエーションを繰り返してきたし、人のことを言える筋合いはないけど、透が僕以外の男と過ごしていたなんて考えたくもない。
 透から少し離れて歩く僕を伺うようにしながら、透は距離を詰めずに並行して歩いている。
 本当に臆病な男だ。僕が不機嫌になると怒られた子犬のように怯えて近づかなくなる。そして少し経ってから、機会を伺うようにしておずおずと近づいてくる。ほら来た。
「……いつでもスマホを見てもいい。消したい連絡先は自由に消しても構わない」
「そんなモラハラみたいな真似できるかよ!」
 僕は驚いたが、その気持ちは嬉しかった。
 僕が立ち止まると、透も遅れてそれに倣った。
「なあ、透、なんか蛍みたいに見えない?」
 僕はイルミネーションを指で差した。
「……見たことはないが、あれでは大群ではないか」
「風情がないな。例えだよ」
「無理がないか?」
「透と蛍を見に行きたい」
「……わかった。調べておく」
 僕は透に微笑みかけた。透は僕を見ていたので目があった。僕は透に寄りかかって肩に手を回す。
「大好きだよ、透。これから先、二人であちこちに出かけて、色々なものを見て楽しく過ごせるといいな。飽きられないように頑張るよ」
「俺は雅紀に飽きることはない。雅紀がいれば何もしなくても幸せだ」
 うーん、またそういうことをサラリと言う。
「でも隠していかなきゃならない。僕の家族は大丈夫だけど、透の親御さんは許さないだろう?」
 透は答えなかった。
「僕は構わないけど、透が心配だ」
「……なんとかするつもりだ」
「お祖父さんの秘書官になるんだろう? スキャンダルになるのを恐れて別れさせられることにならないか?」
「俺は雅紀がいれば家族も仕事もどうでもいい。最優先は雅紀だ」
 僕は嬉しかったが、僕の幸福だって透の幸福の上に成り立つものだ。僕を優先させるために家族と絶縁することになるのは歓迎しない。
「今考えるのはやめよう。せっかく蛍を見ているんだから」
「蛍ではない」
「うん、じゃあ今度本物を見よう。今夜はとりあえずもう一度どこかへ消えようか」
「……そんなに不在にしていては悪いだろう」
 そう言いながらも声の調子で嬉しいのはバレバレだ。
「イルミネーションなんて口実だってみんなわかってる。むしろちゃんと見てきたって言ったら驚くんじゃないかな。証拠写真でも撮っておこう」
 僕が笑いながらスマホで写真を撮っていると、透が珍しくこんな人前で後ろから抱きついてきた。
「おいおい、ブレるだろ」
 僕が振り向くと、透にキスをされた。
 外国じゃないんだから、と思いながらも嬉しかったから、僕も人目を気にせず受け入れた。

 こんな風に周りを気にせずに居られたらどんなにいいか。東京へ戻ったら友人の振りをしなければならないどころか、離れ離れになってしまう。
 貧乏学生のルームシェアじゃないんだから、いい社会人が、しかも首相の孫である御曹司が、男と同棲なんてできるはずがない。
 透もそれを感じているから、珍しくこんなことをしたのだろうか。
 そう思うと嬉しい反面、不安も同時に覚えた。

 帰りは少し遠回りをしてコンビニに寄ると、酒を買って飲みながら歩いた。
「透も当たり前のように缶ビールを飲むようになったな」
 二人はアサヒスーパードライを手にしている。
「正直、雅紀のところで飲んだのが初めてだったが、悪くなかった」
「あーーー、じゃあ、それまでの男とはオシャレなところでオシャレなアルコールしか飲んでなかったんだ?」
 またも嫉妬の影をちらつかせてしまう。
「……雅紀が気になるならこれまでのことを全て話してもいい。知らないままで不安なら何でも話す。……西園寺のことも」
「うーん、気になるけど……そうだな。じゃあ人数とか」
 僕が聞いたら間ができた。
「あ、数えるほどいるんだ、じゃあもういい、聞かないでおく」
「いや、どこまで含めればいいのかと……」
「もう、そういうのも言わないでいいから」
「雅紀の方が……その、女性との経験があるから、その」
 最初に朝まで飲んだ日に、盛り上がりすぎて話していたことを持ち出してきたな。古い話だ。
「ああ、こういう気分になるんだな。僕が悪かった。本当にもうやめよう。そうだな……二年くらい経ったらぶっちゃけ合おう。いつかは聞きたくなると思うから」
 透は僕の言葉で少し笑ったようだ。
「……雅紀、東京で転職するつもりはないか?」
 僕は突然の問いにすぐに反応できなかった。
「俺は家を出るつもりだ。祖父じいさんに、秘書官になる代わりに私生活は自由にさせるよう頼み込んだ。マンションも見つけてある」
「……広い?」
「今の部屋よりは狭い。でも二人なら住めるだろう」
 僕はちょっと泣きそうになった。
「あの部屋は広すぎる。30人くらい生活できそう」
 泣きそうなのを悟られないように笑って言った。
「……考えてみてくれないか?」
 僕は立ち止まって、透の方へ身体を向けた。透も同じように立ち止まると、僕の目を伺うように見た。
「うん。考えるまでもない。行くよ、東京に。ありがとう」
 二歩ほど行き過ぎていた透が、僕に二歩歩み寄った。
「仕事なんて何だっていい。透の側にいれるなら、それだけで幸せだ」
 僕がそう言うと、透は微笑を浮かべて僕の手に触れた。僕もそれを握り返す。

 僕たちは手を繋いで、沖縄の夜を歩いていった。
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みんなの感想(1件)

ななし
2024.07.28 ななし
ネタバレ含む
海野幻創
2024.07.29 海野幻創

コメントありがとうございます。承認が遅くなってしまって申し訳ありません。まさかコメントをいただいているとは思わず、確認が遅れてしまいました。
悩んだ末ネタバレ感想にさせていただきました。
完結しましたが、先のストーリーが膨らんでいるので、西園寺を含めて、続きを書けたらいいなと思っております。
コメントありがとうございました。

解除

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